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四川省で起こった民衆の抗議!江油事件の経緯ー民衆はなぜ怒ったのか

8月、四川省で発生した民衆抗議


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8月5日、四川省で民衆による権力に対する抗議運動が起こった。

場所は四川省江油市という町だが、筆者は本件で初めてその町の名前を知ったほど、その知名度は低い田舎町である。

まずは、事件が起こった江油市を見てみよう。

四川省江油市
江油市のロケーション

江油市は四川省、省都の成都の北部にある小さな町で、行政的には綿陽市の中にある市である。日本で言えば「○○郡XX町」といったところか。

四川省江油市

成都からは高速道路が通っているようで、成都市中心部から車で2時間半ほど、距離は200km弱といったところか。

四川省江油市

江油市中心部はこんな感じになっており、個人的には「李白記念館」が気になる。レビューの評判はいまいちのようだが…

その李白記念館の前の道「詩仙路(诗仙路)」が、5日の事件の中心地である。

なお、以降は便宜上、本件を「江油事件」と記すこととする。

江油事件はなぜ起こったか

この騒動の経緯は何か。XのGrokの回答を元に経緯を整理してみることにする。

1.あるリンチ事件

事のきっかけは、8月3日、複数の若い女性が廃墟となった建物内で一人の女性を囲んで殴打し、屈辱を与える動画がインターネット上で拡散されたことに始まる。

動画では、加害者が少女を拳で殴り、足で蹴り、強制的に服を脱がせ、その全過程を撮影してネットにアップロードした。

被害者は身体はもちろん、精神的にも深刻なダメージを受けた。

いじめを受けた少女の両親は耳が不自由な聾病者で、事件発生後に何度も警察署に通報し助けを求めたが、警察から明確な対応が得られなかった。

中国四川省江油で起きた民衆抗議事件
壁内SNSのチャットグループより

しかも、「壁内LINE」こと微信のチャットグループでは、
「関連動画・画像の拡散禁止、投稿は削除しろ!」
と学校側から圧がかかった。
その上で、加害者が、
「警察署に10回以上行ったけど、毎回20分以内に釈放される」
と被害者を嘲笑する動画を投稿し、ネットに火をつけた。

このことから、ネット上では加害者の親が地元当局や公安と関係があるとの噂が流れ、事件後の処罰が遅れていることが市民の強い不満を引き起こし、多くのネットユーザーが当局の対応態度に疑問を呈した。

2.民衆の抗議


4日午後、多数の市民が江油市政府前に集まり、被害者の家族を支援し、加害者への厳罰を求めた。現場から流出した動画によると、黒い服を着た特警が現場で指揮を執り、警察はその後強制的に群衆を解散させ、複数の市民を逮捕した。


中国四川省江油市で起こった民衆の暴動「江油事件」。豚用のトラックで連衡される逮捕者

逮捕された人々は、豚を運ぶためのトラックに詰め込まれて連行され、現場の群衆から「暴力的な法執行」との叫び声が上がった。

警察がその後道路を封鎖したが、その夜も多くの市民が集まり、国歌を歌って被害者への支持と当局の法執行への不満を表明した。

国歌を歌うなんて何と愛国な…と思ったら大間違い。

中華人民共和国の国歌は、歌詞を見たらわかるが「反体制の歌」。つまり反政府のテーマソングにもなり得るのである。

これも「アンチ」として歌っており、国歌を歌うことで「権力への抵抗」を示しているのである。

仕方ない、国歌の冒頭からして
「起来! 不愿做奴隶的人们」
(立ち上がれ!奴隷となることを望まぬ人びとよ!)
である。

そもそもそういう歌なのだから権力側も文句は言えない。

江油市当局は、普通の警察では事態を収拾できないと判断し、行政の上級機関である綿陽市に特別警察の派遣を要請した。

そして、特警をあらわす全身黒塗りの車に乗った大部隊が、一路江油へ向かうことになる。

3.そして暴力による鎮圧


5日の未明、市政府周辺や複数の通りには依然として市民が集まっていた。警察は暴力的な手段を開始し、集まった群衆を強制的に殴打して逮捕した。


現場の動画によると、警察はグループに分かれて行動し、唐辛子スプレーを使って群衆を追い散らし、単独の市民を殴打した後、強制的に連行した。

複数の市民が衝突で負傷し、一部は血まみれだった。ある市民が抖音(Douyin)でライブ配信を開始し、携帯電話で現場の状況を記録しようとしたが、複数の警察官に囲まれて殴られ、ライブ配信も混乱の中で終了した。

治安当局は民衆を「暴徒」とみなし、容赦ない攻撃を加えた。時代が時代から、これ催涙ガスではなく、実弾だっただろう。
そんな権力の力による弾圧に対し、民衆は
「くたばれ共産党‼️」
「習近平は辞めろ‼️」
と声を挙げた。


午前3時、ネットユーザーによると、軍の信号妨害車と疑われる数台の車両が江油の街頭に現れ、抗議動画の流出を防ぐためにネットワーク信号を遮断した疑いがある。

最後に、Xでの中国人インフルエンサー、李老師不是你老師が中文ながら動画ダイジェストをアップしているので、興味ある方はご覧いただきたい。

総括ー人民の不満のガスは国内に充満している

「江油事件」、きっかけは学校での「いじめ」であった。
言葉は悪いかもしれないが、こんな「些細なこと」がこれだけの民衆抵抗運動が起こった理由。
それはひとえに、民衆の権力に対する不満やフラストレーションが溜まっているからである。

現在は、「人民弾圧部隊」こと特警などを使って力で圧を加えたり、反日を煽って外に敵を作ったりしてなんとか抑えている。

が、江油事件は語る。
「ちょっとしたこと」で民衆が爆発するほど、中国国内は不満のガスが充満し、いつ、どこでどんな爆発が起こっても良い状態になっていることを。

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コメント

1
gunparademarchist
gunparademarchist

日本に住む人たちも、見倣って、
学校や、政府に問題があれば、
必ず、抗議し、
排外主義と言う、ガス抜きに、
釣られないようにしないと、なりませんなぁ。

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中国&台湾ウォッチャーの二刀流。自称「東アジア情勢界の大○翔平(笑) 「中国を識る」をコンセプトにした中国コラム、台湾の歴史・現代台湾の姿を中心に執筆している「中国語圏noteクリエーター」です。
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