8月末に販売の期限が迫っていた随意契約による備蓄米について、小泉進次郎農相は20日、9月以降も小売業者による販売を認めると発表した。

 農林水産省の発表文は「新規の申し込みについては、本日をもって受け付けを停止します」「5月26日の募集開始以降、28万トンの契約を行いました。本日(8月20日)の引き渡し期限までに引き渡し済みのものは18万トンで、10万トンが未引き渡しとなっており、御不便をおかけしております。なお、途中で数量キャンセルされたものは4万トンです(28万トンの外数)」と書かれている。

 ここで重要なのは、10万トンが引き渡されていない点で「御不便をおかけしております」とのところだ。

 備蓄米の保管倉庫からの搬出に手間取っているのに加え、全国への搬出にも時間がかかっている。さらに「メッシュチェック」と呼ばれる品質確認や異物混入を検査できる施設が限られていることも要因といえる。要するに、農水省側の事情であり、見通しが甘かっただけだ。

 このため、発表文では「引き渡し後1カ月以内に販売することをお願い致します」「なお、8月20日の引き渡し期限内に到着したものについては、『8月末』または『引き渡し後1カ月以内』に販売することを目指していただくこととします」とされている。

 本コラムでは、コメの需給関数で算出できる理論価格から、随意契約分の価格などを出してきた。28万トンの契約のうち18万トンしか渡っていないとなると、価格を下げる効果は少なくなり、期待できる価格の低下は15%程度だ。

 農水省の資料によれば、随意契約分の放出以降、KSP・POSで15・4%低下、日経POSで10・7%低下、小売りパネルで21・3%低下であり、これらの平均は15・8%低下なので、理論値通りの結果だ。

 小泉農相としては、さらに価格を引き下げたいのだろう。そこで、農水省に落ち度のある未渡し10万トンを含めて、9月以降も販売を認めたということだ。

 8月末としていたのは、9月から出回る新米価格への影響を避けるためであった。しかし、農水省都合による未渡しが10万トンもあっては販売延長を認めざるを得ない。それが小泉農相の思惑とも合致したのではないか。

 ちなみに、10万トンの効果は、上述のモデルで計算すると8%程度の価格低下である。今5キロで3千円台後半であるが、うまくいけば3千円台前半になるだろう。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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