10歳男児がスマホで「高額課金」、返金求めTiktokなど提訴 親の同意ない「未成年者の契約」取り消せる?
弁護士ドットコム8/29(金)10:15
動画投稿アプリ「TikTok」で配信者への「投げ銭」として10歳(当時)の男児が行った多額の課金は取り消すべきだとして、男児側がTikTok運営会社のバイトダンスとアップル社に返金を求めて京都地裁に提訴していたと京都新聞が報じました。
京都新聞によると、男児は2024年6〜8月、兄2人のスマートフォンを使ってTikTokの投げ銭用「コイン」を大量購入。他のゲームアプリなどを含めた総課金額は約460万円に上り、そのうち370万円がTikTokでの課金だったそうです。
両親が消費生活センターに相談してアップル社に嘆願書を提出した結果、約90万円が返金されましたが、バイトダンス社からは返答がなかったとされています。
スマホが普及してからアプリなどへの高額課金のトラブルはあとを絶ちません。未成年者による高額課金について、親の同意のない場合どこまで取り消せるのでしょうか。
●未成年者契約は原則として取消し可能
このような場合、法的には民法の「未成年者契約の取消権」の問題として検討されます。民法第5条により、未成年者が親の同意を得ずに行った法律行為は、原則として取り消すことができます。
契約が取り消された場合、その契約は初めから無効であったものとみなされ、事業者はコインに課金した額の返還義務を負います。
一方、未成年者側も受け取ったサービス等を返還する義務を負いますが、その範囲は「現存利益」に限定されます。つまり、投げ銭で購入したコインを既に使用してしまった場合でも、それによって現在も利益を得ている範囲でのみ返還すればよいとされています。具体的には残っているコインが削除されることになります。
●「詐術」による取消権制限の成否が争点
ただし、未成年者が成年であると相手方を信じさせるために「詐術」を用いた場合、取り消しが認められない可能性があります(民法第21条)。詐術とは、単に年齢を黙っているだけでなく、相手方の誤信を誘発または強めるような積極的な言動を指します。
今回のケースでも10歳男児が兄2人のスマホを利用して大量の投げ銭用コインを購入していることから、それが詐術にあたり、取り消しが認められないのではないか、という点が争点となるでしょう。
一般的に、アプリ上の投げ銭などの課金決済において、事業者が年齢確認画面や「親権者の同意が必要」との警告を表示したにもかかわらず、未成年者が虚偽の生年月日を入力して成年者であるかのように装った場合、詐術に該当する可能性があります。
しかし、単に「成年ですか」という問いに「はい」とクリックするだけの場合や、形式的な年齢確認にとどまる場合は、詐術とは認められにくいとされています。
未成年者による取引が予想される場合、事業者には一定の年齢確認システムを構築することが期待され、特に高額課金が可能なサービスにおいては、より厳格な年齢確認や保護者の同意確認システムが求められる可能性があります。
今回のケースでも、投げ銭用コインを購入する際の年齢確認や保護者の同意確認が不十分だと判断されれば、取り消しが認められる可能性があるといえるでしょう。