トランプ政権の気候変動報告書に批判続出 誤りの指摘相次ぐ、訴訟も
米国のトランプ政権が7月下旬、現在の気候変動の科学に疑問を投げかける報告書を公表した。政権に都合のよい主張が並ぶ内容に対し、誤りを指摘する声が相次ぐ。報告書に引用された論文の著者からも反論があった。政策変更の根拠に使う狙いがあるが、作成プロセスにも疑義が出ており、環境団体が政府を提訴する事態にまで発展している。
「気候変動は現実だが、人類が直面する最大の脅威ではない」
7月下旬に米エネルギー省(DOE)が公表した気候変動問題の報告書で、ライト長官はこう書いた(https://www.energy.gov/topics/climate)。トランプ大統領は、今年1月の就任直後に気候変動対策の国際ルール「パリ協定」から脱退を表明するなど、政権は気候変動問題を軽視するような振る舞いを続けている。
政権発足後、5人の学者によって、「従来の見解を批判的に評価する」ものとして書かれた報告書は151ページ。人間活動による温室効果ガスの気候への影響について「科学的な確実性と不確実性を検討する」としている。気候変動に伴う気温上昇による経済的な損害は少なく、積極的な温室効果ガスの削減対策は不利益になる可能性があるなどとも主張している。
人間活動による温暖化「疑う余地」ない 国連組織が結論
これらの点について、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2021年に、人間の活動によって温暖化が起きたことは「疑う余地がない」と結論を出している。温室効果ガスの削減対策などが遅れることで、将来の被害やリスクが増大することも指摘している。
トランプ政権では、IPCCなどのような科学的知見に基づく過去の温室効果ガス対策を抜本的に緩和する方針を発表している。今回の報告書には、その根拠として使う意図がある。
だが、公表後から誤りの指摘が相次ぐ。
「間違い」32カ所、「誤解を招く」108カ所
英国の気候変動専門サイト「カーボン・ブリーフ」は、引用された約350の文献のうち、240件の査読済み論文の著者にファクトチェックを依頼した。報告書内での引用に基づく表現を確認してもらった。
その結果、「間違い」だと指摘されたのは32カ所、「誤解を招く」は108カ所あった。さらに文献のうち10%が報告書をまとめた5人自身のものだったという(https://interactive.carbonbrief.org/doe-factcheck/index.html)。
例えば、「大気中の二酸化炭素(CO2)の上昇による作物や農業への恩恵を過小評価している」との報告書の記述は、引用元で評価しているのは生態系に対する影響であり、農業への経済的影響ではないと指摘。むしろ干ばつや熱ストレスなどで作物の収穫量を脅かすとして、「間違い」だとした。カーボン・ブリーフはこの取り組みを「報告書の欠陥を視覚化するため」としている。
論文を間違って引用されたと主張する科学者の一人、米環境シンクタンクの気候学者ジーク・ハウスファーザー氏は取材に「先入観のある物語を裏付けるために、数字と研究の一部を『チェリー・ピッキング』(都合のよい主張だけを選ぶこと)をしている」と指摘した。
わずか2カ月で
ハウスファーザー氏は今回の報告書のとりまとめ過程の異例さも指摘する。
これまで米国の気候変動対策の基盤は、国家気候評価(NCA)と呼ばれる、議会で承認を経て数年ごとにまとめる報告書だった。NCAは年単位で調査や議論をし、13の政府機関からの複数回の査読を経て、米国科学アカデミーからの承認も得る。
対して今回の報告書は、DOEが選んだ5人が非公開かつ2カ月でまとめたものだ。時間をかけて多面的に検証するNCAとはかけ離れたプロセスで作られたといえる。
「少数派の一方的な見解助長」
報告書に対し、複数の環境団体は12日に訴訟を提起した。政策の助言のための組織は会議記録などを開示しなければならないとする連邦法に違反して作成されたとし、連邦地方裁判所に報告書の使用を差し止めるよう求めた。
批判はおさまらないものの、報告書の主張が他国へも「輸出」され、気候変動懐疑論などに利用されることも懸念される。
ハウスファーザー氏は、過去のNCAなどが考慮されず、今回の報告書だけが米政府の見解とみなされることは「少数派の研究者による一方的な見解を助長することになる」と話した。
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- 【視点】
いくら否定的な意見が話題になっても「そんなの全部想定済み」で、多数派形成によりウソを押し通せれば全然オッケー! というのがトランプ流の「政治」である。 「もう人間がどう動こうと地球はアウトであること確定なので、いっそやりたい放題好き勝手にやることに決めました!」 という声明でも発してくれれば、まだ彼の流儀にも蓋然性というものを感じることができるのだが。
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- #トランプ再来
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こうやって統計や科学が、政治の恣意で歪められる事態が続くと、ますます科学や政府に対する人々の信頼が低下していく、という悪循環が起きそうですね。科学と言うのがニュートラルな真理探究の営みであってくれたらうれしいのですが、石油産業やらタバコ産業やらについては、企業などがお金を出して作ったシンクタンクなどが都合のよい結果を出したりロビーイングしたりしていて、経済的な理由で歪むということは、ポストトゥルースを研究する本などを読んでいて、よく出てくることです。当然、政治の都合に合わせて、ある程度結果も誘導できてしまうということが、あくまで人間が社会の中で行っている営みとしての科学の世知辛くもやむをえないところで、その問題がかなり露骨に出てきてしまっていますね。この辺りの複雑さについて、科学論などももう少し勉強していきながら考えていきたいところです。
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