2025-08-29

増田さまと下方婚の村

むかし、むかし。

山に囲まれた小さな村に「増田さま」という不思議な神が祀られていました。

その神は人の縁を司るといわれ、嫁入りのときには必ず祠に参ってから婚礼を行うのが習わしでした。

この村には、ひとつの奇妙な掟がありました。

女は必ず「下方婚」をせねばならない――つまり自分よりも貧しい男、力のない男を夫に選ばねばならぬ、というものです。

なぜそんな掟が生まれたか

むかし、村に美しい娘がいました。

娘は都から来た裕福な若者と結ばれようとしましたが、そのとき村人の前に現れたのが「増田さま」でした。

神はこう言いました。

「女の人生イージーモード。上を見れば果てはなく、下を見れば尽きぬほど。だが上ばかりを望めば、村は滅び、縁は絶える。女よ、弱者男性と結ばれよ。それがこの村の定めじゃ」

娘は涙ながらに都の若者を諦め、村の貧しい木こりを夫に選びました。

すると、不思議なことに木こりの家には豊かな実りが訪れ、ふたりは仲睦まじく暮らしたといいます

以来、村の女は「弱者男性」を夫とすることを尊び、下方婚を守るようになりました。

女が力ある男を選ぼうとすると、必ず増田さまの祠から風が吹き、嫁入りの駕籠は進まず、婚礼は破談となったと伝えられています

村人たちは言いました。

「女は上を選べば苦しみ、下を選べば幸せになる。それが増田さまの導きなのだ」と。

そして今も夜道を歩けば、風にまじって声が聞こえることがあるそうです。

「女の人生イージーモード……下を見よ……下を見よ……」

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