三重県保険医協会は28日、入れ歯やかぶせ物を作る歯科技工所に実施したアンケートの結果を発表した。約8割の技工所は後継者が不在で、人材不足に陥る可能性が高いことが表面化した。
協会によると、調査は昨年の9月から10月にかけて実施。健康保険が適用される歯科技工物を作る県内の273施設に回答を依頼し、18・7%に当たる51施設から回答を得た。
「後継者がいない」と答えた技工所は84・3%(43施設)。全国平均を0・6ポイント上回った。「後継者がいる」と答えたのは9・8%(5施設)で、全国平均は10・1%だった。
23・5%(12施設)が「5年後には技工士を辞めていると思う」と答えた。「5年後も続けていると思う」は41・2%(21施設)。「分からない」は29・4%(15施設)だった。
また、21・5%に当たる11施設で、技工士の労働時間が週70時間を超えていることが判明。技工士の可処分所得が年300万円以下にとどまる技工所が39・2%(20施設)に上った。
自由記述では「歯科医と技工所の両立」に向けて診療報酬の引き上げを求める声が相次いだ。ダンピング(不当廉売)の防止を目的とした「最低価格保証」の設定を求める声もあった。
「技工士が適切な料金を請求できていない。どれだけ働いても月給20万円」「とにかく労働環境を良くしないと、若者は技工士にならない」などと、待遇面での不満も多く寄せられた。
歯科技工物に関する保険点数のおおむね7割を技工士の技術料とする「厚生大臣告示」が守られていないとの指摘も。「診療報酬を増額しても技工所の報酬増は望めない」との声もあった。
鵜飼伸副会長は記者会見で「歯科技工士を取り巻く状況は極めて深刻。技工士の高齢化も進み、担い手の不足が心配される」と指摘。診療報酬の引き上げなどを国に要請する考えを示した。