元祖インフルエンサー発ブランド、なぜ次々に終幕しているのか? #エキスパートトピ

砂押貴久STEKKEY 代表取締役
益若つばさ写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

今年に入ってから、元祖タレント・インフルエンサー発のファッションブランドの閉店や終了が相次いでいます。いずれも設立から約10年前後、いわば「インフルエンサー」という言葉が社会に浸透し始めた2010年代中盤に立ち上がったブランド群。その終幕は、単なる一ブランドの話にとどまらず、消費スタイルや店舗戦略、そして“個”と“ブランド”の関係性の変化を象徴しています。

ココがポイント

益若つばさが設立したファッションブランド「イートミー」が、原宿の1号店を8月末をもって閉店すると発表した。
出典:FASHIONSNAP [ファッションスナップ] 2025/8/26(火)

「フィグ アンド ヴァイパー」がブランドを終了すると発表した。植野有砂が大学3年生の時に参画し、2011年9月にデビュー
出典:FASHIONSNAP [ファッションスナップ] 2025/8/4(月)

PELIが2013年に設立し(中略)10周年を迎えた2024年3月にディレクター兼デザイナーのPELIが退任を発表した。
出典:FASHIONSNAP [ファッションスナップ] 2024/4/25(木)

エキスパートの補足・見解

この背景には、インフルエンサー本人とブランド(運営会社)とのズレ、そしてファン構造の変化があります。当時の“個の時代”に立ち上がったこれらのブランドは、本人の世界観に共感したフォロワーによって支えられ、スタート時点から一定の注目を集めやすいという強みを持っていました。しかし、長期的には「本人が前面に出続ける」ことの限界や、「一過性の共感」から抜け出せない難しさが立ちはだかります。

今後は、本人の発信力だけに依存せず、コンセプトや商品力、組織的な運営体制をどう築くかが問われていきます。そうした時代の転換点にいち早く適応しようとしているのが、D2Cブランドを多く持つyutori inc.のような存在です。個人の熱量を原点としつつも、クリエイティブとマネジメントの分業や、コミュニティ運営を通じた持続可能なブランド形成に取り組んでいます。今や“インフルエンサー=ブランド成功”の時代は過ぎ、“共感”と“構造”の掛け算が問われてきています。

  • 80
  • 194
  • 105
STEKKEY 代表取締役

1987年東京生まれ。ファッションジャーナリストを経て、WWD JAPAN.comのチーフプランナーに就任。サイトリニューアルや広告メニュー立案を行いデジタル部門の確立したのち、2018年に株式会社STEKKEYを設立。ファッション、ビューティー、ライフスタイルブランドなど、これまで100を超えるブランドのブランディング、クリエイティブ制作、デジタルコミュニケーション戦略やサービス開発などに携わる。Yahoo!ニュースオーサーに加え、Forbes JAPAN Web オフィシャル・コラムニストも務めている。問い合わせ:info@stekkey.com

砂押貴久の最近の記事

一覧

あわせて読みたい記事