韓国の李在明(イジェミョン)大統領が23日、来日した。日韓正常化以降の韓国大統領で米国より先に日本を選んで訪問するのは初めてとなる。筆者は、本コラムで「今の石破政権とは意外に波長が合うかもしれない」と書いており、その予想通りとなっているように見える。
李氏は、日韓首脳会談後の記者会見で、国際会議への参加を除く初訪問先に日本を選ぶのは国交正常化後初めてだとした上で、「既存の慣行を果敢に脱却し、実用外交を実践し、未来志向の協力の道を共に切り開くという信念のもと、日本を訪問した」と日本重視の姿勢を強調した。
確かに、全斗煥(チョンドゥファン)元大統領(1980~88年)以降、尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領(2022~25年)まで9人の大統領がいたが、全斗煥氏から李明博(イミョンバク)氏(08~13年)までの6人はまず訪米してから訪日した。その次の朴槿恵(パククネ)氏(13~17年)は来日がなく、文在寅(ムンジェイン)氏(17~22年)は米国の後、ロシア、中国と訪問し、日本はその後で就任1年後だったし、尹錫悦氏も米国の後に訪日だった。
ただし、筆者は李政権の日本重視を余り額面通りに受け止めていない。というのは、李氏が大統領就任前にかなりひどい反日発言を繰り返していたからだ。
また、今の李政権はリベラルで、米国トランプ大統領とは合いそうにないが、石破茂政権とは合いそうだ。そこで、トランプ大統領は李氏がどのような人か聞くために、初めての2国間外交の相手として自身が会ったことがある石破首相を選んだかもしれない。
ただし、8月に訪日したのはかなり意外感があった。というのは、8月の日本の訪韓も韓国の訪日も異例だからだ。8月15日が終戦記念日なのは、日韓共通であり、国内行事がそれぞれ立て込んでいるし、反韓、反日のナショナリズムが盛り上がりやすい。ひょっとしたら、石破首相の8月15日の全国戦没者追悼式式辞で13年ぶりに「反省」に言及したことが韓国大統領の訪日の呼び水になったのかもしれない。
もっとも石破政権は風前のともしびであり、はやく訪日しておかないと、次の政権いかんによっては、訪日が遅れるので、急いだことも考えられる。左派色の強い石破政権との間で、日韓関係をピン留めしておく必要があったのだろう。
関税交渉では日韓ともに米国から相手にされていない。果たして相手にされなかった2人による日韓首脳会談で、トランプ関税に進展はあるのだろうか。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)