El El
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【アークナイツ世界観考察】三千年の時を刻み、神々の終焉へ続く塔を建てる:ーーバベルの塔プロジェクトの解読(大陸考察の和訳)

【翻訳転載許可エビデンス】

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リンク:https://www.zhihu.com/question/428388822/answer/1799097734
 (*元々はNGAで書かれてたのだが、NGAのアクナイ掲示板はNGA
運営に粛清されたので作者様は上記の「知乎」ってサイトに引っ越した。)
作者様ID:Agilulfo
1~7章の公開日:2021年3月23日
 (画中人、R6Sコラボ実装後、ケルシーSS、2周年SS実装前)
 (ネタバレ:R6Sの地名1つをヒントに分析した程度です。)
8~10章:2021年4月中旬
 (ケルシーSSが追加されてから書き足された内容で、ネタバレは勲章1つのフレーバーテキストと地名1つです。)
結び:基本8~10章と同じ4月中旬に書かれたものだが、2周年情報が公開されてからSTARSETの曲名についての考察を追加した。

【他のネタバレの有無】
 この文章は、アークナイツの世界観についての断片的な情報を統合し、既存の設定を考察・分析した上で、作者が再構築した仮説上の世界観を体系的に説明してくれた作品です。
 ケルシーSS公表前に書かれたものですが、ケルシーSSで触れた設定を論拠として入れたりとかのような微修正が入っていますが、ストーリーの内容について一切触れることがないと思います(私規準)。

【訳者の前書き】
 中国語からの翻訳のため、いくつかの注意事項を書かせていただきます:
 -原作者の注釈と訳した私の注釈を区別するために、私からの注釈は「*」マークを使用します。
 -できるだけ避けたいと思いますが、日本版のイベントストーリーが実装される前に翻訳作業をしていたため、正式版の訳と異なることがあります。
 -原作者の方の観点をなるべく忠実に再現したいと思いますが、術語の使用や表現は間違っている可能性があります。表現の違いについてご指摘いただければ修正します。
 -もし作者様に何か伝えたいことがあれば、中国語に訳してお送りしますので、お手数ですがNoteのコメント、TwitterDM、あるいは私のマシュマロに送って頂ければ幸いです。
 マシュマロ→https://marshmallow-qa.com/el_prv

【前書き】

 今までのアークナイツ世界観考察は、タイトルに「アーク」が入っている原因で西洋神話と聖書に重きを置かれた。いずれも素晴らしいものだが、配信からもうすぐ2年間経った今、神話関連の話はむしろ重きが東方の神話に置かれているのではないかと考え始めた。特に『画中人』イベントで、『夕娥、月に奔る』のストーリーが再び出され、このことは『夕娥、月に奔る』の中にテラの世界観についての重要な情報が含まれていることを示唆していると考える。そこで、アークナイツの世界観についてハイパーグリフは意図的にとんでもないわなを仕掛けたのではないかと疑い始め、つまり西洋的な要素はあくまでも目立たせた外見に過ぎず、テラ世界の神話的基盤、その源は実際に東方から来たと。
 ある日、海猫Pの史前インタビューが掘り出されて、その内容を見て私の疑念がさらに強まった:

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*訳:
漫域:最後の質問ですが、将来実現したいことについて教えていただけますでしょうか。
海猫:ザナドゥの世界観を基に作った最初のオリジナルストーリーを皆様に紹介できたらなと思って、これも今まで絵を描いてきた原動力といいますか。自分が脳内で作ったストーリーラインで(ザナドゥと無関係ですが)、神々と下界の生命体たちの戦争についてのオリジナルストーリーです。脳内とはいえ、いい物語は想像だけで作れるわけがありませんからね…少しずつ積み重ねていくのがとても大事で、私にはまだまだ道遠しです...

*ちょっと気になるので全文を探して見つかりました↓
 https://www.kan302.com/news/cn/2011/122762.shtml
 翻訳し始めたのは3か月前で、その時はまだ読めてたんですけど、今リンクが死んだようで、中国語の原文を見たい方いらっしゃったらツイッターDMください。2011年、海猫がまだ同人活動をしていた時のインタビューです。デザインの好みとかの話で色々今のアークナイツに繋がったトピックも合って、面白かったです…。

 人間が神々に反抗する物語は聖書を背景に語りやすいテーマではない。有名な古代の神話において、神々に対する反抗が一番激しいのは中華神話とギリシア神話。そこで、テラ世界の古代神話に比較的に矛盾しない、一貫性がある理論を見つけるために、このヒントと『夕娥、月に奔る』という鍵を手にし、ゲームのテキストに隠れている手がかりを整理しはじめ、やっているうちに思いがけないサプライズを発見した。これよりバベルの塔プロジェクトの全貌を10テーマに分けて分析し、最後にこのプロジェクトの概ねの流れについて私なりの推論を出す。

[注意書き]
 下記の内容はネタバレ、個人的な意見と推測などの要素が含まれており、拡大解釈、破綻したロジック、推測の内容を基にした推測といった架空理論が存在している可能性が極めて高い。また、ゲーム中のすべてのテキストを読んだわけではなく、矛盾した情報が存在する可能性もある。神話、古典、科学に関する資料についての解釈と考えは間違っていたり、偏りが存在する可能性もあるため、何かご不明な点があればどうぞ遠慮なくご指摘ください。この文章は2021年5月時点の情報を基に書いたもので、すぐに明日でも公式にやられる可能性があることを予めご了承ください。

一、重要な手がかり:2つある月

「天岳高しとも双月に及ばず。昇天し月に奔れば、汝の夫を尋ねるも可なり」

 過去のストーリーから、テラには2つの月が存在することがわかるではないだろうか。

在りし日の風を求めて・天空の物語
スズラン:「天岳高しとも双月に及ばず。昇天し月に奔れば、汝の夫を尋ねるも可なり」
R8-6
アリーナ:雪も、夜空に懸かる二つの月が軽快に舞うのも見える。

 同時に、テラには月にまつわる神話が多く存在する。例えばスズランの話から抜粋した、『夕娥、月に奔る』の物語。
 (*同時に出された物語でシャマレの物語にも月の話が出ており、極東の物語は明確に月の話をしていませんでしたが、「天女」のモチーフに一部かぐや姫の要素が取り入れられてると考えます。詳しくはゲーム中の「特殊行動記録」をご確認ください。)

*下記は単純に復習のためのストーリーの文字起こしで、せっかちな方はこの部分を飛ばしても大丈夫です。

『夕娥、月に奔る』

これは炎国の神話で、主人公は夕娥というお姉さんです。
彼女は旦那様と幸せに暮らしていました。
でもある日、旦那様がいなくなってしまったのです。
それから……夕娥は旦那様の行方を探し回りますが、彼がどこへ行ってしまったかは誰にもわかりませんでした。
どうしようもなくなった彼女は仕方なく家に帰り、彼が植えた柳の木の下で顔を覆って泣きました。
夕娥がそうして毎日泣き暮らしているのを見て、村の賢いご老人は彼女のために知恵を絞りました。
ご老人は言いました――
「夕娥よ、そなたは生まれつき千里を見通せる目を持っておる。ではなぜ、西にあるあの高い山の頂に行かんのじゃ?」
「あそこへ行けば大地を見渡し、お前の夫を見つけ出すことができるじゃろう」
夕娥はご老人の話はもっともだと思い、村人に別れを告げて大地の果てにあるその高い山を目指しました。
その最も高い山は、炎国の人々から天岳と呼ばれていました。
天岳とは、天空のように高くそびえる山という意味です。炎国にはこれより高い山はありませんでした。
夕娥は様々な苦難の末についに山の頂にたどり着き、大地を見渡しました。しかし、三日三晩、目が真っ赤になるまで見ても、旦那様は見つかりませんでした。
数年経っても夕娥は旦那様を見つけることができず、とめどなく涙を流しました。その涙は山を流れ、地上で川となりました。
勢いよく流れていく涙は山の神々を驚かせました。ある日突然現れた川を、神々はたいそう不思議に思ったのです。
そして、川の水源を見た神々はもっと驚き、長である天岳の神が夕娥のところへ向かうことになりました。
夕娥の話を聞いて気の毒に思った善良な天岳の神は、彼女にこう言いました。
「天岳高しとも双月に及ばず。昇天し月に奔れば、汝の夫を尋ねるも可なり」
意味はこうです。「この山がいくら高いといっても、空の双月には及ばない。月へ行って探せば、きっと夫を見つけられるだろう」。
夕娥は山の神の提案を受け入れつつ、助言を求めました。神々は相談した結果、夕娥にある方法を教えました。
その後のある晩、村人がいつものように過ごしていると、突然、西の高山から一筋の燃えるような軌跡が月に向かって伸びていきました。
それはどんどん明るくなり、時には月を凌ぐほどに強く光り輝きました。
最後にそれは月につながり、巨大でまばゆい光を放ちました。星も霞むほど夜空は明るくなりました。
人々は夜空の様子に恐れを抱きました。災難に見舞われると思ったのです。
しかしご老人は夕娥のことを思い出し、みんなに言いました。これは夕娥が夫を見つけた証だ。恐れるよりも祝うべきだと。
村人はご老人の話はもっともだと思い、次々と家からお酒やごちそうを持ってきて、夕娥の門出を祝いました。
それからというもの、毎年その日になると村人たちはお酒や食べ物を持ち寄って、夕娥の好きだった物を祭壇に捧げるようになりました。
その習慣はいつまでも続きました。
そうして時が経ち、その日は土地に根付いた伝統的な祭日になりました。
夕娥が去ってからも川の水は天岳から流れ続けていました。村人たちは、彼女の名にちなんでその川を夕江と名付けました。
その後、小さな村は長い年月をかけて町となり、夕江に接していたため、自然と夕都と呼ばれるようになりました。

 画中人イベントで『夕娥、月に奔る』のストーリーはもう一度嵯峨に言及された:

WR-4:
サガ:もちろん『夕娥(シーウ)、月に奔る』の美談に登場する夕娥のことだが? ああ、拙僧は今でも彼女の両の瞳を忘れられぬ――
WR-8:
サガ:拙僧は夕娥が月に昇った真相が、ずっと腑に落ちませんでした……狂人が自分の力だけで天空より愛を奪い返そうと考えた。そのように愚かな話であれば、彼女を惜しむ人など誰もおりませぬ。
講談師:ほう……ならば、夕娥の運命ですら、私があえてそう描いたからというだけのもの――つまりは「偽」のものであると言ったら?
サガ:各国の伝説、名著、典籍、神話には、「偽」のものや、質素な生活と無縁のものはいくらでもありましょう。その「偽」の一字のみを取り上げて、それらの意義を否定する必要はあるのでしょうか?

 スズランと嵯峨の話を比べてみれば、スズランのバージョンで夕娥は自分の夫の所在が分からなかったのに対して、嵯峨がいう夕娥は自分の夫が月にいることがわかっている。両者の間、はっきりとした矛盾が存在している。シーの寿命の長さを考えて、『夕娥、月に奔る』のストーリーはテラに実在した話で、伝わってきた伝説は実話と比べて細部が既に大きくズレており(特にスズランの童話バージョン)、登場人物の立場と行動目的が後で付け加えられたもの、客観的な行動に対する描写だけ信用できると推測する。

よって:
●夕娥は夫と別れた。
●夕娥は高い山を登り、その後山から水が流れてきた。
●夕娥は何かしらの手段で月に到着した。

 明らかなことに、夕娥と夫が別れたのは極めて重要なポイントだ。テラ世界で夕娥の夫が誰なのかはわからないが、Valletta学会の鸽子球様はこの前、『夕娥、月に奔る』のモチーフについて考察したことがある(bilibiliの動画ID:BV1Sa4y1573A)。彼女は「月に奔る」、「山を登って夫を探す」、「涙は山を流れ、地上で川となった」といった一連の情報を基に、『夕娥、月に奔る』の伝説は中国古代の伝説、「嫦娥、月に奔る」「楚辞:九歌・湘夫人」の要素を取り入れたのではないかと述べた。
 嫦娥の夫は羿という。古代中国の皇帝・堯の時代の弓の名手であり、天帝(神)の息子である10の太陽(火鳥)のうち、9つを射落とし、地上の平穏を取り戻した悪獣退治の英雄だ。一方で、湘夫人の夫は湘君という。湘君について、九嶷山で死んだ舜だという説*もある。鸽子球様は考察ビデオで九嶷山の9匹の悪竜が洪水を引き起こし、舜が悪竜を退治しようと九嶷山に向かったが、目的が果たせずに亡くなられた伝説について言及した。(このストーリーは古典で記載されていないが、現地では確かにこういった内容の伝説がある。九嶷瑶族村管轄内の行政村に今でも「九竜村」という村がある。)
(*湘夫人も湘君も女神であり、尭帝の娘で、娥皇と女英といい、2人とも舜の妃であり、舜が蒼梧で死ぬと2人は湘水に身を投げてそこの神になった説もあるし、湘君は男神、湘夫人は女神で、2人は夫婦だという説もある。多くの民間伝説がある上で更に解釈が多く存在するため、変化と融合はもちろん起こり得ることで、定論はない。)
 上記の情報から、「嫦娥、月に奔る」と「湘夫人」という2つの伝説を融合した『夕娥、月に奔る』の話で、重要人物「夫」の原型たる2人は、いずれも敵と戦っているとわかる。羿の敵が9つの太陽、舜の敵が9匹の竜。元の伝説で、羿も舜も、最終的に勝利を得た。9つの太陽も9匹の竜も、すべて討伐された。一方で、嵯峨の「天空より愛を奪い返そう」という言葉、また夕娥が月に奔ったという客観的な行動から、月にはまだ夕娥夫婦の敵がいることが推測できる。つまり、夕娥の夫はまだすべての敵を倒せていない。だから夕娥は彼の事業を受け継いで、月に対して攻撃を仕掛けたと考える。
 敵についての情報を整理してみると:9つの太陽、9匹の竜、未知なる月。太陽も竜も月も、空高くにいる支配者。更に推測すると、この3つは実際、同じ種類の敵を指しているではないかと考える。なら、テラ世界で夕娥の夫が直面した敵ーー月は元々9つあったはず。今テラの空に月が2つあって、1つは私たちの世界と似ている一般的な白い月、もう1つは異常な赤い月。
 神話的背景と合わせて考えると、テラ世界には、自然界の恒星である太陽と衛星である月以外、一時期、昼には太陽のように光を放ち、夜には月に劣らない光を反射する9つの巨大な天体が天空を占めていた可能性が高い。そして「天空のように高くそびえる山」ーー天岳を通じて、ヤツらと連絡を取ることができる。ある日、この9つの天体は洪水を含めた一連の災害を引き起こし、夕娥の夫は彼らと戦って、そのうちの8つを撃破したが、最後の1つに破れ、「天空」に捕らえられてしまった。夕娥は天岳を登り、ヤツらと交渉しようと思ったが、洪水はむしろ更にひどくなってしまい、「夕江」になった。追い詰められた夕娥は攻撃を仕掛けるしかなく、「天空より愛を奪い返そうと考えた」。
 では、テラ世界にはこれほど多くの「月」が存在した証拠はあるのか。記憶力に優れている方はすぐ思いつくだろう:

TW-1
スズラン:ウォルモンドは八つ目の月という意味だそうです。周囲の七つの街と共に商業集落を形成していて、リターニア北部で異彩を放つ存在だと――本にはそう書いてありました。

 「本にはそう書いてありました」、似たような書き方は『夕娥、月に奔る』にも存在する:「本によりますと*、夕娥は旦那様の行方を探し回りますが、彼がどこへ行ってしまったかは誰にもわかりませんでした」一方で、嵯峨の話の中で夕娥は明らかに自分の夫が空にいることを知っている。よって、ここのスズランの話も事実と異なる内容が含まれていると考える。
(*YOSTARの翻訳はこの部分を削除したため、冒頭の引用通り、日本版正式の訳文にはこの部分が存在しません。)
 もし事実と異なる内容は、「周囲の七つの街と共に商業集落を形成していて、リターニア北部で異彩を放つ存在だ」ということだとしたら、この文章で取り上げられたウォルモンドという名前の由来ーーリターニア北部の商業集落の八つ目の真珠*という解釈は間違っている。地球の文化から見ると、「八つ目の月」という名前がおかしい。地球では、交易路にある町を表現する際によく使われる単語は「真珠」、「綺羅星」などといった意味のもので、例えば「シルクロードの明星ーー敦煌莫高窟」など。まず、地球に生きている人間にとって月は1つしかない。加えて各宗教の神話伝説で月が往々重要な意味を持つものとされるため、一般的な都市は月と名乗らず、代わりに「真珠」と自称する。同じ理由で、月は1つしかないため、「月」の前に「何番目」を付ける使い方は存在しない。最後に、1つの商圏で8つ目とされる商業集落は規模的に制限され大きくなることはないし、有名になるのも難しいだろう。
(*中国語でよく大事なもの、重要なものを「明珠」という言葉を用いて喩える。つまり八つ目に大事な町。)
 しかし、『夕娥、月に奔る』の仮設、加えてプリースティス「衛星が重力の渦に巻き込まれようと」の話と合わせて考えると、すべては納得がいくようになった。もしいつかの時代に、テラ世界の月が2つ以上あったとしたら、ウォルモンドが「八つ目の月」と呼ばれるのもおかしくないだろう。ウォルモンドのロケーションは空の「八つ目の月」が進む軌道に対応しているから、あるいはウォルモンドのコア自体が「羿」によって落とされた「八つ目の月」そのものだからという可能性はある。より体系的な議論はまた他の章で補足説明するので、ここで一旦軽く結論付けさせてもらおう。
 空から離れて、また大地に目を向けよう。
 スズランの話で、天岳からいきなり水が流れて川となり、このことについて山の神々はとても驚いた。いきなり現れる川は必ず洪水を引き起こす。湘君(舜)の伝説で、九嶷山にある9匹の悪竜は洪水を引き起こした。羿が射落とした太陽は月になった。そして月は潮汐の原因でもある。明らかなことに、このストーリーの中で洪水も重要な手がかりだ。また、『アークナイツ』のタイトルだけから考えても洪水は無視できない要素だと思う。夕娥の夫の原型になる2人の人物:羿も舜も帝堯の配下であったことと、帝堯の時代の洪水の話を考えると、どうしても取り上げなければならない人物がいる:禹(う)*の父親である鯀(こん)。
*中国古代の歴史で、炎と黄という神々の時代に近い皇帝に続く堯、舜、禹3人とも帝とされるが、3人とも洪水と長い戦いをして、禹の時代にやっとそれを鎮めたという逸話がある。禹の治水事業は中国で誰でも知っているほど歴史の教科書最初の章に出ているレベルの話らしい。また、本来父の鯀と同一神であり、龍蛇の姿をした神だったという説もあり、治水の神としての崇拝されている。

ニ、重要な手がかり:大洪水

「契約を破った人は、永遠に空と大地から追放される」

之時,水逆行,氾濫于中国。
(*訳:堯の時に當って、水逆行して中國に泛濫す。)
          ーー『孟子』「滕文公・下」[訳引用元文末記]
鴟龜曳銜,何聽焉?順欲成功,帝何刑焉?〔注1〕
(*訳:鴟龜(*神獣)が丸太を抱え石を引きずって工事をしていたのなら、鯀に何をしてもらおうとしていたのだ?もし鯀の案に従えば治水が成功できるのなら、何故帝堯は彼に罰を与えたのだ?)
           ーー『楚辞』「天問」
婞直以亡身兮,終然殀乎羽之野
(*訳:鯀は剛直ゆえに身を亡ぼし ついに羽山の野で夭死したではないか。)
           ーー『離騒』「第八段」[黒須重彦訳・文末記]
洪水滔天。鯀窃帝之息壤以堙洪水,不待帝命。帝令祝融殺鯀于羽郊。鯀复生禹。帝乃命禹卒布土,以定九州。
(*訳:洪水が甚だ大きく、は帝の息壌を盗み、洪水を塞ごうとし、帝の命を待たなかった。帝は祝融(*火の神)に命じ羽郊で殺した。はまた腹からを生んだ。帝はに命じて土を布置して九州(*古代中国)を定めた。)
           ーー『山海経』「海内経」[訳引用元文末記]
息壤者,言土自長息無限,故可以塞洪水
(*訳:息壤というものは、土が自ら増殖し、息が無限にある故、洪水を塞ぐことができる。)
           ーー郭璞(*276‐324年,西・東晋の文学者)注釈版「海内経」

  一般的に、鯀は間違った方法を使って治水に失敗した者として思われ、この失敗は禹の登場の下地に過ぎず、鯀の治水事業は根本的な方法論から間違っていると認識されている。『夕娥、月に奔る』のモチーフには、中国戦国時代の詩人・屈原の作品ーー「湘夫人」もあることを考えて、屈原が鯀のことについてどう思っているのかは考察においてとても重要なポイントだと考える。『楚辞:天問』の中で、屈原は鯀の治水について「順欲成功」と書いた。この「順欲成功」は一体何を指しているか、古今諸家の具体的な内容についての弁別と分析は、また論文一本のボリュームだが、主な論点はの案に従えば治水は成功するかにあり、屈原が書いた『楚辞:天問』の中で、鯀の治水は成功に近い状態にあるという点は普遍的に認められている。さもなければ、「何故帝堯は彼に罰を与えたのだ」という問いかけもあり得ないだろう。また、『離騒』では、屈原は鯀が羽山で身を亡ぼした理由について「婞直」と書き、つまり強情、剛直のことで、鯀の治水の非について一言も取り上げなかった。同じ追放された者として、屈原は鯀の境遇に共感するのも当然のこと。「安くんぞ能く晧晧の白きを以つてして、世俗の塵埃を蒙らんや*」の精神上の潔癖症(褒め言葉)として、屈原は明らかに非がある人を精神上の依存対象にする可能性が極めて低いと考える。当時、中国戦国時代の楚国、民衆の目からしては、鯀のやってきたことが正しいと考えられている可能性が高い。
(*『漁父辞』。屈原が追放された後書いた作品とされており、この部分は、漁夫の「世の中の流れに従えばどうだ」というアドバイスに対して、屈原は「川に身を投げて魚に食べられてもいやだ」って言っているところより抜粋したものです。)
 これほど長く書いたが、私が言いたいのはただ1つ:屈原からしては、鯀の治水は既に成功に近い。彼の人格についても非の打ち所がない。
 では、なぜ洪水を塞ぐという鯀の方法は危険性を増やすどころか、成功に近い状態になっていたのか。この堯の時の水の災害についての記述を見てみよう。「堯の時に當って、水逆行して中國に泛濫す。」一般的に、水は高いところから低いところへしか流れず、最終的に海を目指して流れていく。なら「水の逆行」は海進という、地質時代の陸地の沈降または海水準の上昇によって、海岸線が陸地の方向に前進し、陸地の上に海が広がる現象を指していると考える。人類が海進に対抗する最も有名な例は、オランダの締め切り大堤防(*Afsluitdijk)。

中国国家地理

*「烟台」のある尖っているところが今の山東省で、右に行くと韓国

オランダy

 『山海経』の中で、「鯀は帝の息壌を盗み、洪水を塞ごうとした」という記載があり、ここの帝(帝夋)は上古の中国神話に登場する東方の天帝、神のことだ。息壌は「土が自ら増殖し、息が無限にある」土で、自己増殖できる土だ。つまり、鯀は神から無限に自己増殖できる土を盗んで洪水を塞ごうとした。
 昔の見解では、鯀の洪水を塞ごうとした行為によって堰止湖が出来上がってしまい、かえって水の流れを大きくし、これが鯀の治水で最も大きな間違いとされていた。しかし、塞ぐのが海の場合、締め切り大堤防を作って侵入してきた海を塞ぐ方法は、息壌という土がある前提で目で見えるほどの著しい効果があるはずだと考える。彼が殺された原因は、神の土を盗んだのと、海を塞ぐという方法を使うかどうかにめぐる争いにあり、プロメテウスのようにこの2つの原因によって罰を受けたのではないかと推測する。
 私個人の推測に沿って上記の内容を踏まえた鯀の治水物語をフルバージョンでまとめてみると:氷河の融解によって洪水が突発し、この洪水が主に2種類あり、海面上昇が原因の海進と、山の氷河の融解による川の水位上昇。鯀と禹親子の治水はそれぞれこの2つの側面に重んじており、鯀は息壌を使ってほぼ成功した締め切り大堤防を作り、その後神の物を盗んだ罪で追放され、死に至った。彼の息子禹は父の事業の上で、山の氷河の融解による洪水を対処し、放水路を作って排水を行う「導」と「疏」と呼ばれる方法を用いて水を海に注ぎ、洪水問題を完全に解決した。親子の任務は分業しながら協力もあって、当否の話ではない。

 アークナイツにほぼ関係ないことをこんなにも取り上げて、ならテラでは「鯀」がモチーフの人物は果たしているだろうか。
 残念ながら、確実な証拠はなく、不確かな推測しかない。下記通り、地図2枚取り上げたいと思う。1枚目はテラ地図(NGAのwenbing様が作成した平面図バージョン)、2枚目は古代パンゲア大陸の地図。

公式のTerra Exploration
https://www.bilibili.com/video/BV1Hy4y1r7k7/

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 テラ大陸がパンゲア大陸であると仮定すると、その周囲には海が広がっているはずで、今までのストーリーから見れば、海は決して優しい存在ではない。もし本当にそうだとしたら、テラを囲んでいる正体不明の黒いブロックは、海の力に対抗している何らかの障壁で、テラ全域を守っている「防潮堤」である可能性が高い。この「堤防」は、カズデル、ウルサス、炎国、ボリバル、レム・ビリトンには小さな穴があり、イベリアには大きな穴が開いている。このことは、鯀は治水が成功に近いところで追放された経歴と一致している。この「堤防」の工事は途中でストップされたもので、機能しているものの、あちこちで隙間が空いている。
 今回のR6Sコラボイベント「源石塵行動」でレンジャーの爺さんは、サルゴンの南部は「焚風熱土」だと教えてくれた。中国の方だとこの単語を見た瞬間、頭に浮かんだのはサハラ砂漠のような地形だろう。しかし、中国語で「焚風(Foehn)」というのは気象学で使われている言葉(*フェーン現象)で、空気が断熱下降運動をすると、温度が上がり、湿度が下がることで形成された乾いた熱風だ。フェーン現象は山脈の風下斜面で見られることが多く、山の地形に起因し行われている局所的な空気の移動現象で、気流が山を越え、風下斜面で暖かくて乾いた下降気流となってその付近の気温が上がる現象であり、局地風の一種でもある。ここでフェーン現象の説明画像を下記に1枚載せておく。

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 ここで、もし「焚風熱土」という名前には何かしらの意図が込められているのなら、「熱土」は風下斜面の空気が暖かくて乾いたエリアに対応しており、こういったエリアが存在していることはつまり、山のような何かしらの巨大な障壁が存在しているはずで、この障壁は「防潮堤」と同じものである可能性が高い。現実世界において海沿い地域で現れたフェーン現象の典型例として、太平洋に近いアンデス山脈が挙げられる。ここのフェーン現象は独自の名前が付けられており、「Puelche」という。

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 鯀は山のような「堤防」を作るときに使用した「息壌」、自分で増殖できる土、テラ世界の場合、何かしらのアーツに仮定しよう。では、鯀は神のところから息壌を盗んだのは、神からオリジニウムの力を盗んだようなもので、彼の行為は神罰を招いたが、既に出来上がった堤防は残されたままであった。なら、鯀は事前に息壌(源石)の存在を知った上で、これほど「危険」な素材で大陸を囲むスーパープロジェクトを作ろうとしたのは、合理的に考えて、彼と彼の部下は下記の2つの能力を備えているはずだと思う:
 ・オリジニウムを恐れない。言い換えれば源石に接触してもオリパシーになる確率が低い。
 ・物理的に身体能力が優れている。工事現場の仕事に対応できる。

 では、すべてのエーギル関係のオペレーターの資料を見てみよう:

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 上記の表でまとめた情報から、海より来られたアビサル関係のオペレーターの物理強度が高く、エーギル周りのオペレーターは比較的にオリジニウムに感染しにくい(スペクターは特殊ケース)と考える。アビサルではないエーデル関連のオペレーターのアーツ適正は、他の種族と大差はない。セイリュウのようなアーツ適正優秀の例もいる。一方で、アビサルの血に関わればアーツ適正は欠落になってしまう。アンドレアナのような後天的に混ぜられたケースでさえ、元々のアーツ適正を維持することができず、スペクターのように無理矢理にオリパシーに感染させられてもアーツ適正を獲得することができない。
 明らかなことに、アビサルのアーツ適正:欠落は、何かしらによってそうさせられ、この制限は血脈と直接な関わりがあると考える。逆推してみれば、スペクターに関わる教会、アンドレアナに関わる組織は共通の目的があるのではないかと思う:ーーアーツ適正があるアビサルを作り出す。
 話をまたテラ世界の「鯀」に戻すと、前文の推測により、彼はオリジニウムを恐れない、身体能力に優れている部下を率いて、神からオリジニウムを盗み出し、アーツに頼って海の侵食に対抗する「防潮堤」を作って、成功が近いときに神罰を受けた。同時に、エーギル関係のオペレーター現時点の出身地として、イベリア、炎国、レム・ビリトン*が挙げられ、ちょうどいずれも「防潮堤」に穴が開いているところだ。
*.アンドレアナのプロファイルによれば、彼女は家族と共にイベリアを離れ、レム・ビリトンに定住したという。
 「鯀」があの時代のエーギル人に独特な血脈を有する一族の者だと仮定し、彼らは生まれつきでオリパシーに感染されにくく、身体能力的にこういった建築のスーパープロジェクトを完成できるとしよう。「防潮堤」がもうすぐ完成されるところで、彼らは道理で未完成のところ、つまりイベリアの南部に集中しており、この時神罰が下され、「鯀」とその血族はアーツを使う権利が奪われた(メーカーニズム的にサンクタ人の法と似ているとする)。そのため、プロジェクトが停滞し、大きな穴が永遠に「防潮堤」に残された。同時に、オリジニウムを盗む出した罪の償いとして、その一族は代々自分の身体で深海の怪物に対抗し、次の海侵を防ぐ役目が与えられたのがアビサルの起源かもしれない。

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 「契約を破った者は、空と大地から永遠に追放される」。これはβテストの時、ウェイ・イェンウーの言葉で、「契約を破った人」は誰なのか、前文を踏まえて推測しやすいと思うが、空と大地から追放されるというのなら大きな確率で海の人間だろう。だが、この言葉をヒントに逆推したら違和感を覚える:なぜ海の人間を「空」から追放するか。「鯀」という背景を踏まえて考えれば、鯀は天の神から息壌を盗み出せるなら空と何かしらの関係があるのもおかしくないだろう。こうして、「空」と「大地」から追放されることも解釈がつくようになった。
 続いて、「鯀」がアビサルのご先祖様という推測は、アビサル関連のストーリーの疑問点を解釈できるかどうかを見てみよう。
 まず、スペクターとアンドレアナの背後にあるあれらの組織、アーツ適正があるアビサルを作り出すことが目的なら、このような可能性はいかがだろうか:「防潮堤」は「鯀」一族のアーツで作られたのなら、同じアーツは堤防を壊すこともできるだろう。建築一番の弱点を知っているのはデザイナーだから。もしアーツ適正があるアビザルを作り出すことに成功できたら、テラ全土を囲んでいる防壁もたやすく壊せるだろう。
 アビザルのストーリーについて、疑問点はまた3つがあり、これについても解釈できてしまう。
 1.なぜスカジは大地に血を流してはならないのか。ウェイ・イェンウーが言ってた「契約」の内容にかかわるかもしれない。大地で血を流したら懲罰のメーカーニズムが触発され、運命の枷から逃げようとするアビサルを束縛するためにあるとか、あるいはアビサルの制御されていない血液が大地に接触した瞬間に、「堤防」に予測不可能の干渉を与えるかもしれない。「騎兵と狩人」のイベントで、スカジが探してた「鍵」は、クランタ人の血でしか開くことができない。これは、これから何か危険なものはアビサルの血でしか開かれない伏せんかもしれない。
 2.イベリアの裁判所はアンドレアナが「銃」を所持している疑惑で「何度か彼女を訪ねてきたことがあるが、本物の銃でないことが発覚すると、彼らは彼女に説教をして帰っていったらしい。」ラテラーノの公証人役場でさえ無関心の問題は、なぜイベリアの裁判所はこれほど熱心なのか。周知の通り、サンクタ人はの射撃は本質的に複雑なアーツだ。先ほどの推測の延長線になるが、アーツが使えるアビサルは大型の天災と同じレベルのニュースに違いない。よって、イベリアの裁判所はこの情報を知っており、アビサルの血脈を追跡する能力があり、彼らはアンドレアナの一件に関わる組織の仲間ではないはずだ。
  3.「この地の外で」のイベントストーリーで、イベリアの主教は子供のホセとアントニオに出会い、アントニオはミリッサおばさんのお金を盗んで、ホセがそれに気づいて大きな声でその事実を摘発した。このシーンはイベリアの主教に見られ、びっくりすることに、この主教はお金を盗んだ子供を責めることなく、アントニオがお金を盗んだのはホセが引き続き勉強できるため、つまり善意を以て間違いを犯したと知ってから、2人を慰めて、「よく信仰を維持してくれてよくやった」と。
 ホセとアントニオは立ち絵がないのは、何かしらの象徴だからではないかと考える。アントニオはミリッサおばさんのお金を盗んだ。つまり自分より上の人が気づかないうちにもらってはいけないものをもらった。彼はホセが引き続き勉強できるためにお金を盗んだのだ。ここで、アントニオは鯀を象徴していて、ホセは鯀に助けられたにも関わらず、鯀と距離を置いた陸の種族。叔母さんとお金はそれぞれ天の神とオリジニウムを喩えているのではないかと考える。
 主教の態度は意味深いと思っていて、子供たちの行いをすべて許して、少しでも正そうとはせず、目的が善であるならば罪を犯しても構わない態度さえ読み取れる。主教の態度は、共犯者への感情移入ではないかと思う。彼、あるいは彼が属する教会は、アントニオと同じ間違いを犯した。つまり、何かを盗んで自分が正しいと思っていることを実行した。この何かは、アビサルの血であり、スペクターはこの間違いの犠牲者だと思う。教会は善の心で「堤防」の穴が塞げたらイベリアの災難を防ぐことができると思っていて、それを実行したが、同時に、アーツが解放されたアビサルは具体的に何をどうするのか、誘惑に直面する自分たちはどうするのかはコントロールできるものではないだろう。
 少し現実世界の「ダジャレ」を言ってみたいが、なぜ深海あたりのストーリーは「クトゥルフみ」があるのか、ある程度解釈がつくかもしれない(笑):

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 要約すると、この仮説の前提でエーギルはどのような種族なのか。
・海の種族にも関わらず、陸に協力して深海の支配者に対抗する。
・強いアーツの血を有するが、封印され力ずくで戦わなければならない。
・神の力を以て天災に対抗しようとしてたが、神の力自体が天災となった。
・大陸全土を囲む防壁を作ることで末永く楽に生きたがっていたが、永遠に修復できない穴を代々守らなければならなくなっている。
・リーダーは神罰によって追放され死に至り、後の人は神の法に逆らうことを忌避している。
・深海を対抗する戦士だが、自身はまた深海が陸に侵入する鍵となる。

 疑わなくも、エーギルは神と運命に苦しめられている種族で、ではケルシーは神と運命に対してどのような態度でいるのか。

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ケルシー:運命が私たちを操っているとでもいうのか? 私たちの創造主は、私たちが演じている滑稽な劇を悠々と鑑賞しているのか?

 まとめて、ケルシーの例のセリフを強引に解釈できなくもないかもしれない。

「お前もお前の同胞たちも浅はかなものだ。」

三、重要な手がかり:バベル

空へ逃げる?...

 バベルの塔。旧約聖書で人類は手を携えてともに天へと続く塔を建てようとした。バベルの塔は天と地をつなぐものだ。テラ世界の場合、バベルの塔は一体何を意味するのか、かつて存在したものなのか、それとも単なる意味わからん言葉を並べる人たちの組織コードだけなのか。
 手がかりはまた鯀にある。鯀がエーギル人の神話的モチーフだという仮説を立てたら、魚部以外、他にもエーギルと関わりそうな情報があるはずだ:

 鯀自沈于羽淵,化為玄魚。
  ーー『拾遺記』「夏禹」(*東晋(317年 - 420年)時期の志怪小説。)
*訳:鯀は羽淵(うえん)に沈んで、玄魚(げんぎょ)となった。

 禹之父曰鯀,鯀之父曰帝顓頊,顓頊之父曰昌意,昌意之父曰黄帝。
  ーー『史記』「夏本紀」
*訳:禹の父は鯀と言い、鯀の父は顓頊(せんぎょく)であり、顓頊の父は昌意であり、昌意の父は黄帝である。

 有魚偏枯,名曰魚婦。顓頊死即复蘇。風道北来,天及大水泉,蛇乃化为魚,是為魚婦。顓頊死即复蘇。
  ーー『山海経』「海経・大荒西経」
*訳:体の半分が干からびている魚がおり、名を魚婦と言い、顓頊が死後に目覚めて変化したものであった。風は北方より吹き、天からは泉のような大水が湧きだし、蛇は魚に変わってしまった。これがいわゆる魚婦である。顓頊が死後に即ち復活した。[訳引用元文末記]

 后稷壟在建木西,其人死即复蘇,其半為魚。
  ーー『淮南子』「墜形訓」
*訳:后稷(こうしょく)の墓は建木の西に在り。死後に即ち復活し、半分は魚となった。

 氐人国在建木西,其為人,人面而魚身,无足。
  ーー『山海経』「海内南経」
*訳:氐人の国は建木の西に在り。其は人間なり。人面に下半身が魚で足が無い。

 家族の系譜に、顓頊は鯀の父とされ、后稷は嫦娥(*第一章で言及した夕娥のモチーフの1つ)の兄弟で、彼らの共通の祖先は黄帝*だ。上記の文字から、鯀は羽淵に沈んで、玄魚となったという情報を得た。鯀の父・顓頊は死後また復活し、魚婦という人魚に似ている生物に変化した。嫦娥の兄弟・后稷は建木の西に死んでまた復活し、体の半分は魚となった。この三人とも一度死んでから、何かしらのメーカーニズムを経て魚の形となって復活した。エーギルのモチーフに魚に関わる生物で、彼らは何かしらのプロセスを経て、「原始状態」に戻った。このプロセスは、メフィストが石棺に入って「歌うもの」になったプロセスに似ていないか?
(*黄帝:中華民族は「炎黄子孫」と自称し、「炎黄」はそれぞれ炎帝と黄帝で、古代中国の伝承に登場する三皇五帝です。)
 上記を踏まえて、テラ世界の鯀が属す文明は石棺を作った先進文明より遅れて誕生したと推測する。后稷の復活は建木の西という場所について言及した。この場所は、氐人の国の所在地でもあり、氐人について「其は人間なり。人面に下半身が魚で足が無い」ため、エーギル人の古代国家である可能性はある。
 では、ここの建木は何だろうか。

 有木,青叶紫茎,玄華黄実,名曰建木,百仞无枝,有九欘,下有九枸,其実如麻,其叶如芒。大皞爰過,黄帝所為。
  ーー『山海経』「海内経」
*訳:木あり、葉は青く茎は紫、花は玄(あかぐろ)く実は黄、名を建木と曰う。百仞(じん)に枝なく、上に九の欘(ちょく)有り、下に九の枸(く)有り、其実は麻の子(み)の如く、其の葉は芒(はり)の如く*、大皞は其に頼って天を上り、其は黄帝によって植えられた。
[*マーク以前の訳引用元文末記]

 建木在都广,众帝所自上下,日中无景,呼而无响,盖天地之中也。
  ーー「淮南子』「地形訓」
*訳:建木は都広 (とこう)に在り。諸帝が其に頼って上下する。日中影がなく、叫んでも声が聞こえず、天地を覆う存在なり。

 この記述から、建木の高さは百仞(*1仞=129.36~161.7cmらしい)以上あるにもかかわらず、枝がないという情報が得られる。木の頂上にくねくねと曲がった欘(枝の分かれ目)は9本あり、下にわだかまった根も9本ある。大皞(少昊、*黄帝の息子)は建木を使って天に上り、黄帝が建木を植えたという。建木は都広 山にあり、天地の中央に位置し、神々・諸帝が天と地を行き来する通路とされる。
 「九」は古代中国語で特殊な使い方があり、幅広い範囲の不確かな数字で置き換えることが可能だが、これを一旦置いといて、「九の欘」と「九の枸」は、前文に触れた「九の月」に一致していると思う。ウォルンモンドのPVで、ヘルマン・ヘッセの死の直前に書かれた詩、「折れた枝の軋み」*を引用した。もしここの「折れた枝」は月としてのウォルンモンドを指しているのなら、天と地をつなぐ建木は一体何なのだろうか。
(*ウォルンモンドPVの「長き生と長き死に疲れ果てて♪執念深くその歌を歌う♪」の中国語原文は「折れた枝の軋み」の中国語訳から直接引用したものだと思われています。)

 建木は天と地をつなぐ架け橋で、「天と地をつなぐ」意味だけを取れば、古今東西の神話で似たような位置づけのものはたくさんある:
・バベルの塔、人類が一団になり建設しようとした天国へ至る高塔。
・不周山(ふしゅうざん)。中国神話で人間界から天に行ける唯一の道。
・ギリシア神話の天空神ウーラノスの切り落とされた男性器。天と地をつないだ(意味深)。

 バベルの塔はゲーム中の組織として存在しており、この話は一旦置いておこう。

 不周山について:

 西北海之外,大荒之隅,有山而不合,名曰不周。
  ーー『山海経』「大荒西経」
*訳:北西の海の外で、大荒*の隅にあるくっつかない山、其の名は不周と曰う。
(*大荒:歴史の彼方にある遠い時空のこと。)

 昔者,共工与顓頊争為帝,怒而触不周之山,天柱折,地維絶。天傾西北,故日月星辰移焉;地不満東南,故水潦塵埃帰焉。
  ーー『淮南子』「天文訓」
*訳:昔、共工が顓頊と帝の地位を争い、怒りにまかせて暴れ周り、不周山に当たって天柱が折れ、地維*が絶えた。天が西北に傾いてしまい、日・月・星の位置も変わった。大地の東南方角が欠けた故、河川と沈泥がすべてその方向へ流れていった。

 神話では、共工が顓頊と帝の地位を争って戦っている時に怒りにまかせて暴れ周って、天柱が折れてしまい、地維(*大地をつなぎ留める紐)も切れた。その結果、天が西北方角へ傾き、日・月・星の位置も西北へ移動した。また、大地の東南方角が沈下したため、河川と沈泥はすべて東南へ流れていった。
 前文の洪水編で、「大地の東南方角沈下」について既に具体的な推測があり、鯀がみんなを率いて海侵に対抗していたときに、中国の東南部が水没地区となっていた。鯀がそのために防波堤を作った。なら、「天の西北方角傾斜」はゲームで手がかりがあっただろうか。
 天文知識の話となればアステシアのコーデだね。天文学の造詣がないので、Valletta学会のGalladeC様、塩魚料理長様のコラボ作品の結論を直接引用させていただきたい。

 赤道と黄道が投影した円心と北極星の位置比較を通じて、テラの北極星は地球のと比べて上部へ偏っているとわかる。

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 北半球にいる場合、北極星は「北」へ移動したというのは地軸が南へ傾いだ結果で、つまりアステシアのコーデから見れば「天の西北方角傾斜」は既に発生した現象だとわかる。一方で、地軸が南へ傾いだら極圏の最高温度が上昇し、氷河が解けて海面が上がってきて、最終的に「大地の東南方角沈下」の海侵になる。こうして、鯀が直面した海侵は、古い文献からの推測と解釈以外、アステシアコーデで見られる異常の天文現象からも論証できる。この2つの手がかりがお互い一致しており、ハイパーグリフはこの設定を使っている説が濃厚になってきたのではないかと思う。

 続いて、大人向けのギリシア神話を見てみよう。
 ヘーシオドス『神統記』:

 彼はそのように述べた。「面積が広い」地母神ガイアは内心狂気し、彼を秘部に入れて隠させ、その後、彼にギザギザの鎌を渡し、計画の全貌を教えた。果てしない天空神ウーラノスがきた。夜の帳と愛への渇望を携えながら。早速、彼は両腕を広げて地母神ガイアをすっぽりと被さった。その時、隠れているところから、一人の子供が左を出して、その右手には大きな鎌がしっかり握られていて、ギザギザしながらも切れ味が抜群で、一振りで自分の父の生殖器を切り落とし、後ろへと投げた。彼が捨てたのは使いどころがないモノではなく、跳ね上がった血はすべて地母神ガイアに受け入れられ、時の移ろいと共に、ガイアは勇猛なるエリーニュス(*復讐の女神)たち、光り輝く鎧を着込み、槍を持った高いギガース(*巨人)たち、果てしない大地でメリアスと呼ばれるニュムペー(*トネリコの木の精霊)たちを産み出した。鋭い鎌に切り落とされた陽物は陸から荒れ狂う海に投げられ、長く漂流していた後、陽物から周囲に噴き出した白い泡から、一人の少女が誕生した。彼女はまずキュテラ神殿に向かい、そこを経由して海に囲まれているキュプロス島に到着した。麗しく美しい女神はまたそこから出発し、彼女の細い足の元に、青々とした植物が芽生えた。

 では、この神話についてゲームの既存資料で何かないのか。天空神ウーラノスは自分の母、地母神ガイア(つまりテラ)と強引に結合したときに、天と地を貫く例の「高塔」は疑わなくも「天と地をつなぐ」意味があると考えられる。天空神の興が乗ってきたときに、クソガキは鎌で親父を去勢させた。大地は天神が流れた創造の力を宿る血で勇猛なる復讐の女神たちと巨人族を作った。同時に、投げ出された「高塔」は海で白い泡を噴き出し、この泡から愛と美の女神ーーアフロディーテ(=ヴィーナス)が生まれた。
 美神が誕生したこの場面を描いた世界の名画がある:

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 ゲームの中で、この絵に対応するイラストがある:

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 ちなみに、テンニンカの周りに飛んでいるのがモルフォ蝶の「アフロディーテ」(*Morpho cypris aphrodite)。テンニンカがフトモモ科の植物で、フトモモ科古くはテンニンカ科と呼ばれ、愛の女神アフロディーテの神木とされていたという。故に、テンニンカのモチーフは100%愛の女神アフロディテに違いない。
 ドゥリン族は一体どこから来たのか、昔からずっと疑問に思っていた。種族の分類から見れば、ドゥリン族は謎深いエーギルよりも奇妙に思う。天使、悪魔、ケモミミだらけのアークナイツ世界ではやっぱいドワーフがしっくりこない。で、比較的にプロファイルが充実しているテンニンカはまたドワーフと全く無関係のヴィーナスがモチーフだとは…。
 色々整理して、下記のように推測する。ドゥリン族の祖先は最初のバベルの塔のメンテナンスを担う種族で、テラ及び「天空」種族に属す種族の破壊行動で第一バベルの塔が倒壊した。元々高塔の中で生活していたドゥリン族の祖先たちは、地下のような塔の中の気候と似ているような環境に馴染んでいるため、一族の人を率いて海の中に捨てられたバベルの廃墟から逃げ出し、地下世界を生きるドワーフ民族になった。テンニンカの金のリンゴ(*ギリシア神話の「不和の林檎」)、旗、この2点は明らかに先端技術の産物で、祖先の高い技術力を語っていると思う。
 他に、コンビクションのプロファイルテキストは確かに誇張の要素があるが、ドゥリン族の極めて高い技術力を示唆したのではないだろうか。ーードゥリン族はエンジニア種族だと考える。

 「天と地の架け橋」系の神話と「夕娥、月へ奔る」で天岳についての描写を参考しながら、テラの歴史では少なくとも2種類の「バベルの塔」が存在していたと推測する。一種類はテンニンカの祖先が生活していた、例の壊された塔(タイプⅠ)。こういったタイプの塔は多くの物資を天と地の間で輸送していた。この行為はもちろん「この大地」のテラ母神の怒りを買った。もう一種類の塔は天岳のような、情報交換以外機能しない塔(タイプⅡ)。夕娥は天岳を登って月と交渉し、断られた結果月に攻撃を仕掛けた。
 後者は未だにテラに存在している可能性が高い。イェラグの雪山はまさにこのタイプの塔ではないかと考える。
 では、ロドスの前身として、バベルの目的は一体何なのか。
 前文に述べたように、アビサルの祖先は、月の上にいる「天神」と関わりがある。なぜ「天神」は水に馴染んでいる種族を天にいさせたのか?なぜアビサルは星にこんなにも興味深々なのか?
 まず、「天神」はテラの原住種族なのか、星の外より来る者なのかを明確にしなければならない。科学技術からいうと、一般的に外からの者のほうは戦力が原住種族を遥かに超えている。なぜかというと彼らがそこにこれたこということ自体が科学による奇跡なのだから。なら、自分の創造物によって一気に9つある宇宙機の8艦が壊された種族は、外から来た者の可能性が低い。なぜならば双方の技術力は世代的に大きく離れていないからだ。故に、「月」にいる「天神」たちは原住種族と仮定しよう。
 この前、顓頊、鯀、后稷三名は「建木」の傍で石棺を使って、原始的な形態に戻った疑いがあることに触れた。「建木」、いわゆるバベルの塔は月と緊密な関係性がある。合理的に推測して、月にも石棺があるはずだ。こういった自身の体を修復する装置は、ある種の旅行に適している:何光年の長旅を経て、千年以上に眠っている間に宇宙空間の素粒子や放射線に痛め付けられた休眠状態の身体をその中に入れて、果てしない長い時間がもたらした損害を修復する。こう考えれば、月にいる「天神」はDNA上「ドクター」と同じである可能性が高くなってくる。ドクターの血脈のみ石棺を使って自身を回復することができ、他の種族はそれを以て旅行しようともできない。(言っておきたいが、「ドクター」の種族=「ドクター」というわけではない。彼らの立場と行動は矛盾している可能性がある。)
 故に、9の「月」を作った妙なやり方について、個人的にまだ根拠が薄い推測がある。これは「ドクター」種族初めての宇宙を跨るの偉大な旅行であるため、すべての卵をひとつのかごに盛るわけにはいかない。リスク分散の視点から十分なリスク許容度とバックアップを確保する必要がある。「ドクター」種族は、何かしらやむを得ない原因で宇宙ステーションを9つ作って、全種族がその中に引っ越し、「バベルの塔」のような物流センターを通じて、テラからできる限りの資源を持ち出そうとしていた。この行為はテラの怒りを買って、テラは「ドクター」種族の創造物を煽って高塔を壊した。その後、夕娥の夫がまた何かしらの原因で、9つある宇宙ステーションの中の8つを破壊した。
 なぜ「ドクター」は引っ越さなければならないのか?プリースティスのセリフを見てみよう:

……Dr.{@nickname}……
 ……まさか、今度は私が手を放したくないだなんて。
でも、こうしなくちゃいけないの……じゃないと、あなたは死んでしまう。
……あぁ、{@nickname}……そしたら、二度と会えなくなるかもしれないわ。
 無理よ、そんなの。受け入れられないわ。私は絶対に諦めない。
 Dr.{@nickname}。私たちの絆は、時空さえ超えられるって信じてる。
海が煮えたぎり、大気が消えようと、衛星が重力の渦に巻き込まれようと、膨れゆく太陽がその子供たちを呑み込み、全てが静寂に帰そうと……
私たちは再会できるわ。暗闇の中、星の光で彩られた文明の果てで私たちは再会する……きっと。
その日を待つわ。何があってもその日を待ち続ける。だからあなたも待っていて。私のことも、待っていてね。
……Dr.{@nickname}。私のこと、忘れちゃだめよ。

 石棺の技術力から見れば、「ドクター」種族はカルダシェフ・スケールタイプI文明の水準に達していると考える。つまりその惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用および制御できる。では、このレベルの文明を全員移動させるほどの災難は、恒星レベルの災難である可能性が高い。プリースティスが言っているように、「膨れゆく太陽がその子供たちを呑み込み、全てが静寂に帰そうと」。
 『三体』を書いた劉慈欣氏の短編SF小説『流転の地球』のシナリオに当てはめて解釈すると、「ドクター」種族は事前に太陽の異変を知り、引越し用の恒星船を作り始めて、遥かにある約束の地へ向かい、文明を繋いでいこうとしていた。宇宙飛行を行うにはとんでもない加速度が必要で、更に「第四宇宙速度(*太陽系の位置における銀河系脱出速度)」で航行する場合、「ドクター」種族は液体に包まれる「深海状態」に入らなければならない。この状態の「ドクター」種族は一切活動できないため、「深海状態」でも自由に行動できる手伝いさんが必要だ。彼らは既存のエーギル人の中で身体能力が一番高い部族を選んで、星の知識を教えてあげた。この一族のエーギルはすごい力と生命力があり、星図に対する直感力はDNAに刻まれ、星間飛行に最適な助手となった。ーーアビサルの血と星、空のつながりの根源がここにあるかもしれない。
 その後、「真の神の悪意」あるいは「オリジニウムの制御不能」といった予想外の要素の干渉によって、この計画は完全に頓挫した。「鯀」は一族の人を率いて休眠状態の主を離れて、オリジニウムの力を盗み出し、タイプⅠの塔が破壊される前に最後のチャンスを握って大地に戻り、「防波堤」プロジェクトを始めた。
 しかし、「天神」と「ドクター」種族の一部は、彼らの裏切りから生き残った。死から逃れた個体は裏切りを許すはずがない。彼らはラテラーノの法に似たメーカーニズムを使って、自ら作り出した種族に罰を与えた。
 スズランの物語は『竹取物語』から取った内容もあり、その内容も踏まえて考えると、その後、誰かが月から戻って、「永遠に融けない氷」と「決して消えない炎」を探すようにと命じた。この2つは実際、「ネゲントロピー*源」と「エネルギー」を指しているかもしれない。なぜ探さなければならないかというと、宇宙ステーションは「鯀」の裏切りで一部破壊され、この2つは修復するに必要不可欠なものかつ、「ドクター」の種族が宇宙ステーションで作り出すことができないからだと考える。しかし、これらのものに潜んでいる力はあまりにも大きすぎて、二次文明はその力をめぐって再び激しい内戦を始めたため、彼らは打つ手がなく、月に戻った。
(*ネゲントロピー (negentropy) :生命などの系が、エントロピーの増大の法則に逆らうように、エントロピーの低い状態が保たれていることを指す用語である。)
 具体的に何が起きているのか、中の是非曲直を判断する術がないが、今の「ドクター」とバベルという組織の目的はたぶん1つしかないのではないかと思う。全テラの文明を統合し、タイプⅠの物流塔を作って最後の月に戻り、何かしらの方法を以て文明を繋いでいく。

(4月16日の追記:新しいストーリーと新しく思いついた結論から読み返したら、上記の推測は事実と合わない可能性が高いが、最後の結論には特に影響がない。)

四、情報を繋いでくれた架け橋:ウォルンモンド仮説

ウォルンモンド仮説を具体的に…

 夜中にコメントをいただいて、ウォルンモンドの「八つ目の月」について、9という数字に関する古典だけで空に9つの巨大な天体があると結論付けするのは強引ではないかということで、この指摘のおかげで、実際ゲームのシナリオで何か手がかりはないかを探し始めた。確かにご指摘の通り、論証にしては厳密さが足りなかった。イベントシナリオを読み返したら、次のような記述を見つけた。

TW‐ST‐02
人々の喧騒を尻目に、前憲兵長のセベリン・ホーソーンは眠りについていた。
彼は夢を見ていた。月が輝く平原*で、女性たちが星を見上げ、男性たちが塔を再建している夢だ。
平原に、巨人が立ち上がった。それは息子の顔をしていた。巨人は災厄の雲を晴らすと、神の力で割れた大地を元に戻した。
そして巨人は故郷を持ち上げ、大股で雪の溶けた土地に向かった。
風が歌い、大地が号令を発すると、地表に飛び出していた全ての源石が、地中深くに沈んでいった。そして、鉱石病が猛威を振るうことはなくなった。
巨人は冬霊であり、雪と水であり、一族の根源だった。文明が野蛮にとって代わってなお、巨人は逞しく立ち続けていた。

この部分について、中国語の原文は「月は輝く平原で進んでおり」、ヨースターの訳文はなぜか動詞を省略したので、考察で使う情報として特記させていただきます。)

 セベリン・ホーソーンの夢の中で、月が輝く平原で進んでいる、つまり月は大地で進んでいて、空で運行しているのではない。ここは、直接月を用いてウォルンモンドのことを言っており、女性たちが星を見上げることは月が墜ちてから住民たちは星空の向こうの目的地を忘れていないと解釈してもいいと思い、前文に触れた宇宙逃亡説に一致している。最後、男性たちが塔を建て直している。「再建」だったら現状として一度倒壊したはずだ。ならこの塔は、バベルの塔を喩えている可能性が高い。巨人は冬霊、つまり雪と水、一族の発祥の地。月、塔に関わる物語に、「一族の根源」としての川を加えて、夕江のことを思い出す。「巨人」の特徴がある冬霊も、ギリシア神話の中で天空神が去勢された後に、その血はガイア(テラ)に利用されて「巨人」を作った話を思い起こさせる。(なら、シナリオで唯一言及されていない復讐の女神もいずれ登場すると推測するのが妥当だろう。音楽のアーツと復讐の女神という2つのキーワードを考えると、クトゥルフ神話のグロース(Ghroth,外なる神。審判の星ネメシスの一種。赤い彗星の姿で現れるデス・スターとも呼ばれる存在)を連想せざるを得ない。)

 また、ローグライクモードのおたから「巫王の螺旋角」には下記のような記述がある。

 偉大なる巫王よ!そなたの影が大地を覆い、そなたの腐蝕が塔を沈める。
そなたは死に、術は散逸する。リターニアはもはやそなたを恐れることはない!

 思わぬ遭遇の「語り部」も巫王の物語に触れた。

「雄大なる塔の下で、双子の姫が邪悪な巫王を倒して民を救い……」

 冬霊と何かしらの関係がある巫王は、「塔」の下で双子の姫に倒された。合理的に推測して、巫王が倒された後に、バベルの塔の象徴たる例の塔も壊された。(必ずしも最初の塔だとは限らない。再建した後のモノかもしれない。)だからセベリン・ホーソーンの夢の中で、「塔」が再建されている。今度は「怒りに任せて不周山を破壊した」に一致する出来事を見つけた。夢の中の「巨人は冬霊であり、雪と水であり、一族の根源だった」という記述と合わせて考えると、「怒りに任せて不周山を破壊した」後に、大洪水をもたらした元凶に対応した種族は冬霊で、彼らは「天神」の血を原料に母なる大地に育まれた種族だと考える。

 前文に述べた通り、「建木」はバベルの塔の多くある別称の1つとして、「天と地の真ん中」に位置する。巫王のことから、リターニアにもバベルに似たような存在があったことがわかる。また、リターニアは既に公開されたテラ地図でのポジションは、テラのド真ん中の近くに位置する。
 上記の要素をまとめると、セベリンの夢と巫王の伝説は、掘り下げて読み解いた「夕娥、月へ奔る」の内容、そして関連の神話とかなり一致しており、個人的に、これはもはや偶然の域を超えていると思う故、ウォルンモンドこそが墜落した8つ目の月ではないかといえるほどの自信を持っている。
 なら、残りの7つはどこにあるのか?
 ここでウォルンモンド仮説を立てる。つまり、ウォルンモンド以外、テラ大陸では他に7つの移動都市(あるいは他の遺跡)があり、多方面の情報からこういった都市の正体がわかると考える。①都市の名前に、月の意味が込められている。②都市には「石棺」のような宇宙旅行用の骨董品が残されている。③ハイパーグリフがくれた他の手がかり。
 この考え方に沿って、すぐにウォルンモンド仮説の手がかりⅠを見つけた。即ち、チェルノボーグも月だったと。
 論拠として、次の4点がある:
 ①チェルノボーグには「石棺」がある。
 ②チェルノボーグという名称は、スラヴ神話において夜と闇を司る神の名前で、白や光を司る善神ベロボーグと対をなすもので、ならチェルノボーグには月の意味があると言っても違和感がない。
 ③チェルノボーグにあるへラグの感染者闇診療所の名前はアザゼル。アザゼルは堕天使で、天国から落ちたと理解してもいいだろう。へラグの武器の名前は『降斬』。スキルはすべて月相で命名されており、指名契約の文章に「武器を振るうことは下策だ」という言葉があり、なら戦闘中、へラグが武器を振るうことが「月が下がる」意味の可能性があると考え、これはハイパーグリフにからのヒントだと思う。
 ④八章PVの53秒のところだが、とある巨大な球状物が「石棺」を丸ごと包んでいるように見える。
(公式PV:https://www.bilibili.com/video/BV1W54y1C7jy/)

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 次に月の疑いがある存在は炎国にある。即ち、画中人のシナリオで言及された「空中に浮いている巨大な岩」だと考える。

サガ:空中に浮いている巨大な岩*も見たな。たしか、とある先帝が皇位についた時、突然地面から丸い岩が出現し、宙に浮いたそうだ。
サガ:初めこそ縁起物として扱われたが、「重荷を背負わされている」という見方もあって、一部の人々は不吉なものとして捉えていたな。
*大陸版原文は「北にある」ことも明確に言及されたが、ヨースター訳にこの情報が抜けた。

 サガによれば、「丸い」巨大な石が地面から浮き上がり、「重荷を背負わされている」という見方もある。この巨石は、チェルノボーグの石棺の外部にある球状構造に似ている可能性が高いと考える。巨石は墜落した月だが、何かしらの力によってまた浮き上がってきた。しかし、また何かしら他の力によって重力に束縛され、空へ戻ることが叶わなかった。そうして、この月は宙に浮いたままになっていた。ウユウによれば、北悬巨石は既に天災によって破壊された。今後、炎国の遺跡を探索するようなストーリーがあれば、この月はまた出てくるかもしれない。

 チェルノボーグ、空中に浮いている巨大な岩に続いて3つ目に月の疑いがあるのは「遺塵漫歩」イベントの舞台ーー「沁礁」。ケルシーによれば、沁礁は「岩礁が周りを囲んでいる場所」を意味する。岩礁(リーフ)がエリア全体をカバーするような地形だったらこの岩礁(リーフ)はサンゴ礁を指している可能性が高く、砂漠の中の沁礁の地はかつて海洋だったと推測する。サンゴ礁が「周りを囲んでいる」なら、何かしらの球状構造がリーフの成長を阻害してこうなっただろう。この推測に沿って考えると、沁礁の「月」は最初浜辺に墜落し、鯀が海侵を排除した後に、ここが砂漠になり、水がない「岩礁が周りを囲んでいる場所」だけ残された。
 他の都市にも疑いがあるが、ストーリーはまだ具体的に触れていないため、分析はまたいつかにしよう。
 また、ウォルンモンド仮説から逆推してみたら、どれか1つの特徴がある移動都市は、他の特徴もある可能性が高くなっている。つまり、ウォルンモンドにも「空」に関わる肝心な遺物が存在するのではないかという可能性が考えられる。
 このように考えることで、ウォルンモンドの裏に隠れている大きな秘密を解き明かすことができる。

五、悪土の血脈とサルカズの誕生

悪土の血脈の大きな秘密…

 ウォルンモンドの薄暮で、マドロックはレユニオンの一員として、サルカズとして唐突にリターニアで現れた。しかも彼女のアーツは極めて特別なもので、何の理由もなくここに配置されたとは考えにくい。
 マドロックのS3の名前は「穢壌的血脈(*日本版公式訳:悪土の血脈)」。辞書によれば、「穢壌」という言葉の意味は「穢れた土」、ならマドロックの血脈は、「穢れた土の血脈」という意味だろうか?他のサルカズがマドロックを尊敬していることから考えると、マドロックの血脈は少なくとも高貴なもので、「穢壌」と呼ばれるには明らかに他の原因がある。
 前文で、アビサルの血脈について以下のような仮説を立てた。アビサル血脈上の祖先鯀は天から「息壌」を盗み出し、「息壌」に関わるアーツを使ってテラ大陸を囲む「防波堤」を作った。では、アビサルの血脈の元の名前を「息壌の血脈」と呼ぶことにしよう。
 前文に述べた通り、スペクターとアンドレアナの存在は、未知なる勢力によるアビサルの血脈に対して行われた実験を語っており、2人はそれぞれ、アビサルにアーツ適正を獲得させようとする実験で得られた2種類の結果を代表する:スペクターはオリパシーになったが、アーツ適正は欠落のままの例。一方で、アンドレアナはアビサルの血を入れてから、元のアーツ適正が欠落になった例。さて、アーツ適正を取り戻すことに成功した例はないのか。
 成功した例はあると思う。彼らはアビサルの「息壌の血脈」を改造し、何らかの禁断の方法で血脈を抑制した力を「剥ぎ取り・引裂く」ことで、能力が大幅に低下した血脈の所有者を作った。そのため、彼らは「穢れた息壌の血脈」と呼ばれ、いわゆる「穢壌の血脈」になったと推測する。
 つまり、マドロックの種族は依然にしてサルカズだが、彼女の古い時代の、とある時期の祖先はアビサルの血脈の所有者だと思う。
 この推測には何か根拠がないだろうか。
 下記のような力強い根拠を集めてみた:

 1.アビサルとマドロックは外見上よく似ている。

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 アークナイツには白髪のオペレーターがたくさんいる。だが、これほど王道的な白髪と赤い瞳の組み合わはこの4人しかいない。(ワルファリンの目の形が違う。フロストリーフとアンセルの髪はピンク色。)ウィーディはエーギル人、スペクターとスカジはアビサル、マドロックはサルカズ。ウィーディとアビサルの外見の類似性を説明するのは難しいことではない。例えばウィーディの祖先がアビサルの祖先の「体が弱い」親戚だとか。マドロックの外見について、予告が出た時に角が生えたスカジに似ているというツッコミがあった。上記の推測に従うと、マドロックの血脈はアビサルの血脈を改造して生まれたもので、この瓜二つのような類似性は、コアの設定に沿ってデザインした結果だと考えられる。

 外見はあるまでも間接的な証拠で、直接の証拠はないだろうか。

 2.二種類の巨像

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 ゲームで登場した巨像は大きく2種類がある。1種類はマドロックによって作られた巨像(ウォルンモンドのイベントステージ、鉛封行動の通常作戦)、もう1種類は「高塔」に関わっている(ローグライクのボスとマルチモードのステージ「古びた廃城高塔」)。仮説の中で、アビサルの先祖「鯀」は「ドクター」種族から「息壌」の力を盗んだ。ゲーム内のヒントから見れば、「高塔」は明らかに天空と繋がりがある。故に、マドロックとアビサルのアーツの源が同じだと推測できる。

 3.鉛封行動の功績勲章と旗

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 明らかなことに、マドロックと「廃墟と化した独立都市」の最高機密と深くかかわっている。
 一方で、Logosの話によれば、マドロックのアーツ(*巨像)はリターニア数十年前に死んだ「巫王」のと似ている。(Logosの「巫王が残された害毒*」という言葉は2つの意味があるかもしれない。表はマドロック一行を追いかける巫王の信者を指しているが、実際は同時に高塔に関わるマドロックの巨像のことも指していると考える。巫王の信者がマドロックを追いかけていることは後程言及するつもりのカズデル内戦にもつながっている。)マドロックのアーツはアビサルのアーツと源が同じで、また、偶然とは言えないほどの外見の類似性から、例の「巫王」こそがアーツ適正を取り戻したアビサルだと考える。そして、双子の姫が巫王を倒した高塔が、「穢壌の血脈」の力で作ったものである可能性がある。しかし、呪いを「剝ぎ取る」際に血脈の力が削られ、巫王のバベルを再建する目標が最終的に失敗した。この「剝ぎ取る」行為は他の種族からしてはサルカズ化ということで、アーミヤがキメラとして存在する意義は、「サルカズ化」がもたらした上記の問題を回避したところにあると考える。
(*日本版公式訳は「巫王の悪毒」だが、ここで中国語原文と微妙にズレているため不採用。)

 この推測に従って、息壌は古代において、防波堤を作る以外「バベルの塔」を作るアーツである可能性がある。この可能性について何か証拠になるものはないのか?マドロックの昇進2イラストを見てみよう。

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 彼女の後ろは、「尖塔」と同じ建築であり、マドロックも、後ろの巨獣の角もまっすぐに天を向いている。これも、マドロックの血脈は「尖塔」と直接的な関係があると考える。マドロックの後ろにいる巨獣の身体には、巨大な、黒い正体不明の液体が入っているパイプが挿入され、ひどく苦しそうに見える。ならこのイラストは、マドロックの血脈は穢れたものに汚染されたもので、この過程は穏やかなものではないことを示唆しているだろうか。
 また、マドロックは「アーツで充填している巨大な鎧」で戦っていることについても考察する余地がある。マドロック昇進2のイラストで、地面には正体不明の2本の手がある。中の1つはパイプを引っ張っている。この手の目的は、マドロック血脈の目覚めを阻止することかもしれない。そしてマドロックの周りにひらひらとなびいている緋色のリボンは、血を象徴している可能性がある。つまり、マドロックが血を流したら、地面の正体不明の力が目覚めると示唆している。だから、彼女はこの自分に不相応な鎧を身に着けて戦わなければならない。血を流しても大地に接触させてはならない。スカジが大地で血を流すことを恐れているのは、マドロックと同じ理由なのだろうか。
 そうすると、ウェイ・イェンウーの言葉「契約を破った者は、空と大地から永遠に追放される」についても、より良い解釈ができる:大地から追放されたのは、息壌の血脈はバベルの塔を作って大地の怒りを買ったためで、空から追放されたのは、息壌の血脈は堤防を作って空を裏切ったからだ。
 巫王が死んだのは何十年前のことで、この時期は今のアークナイツ・メイン・ストーリーの時間に比較的に近いほうだ。ケルシーの年齢を考えて、彼女は間違いなくこのことを知っている。さて、「天と地の真ん中」位置に「高塔」を立て直そうとする組織、この組織はサルカズと緊密な関係性がある。その名は何というのだろうか。
 答えはたっだ1つ:ーーバベル。(なお、指導者が異なるため、巫王がいるバベルとテレジアのバベルは、月に行くことを目的にする以外、やり方が全般に異なる可能性がある。)
 巫王が双子の姫に討伐された前に、「そなたの腐蝕が塔を沈める」描写があったため、高塔を建てる時に巫王は何らかの力によって腐食されたと推測する。この腐蝕は最終的にバベル再建計画の失敗をもたらした。この腐蝕に対応するために、また魔王が座にいない状態による権力の空白はカズデルの内戦を引き起こし、最終的にテレジアは自己犠牲を選んだ。

 この推測はさておき、少なくとも1つだけ高い確率で確信できることがある:エーギル人はサルカズに変化することができる。変化の過程において、何らかの力を身体の中から剝ぎ取る必要がある。だから、サルカズの種族名は、ギリシア語の「引き裂く」から来ている:

 σαρκάζω(sarkázō)

参考:アークナイツ設定語彙考察集(更新中)
https://ngabbs.com/read.php?tid=25693786&rand=201

 このことに対応して、「カズデル」の本当の語源は『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』の「Rivendell(「裂け谷」リヴェンデル)」で、両者とも「裂け目ある深き谷間」を意味する。ウォルンモンドが避けようとした例の大裂溝も、高い確率で何か深い意味があると思う。
 だが、語源≠モチーフ。現実におけるカズデルという国家のモチーフについて次のように推察する:

 1.カズデルの「巫王」はリターニアに侵入し、バベルの塔を建てようとしていた。リターニアのモチーフはオーストリアだと考える。

 2.カズデルはかつて、テラ世界の全土を巻き込んだ大きな戦争を始め、甚大な被害をもたらした。この戦争が原因で、サルカズは今になっても差別されている。

 3.テレジアとテレシスは明らかにドイツ語圏の名前である。

 4.モチーフに一部ヒマラヤ山脈の要素を取り込んだイェラグ地区には、空に関わる「神」が存在する。

 上記の資料は、ちょうど第三帝国時期のドイツに一致している。リターニアに侵入したのは、ナチス=ドイツが軍隊の威圧でオーストリア共和国の併合を強行した歴史に対応している。故に、引き起こした戦争は第二次世界大戦で、腐蝕された巫王のモチーフはヒトラーで、イェラグ地区ではヒトラーがヒマラヤ山脈で「地球の空洞」を探していたことと似たような出来事があったかもしれない。ヒトラーはアトランティス文明とチベットはアーリヤ人と繋がりがある説(*地球空洞論の派生)を信じている。現実世界でSF小説のような話だが、アトランティスは海と繋がりがあり、架空世界の設定として扱いやすい切り口だと思う。噂によれば、「地球空洞」計画に関わっているフォン・ブラウンはナチスが敗戦してからアメリカに亡命し、月に向かうロケット・サターンVを作ったため、「夕娥、月に奔る」物語にも対応できる。
 ロドスにいる種族の間で争いがない現状を鑑みて、カズデル内戦の原因もおおよその推察がついた:魔王の座を引継いだテレジアは、先王の種族差別政策を廃止し、種族平等の政策を推し進めた。バベルの目標も、単なるサルカズ救済からテラ全土の救済に変わった。こういった方針の転換は、反対派との間の調和不可能の矛盾が必然的なもので、故に、例の勝者がいない戦争も必然的に始まったのだ。

六、プリースティスとドクターは何者なのか

 Priestessは女司祭で、タロットカードの女教皇(The High Priestess,II)は月を象徴している説がある。正位置の意味として、自己への理解、清楚、知性、理性、探求心、鋭い洞察力、正しいタイミングあるいはふさわしい人が現れる予感、直感、第六感、天啓、啓示、天象、聖女、気質、女神、潜在意識が挙げられる。個人的に、こういった意味はプリースティスの既出情報におおむね一致しており、プリースティスは女教皇が代表する惑星の月に関わっている可能性はある。

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 同時に、古代中国の甲骨文字で「夕」と「月」の字が同じだった時期もあり、漢字書体の「小篆」が作られて(紀元前210年以前)から、両者の形と意味が段々異質化して最終的に今の形になった。夕娥のモチーフに明らかに入っている嫦娥も月と強い関連性がある。故に、「月」というヒントを通じて、プリースティスはある程度、夕娥だと判断していいと思う。

 先に述べたように、后稷は嫦娥の兄弟で、死んだ後に魚となって復活した伝説があり、このことは后稷がエーギル人だと示唆している。なら彼の兄弟・嫦娥、つまりプリースティスがエーギル人の可能性も高い。
 サガの記憶の中で一番印象深く忘れられないのは夕娥の目。メインストーリーの肝心な部分で、目が特別にアップされたところは2か所ある:

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 上記のイラストで、アーミヤもプリースティスも、うっとりさせるほどの美しい目がある。同時に、アーミヤの目にもプリースティスと同じような白い菱形が現れたことがあり、この形はスカジ*が持っている深海からのペンダントと同じだ(*スペクターのはずです)。アーミヤはサルカズとコータスのキメラで、魔王の力はサルカズ諸王から引き継いだ。
 マドロックと巫王の部分で触れたように、エーギル人はサルカズに変化することができる(とはいえ、すべてのサルカズはエーギル人から変化したものだというわけではない)。マドロックの血脈は他のサルカズから一方的に「同胞の情け」を頂戴するほどの力がある。これは、マドロックの血脈はサルカズ魔王の血脈に近いからという原因かもしれない。
 仮にプリースティスが魔王の源であれば、他のサルカズから向けられた「同胞の情け」の根源は、プリースティスに近い魔王の血脈にあると考えられる。
 よって、私が下記のように結論付けする:プリースティスは炎国神話の夕娥だ。種族は人間ではなく、古エーギル人である同時に、サルカズ魔王の血脈の先祖でもある。(論理的に考えて、プリースティスは人間ではないと思う。人間であれば、石棺を使ったら長い時間を過ごすことができるのに対して、彼女はドクターと死別に近い形で別れを告げることしかできなかった。)
 従って、「夕娥、月に奔る」における夕娥の夫のモチーフについて、最も可能性が高いのはドクターだと思う。この場合、彼には1つ、とても重要なポイントがあった:彼は同族に対して攻撃を仕掛けた。
 ここまで、アザゼル診療所の名前が誰のことを示唆しているのか、答えは明らかになった:ーードクター、この空に初めての「堕天使」。ドクターはテラの大地の生き物を率いて「天国」と戦う物語は、テラバージョンの『失楽園』だ。

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 彼が自分の同族に対して攻撃を仕掛けた原因は源石の裏にある真実を掲げるだろう:ーーあの「モルテ」のように悪意と苦痛を食糧とし、テラ大地で起きている惨劇をゆったりと眺めている強大な神。あの『失楽園』の中で、乱暴で、残虐で、狭隘な神。

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*上記のスクショは『鋼の錬金術師』からの引用で、履修済みの方だと既に色々お察しかと思います(笑)。

七、忘れな草/「私のこと、忘れちゃだめよ。」

ロスモンティス、マドロックとプリースティスの関係性

 周知の通り、マドロックもロスモンティスも、リミテッドスカウト「忘れな草」で実装されたオペレーターだ。

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 なぜロスモンティスガチャのタイトルが「忘れな草(Forget Me Not)」なのか、ずっと疑問に思っていた。他の植物の名前なのに。確かに、ローズマリーの花言葉に「思い出」という意味がある。ロスモンティスの記憶も不安定な状態にある。しかし、この2点だけでタイトルの「忘れな草(Forget Me Not)」を解釈するのは些か強引だと思う。
 「忘れな草(Forget Me Not)」のスカウトと同時に実装された8章のメインストーリーで、プリースティスはドクターに、「私のこと、忘れちゃだめよ」と伝えた。この言葉は「忘れな草(Forget Me Not)*」に深く繋がっているため、このスカウトのタイトルは、プリースティスの言葉から来ている可能性が高い。先ほどマドロックの血脈はプリースティスと関連性があると論じたが、マドロックがこのスカウトに入れられたのはまさにこれが理由ではないかと考える。一方で、こうして限定のロスモンティスに不公平ではないだろうか。
(*中国語のガチャ名は「忘れな草」の中国語名「勿忘我」で、「勿忘我」を文字のまま読んだら「私を忘れないで」という意味になる。)
 こうした理由はあると思う。なぜならば、ロスモンティスもプリースティスに直接関連している可能性がある。

 まず、前文で分析した内容、つまりテラの歴史において、アビサルの血脈を解放するための実験についての試みを一度整理したい:
 1.アビサルにオリパシーを感染させる。代表的なオペレーターはスペクター。(失敗)
 2.アビサルではないエーギル人にアビサルの血を少量に入れる。代表的なオペレーターはアンドレアナ。(失敗)
 3.アビサルに「サルカズ化」を経験させ、神の枷をちぎり、弱まっていながらも血脈の解放に成功した。代表的なオペレーターはマドロック。(血脈が弱まったせいで、巫王は最終的に失敗した)

 もし、上記の3つの試みが失敗に終わった結果を様々な情報源から知ったマッドサイエンティストがいたとしたら、彼は別の方向に可能性を探り始めるだろうか。
 例えば、エーギル人以外の個体に、大量なアビサルの血を注入する。この考え方の産物として、ロスモンティスが生まれたとか。この推測を検証するために、いくつかの既出情報からヒントを得ることができる。

 1.ロスモンティスの個人履歴はアビサルのとかなり似ている:

【スカジ個人履歴】
 スカジはバウンティハンターであり、現在はロドスに雇用されている。かつての任務では、対大型生物戦、ハードターゲット破壊、堅塁攻撃戦、殲滅戦等多様な作戦において高い実力を発揮した。過去の戦闘経験との関連があると推測する。
 バウンティハンターになる以前の履歴は無し。
 現在はロドスの某堅塁攻撃小隊に配属され、同時に単独任務予備執行オペレーターの一員でもある。

【スペクター個人履歴】
 スペクターは経歴書が紛失したため、身元も出身も不明である。大型生物へ対するアクションや、手ごわいターゲットを破壊するときに見せた極めて強力な技術は、過去の戦闘経験により身についたものだと推測される。
現在は前衛オペレーターとしてロドスの作戦小隊に在職中。

【ロスモンティス個人履歴】
 ロスモンティスはロドスのエリートオペレーターであり、極めて珍しいアーツを身につけている。大型生物への対抗、硬い対象の破壊、施設の緊急制動や小規模衝突の中断などの任務において素晴らしい働きを見せている。また、陣地攻略戦、陣地戦、殲滅戦などにおいても極めて強い戦場把握能力と著しい戦術的価値を見出されている。今はケルシーの指示により、殲滅戦のコアメンバーの一人として活躍している。
 ロスモンティスの他全ての資料は高権限データベースに移行する。

 スカジとスペクターは現時点、2人しかいない、血脈が比較的に純粋なアビサルで、ロスモンティスはアビサルと完全に同じとでも言えるほど。似ている個人履歴の記述があるのは、彼女たちの間で何かしらのつながりがあると示唆している可能性はないでしょうか?(1つ引っかかるところはアズリウスのプロファイルだが、確かにアズリウスのプロファイルにも大型生物との戦闘についての記述はあるが、これらの資料は「決定的な証拠はない」、「情報は証明されておらず、参考になる写真や映像などの資料も一切存在しない」ため、古の設定の中でアズリウスがアビサルだった廃案から来たものかもしれない。)

 2.ロスモンティス健康診断の情報

 スペクターの感染もこの特殊個体と同じく人為的な感染と言えようが……スペクターの免疫システムが激しく源石感染に抗っているという生理現象はひとまず置いておくとして……スペクターの脳脊髄液に含まれる高濃度の液体源石は確実に彼女の命を脅かしている。そして我々は手段を選ばずに彼女の病状の悪化を防ごうとしている。我々にとっては当たり前のことだからな。
 だが、この特殊個体に施された実験は、まさに源石感染が該当個体へ及ぼす悪影響を抑えることを目的の一つとしている。
 彼らはやり遂げてしまった。たとえ一時的なものであっても。

 上記のロスモンティスの感染状況に対する分析で、スペクターは参照対象として取り上げられた。これは単なる偶然だろうか?

 3.ロスモンティスとマドロックのプロファイル情報

【ロスモンティス第一資料】
 ほら、相互比較表は作ったよ……ああ、本人は外見に違わず、ちっちゃいフェリーンっ娘だ。そこんとこは言うことないだろう……
 だがアーツはな、うーん、室内でのテストはもう止めたんだが、それまでに入手できたデータでもかなりの問題の説明はつく。
 ああ、理論面のことを話しすぎるのもしょうがないだろう。俺だってあんまわかんねぇわ、理論術師たちはいっつも逆知覚とか思考衝動とか言ってるけど。なんか認知学や神経科学が大きく関わっているとか言うが、そこらへんは俺はさっぱりだ。
 今はそのアーツの表れ方の話だけにしよう。ああ、ほとんどは機密扱いだからな、この資料もお前に大まかな中身を知ってもらうためだ。
一部ではもう彼女のアーツを「精神実体」と呼び始めている。なんせ……そのままだからな、わかりやすくて便利だ。
 彼女のアーツは広い範囲を覆い、内部の物体の運動状態を感知するための「網」を形成しながらも、内部の個体にそういう「接触」を全く悟らせないこともできるし、逆に純粋に一個体のみに作用させることも可能だ。たぶん大きな手のようなイメージだろうな……たとえ彼女にアーツの範囲を最小限に留めておくように要求しても、少なくとも数平方メートルを影響下においてしまう。彼女のイメージからして目標を「握る」ような感覚だからだと思う。しかも、その力は目標の内部に及ばないらしい。たとえ透明な、内部構造が鮮明に見える水筒でも、その中から水筒を破壊することはできない。外部から力を加えてそいつを押しつぶすことしかできないんだ。ますます、伸ばせて変形させることが可能な力が込められた実体っぽく感じられる。
 テスト中、「手」と「握る」といったイメージを通して、我々は彼女が高度の集中状態において、上限「四本」の巨大かつ無形の「手」を駆使できると推測した。推測計算の結果は、アーツの活性と深水実験をもとに計られたものらしい。速度テストでも強度テストでも、彼女のアーツには莫大なエネルギーが秘められていることが証明された。だが、そのエネルギーが活性化し何かを砕く寸前まで、我々はアーツの形成予兆でさえ観測できなかった。
なぜ四本、なぜ無形の「手」なのだろうか?彼女がそう想像したからなのか?確かに、標的物体の構造や形状の変化への確認中、一部の突起はまるで指の間に挟まれた位置にあったみたいと感じたんだ……
 温度差が大きい場合、彼女はアーツの使用中に凍傷や火傷を負うこともあるようだ……少なくとも神経活動を見る限りは。何の症状も見られないが、彼女は……「冷たい」……あるいは「痛い」など言い出すんだ。しかも脳の皮質の活動を見る限り、それが本当みたいなんだ。
 (録音の音量が次第に低くなる)
 一つ、あんまりアテにならない話を聞いたことがあるんだ……というか、恐ろしい話だ。
 彼女の兄弟が、まだ彼女の体の中で生きている、ってやつだ。彼女のアーツは、その兄弟たちが……手を伸ばして、大地を抱きしめたり、何かを殴ったりしている、という話だ。
 誰から始まった噂なのかは知らない。本当、背中が凍える気分になるものだ。

  ──記録員・術師オペレーターKKの録音より

 上記の話から以下のことがわかる:ロスモンティスの能力は四本の無形の「手」を駆使するようなもので、それにまつわる恐ろしい話として、彼女のアーツは自分の兄弟だと。

【マドロック第二資料】
 マドロックのアーツは泥土や岩石を操ることができる。それ以外にも、天賦の才能に恵まれた彼女はリターニア色に富んだ古典的なアーツ数種類と、サルカズのとある古い血筋に紐づいた巫術をも身につけている。この巫術は、自らの意志を造り物の躯体に「介入」させ、本来意志を持たない泥土や岩石を自らの四股の延長として使うものである。単純にそれらを操ることとの違いは、両手で刀剣を握るのと、両手を刀剣に変えることとの差である。言い換えると、作戦効率の面では大した差はない。この特殊なアーツは、彼女の作戦能力を意味がある形で増幅する作用などはなく、マドロックに流れるサルカズの血が比較的に正統なものであると証明するものでしかない。だがそれはマドロックが現時点身につけているアーツについての話である。彼女の今後の成長と、リターニア系統のアーツを独学する際に見せた才能を考慮すれば、このような血脈に受け継がれてきた古い巫術は、マドロックに勝利をもたらす切り札になる可能性がある。
 他に注意すべきなのは、マドロックはたまに「友人」という呼称を自らのアーツが生み出した造り物に用いていることだ。大きな石像から小さな泥の塊まで等しくそう呼ぶのだ。この呼び名は彼女の性格や趣味のみに起因するものではない。彼女の特殊なアーツが、十数年使い続け手に馴染んだ道具に対するような情を自身の造物に抱かせているのか。はたまた、長期にわたる巫術の使用の結果、奇妙な共鳴を引き起こすに至ったのか。いずれにせよ、オペレーター諸君は、もしマドロックが誰もいない部屋で小さな泥人形に、人に見せたこともないような優しい笑顔を向けている場面に出くわしても、驚く必要はない。彼女の泥土とのつながりは、大多数の人間とのものよりもよほど親密なのだから。

 マドロックの第二資料によれば、マドロックのアーツについての描写も「両手」という言葉が使われている。マドロックは自らのアーツによる作り物に対して、「友人」という呼称を用いている。プロファイルでは、これが「彼女の性格や趣味のみに起因するもの」あるいは「奇妙な共鳴」だと結論付けしたが、マドロックの★3戦闘終了ボイス「友人たちが祝福をささやいている。私たちの勝利だ、ドクター。」それに信頼タッチのボイス「ドクター?しばらくそばにいてくれないか。カズデルのことを……少し尋ねたい。ああ、友人たちもあなたのことは慕っている。」この2つの言葉から、マドロックが統合失調症でもなければ、彼女の造り物は自己意識があり、何らかの形で「生きている」はずだと推測できる。

 上記の内容をまとめて、マドロックとロスモンティスの能力はかなり類似している。また、Logosはリターニアでマドロックのアーツを容易く破ったことがある一方で、ロスモンティスのプロファイルで「通常基準装甲の数倍の強度を持つ装置を、空中で握りこぶし程度の大きさにまで簡単に圧縮させることができてしまう。もしLogosがいなければ、私達はもう数回は死んでいたのではないだろうか」という記述もある。Logosはマドロックの能力もロスモンティスの能力も制御することができる。なら2人の能力は本質的に同じだという可能性はないだろうか。前述のマドロックとアビサルのつながり、ロスモンティスとアビサルのプロファイルの類似性も踏まえて考えると、ロスモンティスの血脈もアビサル由来の可能性が高い。
 故に、リミテッドスカウト「忘れな草(Forget Me Not)」の★6オペレーター2名ともプリースティスと何らかの関係性があると考える。スカウト名はプリースティスの言葉「私のこと、忘れちゃだめよ」から取ったもので、ローズマリーの花言葉「思い出」由来ではないと推測する。(だが、ローズマリーの花言葉はゲーム内で無意味だというわけではない。実際、ロスモンティスの基地スキルに連動するオペレーターたちはある程度プリースティスの一側面を示唆している可能性はある。)同時にこのことから、ダブル・ピックアップの★6オペレーターは皆、裏で何かしらのつながりがあるのではないかと思考を広げることができる。

八、鯀、ロドス・アイランドとケルシー

鯀は誰なのか?

 初めの章を書く時点で、テラ世界では鯀と直接な対応関係がある人を見出すことはできなかった。しかし世界観についての一連の推測を作り上げてから、少なくとも80%の確立で鯀は誰なのかは特定できた。
 まず、スカジのモチーフはクジラで、鯀はスカジの祖先だから、鯀のモチーフもクジラの可能性が高い。
 前文で取り上げたように、「鯀は羽淵に沈んで、玄魚となった。」古代の言葉で「玄」は大の意味もある。例えば『山海経』の異獣、「玄亀」というのは大きい亀を指す。では一旦「玄魚」を大きい魚と見做すことにしよう。ちなみに、鯀の字は元から大きい魚という意味合いをもつ。
 羽淵、いわゆる羽山のことで、鯀が追放された場所だ。テラ世界で最もわかりやすい流刑地といえば、オーストラリアがモチーフの「レム・ビリトン」だろう。
 ここで1つ推測だが、テラ世界の鯀が追放された結果、レム・ビリトン所在地のとある深淵で、大きなクジラとなった。
 ゲーム内では、レム・ビリトンから掘り出され、巨大なクジラの骨格に見えるとあるモノが存在し、サルカズ傭兵団のイネス(変装した冬霊だと推測する)の目には「大きな影」が見えている。
 というわけで、テラ世界における鯀の現状は明らかなもので:ロドス・アイランドこそが、鯀の遺骸だと思う。

 鯀に名前を付ける機会があるとしたら、私はリヴァイアサンと名付けるだろう。理由として下記の4つが挙げられる:
 1.リヴィアタン・メルビレイ(Livyatan melvillei)(化石は頭骨の一部のみ発見されたため、ハイパーグリフが設定に使う場合、素材として都合がいい)は既に絶滅した古生物で、マッコウクジラ上科に属する。基地の例のイラスト、ロドス・アイランドの骨格はマッコウクジラに類似している。
 2.リヴィアタン・メルビレイの種小名は、『白鯨』の著者ハーマン・メルヴィルへの献名で、『白鯨』はアークナイツのメインストーリーと大いに関係がある。
 3.リヴァイアサン(Leviathan)はヘブライ語(レヴィヤタン)で「集まって襞(ひだ)をなすもの」意味があり、カズデルと明らかな関連性がある。
 4.リヴァイアサンはベヒモスと二頭一対を成すとされており、マドロックの後ろにいる怪物は他の方の考察によればベヒモスの疑いがある。

 これで、ロドスの名称の由来は、聖ヨハネ騎士団以外もう1つもっともらしい可能性が現れた:
 1.ヘブライ神話におけるレヴィヤタンの原型の1つは、ウガリット(フェニキア沿岸部の都市。主体となる住民はカナン人とアムル人。紀元前1200年ごろ、「海の民」の侵入によって破壊された)神話で語られる巨大なウミヘビ・ロタン(Lotan)で、「曲がりくねる蛇」と記載されている。
 2.鯀の父顓頊が死んだ後にまた目覚めて甦った中で、「蛇は魚に変わってしまった」記述があり、鯀自身も「黄龍」に変化した伝説がある。龍は蛇形の生物だ。
 3.現実のロードス島には多くの蛇が生息しており、ロードス島の名前はフェニキア語の蛇*から来た可能性がある。伝説の中で、この地に在る大きな蛇を指しているという。ウガリット叙事詩についての資料は持ってないが、「ロド(Rhode)」と「ロタン(Lotan)」の発音はある程度似ている。もし何方かちょうど手元に資料があるならロドスに居る例の蛇は一体リヴァイアサン原型の1つとされているロタンかどうか確認してもらっていいでしょうか。
(*フェニキア語の「erod」。「ロードスの語源はフェニキア語の蛇から来た可能性が高い」という内容についてブリタニカ百科事典で同じような記述があります。)

 最後に、スズランの物語に戻って、2本のお話はそれぞれ「嫦娥、月に奔る」と「竹取物語」という明らかな原型がある。「嫦娥、月に奔る」からいなくなった重要な人物をヒントに、他の神話と結び付けて考えて、上記の一連の推測を導き出した。実はここで、無視できない要素はもう1つある。即ち、不老不死の霊薬。西洋の錬金術師で、賢者の石も同じような効果があるとされる。テラ世界においては、長命種以外の種族を長命種にする薬かもしれない。ではストーリーの中で、不老不死の霊薬を飲んだ人はいただろうか。

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 鯀は一体誰だろうかについての推測、ロスモンティスのスカウト「忘れな草」で見出した法則(つまりリミテッドスカウトのオペレーターは誰でもよいというわけではない)を踏まえて、考察を予測に変えて、まだタイトルも知らない例の2周年サイドストーリーの情報を当ててみよう。
 予告のイラストから、クジラの骨格に似たようなものと四角星の存在が見える。これらの要素は深海と深くかかわっているため、サイドストーリーのタイトルは深海関連のもので、タイトルだけでネタバレになる可能性が高い。というわけで、サイドストーリーのタイトルはリヴァイアサン関係で、スカウト名は深淵と関わっており、2名の★6オペレーターは深海とリヴァイアサンにつながりがある可能性が高い。
 1人がケルシーだと推測する。実装するケルシーのサイドストーリー以外、アークナイツの美術監督・唯先生2018年に描いたイラストでケルシーの後ろにあるのはクジラの骨格だ。この場合、99%の確率でもう1人も深海、あるいはアビサルの血脈と関わっている。公開された未実装のオペレーターで唯一アビサルと関わっていそうなのはインキャンデセンスで、彼女とアンドレアナは鯀、あるいはリヴァイアサンの永眠の地、レム・ビリトンに定住していた。他のオペレーターの可能性もあるが、インキャンデセンスがもう1人の★6の可能性が一番高いのではないかと思う。(他に可能性があるのは異格スカジとAUSだろうか。)
 最新のイベント勲章で、下記の記述がある:

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*訳:
 あなたは彼女を見守っており、彼女は大地を見守っている。
 彼女は今度の命で、何度もみずから滅亡の道をたどろうとする人間を阻止しようとしてきた。しかし無勢でどうにもならなかった。彼女には心からの支持者が必要だ。

 ケルシーは深淵と関わっており、大地を見守っている記述、そして勲章に描かれているオリーブの枝と結び付けて考えると、ケルシーは大洪水と直接的な関係がある可能性が高い*。「今度の命」というのであれば、転生の可能性が示唆されている。ロドスが転生してケルシーとなったのならば、ケルシーこそが「鯀」になり、ロドスという古の時代から残された遺骸の魂の継承者にもなる。こう見れば、ケルシーはスカジに対して発した言葉は、実際自分のことも含めて言っているだろうか。
(*オリーブの枝に纏わる逸話で、大洪水のあと、陸地を探すためにノアの放ったハトがオリーブの枝をくわえて帰ってくる言い伝えがあります。)

九、真理、理性と代償

等価交換

 つい先日に完結した漫画のおかげで深く傷付いたせいで、癒しを求めて鋼の錬金術師をもう一回復習した。そして、これまで取り上げた「バベルの塔」の原型について、「真理の扉」と「(カバラ)生命の樹」という、非常に重要な要素を忘れていたことに気づいた。では、生命の樹のシンボルを見てみよう:

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 「生命の樹」各部分の具体的な意味と解釈を置いといて、数と外見だけ見てみよう。まず一番上と一番下には丸い円が配置されており、樹幹の8つの分枝にもそれぞれ丸い円が8つ繋がっている。ウォルンモンドの薄暮はヘルマン・ヘッセの絶筆になった詩、「折れた枝の軋み」を引用した。4章で詳しく分析したが、この折れた枝は月としてのウォルンモンドを指す。では、生命の樹の形と結び付けて考えて、墜落した8つの月はそれぞれ生命の樹の分枝に繋がっている8つの円に対応すると判断できる。また、生命の樹はエデンの園の中央に植えられた木で、建木の「天と地の真ん中」の位置及び、リターニアのとある廃墟の位置、つまりテラ大陸の真ん中という位置情報について三者は一致しているはずだ。
 つまりこれまでの星間旅行についての推測に誤差があり、9つある月とバベルの塔からなる「生命の樹」は、錬金術と直接関係している可能性が最も高いと考えられる。

[注意書き]下記の内容は『鋼の錬金術師』のネタバレが含まれています。まだ読まれていない方、ぜひ一度読んでみてください。強く推しているのもそうですが、全く知らない方だと下記の内容はわかりにくいかもしれませんから。



 鋼の錬金術師で遅れて登場するにもかかわらず、物語を終始貫いている中心人物がいる。ーーフォン・ホーエンハイム。彼は最初とある錬金術師の奴隷だった。錬金術師は彼の血で最初のホムンクルス、「フラスコの中でしか生きられない生命体」という本来の意味合いに近いホムンクルスを作った。ホムンクルスは不老不死の力を手にすることができる錬成陣の話で国王を騙し、その真実は全国民の命を賢者の石を錬成する際のエネルギーにして、その半分を自分の受肉に、残り半分は恩返しとして、自分に血を与えたホーエンハイムに贈った。これでホーエンハイムは古代ケセルケス文明の唯一の生存者になり、同時に歩く賢者の石にもなった。

 アーミヤが指輪の力を解放した後に、ケルシーはドクターの血で彼女を治療した。つまり、ドクターの血はオリパシーを和らげる力がある。そして、「唯一の生存者」と疑われているドクターは、なぜたっだ一人で世界の終末レベルの災難から逃れることができたのか。彼はホーエンハイムと同じ、古代文明の時期の研究者として自分の血を素材に最初の源石を作った可能性はないだろうか。その後、あの正体も知らない「神」は何らかの理由で古代文明の指導者を煽って、バベルの塔、小型の人工月8つと大型の1つからなる惑星級の「錬成陣」を作って、すべての人間を源石にしてしまった。こうして、源石はドクターの血から作られたものなので、ドクター自身が何らかの理由で「錬成陣」の影響を受けないのもおかしくない。ある意味、アーツの技術体系において、ドクターを歩く純正源石としてみなすこともできる。純正は秩序に対応し、オリパシーは源石の秩序が乱れた結果かもしれない。そのため、「秩序がない」汚染源石によって病気に罹った患者の体内に、「秩序がある」純正源石を注入することで、オリパシーを和らげることができる。(振り返ってみたらこれは「天空の物語」でポプカルが語った話にも一致するところがある。)
 しかし、こういった秩序ある状態は無条件なものではない。エントロピー増大の原理と同じ、ドクター自身も時間の経過、あるいは「神」の堕落と教唆によって、秩序が徐々に崩れていく。そして、このプロセスには限界値が存在しており、それを超えると、ドクター自身の心理と性格は大きく影響される。これは「理性を失っていく」プロセスに対応する。そして、この傾向を逆転させるには2つの方法がある。①石棺を使ってドクターを「リセット」する。②源石というネゲントロピー源を使って、その中のエネルギーを消費することで不協和音を減らして秩序を取り戻す。個人的な推測だが、記憶があるドクターは、源石の背後にある命を尊重する理由で、源石を使って理性を回復する行為を拒んでいたのではないかと思う。だからカズデル内戦が後半に入ってからドクターは制御不能の状態に陥った。そして今のドクターは記憶をなくしたおかげで経済的な問題はともかくにして、心理的な負担なく源石を使用することができただろう。
 先ほど源石を使って理性を回復する話があったが、この行為もまた「等価交換」だと考えられる。同時に、この法則は『鋼の錬金術師』で一番重要なポイントで、テラ世界にもそれに対応する様々な例がある:
 1.エドワードが傷を負ったときに、自分の命を賢者の石にして治療したシーンがある。テラでは、マドロックは自分を命をエネルギーにして巨像を召喚する。
 2.アルフォンスが人体錬成を行うリバウンドにより肉体を失い、エドワードは彼の魂を巨大な鎧に定着させた。テラの場合、ロスモンティスの兄弟も同じく身体がないが、何らかの形で彼女の傍で「生きている」。
 3.最後の戦いが終わった後に、エドワードは自分の真理の扉を代償にアルフォンスの身体を取り戻したが、二度と錬金術を使うことができなくなった。テラでもしアビサルの血脈の祖先・鯀が「防波堤」を作ったために対価を支払ったとしたら、ある意味それはアーツ適正だと理解してもいいのではないだろうか。
 この推測はもう1つ説明しなければならない大事なポイントがある。例の古代文明を滅ぼした「錬成陣」は、バベルの塔と他の9つの月からなるもので、発動してしまったらドクター以外の全人類が対価として支払われてしまう。しかし明らかなことに、今のロドスはバベルの目標を引き継いで、この「錬成陣」を完成することを目指しているはずだ。そして、これにも対価が必要だと思う。
 まず、古代文明を滅ぼした時と同じように、対価がテラ大陸にいるすべての「人間」でもよい。「錬成陣」に少し修正を加えれば、先民を人類と同じように生け贄にできるかもしれない。巫王がバベルの塔を再建したときはこのやり方で実行しようとしていたから、巫王の高塔は壊さなければならなかったと思う。
 PV2のサムネイルとして使われていた例のワンカットを見てみよう。2分45秒から始まるところ:
https://www.bilibili.com/video/BV1w4411b7c3/
 このシーンでアーミヤの右眼は包帯を巻いてて、傷を負ったかもしれない。彼女は涙を流しているかもしれない。表情も悲しげ。そして彼女の後ろに、「高塔」が現れた。これがアーミヤのバベルの塔だと仮定しよう。
 では、対価は何だろうか。

 上邪      上邪
 我欲與君相知  我君と相知り
 長命無絶衰      長命絶え衰ふること無からんと欲す
 山無陵      山に陵無く
 江水為竭     江水 為に竭き
 冬雷震震     冬雷震震として
 夏雨雪      夏に雪雨り
 天地合      天地合して
 乃敢與君絶    乃ち敢て君と絶たん
  ーー『上邪:古楽府』(訳の引用先は文末にて記載)
*上邪:天への呼びかけ。天に誓って自らの愛の強さを語る民謡。

 原因でありながら結果でもある人がいる。彼は動機でありながら目的でもある。彼は源石半分の力を有しながら、すべての苦難を作り出した原罪も背負っている。彼は長すぎた人生において、この罪を償うために数え切れないほどの年月を費やしてきた。彼はこの機会を諦めるはずがない。
 彼こそが対価として一番ふさわしい。
 先ほどアザゼルについて触れたが、アザゼルの名前は『旧約聖書・レビ記』から来たもので、「スケープゴート(*贖罪の山羊)」の概念を悪魔化したものだと言われる。これもなぜアザゼルが山羊頭なのかの原因だ(これは聴罪師にも関わっている)。一方で、『新約』で血を流し、世の中の人々のために罪を償った人物がいて、彼のことは神の子羊とも呼ばれる。その人物の名前はイエス・キリストだと知られている。

 小羊が第七の封印を解いた時、半時間ばかりの静けさがあった。
  ーー『ヨハネの黙示録』(引用元は文末にて記載)

*ヨハネはパトモス島で、7つの角と7つの目を持つ小羊イエスを目にする。小羊は封印された7つの巻物を神から授かると、その7つの封印が一つ一つ解かれる度に、戦乱や飢餓、疫病などのわざわいが地上に降りかかり、最後の封印が解かれ人類は滅亡する。

 彼は沈黙のスケープゴートであり、堕天使であり、世界終末の救世主でもある。
 ハイパーグリフは彼にどんな結末を用意したかまだ分からないが、組み立てと様式美の角度から考えれば、この終わり方は受け入れられやすいと考える。

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 一番初めのところに戻って、私たちは「画中人」のイベントシナリオから一連の結論を導き出したが、同じように「洪炉示歳」のシナリオにも何か重要な手がかりと証拠がないだろうか。
 答えはイエスで、「洪炉示歳」のシナリオには源石の秘密が隠されている。

十、説文解字:天に洪炉ありて、地が五金を生まん

源石の根源

 天有洪炉,地生五金,暉冶寒淬照雲清。(天に洪炉ありて、地が五金を生まん。暉を以って治り、寒を以って淬ぐ。其は雲にすら映えよう。)

 以前、この文章の文化的意味合いについて多くの方が解釈していた。今は中の具体的な文字について深く掘り下げて解釈してみれば、この世界観の推測に対応する結論を得ることができる。
 まず、「天有洪炉(天に洪炉ありて)」を見てみよう。洪炉、いわゆる大きな火の釜。洪炉に関係する四字熟語として「洪炉点雪」が挙げられ、内容を素早く理解し、突然の目覚ましい理解の感覚を得た過程を喩える言葉として知られている。清王朝詩論書の名作『随園詩話』などでは「洪炉点雪」は「紅炉点雪」にも書かれており、つまりこの火の釜の色は赤だと考えられていて、「天に洪炉ありて」というのは、天に赤くて大きな火の釜があるということにも通じる。
 続いて「地生五金(地が五金を生まん)」を見てみよう。この言葉は「天工開物」から引用された内容で:「大地が五種の金属を生じ、天下の人々とその後世に利用される。(*藪内清訳注 東洋文庫 初版23刷 258頁)」原文の五金は、金、銀、銅、鉄、錫という5種類の金属を指している。しかしこの解釈は、上記の「天有洪炉(天に洪炉ありて)」と一致していない。なぜならば、この5種類の金属は元より大地に存在しているからだ。こう考えたら、この五は番号であって、数量ではないかもしれない。古代ギリシアでは、土・火・空気(*もしくは風)・水・土の四元素説(*この世界の物質は上記の4つの元素から構成されるとする概念)がある。錬金術はこれを基に、「第五元素」の概念を作り上げた。つまり四元素を基に第五元素と「金」を作り出すことができる。錬金術で第五元素と黄金を錬成する際に必要不可欠の触媒は賢者の石だ。
 よって、「天有洪炉,地生五金(天に洪炉ありて、地が五金を生まん)」の本当の意味は、テラの空に赤くて大きな火の釜があり、何らかの方法で大地に賢者の石を錬成したと考えられる。
 この解釈を検証できる証拠はあるだろうか。
 「映画」のシナリオで、ラヴァがアーツを使ってニェンを攻撃したとき、次の言葉を口にした:「群石之将,魂魄为萁!(群石の将,其の魂魄は萁の如く!)」
 将というのは将軍、指導者。「群石の将」は『天工開物』の原文において硫黄を指していたが、ここですべての石をリードするもの、転じて賢者の石だと理解する。「萁」というのは豆の茎で、曹植(魏の皇族、詩人)の七歩詩では「萁は釜の下に在りて燃え」という言葉がある。よって、「萁」を燃料として理解する。上記の内容を踏まえて、「群石の将,其の魂魄は萁の如く」という言葉の本当の意味は、賢者の石の燃料は人の魂魄ということで、この内容は『鋼の錬金術師』の設定に一致している。
 *他に、プラトンは後期の著作『ティマイオス』で、四元素と5種類の正多面体(プラトン立体)のうち4つを対応させ、土は正方形からなる正六面体で、他の元素は三角形からなる正多面体であり、水は正二十面体、空気は正八面体、火は正四面体で、ひとつの正多面体が基本の三角形に解体して別の正多面体を作ることで、元素から元素への転嫁が起こると解釈した。プラトンの弟子アリストテレスは四元素の相互転化という考え方を受け継いで、四元素説を補完した。彼の考えによると、天体は地球と異なり、純粋な「エーテル」で構成されていて、「エーテル」が第五元素であり、正十二面体に対応すると主張した。偶然なことに、後世の人は第五元素を賢者の石と結び付け、そして源石の設定も正多面体だ。
 (*上記の段落は作者と相談して、合意の上で訳者の私が添削・編集・追記したため、原文と異っております。)
 これで、「五金」と「群石の将」が賢者の石を指しているのに間違いないだろう。

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 一般的に、賢者の石を創造するプロセスの中で、黒化(腐敗)、白化(再結晶)、黄化(黄金)、赤化(賢者の石)の順に色が変わっていくと認識されている。源石は主に黄色に見えるため、不完全な賢者の石だと考えられる。これは、古の時代に行われたかもしれない錬成が途中でドクターに阻止された可能性があることに対応している。そして源石の面の形として、三角形と五角形が同時に存在しているのは、錬成の際に水に対応する正二十面体の比例が高すぎたからと考える。同時に、源石の中で白く光っている四角形の空洞は、四角形が対応する土の元素が欠けていることを示唆していると推測できる。一方で、アーミヤとプリースティスの目に入っている白い菱形は空洞ではなく、しっかりしているため、彼女たちの血脈の力で源石の不完全を埋めることができると考える。

 *最後に、「暉冶寒淬照雲清(ヨースター訳:暉を以って治り、寒を以って淬ぐ。其は雲にすら映えよう)」という言葉を見てみよう。暉というのは日の光、広く一般的に光輝を指しているが、ここで高温を意味すると考えられる。「冶(治り)」というのは製錬のことで、そして「寒淬(寒を以って淬ぐ)」というのは寒い環境で焼入れする。最後に、詩の文章の構造からいうと、一般的に同じ文の中で品詞の並びが同じルールに沿って書かれることが多いため、「暉冶(暉を以って治り)」と「寒淬(寒を以って淬ぐ)」と同じ、最後の「照雲清」というのは、何かしらのモノ(其)に雲が反射するという意味ではなく、「照」という手段を以って「雲」が「清」らかになるという構文のはずで、何らかの光を以って照らしたら、雲が晴れるという理解のほうが合っていると考える。
(*ニェンのこのセリフは中国語の原文の場合だと解釈の余地があるが、詩が訳されたらどうしても訳者の解釈になってしまうので、わかりやすくするために原文にない一部の解釈を加えました。)
 まとめて、「天有洪炉,地生五金,暉冶寒淬照雲清」という言葉の意味は、天に赤くて大きな釜があって、何かしらの方法を以て地に賢者の石を錬成した。その後、高温の製錬作業と低温の焼き入れ作業を経って、何らかの光で照らすと雲が晴れると理解できる。
 赤くて大きな釜は、「画中人」イベントの例の赤い月を指している可能性があると考え、この場合、今空にある例の人工月こそが錬金術の「熔炉」になる。光の製錬と寒さの焼き入れは、『竹取物語』より改編された物語中の南にある「決して消えない炎」と極北の地にある「永遠に融けない氷」に対応する。こうして、神を破るには、月を修復し、バベルの塔を立て直す以外、この炎と氷を以て錬金術の産物に作業を行わなければ、テラを覆う天災の雲を晴らすこともできないだろう。
 一方で、「洪炉示歳」のイベントで、ニェンは例の独特な武器で龍門を囲む「高ぇーー」城壁を開け、龍門で見つけた情報で「幻影兵」を作って、龍門に侵入した。最後にラヴァに「打ち上げ爆竹」戦術を以って2段階に分けて攻撃された:まずはニェンをぶっ飛ばして、撃ち出された後に次は空中のニェンに近いところで自爆アーツを使い、ニェンと一緒に消滅するつもりだったが、映画のシナリオによると最終的にニェンが無事に脱出できた。
 このシナリオはただの悪ふざけだと思っていたが、今になって、古の時代にニェンが代表する神が下界と戦った時のことを示唆している可能性があると考える。神がテラ全土を錬成しようとする行為の目的は、ニェンの「都市全体の物質とエネルギーを煉化したバケモンだ。このくらい辛口じゃねぇと満足できねーだろ」という言葉と同じように、本性からきた「食欲」かもしれない。
 故に、テラ世界の源石は恐らく全人類の魂を原料に錬成した賢者の石だと考える。
 同時に、「忘れな草」について論述した章の結論をそのまま用いて分析を広げると、ニェンとアという2人のオペレーターを繋ぐかけ橋はまさに賢者の石だと考える。ニェンは例の悪神を指しているのなら、アが代表するのは賢者の石という禁忌の知識を開封したドクターで、だからアのHPが徐々に減少するが、自身が受ける回復量+20%の特性と素質は、ドクターの現状を示唆していると推測する。
 同じ考えで、「遺志に咲く火の華」の2人のキーワードはオリパシーを治癒する「願望」で、「月隠晦明」ガチャの2人のキーワードは「月」だと考える。
 賢者の石を錬成したのはニェンが代表する例の神に誘導されたかもしれない。故にニェンはどこから来たのかがとても重要なポイントだ。
 シナリオでこのような会話があった:

クロージャ:ケルシーが教えてくれるまで、あの人が来たなんて知らなくてさ。もし知ってたらサインを貰いに行ったのに、あーあ……
ニェン:  ああ……海のあいつらか? バンドをやってる奴らだな?
クロージャ:そうそう! 知ってるんだね。君たちみたいな同族同士ってお互いに興味ないと思ってたよ。
ニェン:誰がそんな事言ってんだよ! 名誉毀損だ! 訴えてやる!
クロージャ:ケルシーだよ。
ニェン:あーあいつが言ってんのか*……じゃあいいや。
YOSTARの翻訳は作者が取り上げようとする中国語原文のニュアンスを変えた。ここを直訳すると「あーあいつ自分で言ってんのか」。

 明らかに、クロージャはニェンとAUSが同族だという情報を知っている。そしてニェンがケルシーの言葉に対して、「あいつ【自分で】言ってんのか」と言い、つまりケルシーはニェンと同族であることを示唆しているが、クロージャとケルシーはこのことについて知らない可能性がある。
 このことは前文の分析に一致しており、ケルシーがアビサルの先祖であり、テラ世界の鯀と転生したロドスであり、AUSと「同族関係」があるのは自然なことだ。
 クロージャの話から推測してみれば、ニェンも深海と直接関係があると推測でき、同時に、ケルシーも深海と関わっていると思う。
 2つの側面を結び付けて考えると、この3つの勢力の源が高い確率で同一だとわかる。
 (だからケルシーの例のセリフは本当に身から出たさびだよ...)
 故に、源石の裏にいる例の神は、深海に身を隠しているのではないかと考える。ケルシーの何度目かの命であった鯀が対抗していたのは自分を作った神で、だからアビサルのアーツ適正が封印され、欠落となった原因は、神によって与えられた権能がまた神によって撤回されたと推測する。
 こういった権能の撤回は血脈に繋がっており、この撤回命令をある程度避けられる方法は3つあり、サルカズの「引き裂かれた血脈」、ケルシーの「絡合(*化合)血脈」とアーミヤの「嵌合血脈」だと考える。
 アーミヤが物語の主人公だから、千もある道の中で唯一成功できるのは恐らく「キメラ」だろう。

バベルの塔プロジェクトと賢者の石:ーー神の世界に至る階段

この偽りの星空を破ろう

 上記の10章を書き終わって、知らぬ間に散らばっていたバベルの塔プロジェクトというパズルのすべてのピースをかき集めたことに気づいた。では、ケオベでも分かる言葉で、ロドスがバベルの塔を建て直し、賢者の石を錬成するすべてのプロジェクト内容、このプロジェクトの人的配置及びポイントとなる特定時間について分析していきたい。

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 まず、完全な生命の樹を作り直す必要がある。このステップは主に2つの部分に構成されている:
 1.深海の息壌血脈の持ち主がバベルの塔を建て直す。PV2から推測して、このミッションはアーミヤが担当だろう。
 2.地面に墜ちた8つの「枝分れ」たる人工月を修復して、空に戻らせる。今のストーリーからすると、ニェンとその兄弟姉妹が担当の可能性が一番高い。同時に、今の「月」の所有者の協力も必要だ。
 そして、賢者の石の材料と真理の扉に支払う対価を集める必要がある。
 対価について前の章で既に分析したが、もちろん、プレイヤーの不興を買うことを避けるために、黄化段階にある源石が賢者の石に赤化する際に対価を支払う必要がないという設定になっている可能性もある。
 材料について、錬金術の中で第五元素を作るには、水、空気、火、土の四元素をある一定な方法に沿って結合させる必要がある。
 賢者の石の概念は8世紀後半、アラビアの錬金術師ジャービル・ビン・ハイヤーンによって作られた。彼の錬金術理論はアリストテレスの四元素説を基礎とした。「熱・冷・湿・乾」の4つの性質の中で、火は熱・乾、土は冷・乾、水は冷・湿、空気は熱・湿とされる。彼は更に一歩進んで、「あらゆる金属はこの四元素の結合」という理論を打ち出した:土と水は内なる元素、火と空気は外なる元素。この場合、ある金属は他の金属に変質した際に、この4種類に物質の組み換えが発生したという推論が出された。こうして、「黄金」あるいは賢者の石を錬成するにはこの四元素を原料にする必要がある。そして、1~10章の中で論証した一部重要なポイントは、ちょうどジャービルの理論中の四元素に対応している。アビサルの血脈の所有者が土を提供し、「河川の源」の冬霊が水を提供し、洪炉(あるいは他の何か、例えばタルラのドラコの炎)そのものが火、空気は環境に存在するものを利用する。冷と熱については、「永遠に融けない氷」と「決して消えない炎」を使って緻密に調整する。まとめて下記の表通り:

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 原料はこの四元素以外、賢者の石を錬成するには硫黄と水銀が必要だ。テラ世界においてはニトロセルロースさえ誰もわからないから、硫黄と水銀は大量に存在しないだろう。しかし錬金術の中で、太陽が硫黄で月が水銀と表示されており、その本質は陰と陽の力だ。故に、賢者の石を錬成する際に必要な「硫黄」と「水銀」は、太陽と月から抽出することができるはずだ。一般的な錬金術の書籍ではこのような抽出方法が提示されていないが、『鋼の錬金術師』では、フラスコの中の小人が太陽と月が完璧に重なるタイミング、つまり皆既日食を利用してこの目的を達成した。『アーツナイツ』は『鋼の錬金術師』を参考にした可能性が高いと思う。

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 では、テラの錬成陣も同じ皆既日食を利用して発動するものなのだろうか?既に知っている2つの錬成陣の発動時期、「夕娥、月に奔る」の時期と巫王の高塔があった時期について見てみよう。
 巫王が死んだのは「何十年前」、今の時間はおおよそテラ暦の1097年。では何十年前というのは恐らく30‐40年前(この数字より小さい、あるいは大きいときは往々にして比較的に正確な数字を使うことが多い)、即ち1057~1067年の間だろう。
 「夕娥、月に奔る」のストーリーで、ドクターの原型は后羿と舜。后羿の生歿は不明だが、舜の生歿は記載されている。その1つは紀元前2287~2188年という説だ。(この説は北宋時代の儒学者邵雍(*1012~1077年)が書いた『皇極経世書』に記録された陶唐氏とされる堯の治世の始まりである唐堯元年が紀元前2357年だという情報と、前漢(*紀元前206年 - 8年)の歴史書『史記』の記載「堯が70歳になった頃に舜が生まれ」というのと、舜が百歳になって亡くなられたという内容と合わせて推測した結果だ。)
 古代の日食の年代別一覧表を調べてみたら、上記の2つのデータは驚くほど一致している。

1.紀元前2231年5月17日に起こった皆既日食は7分21秒継続し、紀元前3000年から紀元前2001年の間皆既継続時間が一番長い皆既日食だ。この日付はちょうど、舜の生歿である紀元前2287年~紀元前2188年の間に起こったことだ。

2.1062年6月9日に起こった皆既日食は7分20秒継続し、1001年から2001年の間皆既継続時間が一番長い皆既日食だ。この日付はちょうど、上記推測の巫王が死んだ年である1057年~1067年の間に収まる。

 ここで更なる仮説を立てる:ハイパーグリフはテラの重要な天文現象が起こるタイミングを設定する際に、リアル世界の時間を参考した上で何百年の増減をせずに、地球の天文現象が起こるタイミングそのまま使ったのではないかと考える。同時に、上記の皆既日食現象はいずれも1000年以内最も継続時間が長い皆既日食で、賢者の石を錬成する際には、皆既日食の継続時間が長いほど良いという考えではないかと推測する。理論上、惑星の運行速度から計算して、皆既日食の継続時間は一番長くも7分31秒のはずだ。
 この推測を基に、900年~1200年の間すべての皆既日食の継続時間を集めて、継続時間の長い順に並び替えして下記の表を得た(ユリウス暦):

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 データを整理している時に、300年間で皆既日食は計188回起こったが、継続時間が7分超えた4回はすべて11世紀に集中していることに気づいた。継続時間が上位10位の皆既日食のうち、8回も11世紀のものだった。11世紀が日食の世紀と言ってもいいだろう。推測だが、ハイパーグリフはメインストーリーの時間を11世紀に設置したのもこの理由だと思う。また、ケルシーの印である懐中時計に4つの日付が刻まれており、この点は11世紀に継続時間が7分以上の皆既日食は4回あることに繋がっている可能性も考えられる。

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 「他の国では見たことがない様式の一風変わった懐中時計。4つの年月日とゆがんで不格好な文字が刻まれている。」

 では、メインストーリーに一番近いのは、1098年7月1日に起こった、継続時間が7分5秒のもので、この日付けはアーミヤにとってバベルを立て直す一番いいタイミングだと思う。この機会を逃したら次の長めの皆既日食はもう1116年で、もし「7分を超える皆既日食」が必要な場合、次の機会は840年後の1937年6月8日になってしまう。PV2でアーミヤはまだ子供で、「この日が来るのって早すぎないか」と思うが、これは一度限りの機会かもしれない。
 そして、7月1日が誕生日のオペレーターは2人いる。
 1人目はウン。ウンはアと明らかに対なる概念で、それぞれ仏教の用語で終わりと始まりに対応している。前文で、アはドクターが賢者の石を研究して災難を招いた「始まり」を示唆していることについて述べたが、アと対なるウンは、この災難の「終わり」を示唆していると考える。
 2人目はスワイヤー。スワイヤーのモチーフは虎で、洪炉示歳のイベントでコーデも実装され、アークナイツのメインストーリーに一番近い寅年はちょうど1098年の戊寅の年だ。
 この結論は衝撃的でとても信じがたいかもしれないが、例の肝心な問題を解釈できている:なぜ『明日方舟(アークナイツ)』の英語は『Arknights』で、『Tomorrow's Ark』ではないのか。「明日」の意味はそもそも明日ではなく、「明」の字の「日と月が重なる」形を取って、日食が起こる際の天体の位置関係に対応しているのではないかと考える。「アークナイツ」の本当の意味は、日食が起こった日の救いの箱舟かもしれない。
 天文学の要素を設定として導入したもう1つ重要な理由は海猫Pが経費で追っかけてる「Starset」だろう*。主要メンバーは天文学と深くかかわっており、バンド成立の背景となる物語は:2013年1月1日、地球は2047年のへびつかい座から発信された「メッセージ」を受け取った。この「メッセージ」は人類の起源と終末に関わる内容で、急速な科学発展のマイナスな影響について警告を発した。この「メッセージ」を伝達するために、Starsetというバンドが誕生した。PV3のために書いた曲「Infected」のMVで(https://www.bilibili.com/video/BV1fU4y1b7TM)、日食に似ているシーンがある。MV最初の部分は順次にへびつかい座、おとめ座、ヘルクレス座に似ている画像が出てきて、この3つの星座はそれぞれ、中国の伝統的な天文学の体系でいう三垣二十八宿の天市垣(平民が住んでいるところ)、太微垣(貴族と大臣たちが住んでいるところ)、紫微垣(天帝が住んでいるところ)に位置する。この知識を頭に入れといて、この文章の世界観に対する推測と結び付けて「Infected」のMVを見てみるとまた違う角度のことが読み取れるかもしれない。
(*「Starset」は単語として「Sunset」と似たような構成で、日落ちと同じように星墜ちと訳してもいいだろうか。周知の通り海猫Pは「Starset」の大ファンで、「また経費で追っかけてんな」って大陸版の皆さんはよく冗談で言ってます。)

 この文章の世界観に対する推測を踏まえてStarsetの他の曲を見てみると、アークナイツの設定の源の1つとして解釈できるのではないかと思う。下記通り個人的に対応関係が存在しているいくつかの例を簡単にピックアップする:

1.「Monster」ハイパーグリフがPV1での使用のために著作権の使用料を支払った曲で、息壌の血脈に対応しているかもしれない。
*歌詞↓
https://www.musixmatch.com/ja/lyrics/Starset/Monster/translation/japanese

2.「Unbecoming」ハイパーグリフがPV2での使用のために著作権の使用料を支払った曲で、プリースティスに対応しているかもしれない。
*歌詞↓
https://www.musixmatch.com/ja/lyrics/Starset/Unbecoming/translation/japanese

3.「My Demons」ロドスとケルシーに対応しているかもしれない。 
*歌詞↓
https://www.musixmatch.com/ja/lyrics/Starset/My-Demons/translation/japanese

4.「Starlight」8章プリースティスの告白に対応しているかもしれない。
*歌詞(和訳なし)↓
https://www.musixmatch.com/ja/lyrics/Starset/Starlight

5.「It Has Begun」アーミヤの誕生日に対応しているかもしれない。
*歌詞↓
https://ch.nicovideo.jp/sametira/blomaga/ar1290721

6.「Satellite」人工月に対応しているかもしれない。
 *歌詞(和訳なし)↓
https://www.musixmatch.com/ja/lyrics/Starset/Satellite

7.「Point of No Return」大錬成と最終防御ラインに対応しているかもしれない。
 *歌詞(和訳なし)↓
https://www.musixmatch.com/ja/lyrics/Starset/Point-of-No-Return

 ゲーム初期の宣伝スローガン「未来を鋳直す 箱舟起航」とイースターエッグの「Back to the Future」といった情報、テラの古文明の科学技術のハイレベル、また未来の2186年7月16日に起こるかもしれない大錬成、継続時間が7分29秒の皆既日食で、この日食は紀元前3999年から6000年の1万年の間で持続時間が一番長い皆既日食だということを考えて、この錬成の結果は時間を逆転させたのではないかと考える。
 皆既日食の観測可能な位置が固定ではないのと、テラ大陸が常に移動している大陸で、この大陸の中心は常に次のスーパー皆既日食にロックオンしている可能性がある。近頃が出てきた間違った天体の位置は、この事実を隠すためだ。間違った天象を基に導き出した観測可能時間は合っているはずがない。合っていないタイミング計算はすべての計画を覆す。だからテレジアを殺した真犯人は、この偽りの天幕かもしれない。また、もしこの皆既日食説は本当に合っているのなら、テラはほぼ地球だと確定でき、このことは他の角度から「鯀は羽淵に沈んで」の原因を解釈できる:鯀はリヴァイアサンとベヒーモスと関わっていて、ベヒーモスの複数形はアラビア語圏に入ったらバハムートになった。アラビア神話中、バハムートは地球を支えた巨大な「世界魚」で、底がない深淵の上に大地を背負って航行する。
 最初の問題に戻りたいが、アーミヤの誕生日、メインストーリーでドクターが目覚めた日、そしてゲームが始まった最初、謎の声がドクターに伝えた「忘れてはいけない日」はなぜ12月23日なのか、答えが見えるようになったと思う。まず、プリースティスがドクターを寝かせた日とアーミヤがドクターを呼び起こした日は明らかに対なる関係が存在する。プリースティスこそが最初の最初、ドクターが覚えている「あの名前」。だから、八章でプリースティスがドクターに別れを告げる時の時間は、紀元前2231年5月17日後のとある12月23日のはずだと思う。この日は、日食と構造上対なるはずだが、月食ではないはずだ(紀元前23世紀~紀元前20世紀すべての月食をNASAの表に沿って遡ってみたが、関わりがありそうな日付はなかった)。だが、日食は新月のときにおこる。最近追加されたリターニア風の家具シリーズに「月影」という家具があり、形は新月に似ている。同時に、へラグのスキル名はすべて月相由来。故に12月23日について一番重要なヒントは月相にあると考えた。
 「月隠晦明」のガチャはほぼ直接に答えをくれたようなもので、背景イラストでは、月を代表するシーは左側にいて、食べ足りない天狗を代表するサガは右側にいる。背景の月は左側が明るく、右が暗い。これは月相の中の「下弦の月」に対応している。「天空の物語」で、古代ローマの街が原型の「七つの丘の都市」が出来上がった100年後、母狼は子供と争いたくないがために空に昇って、月を覆う影になった。古代ローマの街ができたのは紀元前753年4月21日、その100年後は紀元前653年4月21日、この日は中国旧暦の戊辰年五月廿一(*辰年5月21日)であり、ちょうど月が左に明るく右にくらい時期に近く、月まで昇れる時期だ。この時間をヒントにすれば、紀元前2231年5月17日から後ろに当てていくと、紀元前2225年12月23日は中国旧暦の丙辰年十一月廿一(*辰年11月21日)で、干支も日付も一致している。また、2225年と2231年の6年の差もスズランが言ってた「数年経っても夕娥は旦那様を見つけることができず」のところに一致する。故に、紀元前の2225年12月23日が夕娥が月に昇った日だと結論付けできるのではないかと考える。
 つまり、紀元前2225年12月23日に始まって、1098年7月1日に終わった「バベルの塔プロジェクト」はまとめて約3322年続いた。そして、この千年計画を支えた最も大事な言葉は、「私のこと、忘れちゃだめよ」。
 こうして、対聯の下の句「星は点雪に覆われ、月は晦明に隠る。古拙なる山々、老い枯れたる川。気勢は滔々たる江のごとし。」の意味も解釈できるようになってきた:(墜ちてきた)衛星は雪の中に隠れ、月相がもうじき下弦の月になるとき、(夕娥はこの機会を利用して衛星を使って月に昇って、)拙山(水があった拙政园)を枯水に変えた(水のない日本庭園の枯山水)。それはつまりテラの海侵を排除し、神話が言ってた夕江が山の頂上から流れ落ち、この乾いた大地の命の源となった。
 この文章は夕娥が月に昇ったことの全貌を物語っている。ここで1つ重要なのは、夕娥が例の海侵を排除した人のようだ。ストーリーの『拙山尽起図』、シーのEP『尽波瀾』または配布の10連チケット「日落潮来(Tide on Sunset)*」は、星々が墜ちた後に夕娥が「防波堤」を上げて海侵を終わらせた一連の流れを示唆しているかもしれない。同時に、これは前の内容で分析した鯀がやっとことでもある。
*大陸版すべての記念スカウト券はいつも特殊な名前がついてることに対し、日本版はそれを訳さず、今回も「1.5周年記念10回スカウト券」というネーミングでした。

画像37

 こうして、夕娥、鯀、ケルシーの前世、アーミヤの魔王の血脈の源、ロドス内部にある亡骸とPRTSの設計者はすべてプリースティスだという可能性も見えてくる。5月の限定ガチャ名(*ケルシーガチャ)は「深悼」。悼むのはプリースティスなのだろうか。テラ今の文明を生み育ったのは、プリースティスの惑星レベルのウェィルフォールス(whale falls)かもしれない。クジラが落ちてくると万物が生まれ育つ。

画像37

 故に、洪炉示歳と画中人はそれぞれ、バベルの塔プロジェクトの終わりと始まりに対応していて、ニェンとシーは、テラ世界の「双月」を象徴しているのだと思う。画中人イベントのステージクリア報酬でもらえるパネルの名前はなぜ「終始」というのか。なぜパネルに神々の黄昏*が書かれているのか(974年+900年=1874年。楽劇作品『ニーベルングの指環』の終幕「神々の黄昏」上演の年だ)。理由も自然にわかってくるだろう。
(*北欧神話でいう「ラグナロク」ですが、このパネルはワーグナーの楽劇作品『ニーベルングの指環』が元ネタで、その終幕のドイツ語名「Götterdämmerung」を直訳すると「神々の黄昏」になり、この誤訳は13世紀に誕生してからずっと世間に広く使われています。)

画像40

 賢者の石を錬成している間、バベルはテラ一番の標的にされるに違いないため、完全な防御が必要だ。防御に最も適している場所は2つある。最初の防御ラインは「防波堤」の隙間に。こうして海からの怪物がテラ文明に大きなダメージを与えてしまうことをある程度防げるはずだが、イベリアの穴が大きすぎたため、ここは間違いなく陥落する。イベリアからリターニアの間の土地は地獄になるのも時間の問題だ。
 そして、次の防御ラインはバベル周辺の有利な地形を中心に最精鋭の戦闘部隊を配置し、深海からの敵による妨害を防ぐ最終防御になる。この防御ラインの名前は、アンジェリーナコーデに取り上げられた「第二最終防御ライン」の可能性があると考える。

画像40

(この推測が合っていたらアークナイツのジャンルを「タワーディフェンス」にしたのって実に適切すぎたものだ。)

 バベルの塔プロジェクトはセベリンが夢見たのと同じように、「全ての源石が、地中深くに沈んでいった。そして、鉱石病が猛威を振るうことはなくなった」という結末を迎えてほしい。こうして、ロドスが発動した錬成の結果は、世界を「治癒」するものだ。

画像40

 だから、ロドスってちっとも製薬会社っぽくないなって突っ込まないでください。ロドスが作ろうとしている薬は、万能の霊薬アゾットに並ぶ賢者の石で、そしてロドスが治そうとしている病人はテラそのものだ。

続きは宇宙へ↓

【注釈】

〔注1〕「鴟龜曳銜,何聽焉?順欲成功,帝何刑焉?」という言葉について論文多く読んだが、昔の文章には主語がないため、色んな解釈があり、答えは1つではない。理解しやすいように、考察の作者様の主張に沿って訳した。

【翻訳するための参考資料】

(2018年2月)尹青青「『山海経』海外経と大荒経の関係について」『大学院研究年報第47号』(リンク下記↓)

『漁父辞(漁夫之辞)』
https://manapedia.jp/text/1976

・『宗教学年報XXVIII』「画像石墓における”死者の中心性”についてー漢代中国のコスモロジー分析を通じてー」濱田倫子,P180



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