[ファクトシート] 石破首相自身は「政治とカネ」と無縁? 政権発足後の疑惑事案を再確認する
自民党は、近く、7月20日に行われた参議院選挙の総括をとりまとめるとともに、総裁選を前倒しで実施するかどうかを9月上旬にも決める。
続投の意向を示している石破茂首相・自民党総裁をめぐっては、衆参両院で与党過半数割れとなったことを受けトップの責任として辞任を求める意見と、敗因は石破氏個人ではないなどとして続投を支持する意見が拮抗している。
主要メディアには、石破政権発足前の「政治とカネ」の問題が敗因だとして、党内の「石破おろし」に否定的な論調や言説が広がっている。その際、政権発足後に取り沙汰された疑惑に言及されることはほとんどなく、「政治とカネ」の問題は石破首相には直接関係がないという前提で語られたり、論じられたりしている。
そこで、2024年10月1日の石破内閣発足後、「政治とカネ」にまつわる疑惑報道としてどのようなものがあったか、改めて確認できるよう、ファクトベースで時系列に沿って整理した。
詳細な情報は、それぞれ記事リンクなどの情報源を参照されたい。
① 旧石破派の政治資金パーティー収入の一部を不記載【2024年10月】
石破内閣発足直後に、共産党機関誌しんぶん赤旗の報道で発覚した。
報道各社も報じ、石破首相は事務的なミスだったと認め、政治資金収支報告書の訂正を行う考えを示した(赤旗は2016〜21年で140万円分、他メディアは2019〜21年で80万円分と報道)。
◯ 石破派も「裏金」― 国会でも選挙でも徹底追及(しんぶん赤旗 2024.10.3)
◯ 石破首相 旧石破派で政治資金収支報告書への不記載確認 訂正へ(NHK 2024.10.7)
◯ 石破総理にも“政治とカネ”疑惑浮上 自民・裏金問題の解明は?告発した大学教授「まずは自分の調査を」(TBS 2024.10.5)
② 石破氏が幹事長時代に17.5億円の使途非公開の政策活動費を受領【2024年10月】
石破内閣発足直後に、共産党機関誌しんぶん赤旗の報道で指摘された。
ただ、石破氏が幹事長に在任していたのは2012〜14年で、報道各社はこの問題を特に取り上げることはなかった。石破首相側が特にコメントした形跡もない。
使途が非公開の政策活動費に関しては存廃をめぐる議論が続けられる中、9月の自民党総裁選では廃止論を示した候補者がいる一方、石破氏は明示していなかった。10月の衆院選でも「将来的な廃止も念頭に透明性の確保に取り組む」と当面存続を前提とする党公約を掲げていた。
11月召集の臨時国会では、少数与党になったこともあり、廃止を求める公明党や野党との協議を経て、政策活動費を全面廃止する法律が可決成立している。
◯ 石破首相 幹事長時に政策活動費17.5億円(しんぶん赤旗 2024.10.4)
◯ 自民党 令和6年選挙公約(自民党 2024.10)※政策活動費の記述は4頁、20頁
③ 衆院選で、不記載問題があった非公認候補の党支部に2000万円を支給【2024年10月】
選挙期間中に、共産党機関誌しんぶん赤旗の報道で発覚した。
報道各社も大きく取り上げ、批判的に報じた。公認候補者と同額の支給がなされていたことから「裏公認」「偽装公認」とも指摘された。
自民党の森山幹事長は、党勢拡大のための活動費として支給したもので、候補者のために支給したものではないとコメント。
石破首相(総裁)も、選挙の街頭演説で「非公認の候補に出しているのではなく、選挙に使うことは全くない。偏った見方に負けるわけにはいかない」と反論。
同年11月召集の臨時国会でも、野党各党の議員がこの問題を追及したが、石破首相は従来の反論を維持した。
◯ 裏金非公認に2000万円 公認と同額 自民本部が政党助成金(しんぶん赤旗 2024.10.23)※なお、第一報の問題点については拙稿を参照
◯ 自民党の説明文要旨 非公認候補側への2000万円(時事通信 2024.10.24)
◯ 石破首相 “2000万円支給”報道「選挙に使うことは全くない」(NHK 2024.10.24)
④ 当選した新人議員に1人10万円の商品券を配布【2025年3月】
通常国会の前半で、朝日新聞などの報道で発覚した。
報道各社も大きく取り上げ、石破首相は政治資金規正法が規制する「政治活動」の寄付にあたらないと弁明しつつ、陳謝。各議員は商品券を自主的に返還した。
政治倫理審査会への出席を求める意見も出たが、開催されなかった。
「クリーンなイメージが消えた」といった批判が報じられ、各社世論調査では内閣支持率が急落した。
◯ 石破首相側が15人の議員側に商品券配布 10万円ずつか、複数証言(朝日新聞(有料) 2025.3.13)
◯ 石破内閣の支持率急落30・4%、発足以来最低に(産経新聞 2025.3.24)
◯ 石破首相会見「自分を見失っておった」商品券問題を陳謝、物価高対策など強調(日本テレビ 2025.4.1)
⑤ 元支援者が多額の闇献金をしていたと実名告発(石破氏は全面否定)【2025年5月】
通常国会の後半で、週刊文春が報道した。
石破氏の元支援者とされる男性が、約10年間で3000万円以上を献金してきたが、政治資金収支報告書に不記載だったと証言。
石破氏は国会で「記憶にございません」と全面否定した。だが、石破首相側が文春に対し、抗議や訂正要求、法的措置をとったとの情報もない。
告発した男性は実名で会見を行い、一部メディアに報じられた。だが、物証がなかったとされ、続報はほとんどなかった。
男性は国会の証人喚問等にも応じると言明したが、実現せず、事実関係は不明のままとなっている。
◯ 「私は闇献金をしてきました」石破首相“元側近”が週刊文春に告白する「3000万献金」《収支報告書不記載の疑い》(文春オンライン 2025.5.7)
◯ 石破首相、3千万円の「闇献金」疑惑否定 文春に証言男性との面会「記憶にございません」(産経新聞 2025.5.12)
◯ “パー券収入不記載”報道 元支援者が石破首相に反論(日本テレビ 2025.5.12)
(注1)一部野党やメディアが使う「裏金」(議員/問題)との表現は引用する場合に限り、本文中では政治資金収支報告書の「不記載」(議員/問題)と表記した。
(注2)ほかに、都議会自民党の不記載問題(2024年12月発覚)、参院選の公認候補問題も、党執行部の責任は否定できず、石破首相と関係のある「政治とカネ」問題と見ることできるかもしれないが、石破氏個人との直接的な関係は薄いと判断し、掲載を見送った。