「パジェロ!パジェロ!」はもう通用しない? 若者70%が免許取得も、購買意欲が低迷する根本理由
失われたクルマ文化再考
インフレや物価高、手取りの減少といった経済的要因により、若者がクルマを憧れの対象として素直に欲しがることは難しい時代が続いている。持てないなら欲しがらないといった酸っぱい葡萄の心理が、関心そのものを鈍らせてしまっているのだ。 「失われたクルマ文化」を振り返ることは、これからのモビリティ社会において何を残し、何を受け継ぐべきかを改めて問い直す営みである。『ワイルド・スピード』や『頭文字D』といった作品が世界的な火付け役となった国産スポーツカーブームは、日本発のクルマ文化がすでに国境を越えて高く評価されている証左である。米国における「25年ルール」により、かつての国産車が多数輸出される現状も、その人気と影響力の大きさを物語っている。 経済性や効率性が重視される時代だからこそ、クルマがもたらす体験、趣味性、人とのつながり、地域との共創に改めて目を向ける必要がある。製造や販売といったハード面だけでなく、クルマが育んできた文化やライフスタイルといったソフト面に光を当てることが、日本のクルマ社会を持続可能にするカギとなる。文化とは守られるものではない。人々の手で再び使われ、生活の中に息づくことで、その価値は取り戻されるのである。
クルマ文化と経済価値
文化は人々の手で再び使われ、生活の中に息づくことで、その価値は取り戻される。 こうした文化的価値は経済とも深く結びつく。若者のクルマ離れは新規市場の需要を抑制する一方、 ・中古車市場 ・カーシェアリング ・カスタマイズ市場 といった周辺分野には成長余地がある。地域イベントや体験型コンテンツによるコト消費型のクルマ経済は、製造・販売だけでは得られない収益源となり得る。 さらに、日本車文化のブランド価値は海外でも評価され、中古車需要や観光、関連コンテンツ消費にも波及している。文化的資産の維持は、長期的な経済的リターンにも直結する。クルマ文化の再興は、日本の自動車産業全体の持続可能性と成長戦略に不可欠な視点である。
紀下ナオキ(自動車ライター)