「まいばすけっとは都民への罰」イオンの小型スーパーが首都圏で1200店舗にまで増えたワケ。「ご褒美感がない」のは戦略だった
流通大手「イオン」の小型スーパー「まいばすけっと」がSNS上で話題を呼んでいる。
「コンビニ並みに都心のどこにでもあって便利」、「コンビニよりも安い」とありがたがる人も多い一方、「どこの店にいつ行っても殆ど同じ品揃えで面白くない」、「ご褒美感がある商品が置かれていない」という声も上がっている。SNSの中には「まいばすけっとは都民への罰だと思っている」、「まいばすけっとを愛している人を見たことがない」など、キラリと光るワードも散見する。
最近は東京都心を歩くとコンビニ以上に良く見かけるようになった「まいばすけっと」。消費者の賛否両論があるなか、どうしてここまで「増殖」することができるのだろうか。
「まいばすけっと」が生まれたのは今から約20年前の2005年末。ショッピングセンターを得意とする流通大手「イオン」が当時グループの店舗が少なかった首都圏都心エリアで展開する小型スーパーとして生み出した新業態で、2011年には「まいばすけっと」として分社化された。この時点で200店舗ほどであった店舗数は急速に「増殖」し、2022年には1,000店舗を達成。2025年時点では東京23区内を中心として東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の都市部に約1,200店舗を展開、「日本で最も店舗数が多いスーパー」となった。
なお、「まいばすけっと」は首都圏以外ではイオン北海道が札幌市内でも展開しているものの、その他の地域には未出店。それゆえ「まいばすけっと」は「日本で最も店舗数が多いスーパー」でありながら「ごく一部の地域の人しか馴染みがないスーパー」でもあるのだ。
それでは「まいばすけっと」はなぜここまで増えることができたのか。実は「まいばすけっと」には、一般的な食品スーパーやコンビニとは異なるいくつかの特徴がある。
1.スーパーなのに「店舗サイズが全店ほぼ同じ」
「まいばすけっと」の1つめに挙げられる特徴は、スーパーでありながら「店舗サイズが画一化」されていることだ。
「まいばすけっと」の店舗あたりの延床面積はおおよそ40坪~100坪(約130㎡~330㎡)、多くの店舗の売場面積は約200㎡弱と、一般の食品スーパーよりも狭くコンビニ程度。また、売場も殆どが1層(一部に多層店舗あり)で、狭い店舗内には効率的に什器が並べられている。
一般的なスーパーは店舗によって様々なサイズがあるが、「まいばすけっと」のこうした画一的な店づくりはコンビニに近いといえよう。
2.コンビニよりも極められた「運営の効率化」
「まいばすけっと」はコンビニに近い店の造りでありながら、コンビニよりもさらに「店舗運営の効率化」が図られていることも特徴だ。
たとえば「まいばすけっと」はフランチャイズ店が多くあるコンビニとは異なり全店舗直営で一括管理。営業時間は24時間ではなく、おおよそ7時~23時前後。さらに公共料金等の収納や宅配便の受付、マルチコピー機の設置などもおこなっておらず、トイレも基本的に設置・開放されていない。レジもセルフレジが中心で、弁当などの温めが必要な場合は自分でおこなうことになる。
また、スーパーらしく値引きサービスも行われているものの、値引きは基本的に「30%OFF(3割引)」の1種類のみだ。
このように「まいばすけっと」はコンビニと比較して店内サービスを簡素化することによって従業員の負担を減らすとともに、最低限の従業員で効率的に店舗運営がおこなえるようになっている。
イオンが展開する小型スーパー「まいばすけっと」(豊島区)。どんどん増え続けており、今や「日本で最も店舗数が多いスーパー」だ。(写真:若杉優貴)
「店舗数日本一のスーパー」なのに…
「コンビニともスーパーとも違う」が増殖のカギ
「まいばすけっと」の物件募集要件。同社公式サイトより引用。コンビニとは異なり終夜営業を行わない一方、一般的なスーパーとは異なりかなり狭小で駐車場の要件も書かれていない。
1
2
『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken
記事一覧へ
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】
この記者は、他にもこんな記事を書いています