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彼女が自撮りを送ってくる理由

仕事を終えて家に帰宅。

疲れたためかスーツも脱がずにそのままベッドへダイブ。


〇:もう動けない……ん?


身体が動かないことを嘆いているとスマホのバイブ音。

開いてみると彼女からメッセージが来ていた。


夏【疲れた】


メッセージはそれだけ。

しばらく考えた後に返信することに。


〇【お疲れ様!僕も今仕事から帰ってきてクタクタだよ〜(o´Д`)最近こっちは暑くて溶けそうだよ…夏鈴も気を付けてね!】


送信をするとすぐに既読。

しかし、ここからが長いことを僕は知っている。


〇:はぁ…


彼女の夏鈴は同じサークルの1年後輩。

先に就職した僕は見事に地方に飛ばされ遠距離恋愛が始まった。

もうすぐ半年が経とうとしていた。

夏鈴はあまりメッセージの反応がわかりにくい。

俺から送ってもまともに返信された試しはない。

それでも夏鈴がどんな状況なのかは大体わかっている。




夏鈴からの連絡を待っていると通知が1件。

相手はサークルの後輩で夏鈴と仲が良い山﨑だった。

山﨑は僕が地元を離れてからというもの、

平日は必ずその日の夏鈴の写真を送ってくれていた。


天【今日の夏鈴でーす!】


その一言共に送られてくる数枚の写真。

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天【これは先輩から連絡無くて、落ち込んでる夏鈴】

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天【これは名前呼んだらこっちを見てきた時の夏鈴!】

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天【これは花屋さんで何買うか迷ってる夏鈴!】

〇【( *˙ω˙*)و グッ!】

天【ちなみにサボテン買って〇〇って名前付けてるらしいですよ!】


え、何それ。可愛い。

俺は山﨑に感謝を伝えると画像を保存した。


結局、返信が来たのはあれから1時間後。

『お疲れ様』と書かれてるスタンプが来ただけだった。






    ◇    ◇    ◇    ◇






寂しいことが筒抜けな彼女だが、最近変わったことをし始めた。

ある日から突然自撮りを送り始めてきた。

忘れもしない1ヶ月前のこと。

その日は休みで家でダラダラしていた。

呑気にテレビを見ていると通知が2件。

相手は夏鈴だった。


〇:え…?

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夏【暇だね】


開いてみると自撮りと共にメッセージ。

夏鈴は自撮りなど滅多にしないため、正直困惑していた。


〇【どうしたの急に。笑】

夏【なんとなく】

〇【僕も暇だよー!】


その後、既読はついたが返信が無かった。


それ以降、毎日自撮りを送ってきた。

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夏【じっー】

謎に寄ってる写真もあれば、

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夏【天ちゃん】

山﨑と一緒に撮った写真。

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ただこちらを睨みつけてる写真など様々だった。

正直意味なんてものはわからなかった。

それでも、心は前より近くなった気がした。






    ◇    ◇    ◇    ◇






そんなことが続いたある日のこと。

いつも通り仕事を終えて帰宅すると同時に夏鈴からの通知。


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そこにはいつものごとく夏鈴の自撮り写真があった。

昔、デートに行った時にあげたぬいぐるみも一緒に写っていて可愛かった。

〇【可愛いね!】

夏【ありがと】


なんて返信しようか迷っていると新たに通知が来た。

夏【〇〇も写真送ってよ】

〇【自撮り?】

夏【うん】

〇【ちょっと待って!】


今までに無かったまさかのお願い。

急いで慣れない自撮りを送るとすぐに既読がついた。


それから5分。

返信を待っていると電話が鳴った。

相手はもちろん夏鈴。

〇:も、もしもし…?

夏:変な顔だね。


恐る恐る出ると夏鈴の声。

夏鈴はあまり電話をしたがらないので、声を聞くのは離れてからは初めて。

久しぶりの彼女の声は少し笑っていた。


〇:え!?久し振りの会話、それ?

夏:ふふっ……だって、変なんだもん。

〇:あんまりだなぁ……あ!

夏:え?

〇:そういえば聞いたよ?サボテン買ったって。

夏:え……

〇:しかも名前付けてるらしいじゃん…僕の。

夏:ちょっ!え…!な、なんで知ってるのっ!?


普段静かな夏鈴が珍しく慌ててる。

ちょっと新鮮だった。

山﨑に送ってもらってたことを説明すると電話口で怒っていた。


夏:もう…天ちゃんったら…

〇:そう怒んないでやってよ。

夏:恥ずかしいじゃんっ…!

〇:はははっ!…でも、元気そうで良かったよ。

夏:……元気じゃないよ。


声をワントーン落とし、ぼそっと呟く夏鈴。

電話口からもそれが本心であることはすぐにわかった。


〇:どうした…何かあったの?

夏:…寂しい。

〇:え?

夏:もう半年だよ…?流石に寂しい、かなっ…


電話越しで彼女のすすり泣く声が聞こえてくる。


夏:声も聞きたかったけど、今更電話したいなんて言うのはなんか悪くて…

〇:そんなこと無いのに…

夏:だからね…自撮り送ってた。

〇:え…?

夏:自撮り送って、私見て…それで〇〇が寂しくなって、電話してくれないかなって…


夏鈴は抑えていた蓋が外れたように想いを伝えてくれた。

その度に胸が締め付けられていく。


夏:でもっ…逆に私がどんどん寂しくなってくるばかりで…っ、〇〇の写真見たら…声、聞きたくなっちゃった…

〇:夏鈴…

夏:ねぇ、わがまま……言っていい?

〇:……何?

夏:……会いたい。

〇:っ……!

夏:〇〇に会って、抱き締めてもらいたいっ…これ以上、我慢出来ないよっ…


多分、僕が知る限り初めてのわがままだった。

きっと彼女は僕に見せなかっただけでずっと辛かったんだ。

〇:……ちょっと待ってて。

夏:え…?


スマホを置いて、PCを立ち上げると交通機関を確認。

存在もしないような貯金を確認すると適当に服をカバンに詰め込む。


夏:〇〇っ…?

〇:23時45分に着くから。

夏:……え?

〇:だから、待ってて。

夏:っ……うんっ…!


嬉しそうに返事をする声を聞くと急いで駅まで向かった。






    ◇    ◇    ◇    ◇






電話から約3時間が過ぎて、久しぶりの地元。

改札から出ようとすると心配そうにスマホを見ている夏鈴を見つけた。

久しぶりに生で見る彼女は綺麗って言葉では片付けられないほど輝いて見えた。


〇:夏鈴!

夏:っ、本当に来た…

〇:来たよ。会いたかったから…

夏:ありがとっ…


顔を見ると泣いていたためか、顔が腫れているように見えた。

覗き込むと恥ずかしいのか顔を背ける。


夏:あっ、最悪…こんな顔…

〇:大丈夫だよ。

夏:そういう問題じゃないからっ…

まだ少し溢れ出る涙を拭いながら、上を見る彼女。

その涙が嬉し涙だと願うばかり。


〇:ふふっ……夏鈴。

夏:っ……


夏鈴の前で大きく腕を広げる。

すぐにこれが何を意味するか気付いたらしい。


〇:おいで?

夏:……うんっ。


ゆっくり近づくと僕の胸にすっぽりと収まった。

僕を抱き締める力が今までに無いほど強いのが伝わってくる。


夏:本当に〇〇だ…

〇:ごめんね…寂しい思いさせて。

夏:うんうん……今凄く嬉しいから…終電間近の駅。


人目が少ないのを良いことに、会わなかった時間を埋めるようにずっと抱き合っていた。



しばらく駅でお互いの身の上話をしていたが、

このままここにいても仕方が無いので取り敢えずは夏鈴の家にお邪魔することに。


〇:って、もうバス無いね。

夏:うん…

〇:タクシー乗る?

夏:そうだね。


タクシー乗り場で待っていると夏鈴が内カメラを向けてきた。


〇:ん?

夏:写真撮ろうよ。

〇:すっかり自撮り好きだね?

夏:違うっ…その、思い出で…


照れる夏鈴に微笑みながらも画角に入るように身体を寄せる。


夏:じゃあ…はい、チーズ…

〇:っ……!?


シャッター音と同時に夏鈴は僕の頬に柔らかい感触。

驚きながらも夏鈴の顔を見ると、恥ずかしがりながら写真を確認している。


夏:ぷっ…変な顔。

〇:か、夏鈴のせいだろ…

夏:でも、いいでしょ?


さっきまで寂しがっていたとは思えないイタズラそうな笑顔。


夏鈴は会わない間に、少し大胆になったのかもしれない。


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彼女が自撮りを送ってくる理由|てんちょー
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