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「パジェロ!パジェロ!」はもう通用しない? 若者70%が免許取得も、購買意欲が低迷する根本理由

掲載 更新 68
「パジェロ!パジェロ!」はもう通用しない? 若者70%が免許取得も、購買意欲が低迷する根本理由

クルマが若者文化を支えた時代

かつて家族旅行といえばクルマだった。友人と深夜に集まる手段もクルマであり、好きな人をデートに誘う方法もクルマだった。クルマは、まさに人生の舞台であった。

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しかしそれから30年以上が経過し、いまや「若者のクルマ離れ」が社会問題となっている。この現象は経済的理由や都市部の公共交通利便性だけでは説明できない。若年層が関心を持たなくなった背景には、かつて広く存在したクルマ文化の喪失がある。

1990年代まで、クルマは移動手段ではなく、若者の憧れであり、アイデンティティの象徴だった。テレビCMや映画、雑誌、ゲームはクルマを魅力的に演出し、購買意欲を刺激していた。

現代の若者がほとんど知らないクルマの文化とは、日常生活で自然に触れるクルマの存在感である。父親の愛車を洗車する姿や、週末の家族ドライブといった体験が、クルマを家庭内にある当たり前の存在にしていた。

当時のクルマはメディアやファッションと密接に結びつき、「どのクルマに乗るか」はスタイルや価値観を示す手段だった。クルマ種やグレードで自分を表現することは、スニーカーやジャケットを選ぶ感覚と変わらなかった。つまり「憧れとしてのクルマ」が自然に成立していた時代である。

さらにクルマ文化は、友人関係や恋愛にも影響を及ぼしていた。誰かがクルマを手にすれば仲間が集まり、深夜ドライブや音楽の共有が日常的に行われた。デートに使えるクルマを持つことが「一人前」と見なされる空気も存在していた。

クルマは家族の思い出を運ぶ重要な役割も担った。海や山へのレジャー、長距離ドライブ、家族旅行の記憶のなかで、クルマは移動手段ではなく、時間と記憶を包む容器でもあった。

そして何より、クルマは「所有 = 自由」の象徴であった。免許を取得し、クルマを手にした瞬間から、行き先も時間もすべて自分次第。親や公共交通の時刻表に縛られない自分だけの世界を手にすることが、当時の若者にとって大きな目標であり、通過儀礼でもあった。

クルマ文化の消えた日常

かつてクルマは、お茶の間文化の一部でもあった。たとえば、テレビ番組「関口宏の東京フレンドパークII」での「パジェロ!パジェロ!」という掛け声に象徴されるように、クルマの名前や存在は娯楽のなかに自然に溶け込んでいた。

しかし、その日常的接点は徐々に失われた。テレビ番組でクルマが主役となる場面は減り、クルマを取り巻く空気そのものも変化した。

象徴的なのは「東京モーターショー」の変化である。かつて日本のクルマ業界を代表する祭典として存在感を放っていたイベントも、2023年から「ジャパンモビリティショー」と名称を変更した。これはクルマ単体でコンテンツとして成立しにくくなった現状を反映しているといえる。

バブル期に語られた「ソアラでナンパ」といった逸話も、現代の若者には都市伝説のように映る。1996(平成8)年生まれの筆者(紀下ナオキ、自動車ライター)世代でも、クルマでナンパする発想は漫画の世界のように感じられる。むしろ現代では、ネオクラシックなソアラで出かけた結果、クルマ好きの中年男性に逆ナンされる可能性のほうが高いだろう。

クルマ文化の断絶危機

文化は特別な場所に存在するものではなく、日常の積み重ねのなかに宿る。筆者が子どもの頃は、家族そろってミニバンやRV車で海や山に出かけた。こうした体験が、クルマを思い出の装置として記憶に刻み込んだのである。

しかし現在の子どもたちは、こうした原体験を持たずに成長する可能性が高まっている。クルマにまつわる思い出の欠如が、クルマ文化の断絶を生む一因になっている。

かつては家庭や学校といった日常の中で、クルマに関する知識や関心が自然に伝えられていた。しかし現在、その機能はほぼ失われている。

象徴的なのが教習所の減少である。警察庁交通局運転免許課「運転免許統計」によると、この10年で全国の教習所は約60校減少(2015年末:1347校、2025年末:1288校)し、18歳で免許を取得することは当たり前ではなくなった。都市部の大学生にとって、免許は就職活動のための履歴書の一項目であり、身分証としての意味しか持たないケースも少なくない。

さらに都市部では、電車やシェアサイクルなど公共交通が充実しており、クルマがなくても生活は成立する。しかし、子育てや介護といった将来のライフステージで、本当にクルマが不要なのかは改めて問い直す必要がある。

クルマ体験の価値転換

筆者はクルマとともにある暮らしを求め、都市部を離れて地方に移住した。現在は栃木県を拠点に、地域でクルマイベントの開催・運営を行っている。イベントには、18歳の若者からシニア層、さらには免許を持たない子どもまで、多様な参加者が集まっている。こうした光景を見るたびに、若者はクルマに興味がないという決めつけに違和感を覚える。関心の表れ方が変化しているだけで、関心そのものは消えていないのだ。

実際、合宿免許比較サイト「合宿免許マイスター」を運営するサクラス(東京都中央区)がZ世代を対象に行った調査では、Z世代の約7割が普通自動車免許を取得していることが明らかになった。クルマを所有している、あるいは所有したいと考えるZ世代は6割を超え、「若者のクルマ離れ」に対する実感は肯定と否定が半々という結果であった。さらに、普通自動車免許を取得していると便利だと回答したZ世代も約7割に上った。

所有が価値の中心であった時代から、体験や共感が重視される時代へと移行する現代において、クルマも価値提供の仕方を変えつつある。筆者が免許を取得する以前、2010年代のオンラインゲーム(グランツーリスモやForzaシリーズ)は、クルマ好きの若者にとっての避難所であった。実車を持たない者同士がゲーム内で愛車を披露し合い、情報を交換し、交流を深めていた。やがて彼らは免許を取得し、実車を手にして現実で再会するようになった。ゲーム内で並べたクルマを、現実でも並べる。そのような光景が実際に生まれている。

彼らが求めるのはクルマを通じたつながりである。モノとしての購入が目的ではなく、クルマを媒介とした体験や共感、仲間との共有が真の目的となっている。この傾向は他分野にも応用可能であり、クルマがその役割を果たせなければ別のコンテンツに取って代わられる可能性もある。クルマを主軸としたコト消費コンテンツとして、いかに魅力的に演出できるかが今後の重要な課題である。

失われたクルマ文化再考

インフレや物価高、手取りの減少といった経済的要因により、若者がクルマを憧れの対象として素直に欲しがることは難しい時代が続いている。持てないなら欲しがらないといった酸っぱい葡萄の心理が、関心そのものを鈍らせてしまっているのだ。

「失われたクルマ文化」を振り返ることは、これからのモビリティ社会において何を残し、何を受け継ぐべきかを改めて問い直す営みである。『ワイルド・スピード』や『頭文字D』といった作品が世界的な火付け役となった国産スポーツカーブームは、日本発のクルマ文化がすでに国境を越えて高く評価されている証左である。米国における「25年ルール」により、かつての国産車が多数輸出される現状も、その人気と影響力の大きさを物語っている。

経済性や効率性が重視される時代だからこそ、クルマがもたらす体験、趣味性、人とのつながり、地域との共創に改めて目を向ける必要がある。製造や販売といったハード面だけでなく、クルマが育んできた文化やライフスタイルといったソフト面に光を当てることが、日本のクルマ社会を持続可能にするカギとなる。文化とは守られるものではない。人々の手で再び使われ、生活の中に息づくことで、その価値は取り戻されるのである。

クルマ文化と経済価値

文化は人々の手で再び使われ、生活の中に息づくことで、その価値は取り戻される。

こうした文化的価値は経済とも深く結びつく。若者のクルマ離れは新規市場の需要を抑制する一方、

・中古車市場
・カーシェアリング
・カスタマイズ市場

といった周辺分野には成長余地がある。地域イベントや体験型コンテンツによるコト消費型のクルマ経済は、製造・販売だけでは得られない収益源となり得る。

さらに、日本車文化のブランド価値は海外でも評価され、中古車需要や観光、関連コンテンツ消費にも波及している。文化的資産の維持は、長期的な経済的リターンにも直結する。クルマ文化の再興は、日本の自動車産業全体の持続可能性と成長戦略に不可欠な視点である。(紀下ナオキ(自動車ライター))

文:Merkmal 紀下ナオキ(自動車ライター)
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みんなのコメント

68件
  • yas********
    現代の車は、若者の所得に対して高すぎますね。
    かつては就職したら新入社員同期内で「車何買う?」って話題で持ちきりでしたが、今の給与に対して車両の価格は…
    あまりにも高い!
    安全装備や低排出ガスの機構搭載で車重も増加。

    今や軽でも200万を軽く超え、私が初めて買った新車のミラージュは100万台でした。

    若者の車離れでは無く「車の若者離れ」
  • けい
    維持費が高い
    これ以外にない

    税金が昔より上がり手取りが減った
    スマホなど新しい固定費も増え、電気代なども細かく言えば上がってる

    若者は悪くないよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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