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東京都内激戦区 ④

「――――何でここにいる、花子ちゃん!?」


「言い訳は後でするんで、伏せてほしいっす!!」


二丁拳銃を構えながら落ちてくる花子ちゃんを見上げ、その射線上から逃れるために身をかがめる。

息の合ったタイミングで頭上を通り抜けて行った弾丸は、舐めるように地上を沿いながらヴィーラへと迫る。


「チッ、新手か!!」


土砂を巻き上げ、射線を遮るヴィーラ。 

土煙に吸い込まれる電撃の弾丸は小さな目標には命中せず、悉くすり抜けていく。


「代われ、次はうちの番や!!」


「チッ、なんだよ次々とッ!!」


視界を遮る土煙をものともせず、今度は斧を振り上げて肉薄。 火花を散らしながら迎えうつ大槌と衝突する。

若干ヴィーラが迎撃に遅れた分、押しきれるように見えるがが……悪手だ。


「駄目だ、弾き飛ばされるぞ!」


「――――あら~、それならこっちのプランで行きましょうか」


案の定、大槌と接触した花子ちゃんの体が拒絶の魔法によって吹き飛ばされる。

しかしその直後、ヴィーラの体もまた同じく花子ちゃんに引っ張られるような形で浮かび上がった。

彼女の腕にはいつの間に巻き付けられていたのか、極細の電気で繋がったか細い釣り糸が巻き付いていた。


「あら~、釣られちゃったわね。 それじゃ――――最後はオレの出番だなぁ!!」


「――――小癪な真似してくれんじゃん、一人でころころ変わりやがって!!」


完全に虚を突かれたヴィーラとは違い、ある程度反撃を予想していた花子ちゃんはすぐに姿勢を直して着地。

最後に変わる姿は赤い特攻服、バットを構えるが如く振りかぶった電撃の剣を持ち、遅れて飛来するヴィーラを待ち構える。


「花子の頼みだ! 合わせな、センパイ!!」


「お前ら……! あとで5人揃って説教だからな!!」


≪―――――BURNING STAKE!!≫


フルスイングされた剣を蹴り込んで押し出す。 炎と稲光が混ざり、独特のコントラストが瞬きながら飛び込んでくるヴィーラと激突する。

崩れた体勢から無理矢理構えた槌は微妙に真芯でこちらの攻撃を受け止められず、十分に拒絶の力が働いていない。

辺り一面に炎と雷を吹き散らしながら、それでも逸らしきれない魔力の余波がヴィーラの槌をかちあげた。


「っ……!!」


「貰ったッ!!」


狙うは再度の鳩尾、がら空きの懐に叩きこんだ拳は何にも阻まれることなく人体急所を殴りあげる。

拳に伝わる嫌な感触に多少の罪悪感が籠るが、今この瞬間だけは手を抜けない。


「かっ……!」


「吐き出せ、ヴィーラ! お前ローレルの言いなりになったままでいいのかよ!」


「ク、ソ……誰、が……!」


完璧にクリーンヒットしたはずだ、しかしヴィーラの闘志は未だ潰えない。

どこにそんな力が残っていたのか、という握力で自らの腹にめりこむ腕に掴みかかる。


「っ……こいつ、どこから……!」


「誰が言いなりだ、馬鹿!! アンタらぶちのめした後はローレルを殴る、そんでもってパニパニも皆も助ける!! アタシが……アタシがやるんだ!!」


「おいセンパイ! だいじょ―――うおわっ!?」


ヴィーラに蹴られた俺の体を受け止めた花子ちゃんごと、2人纏めて吹っ飛ばされる。

先ほど吐き出したタネの分、ヴィーラに与えられた力は減衰したはずだ。 それでも一体どこからこんな力が沸き上がって来る?


「いってぇ……! おい、退けろセンパイ野郎!」


「す、すまん……」


《ちょっと、二人でくんずほぐれつしてる場合じゃないですよ! ちゃんと前見て前!!》


ハクに忠告された通り、蹴り飛ばされた衝撃でヴィーラから視線が外れていた。

ものの数秒ほどの隙だが戦場では致命的、すぐに頭をヴィーラの方へと向けるが……


「……ゲホッ!!」


――――そこにあったのは、大槌に寄りかかりながら血反吐を吐くヴィーラの姿だった。


「ヴィーラ!!」


「おうこら、待てやパイセンこの野郎! バカ正直に突っ込む気か!」


「だけど……ぶべっ!?」


突如ヴィーラから投げつけられた石ころが顔面に直撃する。

槌で弾き飛ばしたわけでもないただの石つぶて、しかし東京の濃い魔力に当てられたそれはまともに喰らえば多少なりとも怯む。


「うるっさいんだよ、お前ェ! さっきから何かとアタシの事気にかけてさァ、バッカじゃないの!? アタシはお前の事なんて全然知らないんだよ!!」


血反吐を吐きながら、血の気の引いた顔でヴィーラが叫ぶ。

彼女の足元には血を吸った地面が作る斑点模様が刻まれている。


「あんたらがしゃしゃり出なくても……ローレルは、アタシが……ぶっ潰してやるんだからさ……!」


《……マスター、時間かけると不味いですよ。 多分ですが彼女に施された強化は副作用も大きい》


「どうすんだよパイセン、説得するのに付き合ってる暇はないぞ」


「……わかってる」


ぱっと見ただけでもヴィーラの状態がかなり悪いことは分かる。

ただ押しとおるだけなら時間を稼げば勝手に自滅するが……それでは彼女の体が先に潰れてしまう。


「可及的速やかにヴィーラを無力化して、原因を全部吐き出させるぞ! 手伝ってくれ!」


「ギヒヒ、言質とったぜぇ花子! 俺たちの力が必要だってよ!」


「ああそうだよ、不本意だがその電撃が必要だ!」


加減するには黒衣は過剰が過ぎるし、通常の姿じゃ骨が折れる。

この状況で最適なのは一撃で相手の動きが止められる花子ちゃん達の電撃だ。


「いいぜ、オレたちに合わせなセンパイ! 戦いってのはノリにノった方が勝つんだよ!」

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