サイエンス

2025.09.01 18:00

95%の頭数減少、世界で「トラ」は生き残れるか? ネコ科最強の頂点捕食者が直面する絶滅の危機

ベンガルトラ(Shutterstock.com)

5. ベンガルトラ(絶滅危惧)

主な分布域はインドだが、バングラデシュ、ネパール、ブータンにも生息するベンガルトラは、トラの現生亜種のなかで最も個体数が多い。それでも、野生個体数は約2500頭にすぎない。

文化的・国家的シンボルとして重視されてきたベンガルトラだが、一方で生息地の喪失、人間との軋轢、毛皮や体の一部を得るための密猟という深刻な脅威に直面しており、いまだに違法な野生動物市場で高値で取引されている。彼らの生存は、継続的な保全努力と、南アジア全域における生息地の連続性にかかっている。

(余談:ほとんどのベンガルトラは人間を避けるが、すべてではない。歴史記録にある限り最多の死者を出した「人食いトラ」は、400人以上の命を奪い、何年も駆除の手を逃れ続けた。事件の全容はこちらの記事で)

ベンガルトラ(Shutterstock.com)
ベンガルトラ(Shutterstock.com)

6. インドシナトラ(絶滅危惧)

東南アジアの密林に生息する知られざる亜種で、タイやミャンマーなどに分布する。かつてはベトナムやカンボジアでも見られたが、これらの国々では絶滅した可能性が高い。

インドシナトラの野生個体数は400頭未満で、プランテーションやインフラ開発による森林伐採、そして密猟の脅威にさらされている。残された個体の多くは、孤立した森林地帯に取り残されており、遺伝的多様性や繁殖機会の減少により、亜種の長期的存続が脅かされることへの懸念が高まっている。

7. マレートラ(絶滅危惧)

マレートラは、かつてはインドシナトラと同一視されており、2004年に遺伝的に独立した亜種として認められたばかりだ。マレー半島の熱帯林にのみ生息し、野生個体数150頭未満という危機的な状況にある。主な減少要因は密猟と、アブラヤシプランテーションによる大規模な森林破壊だ。

分布域の大半を占めるマレーシアは、国の象徴であるマレートラを救うため国家規模のプロジェクトを立ち上げたものの、緊急対策と長期的対策を実現しないかぎり、次に絶滅するのはこの亜種かもしれないと、保全関係者は警鐘を鳴らしている。

マレートラ(Shutterstock.com)
マレートラ(Shutterstock.com)
次ページ > アモイトラ(絶滅危惧)

翻訳=的場知之/ガリレオ

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2025.08.12 11:00

学びが組織を変える。「Udemy」で実現するチーム学習の可能性

働き方や組織の在り方が変化するなか、上司と部下、チーム内の学びの共有が新たな価値を持ち始めている。そんななかで、オンライン動画学習サービス「Udemy(ユーデミー)」のギフト機能が、注目されはじめている。

ビジネス現場での実践的な活用について、「Udemy」の日本国内における独占的事業パートナーであるベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)のマーケティング統括部に話を聞いた。


「個人で学ぶよりも、チームや部署内の複数のメンバーで学び合う体制を整えた方が、新しい業務対応や改善につながる」※1

ベネッセがトヨタ自動車の従業員を対象に実施した調査で示されたのは、個人学習よりチーム学習の方が、学びの業務活用実感が高いという事実だった。つまり、組織単位での学習利用の拡大と、それに応じた学習支援施策は、従業員の業務活用実感を高め、外発的動機から内発的動機へ学びの自律性を高めることが示唆された。同社マーケティング統括部の櫻田皓星(以下、櫻田)は、今回の調査について次のように語る。

「IT人材やDX人材の育成は、トヨタ自動車様に限らず、多くの企業にとって喫緊の課題です。とはいえ、eラーニングシステムなどを導入して、社内研修や教育を行っても、成果に結びつけるのは簡単ではありません。ですが、今回の調査で、チーム学習の推進が業務の成果創出につながる可能性を示唆できたことは大きな意味があります」(櫻田)

チームでの学びは、学習投資に対するリターン(ROI)を向上させる力をもつ。そして、その環境づくりに適したプラットフォームが、ベネッセが独占的事業パートナーを務めるオンライン学習サービス「Udemy」なのだ。

ベネッセコーポレーション マーケティング統括部 櫻田皓星
ベネッセコーポレーション マーケティング統括部 櫻田皓星

「Udemy」のギフト機能が生む価値

 櫻田とともにマーケティング統括部に所属する武吉知代子(以下、武吉)は、「Udemy」の特長についてこう語る。

「『Udemy』は世界で約8,000万人※2が利用する動画学習サービスで、プログラミングやビジネス、生成AIといった多様な分野を網羅し、25万以上※2の講座が提供されています。講座の多くは、実務の最前線で活躍する方々が講師となっており、実践的かつトレンドに合わせた最新の内容の講座が配信されている点が強みです。動画は短く区切られており、スマートフォンなどでも視聴しやすいため、スキマ時間の活用や学習の継続にもつながっています」(武吉)

「Udemy」には、企業向け定額プランの「Udemy Business」、中小企業向け「Team Plan」、個人が1講座から購入できる買い切り型プランがあり、ニーズに応じた柔軟な導入ができる。

なかでも注目すべきは、買い切り型プランに搭載された「ギフト機能」だ。これは、学びを“贈る”という新しいスタイルを実現し、個人間での学びの共有を簡単に行える仕組みである。もちろん、チーム学習の促進には「Udemy Business」や「Team Plan」のような法人プランが有用だ。一方で、会社や組織を通さず、個人間で贈り合えるギフト機能を活用すれば、少人数でも比較的手軽に学びを共有することができる。同部の山岡 蓮(以下、山岡)は、ギフト機能のメリットについて次のように語る。

「相手のメールアドレスさえ分かれば、ギフト機能で講座を簡単に贈ることができます。例えば、部下が業務で悩んでいるときに、上司がそれを解決するヒントとなる講座を贈る。自分がおすすめする書籍をプレゼントするように、気軽に利用することができます。また、社内活用に留まらず、例えば社外の人とプロジェクト単位で業務を実行する際に、チームの共通言語として同じ講座を受講しておくといった活用も可能です」(山岡)

ベネッセコーポレーション マーケティング統括部 山岡 蓮
ベネッセコーポレーション マーケティング統括部 山岡 蓮

山岡自身、学びの共有が、チームに大きな変化をもたらす場面を多く目にしている。

「マーケティング業務では、Web広告や行動経済学、ブランド戦略など、求められる知識は多岐にわたります。従来は経験を積むことでしか身につけられなかったスキルも、『Udemy』の講座をチーム内で共有すれば、全体の知識水準を底上げできます。同じ講座で学ぶことで、共通言語が生まれ、会議の質も向上していることを実感しています」(山岡)

さらに学びの共有は、スキル習得だけでなく、コミュニケーションの活性化にもつながるという。

「部下との1on1ミーティングで、悩みを共有し、それに合った講座を紹介する。こうしたやりとりを通じて、個別の課題解決と成長支援を両立できると考えています」(櫻田)

チームでの学びと知の共有が組織を動かす原動力に

「Udemy」による学びの共有は、チームビルディングの効率化にとどまらない。ベネッセでも、その効果を実感しているようだ。

「新卒社員には、業務で必要となる『Microsoft Excel』の講座を共有します。基本操作はもちろん、実務中に困ったときに振り返ることで、理解が深まり、応用力も養われます。結果として、習得スピードも上がっている印象です」(武吉)

ベネッセコーポレーション マーケティング統括部 武吉知代子
ベネッセコーポレーション マーケティング統括部 武吉知代子

「私は異動してきたばかりのメンバーに、過去に自分が役立ったと思う講座を紹介することはよくあります」(山岡)

実務に即した課題解決とともに、オンボーディング支援としても有効な点は、「Udemy」が多分野にわたる学びを網羅しているからこその強みといえるだろう。

ベネッセコーポレーション社会人事業本部では「大人が可能性と生きていく社会へ。」というビジョンを掲げ、年齢を問わず、誰もが学びや挑戦を通じて前向きに生きる社会の実現を目指している。Udemyとの連携も、まさにそのビジョンの実現に向けた取り組みのひとつといえる。

「『Udemy』の価値は、学びを強制することではなく、個人の悩みや目標に寄り添いゴール達成の手段を提供することだととらえています。経験に基づくノウハウや知識に気軽にアクセスできる環境が身近にあることで、自信や行動力が生まれます。それが、活力ある社会づくりにつながると信じています」(櫻田)

人材不足が深刻化し、知の継承が難しくなっている今、Udemyの講座を贈ることで、ナレッジと経験を次世代に手渡すことができる。今後、企業が持続的成長を実現するうえで、学びの在り方はますます戦略的な意味を帯びていく。AIや自動化が進むなか、人が担うべき創造的な知的活動の土台として、チームでの学びと知の共有は不可欠だ。 

学びを「個人のもの」から「組織の資産」へと転換する。「Udemy」は、そんな時代の変化に応じたプラットフォームとして、企業変革の最前線に立ち続けている 。

※1「ベネッセ、トヨタの『Udemy Business』の利用に関する調査を発表」ベネッセコーポレーション、2025年7月1日発表

※2 2025年3月時点の数字

詳細はこちら→Udemy
法人向けページはこちら→Udemy Business

さくらだ・こうせい◎ベネッセコーポレーション社会人事業本部マーケティング統括部所属。広告会社、LINE WORKSを経て、2024年に入社。Udemyのマーケティング・ブランド戦略に携わる。

やまおか・れん◎ベネッセコーポレーション社会人事業本部マーケティング統括部所属。代理店でのクリエイティブディレクター職を経て、2022年に入社し、高校生向け教材の営業・マーケティングを担当。現在はUdemyのマーケティング戦略に携わる。

たけよし・ちよこ◎ベネッセコーポレーション社会人事業本部マーケティング統括部所属。ITコンサルタント、事業会社でのマーケティングやリサーチを経て、2022年に入社。現在はUdemyの個人向け市場のマーケティングを担当。

Promoted by ベネッセコーポレーション / text by Motoki Honma / photographs by Daichi Saito / edited by Aya Ohtou(CRAING)

サイエンス

2025.05.17 17:00

1日100万羽以上の鳥を殺すオーストラリアのネコ、18世紀に持ち込まれる

Maren Winter / Shutterstock.com

Maren Winter / Shutterstock.com

2019年春、ウエスタンオーストラリア州マンドゥラーにある保護区が、静かな生態系崩壊の舞台となった。絶滅の危機にあるヒメアジサシの巣作りが順調に進み、200羽以上が集まったところで、まずいことが起こったのだ。

朝に、ひな鳥が死んでいるのが見つかるようになり、そして成鳥が姿を消した。その後、すべてを説明する痕跡が見つかった。営巣地のあちらこちらで、砂にネコが残した跡、首のない死骸、ばらばらになった巣が見つかった。

去勢済みの首輪のない白いネコがたった1匹、営巣地に繰り返し侵入したことで、シーズンの終わりまでに、巣作りは完全に放棄された。

オーストラリアでは、1日に100万羽の鳥がネコに殺されている。この大陸の野生動物たちは、哺乳類の捕食者がいないかたちで進化してきたため、特有の弱さがある。結局、マンドゥラーのネコは安楽死に処せられたが、このネコがもたらした影響は、より大きな問題の存在を浮き彫りにしている。この問題は、驚くほど明確な起源を持つものなのだ。

オーストラリアへのネコの侵入は、最初の英国船の到着から始まった

最初のネコは、英国からの初の船団が船に乗せたものだ。船内のネズミの数を抑制するためだった。1788年、船がオーストラリアの海岸に着くと、ネコはすぐに2つめの仕事を得た。入植者たちにとって、害獣退治に便利な動物として歓迎されたのだ。農村で、最初はネズミの大発生に対応するため、後にウサギの激増に対処するため、土地と家屋に、数十年にわたって意図的にネコが放たれていった。

オーストラリアはその後も、生態系的な実験に次々と失敗してきた。例えばオオヒキガエルだ。クイーンズランド州のサトウキビ畑の甲虫を抑制するために1935年に導入されたが、意図されていた獲物を無視したばかりか、驚きのスピードで増殖して、土着の生態系を崩壊させた(オオヒキガエルは、自らを防御するため強い毒性を持つ)。オーストラリアは現在、誤った判断が残した負の遺産と戦っており、全国で駆除活動が実施されている。

次ページ > オーストラリアで最も対策費がかかっている侵入種

翻訳=緒方亮/ガリレオ

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