「パジェロ!パジェロ!」はもう通用しない? 若者70%が免許取得も、購買意欲が低迷する根本理由
クルマ文化の消えた日常
かつてクルマは、お茶の間文化の一部でもあった。たとえば、テレビ番組「関口宏の東京フレンドパークII」での「パジェロ!パジェロ!」という掛け声に象徴されるように、クルマの名前や存在は娯楽のなかに自然に溶け込んでいた。 しかし、その日常的接点は徐々に失われた。テレビ番組でクルマが主役となる場面は減り、クルマを取り巻く空気そのものも変化した。 象徴的なのは「東京モーターショー」の変化である。かつて日本のクルマ業界を代表する祭典として存在感を放っていたイベントも、2023年から「ジャパンモビリティショー」と名称を変更した。これはクルマ単体でコンテンツとして成立しにくくなった現状を反映しているといえる。 バブル期に語られた「ソアラでナンパ」といった逸話も、現代の若者には都市伝説のように映る。1996(平成8)年生まれの筆者(紀下ナオキ、自動車ライター)世代でも、クルマでナンパする発想は漫画の世界のように感じられる。むしろ現代では、ネオクラシックなソアラで出かけた結果、クルマ好きの中年男性に逆ナンされる可能性のほうが高いだろう。
クルマ文化の断絶危機
文化は特別な場所に存在するものではなく、日常の積み重ねのなかに宿る。筆者が子どもの頃は、家族そろってミニバンやRV車で海や山に出かけた。こうした体験が、クルマを思い出の装置として記憶に刻み込んだのである。 しかし現在の子どもたちは、こうした原体験を持たずに成長する可能性が高まっている。クルマにまつわる思い出の欠如が、クルマ文化の断絶を生む一因になっている。 かつては家庭や学校といった日常の中で、クルマに関する知識や関心が自然に伝えられていた。しかし現在、その機能はほぼ失われている。 象徴的なのが教習所の減少である。警察庁交通局運転免許課「運転免許統計」によると、この10年で全国の教習所は約60校減少(2015年末:1347校、2025年末:1288校)し、18歳で免許を取得することは当たり前ではなくなった。都市部の大学生にとって、免許は就職活動のための履歴書の一項目であり、身分証としての意味しか持たないケースも少なくない。 さらに都市部では、電車やシェアサイクルなど公共交通が充実しており、クルマがなくても生活は成立する。しかし、子育てや介護といった将来のライフステージで、本当にクルマが不要なのかは改めて問い直す必要がある。