第58怪 問答無用の連行
黒服どもに連行されながら、俺は更衣室の外に出る。
途中、廊下を歩いている同じクラスの
シズクは大きく目を見開いて俺を凝視してきていた。他にも数人知っている顔があったが、正直、どうでもいい事だ。
俺は元怪人、『準人間』であり、『人間』とみなされているわけではない。このような理不尽な扱いをされることなど十分予想の範疇だ。だから、大して心など痛まない。ま、仮にこの件が無事に済んだとしてもここまで悪目立ちしてしまっては真面な学園生活はおくれやしないだろうが。
「ちょっと待ってください!」
俺の担任と思しき、茶髪をセミロングにした女教師が、血相を変えて俺たちの前に立ちふさがる。
「我らは保安局の者です。この
故意に大声で周囲に向けて叫ぶ。
保安局の説明により、担任の女教師はあっさり納得するかと思ったが、逆に表情を強張らせて、
(あいつの逆恨みか! ミウ、君の予想は最悪の形で的中したよ!)
小さくそう呟く。そしてあからさまな作り笑いを浮かべると、
「彼は私の生徒です。こちらに渡していただきたい」
有無を言わさぬ口調で俺の引き渡しを求めた。
「無理ですね。怪人の捕縛は我らの責務であるなれば」
英雄同盟保安局――通称黒服。こいつらの職務は、不審者の摘発など保安を目的とした活動にある。この黒服たちは、怪人の暴走事件の際に頭角を現したこともあり、怪人の捕縛はこいつらにとって、最も基本的で重要とみなされている行為となっている。
特に俺は元怪人の『準人間』、その俺がヒーロー育成を目的とした学園に通っているんだ。こいつらからすれば、絶対に許せない存在だろう。
「保安局といえども、学校内への介入は許されないはずでは?」
「ええ、我らだけなら。ですが、この学園の一員である幾島ヒーローからの協力を求められました。我らの正義執行の根拠となりえます」
ギリッとセミロングの担任は奥歯を噛みしめると、
「こんな横暴、きっと問題になりますよ?」
「なりませんよ。これは邪悪で愚劣な悪の怪人。どう扱おうと賞賛されることはあっても、非難されるわけがない。むしろ、怪人の肩を持つことは、ヒーローの重要な倫理規範違反。ヒーロー
得々と向上を垂れる丸渕眼鏡に制帽を被った黒服。こいつ、自分に酔ってやがるな。
「問答無用か……」
担任は俺たち背を向けて走り出してしまう。
「怪人、さっさと歩け!」
俺を蹴り上げて声を張り上げると、黒服は俺の手首に着いた魔封石のついた手錠の鎖をひっぱりながら歩き出す。
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