外国人への土地売買規制、参院選で国民や参政が躍進し議論活発化 法整備には高いハードル

記者会見する参政党の神谷宗幣代表=1日午後、国会内(春名中撮影)
記者会見する参政党の神谷宗幣代表=1日午後、国会内(春名中撮影)

7月の参院選で外国人による不動産取得の規制を訴えた国民民主党や参政党が大きく躍進したことを受け、今後の国会での議論に注目が集まっている。規制を巡っては、令和4年に自民党などが主導して安全保障上重要な土地の利用を調査・規制する「土地利用規制法」が施行されたものの、売買規制はなく対象も限定的。制度の限界が指摘される中で、秋の臨時国会では規制強化に向けた議論が行われる見通しだが、法整備の道のりは険しいのが実情だ。

参政、規制法案提出準備

参院選で非改選を含めた議席を1から15に躍進させた参政の神谷宗幣代表は今月1日の記者会見で、土地利用規制法の改正を念頭に党内で法案提出を準備すると表明した。「土地規制は重要かどうかに関わりなく、一般の投資でも外国人が買う場合は一定の税を課すなどの制限をかけていきたい」と意欲を示した。

政府が昨年12月に公表した防衛施設の周辺など安全保障上で重要な土地や建物の令和5年度の取引数は、中国人や中国系法人によるものが計203件と最多で全体の約55%を占めた。

政府は4年に土地利用規制法を全面施行したが、中国などの外国資本による日本の土地買収が続く中、安全保障上の懸念はぬぐい切れていない。法整備の際、野党だけでなく、自民の一部や公明党から私権制限や経済活動の鈍化を招きかねないとの声が上がり、規制する行為が「売買」ではなく「利用」に限定されたためだ。

「留保条項」盛り込まず

施行から約3年がたち、野党からも規制強化を訴える声が高まるが、それでもハードルは高い。世界貿易機関(WTO)加盟国が結ぶ「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」には内外無差別の原則がある。日本は1995年の加盟時に、米国など諸外国と異なり外国人による土地取得を規制する留保条項を同協定に盛り込まなかった。当時は外資の呼び込みを優先したとされる。この協定に基づき、日本は外国人による不動産の所有や賃借に規制を原則としてかけていない。

政府関係者は「仮に外国人のみに売買規制を設ける場合、100カ国以上と交渉しなおさなければならない」と指摘する。協定に加え、憲法が保証する財産権との整合性や、外資の投資控えによる経済的損失などの懸念も根強い。規制強化を求める野党の躍進で議論がどう変わるのか、今後の国会での議論に注目が集まる。(永井大輔)

■土地利用規制法

自衛隊基地や原子力発電所など安全保障上重要な施設の周囲約1キロや国境離島を「注視区域」として指定し、土地の所有者の氏名や国籍、住所、利用状況などを調査する法律。司令部機能を有する自衛隊基地など特に重要な施設や離島は「特別注視区域」とし、土地売買の事前届け出も義務付ける。届け出を怠った場合や命令に従わなかった場合の刑事罰も定めている。令和4年に全面施行され、今月時点で585カ所が対象区域に指定されている。

国民民主と参政、外国人の不動産取得規制に前向き 法案への態度は「リトマス紙」

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