「コロナはただの風邪だ」「陰謀だ」と誹謗中傷が目立つように…

――リプライに誹謗中傷が目立つようになったのは、いつくらいから。

 スタートしたとたんに飛んできました。最初は戸惑いましたよ。いままでそんな経験がなかったので。SNSをやっている知人に「Xってこんなにひどいこと言われるの?」と聞いたら、「フェイスブックはぬるま湯で、Xは修羅場ですよ」と返されて。

 そのころから、SNSにおける匿名性の問題も感じていました。面と向かっては絶対に言えないようなことを、平気で言えてしまう。「これは危険だな」って。

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――初期の誹謗中傷は、どのような内容でしたか。

 まだワクチンも治療薬もない頃ですから、「コロナはただの風邪だ」「陰謀だ」「人工ウイルスだ」といったものが多かったですね。治療薬やワクチンの話が出てくるようになると、科学的根拠のないイベルメクチンを熱狂的に信じる人たちや、行動制限に反対する人たちからのリプが集まるようになって。

 そしてワクチンが普及しはじめると、反ワクチンを掲げる人たちからの誹謗中傷が激しくなっていきました。

 

――1日にどれくらいの誹謗中傷が?

 最初のころは、40件か50件くらいですね。いまも毎日20件くらい来てます。トータルでいったら、5000件は超えていますよ。

コメント欄でも誹謗中傷がひどくなった

――ヤフーニュースの公式コメンテーターも務めていましたよね。

 ヤフーニュースに書き込まれるコメントがひどかった。そことXでひどいことを言ってくるのは、たぶん同じ層なんですよ。大学から「コメンテーターもやってくれないか」と頼まれたとき、イヤな予感はしたんです。でも、サイト側は「ひどい投稿は速やかに削除しますので」と言ってくれたので。

――ちゃんと削除を?

 しっかりと削除してくれました。ただ、ヤフーニュースに載った僕のコメントを気に入らない人たちが、Xに転載するんです。そうすると、今度はXで一気に炎上する。

 よそに転載されると管轄外になるから、サイト側は対応しようがない。ヤフーニュースに誹謗中傷を書き込んだ人たちがXに引っ張られて、炎上が増幅される。そんな状態だったので、コメンテーターは1年で退任しました。

――病院に相談などは。

 ひどいものに関しては報告していました。取材を受けて、なにかを話すたびに荒れるので「先生、そろそろ取材を受けるのは控えましょうか」という話にもなりました。コロナ禍のピーク時は、1日に新聞やテレビを合わせて6、7件の取材を受けることもあったんですよ。NHKの取材クルーなんて、ずっと病院にいましたから。

岡秀昭教授が勤める埼玉医科大学総合医療センター(写真=埼玉医科大学のホームページより引用)

――それだけ現場の情報が求められていた。

 埼玉のこの地域で、最初にコロナ患者を受け入れたのがうちの大学病院で、一時期はうちしか受け入れる病院がなかった。だから軽症者から重症者まですべて運ばれてくるので、取材するには絶好の場所だったわけです。

――これほどの誹謗中傷を受けると想像していましたか。

 まったく。メディアの人間じゃないですから、そういう状況になってみるまでわかりませんでした。テレビなどに顔を出すというのは、そういうことなのかもしれないですけど。