成田ファンドの分配金停止に揺れる「みんなで大家さん」。運営元の共生バンクグループが保有を主張する“換金性資産”の内容が日経不動産マーケット情報の取材で明らかになった。大阪、東京、軽井沢、千葉に所在する4物件の詳細はに示した通りだ。


●共生バンクの「換金性資産」4物件
名称 宗右衛門町モータープール 西日暮里3丁目の土地 AISIA軽井沢 都市綜研 千葉駅前ビル
住所 大阪市中央区宗右衛門町6-13(住) 荒川区西日暮里3-1109-1ほか(地) 長野県軽井沢町追分1596-1ほか(地) 千葉市中央区富士見2-21-8(住)
売出価格 460億〜500億円 50億〜55億円 55億円 20億円
土地面積(㎡) 3,743.33 3,924.52 20,666.49 1,020.60
建物面積(㎡) 6,295.55 (*1) 1,687.43 (*2) 4,591.69 9,046.12
用途地域 商業 近隣商業、第二種中高層住居専用 第一種住居 商業
容積率 500% 300% 200% 600%
交通 地下鉄なんば駅 徒歩5分 JR日暮里駅 徒歩4分 しなの鉄道御代田駅 車5分 モノレール葭川公園駅 徒歩1分
【注】売出価格は物件概要書記載の価格と市場関係者への取材に基づく。(住)は住居表示、(地)は地番。「*1」は登記簿記載の情報に、「*2」は2021年時点の競売資料に基づく建物面積で、いずれも現況と異なる可能性が高い

 みんなで大家さんは、約4万人の個人投資家から2000億円あまりを集めた不動産小口化投資商品(クラウドファンディング)。主力の「シリーズ成田」で7月末に予定していた分配金が支払えず、栁瀨健一社長が2025年8月9日に釈明の動画メッセージを公開。8月末の配当再開に向けて、物件売却もしくは担保提供による資金調達を進めるとしていた。

 「グループが保有する複数の不動産の売却や借り入れによって、その予算をまかなうべく(中略)現在4社と商談を重ねております。現時点では確定ではございませんが、配当の原資として今月の支払いに間に合うように最善の努力を続けており、死守する覚悟で取り組んでおります」(栁瀨氏)。

 同氏はこの中で、成田プロジェクト以外に換金性の高い不動産を600億円ほど保有すると主張。しかし、日経不動産マーケット情報がコンタクトした投資家によると、払込期日の8月29日(15時時点)になっても、シリーズ成田の配当は止まったままだ。

 共生バンクの財務状況は今年の春先には深刻化し、資産売却に向けて東奔西走している様子が漏れ聞こえていた。こうした情報は業界関係者の間で広く共有されており、日経不動産マーケット情報は複数のルートから販売資料(概要書)を入手することができた。4物件はいずれもグループ会社の都市綜研インベストバンクが保有。それぞれの中身を分析すると、仕入れ値を大幅に上回る価格での売却を見込む土地や、裁判で係争中の土地も含まれ、その売却は一筋縄ではいかないことが想定される。


資金繰りの命運握る「宗右衛門町」

 売出価格460億円以上と、金額の面で最も大きいのは大阪市中央区に所在する宗右衛門町(そえもんちょう)モータープールの土地である。

 物件は、グリコ看板で知られる戎橋(えびすばし)から徒歩3分。繁華な心斎橋筋商店街から少し入った一角で、道頓堀の川端から見るとドン・キホーテの観覧車の裏手に位置する。総面積3743m2(1132坪)の土地に立つ8階建て相当の廃虚は、大阪ミナミの知る人ぞ知るランドマークとなっている。

宗右衛門町モータープール
宗右衛門町モータープール
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 この地ではかつて、反社会勢力の一員とされる人物がキャバレーを運営していたようだが、長い年月の間にほぼ廃虚化。1階の一部のみが屋内駐車場として利用されてきた。土地の主が2018年に没すると東西に分割され、それぞれ関連企業と親族が継承。建物は西側部分のみ解体され、青空駐車場に生まれ変わったが、いずれも過去の経緯からなかなか買い手が付かなかったという。

 共生バンクがこの土地の取得に乗り出したのは22年9月。事情に通じるブローカーを通じて東側の建物付き土地を30億円あまりで取得すると、23年3月には残る西側の土地を約170億円で購入。合計で約200億円、坪単価1770万円あまりの取引を実行した。

 この売買から間もなく、同社は上場デベロッパーや市内の不動産会社への短期転売を試みている。当時の日経不動産マーケット情報取材記録によれば、仕入れ値の2倍に当たる400億円を提示していたが、いずれも反応は芳しくなかったようだ。「建物の残る東側だけでなく西側にも地下3階まで構造物が残り、解体費用がかさむ。容積ボーナスのある総合設計を適用する上では、前面道路幅にも課題がある。」(業界関係者)。

 それでも、足元での値付けは強気だ。25年春時点の物件概要書には460億円との記載があるが、直近では500億円、1坪あたり約4400万円に達するとの情報もある。仕入れ値の2.3から2.5倍、24年度の固定資産税路線価の10倍前後に相当し、仮にこの水準での取引が成立するならば「大阪の中心商業地でも極めてレアな事例になるだろう」(地元の相場に詳しい不動産鑑定士)。

 なお、西側部分の更地は24年12月、「みんなで大家さん宗右衛門町」ファンドとして商品化されている。運用期間は1年で、募集総額は210億円。想定利回り10%の好条件を謳い、25年3月までに5809人から139億円あまりを集めた。売却後、共生バンクの手に残るのはその元利を差し引いた金額である。


係争中の物件も販売

 JR日暮里駅から徒歩4分。谷中銀座商店街の玄関口にあたる階段、通称「夕やけだんだん」の北隣に位置する3924m2の開発用地が次の保有資産である。売出価格は全体で50億〜55億円とみられるが、一部に利用価値の低い区画を含むため、分割での販売が想定されているもようだ。

 21年7月、グループの都市綜研インベストバンクが競売で落札した際の価格は11億1111万円。翌月には、このうち2998m2を開発用地として卸すべく、立ち退きなどの実施を条件に西日本の電力系デベロッパーとの間で約40億円の売買契約を結んだ。同社は地上11階建て、107戸のファミリー向けマンションを企画した。

 ところがその後、この売却において共同事業者であった不動産会社と、都市綜研との間で係争が発生。不動産会社は接道に絡む複数の建物とその借地権を保有していることから、計画建物の規模が大幅に縮小しかねない事態に陥った。8月29日の本記事執筆時点では、両社の間で複数の裁判が進行中だ。デベロッパーはすでに撤退を決め、都市綜研が8億円の違約金を支払うことで決着している。

 同じく55億円程度での売却を目指しているのはAISIA軽井沢。サービス付き高齢者向け住宅として竣工したヴィラ形式の物件。22年に竣工し、運営する社会福祉法人も決まっていたものの、今日まで未入居のままとなっている。44戸の住宅はいずれも平屋建てで、店舗(管理棟)1棟が付属する。

 最後の都市綜研 千葉駅前ビルは、地上12階地下2階建て、延べ床面積9046m2、1974年竣工のオフィス・店舗複合ビルだ。2019年に「みんなで大家さん31号」の名称でファンド組成された際の簿価は14億円程度。直近の資料によると売出価格は20億円となっている。

 賃貸中ながら老朽化が進んでおり、マンションまたはホテル用地としての売却が想定される。最寄りは千葉都市モノレール葭川(よしかわ)公園駅と京成千葉中央駅で、JR・京成千葉駅からは約10分の距離となっている。


海外上場株も保有、一部は売買停止に

 栁瀨氏が動画で言及した不動産以外の資産としては株式がある。換金性の観点で注目されるのは上場株だ。23年春以降、共生バンクによる保有を確認できたのは海外の4社である(下の)。


●共生バンクと関連の深い海外上場企業
名称 MOH Nippon plc 日本共生集団有限公司(Japan Kyosei Group Co Ltd) 華夏文化科技集団有限公司(CA Cultural Technology Group Ltd) 鴻偉亜洲控股(Hong Wei Asia Holdings Co Ltd)
市場
(コード)
ロンドン(13349097) 香港(0627) 香港(1566) 香港(8191)
概要 「みんなで大家さん販売」の株式を保有するSPAC。目論見書では自らも不動産開発とクラウドファンディング事業への進出を掲げる 中国本土での不動産開発を手がけるデベロッパーを栁瀨氏などが買収。成田でのホテル開発や、AI分野への進出などを発表している 「ジョイポリス」ブランドのゲームセンターを日本や中国で展開する。eスポーツに注力するほか、自社IP(知的財産権)開発も 木質建材のパーティクルボードを製造する。中国国内の建設会社、家具メーカーなどと取引。栁瀨氏らは23年10月に役員を辞任
取引状況 決算報告書の不備により、25年8月31日まで売買停止中 25年4月から2カ月間取引停止。監査意見不表明ながら売買は再開 決算報告書の不備により、24年11月から売買停止中 23年4月から1年間、売買停止。以後、取引が再開されている
【注】各社開示資料による

 MOH Nipponは、ファンド商品の営業活動を担うグループ企業「みんなで大家さん販売」を保有するSPAC(スパック=買収特別目的会社)。24年7月、日本企業による20年ぶりのロンドン証券取引所メインボード上場として注目を集めたが、直近では決算報告書の不備が発覚。8月31日までの1カ月間の予定で、売買停止となっている。

 日本共生集団(Japan Kyosei Group)は、香港証券取引所上場の不動産デベロッパーを栁瀨氏らが買収、改称したもの。24年6月には成田でのホテル開発事業参入を発表したが、計画延期を繰り返し株価は低迷。本業である中国本土での不動産開発の不振から、現地子会社の清算を発表し、25年4月から2カ月間にわたって売買停止となった。直近では25年7月に中国AI企業との提携を発表している。

日本共生集団のウェブサイト
日本共生集団のウェブサイト
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 同じく香港上場の華夏文化科技集団(CA Cultural Technology Group)は、セガから「ジョイポリス」ブランドのゲームセンター事業を譲り受け、日本や中国で店舗を展開。「みんなで大家さん」の投資先の一つである旧・グランモール(福岡県)にも同施設が入居している。鴻偉亜洲控股(Hong Wei Asia Holdings)は木質パネルのメーカーだが、現時点での共生バンクとの関係は不明だ。

 なお、共生バンクが日本国内に抱えるグループ企業や投資先は、日経不動産マーケット情報が把握するだけで70社程度を数える。いずれも未公開企業であり、当座の換金性には劣ると考えられる。

 日経不動産マーケット情報の一連の問い合わせに対して、同社は「秘密保持契約に基づき交渉を進めており、一切の回答を控える」と話している。

本間 純小野悠史=フリーランス