第57怪 誤認逮捕
十数回の【
鬼気迫る形相で俺に、また修練後に教えるように懇願してくる。奴の奇行に圧倒されつつも、了承する。だってさ、こいつ、断ったら何するかマジでわからないようなテンションなんだよ。
先ほどまでの運命に取り組むような態度とは一転、ウキウキと喜びを全身で表現しながら、修練所からスキップをしながら出て行ってしまった。
「なんだろうな、あれ?」
自問自答してみるが、もちろん答えなどでるわけもない。
一人きりとなった修練所を出て、更衣室へ向かう。
更衣室の俺のロッカーを開けるとその中には見知らぬバックあった。
「これは……」
大体、検討くらいつくさ。念のため、中身を確認しようとし右手でそのバックを手に取ったとき、
「怪人、それをこちらに投げて、両手を上げろ!」
背後から声に振り返ると、眼鏡の優男、幾島が気色悪い笑みを浮かべつつ槍を片手に佇んでいた。奴の後ろには黒服の男どもが、各々武器を持っている。
結局、予想通りか。このバックの中身は――。
「はいはい」
バックを床に放り投げて両手を上げる。
黒服の一人がバックを掴んで、その口を開けて中身を確認して薄気味の悪い笑みを浮かべる。
「幾島ヒーロー、生徒が紛失したのは、この
黒服の男は数本の小さな杖を取り出して幾島に示すと、
「そうです! それですよ!」
幾島は碌に確認もせずに大きく頷きながら、叫び声を上げる。
「『準人間』、
そんな明らかに不自然な幾島の態度を咎めようともせず、ニヤケ顔で黒服の一人がそう宣告すると、俺に近づいて両手首に拘束具を付ける。
怪人規制法128条1項とは、『準人間』が罪を犯した際に、『怪人』と再認定されて収容所送りとなることだ。一応、お慰み程度に裁判は開かれるが、一度起訴されれば99.9%『怪人』と再認定される。99.9%というのは、『準人間』が裁判かけられて『怪人』認定されなかった例は世界中でも数例に過ぎないから。その数例も、かなり特殊な事案であり、ほぼ間違いなく『怪人』認定される。何より俺はおいそれと裁判などやっている余裕はない。もし、裁判が避けられないようなら、とんずらして身を隠すべきだ。もしかしたら、ヒーローになる以外でもB級クラスのダンジョンに入れる手段があるかもしれない。それを探すべきだろうさ。
「無駄な抵抗はするな。これは魔封石だ。魔力も使えんし、力もはいらんぞ」
魔封石ね。即座に両手の拘束具に鑑定をかける。
―――――――――――――――――――――――――――
【魔封石】
・説明:魔力100、筋力20だけ消失させる石。
――――――――――――――――――――――――――――
今更魔力100と筋力20削減されても、蚊に刺された程の効果もねぇよ。こんな欠陥アイテムで拘束するとは、こいつら大丈夫か?
というか、こいつらのステータスってどのくらいなんだろうな。鑑定してもどういうわけか、人に対してだけは効果がないんだよな。
「それはどうも」
ご丁寧に説明してくる黒服に皮肉の返答をする。
この下らん茶番にどこまで学校の運営側が関与しているかにより、俺のこれからの進む道が変わる。
(『
頭の中で二足歩行の黒装束にマスクをした狐、『
(もちろんでございます!)
即答される。
仮にもいきなり学年主任から、退学されそうになったんだ。予め俺の周囲を徹底的に監視しておくように、『
(なら、この慶皇高等科の学園長にこの件の証拠資料を全て提出して協力を求めろ。もし、協力を拒絶されたのなら、その結果をできる限り俺に知らせろ。後、念のため、ロトとセイに、イヴを連れて、【金澤村】にいるオヤジに合流するように指示を出せ!)
(御意に!)
頭の中に響く声とともに、気配が消失する。
「おい、朽木ぃ、貴様、入試ではよくもやってくれたよなぁ!」
幾島が俺を槍の石突で殴りつけてくる。
「……」
耐久力が上がったせいだろう。これっぽっちも痛みも感じない。おそらくかすり傷すら効いてはいないだろう。
「ミウの前で恥をかかせやがって!」
怒声を上げて槍の柄を振り回して俺の腹に向けて横薙ぎにする。
ゆっくりと迫る槍の柄が俺に当たると同時に背後に自ら飛んで衝撃を殺す。受け身を取らずにわざと大げさに転がっていく。俺の主張が認められるなら、この手の行為は俺にプラスに働くはずだ。
「幾島ヒーロー、
槍で殴り続ける幾島を黒服の一人が制止する。
「わかりました。俺はひと足先に例の場所に行っております」
「ええ、私たちもこの怪人を連れて直ぐに向かいますよ」
幾島は鼻で笑うと部屋を出て行く。
黒服は俺に猿轡をして、更衣室を出ていく。
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