夏の日本の平均気温 平年比2度余も高い 専門家に聞く【Q&A】

「40度」と聞いても驚かなくなってきたことしの夏の暑さ。この夏の日本の平均気温はこれまでのところ平年より2度余りも高く、過去の記録を大幅に上回っています。

夏の平均気温が2度余り高いことの意味合いやその要因について、気候変動のメカニズムに詳しい、東京大学大気海洋研究所の渡部雅浩教授に聞きました。

“大きなインパクト”

Q. 平年を2度以上も上回ることの意味をどう捉えていますか。

2度そのものは体感としてそれほど大きくないと感じるかもしれませんが、実はそんなことなくて平年に比べて2度余り高いのには大きなインパクトがあると思います。「2度」の上に日々の天気の変化があるので、1番暑くなる時期の気温が40度を超えることにつながります。

ことしはおととしから毎年続いている猛暑がまた起きた、と受け止めています。経験上、日本の夏はお盆を過ぎると少し過ごしやすくなりますよね。ですが、ことしはお盆を過ぎてもまだ猛暑日が続いていて、ここまで長続きするっていうのはちょっと予想外でした。

“温暖化だけでは説明つかない”

Q. 背景にはどういうことが影響しているのでしょうか。

やはりこの3年間、世界全体の気温が急に高くなって、そのままであるというのが影響しているだろうと考えています。長期的にはやはり温暖化が続いているというのは間違いないんですけれども、それだけでは説明がつかないんです。

1つには2023年に強いエルニーニョ現象※が起きた影響があります。また研究段階で完全に解明されてはいないんですが、船にクリーンな燃料を使うように規制がかかったため、船から出るエアロゾル(大気中の微粒子)が減った効果が考えられているんです。

エアロゾルは日射を遮る役割があるので、船から出るエアロゾルが減れば、その分日射が入りそれが地球の気温を少しかさ上げするように働いたのではないかと。まだ仮説ではありますが、少しずつそれを支持するようなデータというのも得られてきています。これから先10年くらい、まだまだエアロゾルは出ているので、温暖化とは別に人間が気候に与える影響として重要です。

(※エルニーニョ現象=南米・ペルー沖の赤道付近の海面水温が平年より高くなる現象。日本を含む世界の天候に影響を与えると考えられている)

“記録的な猛暑にならない” と言われていたが…

Q. もともと春先の長期予報では「記録的な猛暑にはならないのでは」と言われていました。

どのくらい暑くなるかまでをワンシーズン前から予測するのはやはり難しいです。エルニーニョ現象はもう2024年に終わっていて、その影響がなくなればその分だけ暑さは少し穏やかになるのではという見込みではあったわけです。

ただ実際には世界平均の気温はずっと産業革命前に比べてプラス1.5度を超えた状態が続いていますので、エルニーニョ現象の影響以外の部分でなかなか予測が難しかったのがあるのではと思います。

“これから先も夏は暑くなる”

Q. これだけの猛暑、今後も続いていくのでしょうか。

毎年、毎年の気象はたまたま起こる揺らぎが大きな理由ですから、来年同じような猛暑になるかと言われると、そうではないかもしれません。ただ昔は「すごく暑い年があったら来年は寒い夏になるかもしれない」と考えていたと思いますが、おそらくそういう考え方はもう違っていて、これから先も基本的には夏は暑くなると考えた方がいいでしょう。

どれだけ温暖化が進むか(~2030年ごろ)

Q. 温暖化の進行を考える上でこの2025年が重要なフェーズだったと考えられますでしょうか。

ある1年がきっかけで世界が変わることはないのですが、やはり2030年ごろまでにどれだけ温暖化が進むかというのは非常に重要な関心事です。世界各国の科学者でつくる国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」は前回の報告書で「世界の平均気温は1.1度上昇している」としていますが、「プラス1.5度」になってしまう時期が前倒しになるかどうか重要になると思います。

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