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[ファクトシート] 石破首相自身は「政治とカネ」と無縁? 政権発足後の疑惑事案を再確認する

楊井人文弁護士
参院選後の7月23日、3人の元自民党総裁(総理経験者)との会談を終えた石破茂氏写真:ロイター/アフロ

 自民党は、近く、7月20日に行われた参議院選挙の総括をとりまとめるとともに、総裁選を前倒しで実施するかどうかを9月上旬にも決める。

 続投の意向を示している石破茂首相・自民党総裁をめぐっては、衆参両院で与党過半数割れとなったことを受けトップの責任として辞任を求める意見と、敗因は石破氏個人ではないなどとして続投を支持する意見が拮抗している。

 主要メディアには、石破政権発足前の「政治とカネ」の問題が敗因だとして、党内の「石破おろし」に否定的な論調や言説が広がっている。その際、政権発足後に取り沙汰された疑惑に言及されることはほとんどなく、「政治とカネ」の問題は石破首相には直接関係がないという前提で語られたり、論じられたりしている。

 そこで、2024年10月1日の石破内閣発足後、「政治とカネ」にまつわる疑惑報道としてどのようなものがあったか、改めて確認できるよう、ファクトベースで時系列に沿って整理した。

 詳細な情報は、それぞれ記事リンクなどの情報源を参照されたい。

各報道をもとに筆者作成(白抜きの③④は特に報道量が多く、世論へのインパクトが大きかったと見られる事案)
各報道をもとに筆者作成(白抜きの③④は特に報道量が多く、世論へのインパクトが大きかったと見られる事案)

① 旧石破派の政治資金パーティー収入の一部を不記載【2024年10月】

 石破内閣発足直後に、共産党機関誌しんぶん赤旗の報道で発覚した。

 報道各社も報じ、石破首相は事務的なミスだったと認め、政治資金収支報告書の訂正を行う考えを示した(赤旗は2016〜21年で140万円分、他メディアは2019〜21年で80万円分と報道)。

② 石破氏が幹事長時代に17.5億円の使途非公開の政策活動費を受領【2024年10月】

 石破内閣発足直後に、共産党機関誌しんぶん赤旗の報道で指摘された。

 ただ、石破氏が幹事長に在任していたのは2012〜14年で、報道各社はこの問題を特に取り上げることはなかった。石破首相側が特にコメントした形跡もない。

 使途が非公開の政策活動費に関しては存廃をめぐる議論が続けられる中、9月の自民党総裁選では廃止論を示した候補者がいる一方、石破氏は明示していなかった。10月の衆院選でも「将来的な廃止も念頭に透明性の確保に取り組む」と当面存続を前提とする党公約を掲げていた。

 11月召集の臨時国会では、少数与党になったこともあり、廃止を求める公明党や野党との協議を経て、政策活動費を全面廃止する法律が可決成立している。

石破首相 幹事長時に政策活動費17.5億円(しんぶん赤旗 2024.10.4)
自民党 令和6年選挙公約(自民党 2024.10)※政策活動費の記述は4頁、20頁

③ 衆院選で、不記載問題があった非公認候補の党支部に2000万円を支給【2024年10月】

 選挙期間中に、共産党機関誌しんぶん赤旗の報道で発覚した。

 報道各社も大きく取り上げ、批判的に報じた。公認候補者と同額の支給がなされていたことから「裏公認」「偽装公認」とも指摘された。

 自民党の森山幹事長は、党勢拡大のための活動費として支給したもので、候補者のために支給したものではないとコメント。

 石破首相(総裁)も、選挙の街頭演説で「非公認の候補に出しているのではなく、選挙に使うことは全くない。偏った見方に負けるわけにはいかない」と反論。

 同年11月召集の臨時国会でも、野党各党の議員がこの問題を追及したが、石破首相は従来の反論を維持した。

④ 当選した新人議員に1人10万円の商品券を配布【2025年3月】

 通常国会の前半で、朝日新聞などの報道で発覚した。

 報道各社も大きく取り上げ、石破首相は政治資金規正法が規制する「政治活動」の寄付にあたらないと弁明しつつ、陳謝。各議員は商品券を自主的に返還した。

 政治倫理審査会への出席を求める意見も出たが、開催されなかった。

 「クリーンなイメージが消えた」といった批判が報じられ、各社世論調査では内閣支持率が急落した。

⑤ 元支援者が多額の闇献金をしていたと実名告発(石破氏は全面否定)【2025年5月】

 通常国会の後半で、週刊文春が報道した。

 石破氏の元支援者とされる男性が、約10年間で3000万円以上を献金してきたが、政治資金収支報告書に不記載だったと証言。

 石破氏は国会で「記憶にございません」と全面否定した。だが、石破首相側が文春に対し、抗議や訂正要求、法的措置をとったとの情報もない。

 告発した男性は実名で会見を行い、一部メディアに報じられた。だが、物証がなかったとされ、続報はほとんどなかった。

 男性は国会の証人喚問等にも応じると言明したが、実現せず、事実関係は不明のままとなっている。

(注1)一部野党やメディアが使う「裏金」(議員/問題)との表現は引用する場合に限り、本文中では政治資金収支報告書の「不記載」(議員/問題)と表記した。
(注2)ほかに、都議会自民党の不記載問題(2024年12月発覚)、参院選の公認候補問題も、党執行部の責任は否定できず、石破首相と関係のある「政治とカネ」問題と見ることできるかもしれないが、石破氏個人との直接的な関係は薄いと判断し、掲載を見送った。

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ありがとうございます。
弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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