微生物からAI、宇宙まで 日本発「ネイチャーポジティブ」に資する50社

EF Polymer

代表者|ナラヤン・ラル・ガルジャール 設立|2020年

農家の水不足を救う高吸水性ポリマー
オレンジやバナナの皮などの有機廃棄物を原料に完全オーガニックな高吸水性ポリマーを開発。農業での実証実験では、約40%の節水、肥料を約20%削減する一方で、農作物の収穫量を約15%増加するという結果が出ている。生分解性をもつため、土壌に悪影響のある残留物も残さない。アメリカ、日本、インドなどの5カ国で160t超を販売。

ルートレック・ネットワークス

代表者|佐々木伸一 設立|2005年

クボタが認めたAI灌水施肥システム
AI灌水施肥システム「ゼロアグリ」を提供。土壌センサーや日射情報から作物にとって最適な量とタイミングをAIが算出し、自動で灌水、施肥を行う。農業用水の使用量を抑えるとともに多施肥を防ぎ、化学肥料による地下水汚染の抑制やCO2排出削減に貢献する。2023年7月、クボタの連結子会社となった。

スプレッド

代表者|稲田信二 設立|2006年

次世代植物工場によるサステナブル野菜
自動化設備と加工技術を備えた植物工場「Techno Farm」の開発・運営に加え、サステナブル野菜ブランド「ベジタス」を展開。露地野菜と比べ水使用量を約1/100まで低減すると同時に、約90%の出荷歩留まり率で食品ロスを削減。累計販売数は1億食を突破。直近では、消費期限を加工日から最大6日まで延長した「ロングライフカットレタス」を開発。

バイオシードテクノロジーズ

代表者|広瀬陽一郎 設立|2018年

土壌微生物の力を引き出すバイオスティミュラント
高低温や乾燥などの非生物性ストレスを抑えることで、植物や土壌をよりよい生理状態にし、生育の促進などにつなげる農業資材「バイオスティミュラント」分野のベンチャー。酸化還元電位、二価鉄を中心としたミネラル、アミノ酸などの組み合わせによって土壌微生物の能力を最大限に引き出す、化学農薬や化成肥料に置き換わる農業資材を開発。

エレファンテック

代表者|清水信哉 設立|2014年

水消費95%削減のフレキシブルプリント基板
「新しいものづくりの力で、持続可能な世界を作る」というミッションのもと、既存製法に比べてCO2排出を75%、水消費を95%削減できるインクジェット印刷による電子回路製造技術の実用化・普及に挑戦。6年間の基礎研究を経て、2020年に環境負荷の小さいフレキシブルプリント基板(FPC)「P-Flex」の量産に成功。グローバル展開を目指している。

ICS-net

代表者|小池祥悟 設立|2017年

食品原材料の廃棄をなくす
食品原材料のサプライヤーとバイヤー向けの売買プラットフォーム「シェアシマ」を運営。大ロットの出荷はもちろん、スポットの注文にも対応。余剰在庫による食料廃棄の削減に寄与する。直近では、食品製造を委託したい企業と工場をマッチングし、廃棄処分されている未利用の食品原料のアップサイクル商品を開発する企画も推進。

ファーメンステーション

代表者|渡辺(酒井)里奈 設立|2009年

化粧品業界で注目の循環型エタノール
独自の発酵・蒸留技術を用いて、非食用の米や飲料用のリンゴの搾りかすなど余った食品から高濃度のエタノールを製造。製造過程で生まれる副産物は、ほぼすべて無駄なく飼料や肥料として活用することで、廃棄物ゼロの循環型事業を実現。環境に配慮した製品が望まれる化粧品業界からの引き合いが増えている。

fabula

代表者|町田紘太 設立|2021年

100%食品廃棄物からつくる新素材
規格外の野菜や加工時に出る端材などの食品廃棄物から新素材をつくる特許技術「100%食品廃棄物から作る新素材」を保有。コンクリートの約4倍の曲げ強度を誇り、建材としての利用も見込まれる白菜の廃棄物製の素材などを生み出している。みかんの皮製のコースターなど、原材料となる食品の色や香りを楽しめる小物や家具も製作。

AlgaleX

代表者|高田大地 設立|2021年

魚に魚を食べさせないアップサイクル技術
泡盛製造時の酒かすから植物性DHA(ドコサヘキサエン酸)とうま味を多く含む藻「Umamo」を培養する技術を保有。アップサイクル食品として販売するのみならず、養殖魚の飼料として展開。養殖では主に小魚が飼料原料に使用されており、同社では未利用資源を使うことで「魚に魚を食べさせない」持続可能な養殖方法の確立を目指す。

環境大善

代表者|窪之内誠 設立|2006年

牛の尿を原料に消臭液を開発
これまで畜産廃棄物とされていた牛の尿を有用な資源に変える事業を手がけている。地元の酪農家から仕入れた牛の尿に、乳酸菌などの環境微生物群を使い独自の技術で発酵、熟成。これによってできた「善玉活性水」を消臭液や土壌改良材として製造・販売している。消臭効果と安全性は、日本食品分析センターなどで科学的に検証済み。
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文=フォーブス ジャパン編集部

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2025.08.04 16:00

ブシュロンが再定義する真のプレシャス──美術家・須田悦弘が見出す貴き価値

“プレシャス”という言葉には、華やかさやきらびやかなイメージが先行するが、本当のプレシャス=貴いものとは、人々の内面に訴えかける力を宿したものではないか。美術家・須田悦弘がブシュロンに見いだす、貴き価値に刮目したい。


コロナ禍に膨れ上がった“アートバブル”を経て、今日現代美術(コンテンポラリーアート)は大きな曲がり角に向かおうとしている。そうしたなか、ファクトリーともいうべき工房を構え、大勢のスタッフとともに作品を量産し、群雄割拠のアート界で生き残りを模索するアーティストも少なくない。

だが美術家の須田悦弘は、そんな流れに背を向け、黙々とひとり木と向き合い、精巧な木彫作品を生み出し続けている。そのモチーフは主に植物だが、同様に1858年の創業以来、植物をはじめとした自然の造形物をモチーフに多くのジュエリーを発表してきたのが、フランスの名門ジュエラー、ブシュロンだ。

美術と宝飾、分野は違えど、なぜ古今東西の“美の探究者”は自然に倣おうとするのか。

須田悦弘 Yoshihiro Suda『チューリップ Tulip 2008』(c) Yoshihiro Suda / Courtesy of Gallery Koyanagi
 須田悦弘『チューリップ』2008年 (c) Yoshihiro Suda / Courtesy of Gallery Koyanagi

「私が植物を題材にするのは、単純に美しいと感じるからです。そしてその美しさを人々に伝えたいという欲求があり、たまたま木を彫る技術があるから木彫作品をつくっているに過ぎません。では、なぜ植物を美しいと感じるのか。それは植物が人間を利用するためではないでしょうか。人間に美しいと思わせられれば、植物はさまざまな場所に植えてもらえる。中央アジア原産のチューリップが海を越え世界に広がったのは、まさに美しいからに違いない。人間を利用しない限り、チューリップのような植物が海を越えるのは難しいので。つまり植物は、人間を魅了するために美しくなったとも考えられるのです」

人々の価値観を揺さぶる芸術の力

人間を魅了し、利用するために美しく進化する──。感性豊かなアーティストらしい、ドラマチックなとらえ方だ。その考えにのっとれば、植物の美しさを精緻に再現する須田の作品、そして植物の美しさから着想を得たブシュロンのジュエリーが人々を魅了するのも、ある意味必然と言えるだろう。

そんな自然の美しさを探究するブシュロンは、環境に対する意識も高く、自然環境保全の声明として“PRECIOUS FOR THE FUTURE”を掲げ、真にプレシャスなもの、本当に価値のある貴いものを問い続ける唯我独尊のジュエラー。

その一環として2022年に発表されたカプセルコレクションが「ジャック ドゥ ブシュロン ウルティム」だ。その原料は、驚くべきことに建築現場で排出される産業廃棄物!である。

「ジャック ドゥ ブシュロン ウルティム」は、建築現場の産業廃棄物という利用価値のないものに新たな価値を見いだしたいという発想から生まれた作品。廃棄物を高温焼成し、 ガラス固形化させた「コファリット®️」という漆黒の再生素 材とダイヤモンドが、独特の美しさをたたえる。このブロー チの他にイヤスタッドや、ブレスレットとしても着用できるマ ルチウェアなネックレスも制作された。非売品
「ジャック ドゥ ブシュロン ウルティム」は、建築現場の産業廃棄物という利用価値のないものに新たな価値を見いだしたいという発想から生まれた作品。廃棄物を高温焼成し、 ガラス固形化させた「コファリット®️」という漆黒の再生素材とダイヤモンドが、独特の美しさをたたえる。このブローチの他にイヤスタッドや、ブレスレットとしても着用できるマルチウェアなネックレスも制作された。非売品

「ダイヤモンドなどきらびやかなイメージがあるハイジュエリーに、対極的と言っても過言ではない産業廃棄物を使用するとは驚きました。とてもとがった考え方であり、パンクの精神すら感じます。一見無価値と思われるものに価値あるもの、プレシャスなものを見出す。それは現代アートに通じるアプローチといえるでしょう。また、まるで黒曜石のような美しさもあり、その独創的な技術力も素晴らしく、勉強になりました」と須田は語る。

彼が作品の題材に選ぶのは、雑木や雑草といった、いわば日常の風景に溶け込んでいる植物ばかり。そんな見慣れた植物を精緻な木彫によって表現し、本来植物があるはずのない空間に設置することで、まったく異なる価値や意味、視点を人々に投げかける。

そうした人々の価値観をも転換させうる現代アートに通じるメッセージ、そして自然環境という人類にとってかけがえのないプレシャスなものへの敬意と、希少性や価値といったものに対する問いかけが、「ジャック ドゥ ブシュロン ウルティム」には込められているのだ。

従来のハイジュエリーとは一線を画す、革新的な存在感を放つ「ジャック ドゥ ブシュロン ウルティ ム」のブローチ。産業廃棄物が原料とは思えない美しさだが、その事実がメッセージとなり、廃棄物の問題や地球環境を考えるきっかけともなるのだ。
従来のハイジュエリーとは一線を画す、革新的な存在感を放つ「ジャック ドゥ ブシュロン ウルティム」のブローチ。産業廃棄物が原料とは思えない美しさだが、その事実がメッセージとなり、廃棄物の問題や地球環境を考えるきっかけともなるのだ。

「アートとは、自分で感じた美しさ、感動を人々に伝えたいという、純粋な欲求がコアとなっているもの。最新の3Dプリンターなら似たようなものがつくれますが、私が手で木を彫るのは自分の欲求、思いを込めたいからです。そんな思いが人々に伝わり、欲しいと言ってもらえれば最高だし、つくる価値はあると信じています」

あらゆることがマーケティングされ、デジタルで気軽にモノが生み出せる現在。作り手の思いは置き去りにされがちである。だがそんな時代だからこそ、純粋な思いが込められたモノには、人々の心を打ち震わせる魂が宿るのだ。

ブシュロン ジャパン
https://www.boucheron.com

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 須田悦弘『朝顔』2010年 (c) Yoshihiro Suda / Courtesy of Gallery Koyanagi

すだ・よしひろ◎1969年山梨県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。大学在学中に木彫を始め、以来、自然の造形物を実物と見分けがつかないほどリアルに表現した作品を追求。そんな木彫を意外な場所に設置し、観る者の内面を揺さぶるインスタレーションとして表現する。国内外での個展に加え、各国の主要美術館に作品が収蔵されている。

promoted by ブシュロン|text by Yasuhiro Takeishi | Photograph by Yoko Nakata (Maetico)|direction by Akira Shimada