子どもと一緒に過ごすようになってから、初めて食べるものの反応を楽しみにしてきた。初めてのコーラとか、初めてのグミ、初めてのガリガリくんとか。明らかにおいしいものじゃなくてもいい。初めてのウニとか初めてのゴーヤとか。目を見開いて驚いたり、文字で表現しづらい何とも言えない声を出す。
そのリアクションがあまりにも本当で、こちらも「初めて」を一緒に体験している気持ちになった。
そんな数年間があり、手頃な「初めて」は一通り経験できたかなーと思った頃、不意に「おばあちゃんにもお母さんはいるの?」と聞かれた。
地下鉄を乗り換えようと歩いている時だった。「いるよ」と言うと、「そのお母さんにも? そのお母さんのお母さんにも?」と聞いてくる。「いるよ、いるいる」と言うとしばらく黙った。何かを考えている。水の中みたいな沈黙の後、今までよりひとつ低いトーンで
「最初の人がいるってこと?」
と言った。すごい瞬間に立ち会ったなと直感した。何をどう考えたのか詳しいことは分からないが、子どもは自分の感性を使って人類の起源にたどり着いたのだ。今まで子どもの頭の中にいなかった最初の人類が、この瞬間からはいるのだ。文字通り、胸が震えた。
感動しながらなるべく冷静に、最初の人類って言われる人たちはいたっぽい。アフリカのあたりに。というふわふわした知識を話した。ふーん、という反応。その後図書館で子ども向けの歴史の本を借りて、該当するページを見せてちゃんと話した。「すごい」と言っていた。
それから歴史について一層興味を持って勉強を続けて、なんてことはないが、日々ぼんやりしているように見えて色々考えているんだろうなと思う。
これからもそんな風に「恋って何?」とか「宇宙の外側には何があるの?」とか「靴下って靴の上にない?」とか、色んなことに気がついていくんだろう。
初めて食べるものの次はこれだな、と思った。少しでも多く気がつく瞬間に立ち会えたら嬉しい。