第55怪 予想外
「……」
うーん、ちょっとこれは予想外だ。言葉もないくらいに。想像していたよりも、ずっとお粗末すぎる
全員が、『ᚺᛟᚾᛟᛟᚾᛟᚱᛖᛁᛋᛖᛁᚤᛟ, ᚴᚤᚢᚢᛏᚪᛁᛏᛟᚾᚪᛏᛏᛖᛏᛖᚴᛁᚥᛟᚢᛏᛖ(炎の精霊よ、炎球となって敵を討て)』と詠唱しているが、実際は、『ᚤᚢᚱᚪᛗᛖᚴᛁᚴᚪᚵᚪᚤᚪᚴᚢᚪᛟᚴᛁᚺᛟᚾᛟᛟᚤᛟ, ᚥᚪᚱᛖᚾᛁᛏᛁᚴᚪᚱᚪᚥᛟ(揺らめき輝く青き炎よ、我に力を)』だ。それはそうだ。【
さらに、詠唱の呪文のスペルが微妙に誤っているから、半分以上が的まで届かない。さらに、スペルの内容があっているものは半分の距離は届くが、スペルに込める魔力量が足りなくて、すぐに落下してしまう。
結果、八割の学生が的まで魔術が届かないという意味不明な事態となる。
ここは一流校じゃないかよ。流石にこの結果は想定外だ。
ルーン語は、古代語。魔術の基本であると同時に、通常の日常では使用しない未知の言語。だから、別に俺はこの言語が使用できないことが悪いとは思わない。現にオヤジに拾われてから、俺はオヤジにルーン語を徹底的に仕込まれている。それでも上手く話せるようになったのは、つい最近なんだ。
俺が一番疑問なのは、なぜそこまでしてルーン文字に拘るかってことだ。
あの魔導書を呼んで、いくつかの実証実験を行った結果、俺は魔術の発動について、一つの推論に到達した。
効率よく魔術を発動するために重要なことは、その呪文がこの世界が認識しやすい言語であること、そして、その呪文の格文節に込める魔力の量が適切であることだ。
確かに、あの魔導書には魔術の詠唱は全てルーン語で書いてあった。だが、魔術を鑑定すると、ジパング語での認識となる。当初これを一々ルーン文字に変換していたんだが、面倒になって母国語でできないかといくつか試みてみたら、ちゃんと発動できたわけだ。
あの魔導書は、詠唱とは異界の人外とコンタクトを取るための通信手段のように解釈している。その詠唱にルーン語が用いられた理由は、その通信手段としての相性が抜群だから。例えるなら、ネットの速度を決定するMbpsのようなものだと思う。つまり、このルーン語というのは、このMbpsがかなり高速なわけだ。
もっとも、ネットの速度がMbpsだけで決するわけじゃないように、魔術も言語だけできまるわけじゃない。呪文の各分節に込める魔力の量によっても、その通信手段は影響する。つまり、ルーン語でなくても魔術は十分発動し得るのだ。
もっとも、言語はどんなものでもいいというわけじゃないらしい。試しに俺が適当に作った言語を用いてみたが効果はこれっぽっちもなかった。対して、ジパング語、英語に、エルドラ語でも発動させることができた。そしてこの中でルーン語の次に効率が良かった言語は、英語であり、次にジパング語、エルドラ語の順だった。
ここから俺が結論付けたのは、呪文は、世界が認識しやすい言語ほど発動しやすく、魔力の威力や精度が増す。そして、ルーン文字は最も世界が認識しやすい言語であり、他の言語については、その言語の歴史や話す人数などによって決定するんじゃないかということだ。
だから、ルーン文字を使用できるなら、第一選択となる。現に俺もあの試験ではルーン文字を使用した。俺がルーン語をあえて使ったのは、試験の段階では、この理論に到達しておらず、それしか選択しようがなかった。だからさして得意でもないルーン語を使用したのだ。
もっとも、試験後、魔導書を何度も読み返すうえで、俺はルーン語をほぼ完璧にマスターしてしまった。どう考えてもこれは異常だ。理由はおいおい考えていく必要はあるだろう。
ともかく、今回の実習でも、ルーン語を使用できるならそれが一番いい。でも、今日の実習はあくまで、遠方の的に魔術を当てるという極めて単純なもの。そもそもそこまで威力や精度を上げなくても、届きさえすればいい。それにルーン語での威力の増大よりも、各分節に込める魔力量の調節の方が遥かに威力や精度に大きく関わる。効率を考えれば、碌にルーン語を扱えないなら、慣れた母国語で発動した方が遥かにましというものだ。
特にこの重要な局面でわざわざ、不得意なルーン文字で発動する意味がわからない。威力など少し落ちても、ちゃんと的に当てることの方が遥かに重要だと思うんだが。
まさか、一連の
いやいやいや、流石にそれはあり得ない。俺ごときがやっつけ仕事で見つけた理論だぞ。とっくの昔に辿り着いてしかるべきだ。何より、魔術を鑑定すれば、詠唱に用いる呪文が、己が最も得意とする言語となることは周知の事実のはず。つまり、これらは鑑定の魔術を知っていれば嫌でも到達できる事実ということ。
とすれば、この学園では魔術の伝統を重視するためにあえてルーン文字での実施を強制されているんだろうさ。そういえば、魔術の教本の中のスペルは全てルーン文字で書かれていたな。あまり、賢いやり方とは思えない。伝統や形式のみで強くなれたら世話はない。本来は個々の成長具合に応じて、様々な発動の仕方を模索するべきだ。
ともかく、一発で的に当てたのは二人。
一人は
もう一人は、同じ優等生グループのリーダーと思しき、白髪と黒髪が混じったイケメン少年。名前を
あとは、あの黒髪をツインテールにした勝気そうな女子だ。確か、
この三人が今のところ、このクラスのスリートップと言ったところだと思う。
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