子どもの精神科訪問看護10年間で約40倍――不登校や発達障害の支えに #今つらいあなたへ #こどもをまもる
また、これらの課題にアプローチする前に重要なポイントがあるという。患者である子どもの意思の尊重だ。 「たとえば保護者が再登校してほしいと考えていても、子ども自身が再登校を望んでいない場合もあります。訪問看護を導入する時は、まず医師による診断が必要です。その上で、保護者が訪問看護サービスを希望し、子どもも受け入れに大きな問題がない、という条件がそろわないといけない。子どもが訪問看護を望まない場合はうまくいかないことが多いと感じています」
一人でスーパーに買い物、料理にも挑戦するように
「ナンナル」の訪問看護師、中川麻衣子さんは訪問看護にあたり、まずは安全な環境を作ることを心がけているという。 「精神科訪問看護では、特性の有無に関係なく、人に対する緊張の強いお子さんがすごく多いんです。子どもは遊ぶ中で自分を表現していき、それが成長につながっていきます。なので、遊びを通してお互いを知り、『この人なんか話聞いてくれそうだ』『自分の好きな世界を認めてくれる人だな』と感じてもらうようにしています」 関係を丁寧に築きながら、その先で現実的な相談に対応していく。訪問看護の時間は限られているが、そのわずかな時間が持つ力を中川さんは感じている。 「24時間のうちの30分ってすごく短い時間です。でも、そのたった30分を楽しい時間にできると、一日の他の時間にもいい影響がある」
子どもが家族以外の人と楽しい時間を過ごす。そんな様子を見て保護者も喜びを感じているのだという。 「そういう様子を見ると、ご本人もご家族も訪問看護につながるまで、家族だけで息苦しい大変な思いをされていたんだなと実感します」 ひろきくんは、数か月の精神科訪問看護を経て、最近では一人で近所のスーパーに行けるようになった。少しずつ料理にも挑戦している。 母親のはなさんは大きな成長を感じており、「精神科訪問看護が、ひろきを社会とつないでくれた」と言う。 「不登校の高校生には居場所がないんです。精神科訪問看護がなかったら、社会とのつながりを失ったまま、もっと落ちこんでいたと思います。我が家にとっては本当に生命線ですね」 平尾小径(ひらお・こみち) 編集者・ライター。1976年、岡山県生まれ。出版社にて児童向け学習雑誌、百科事典、図鑑、ノンフィクションなどの編集に携わる。2020年よりフリーランス。 本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。 「#今つらいあなたへ」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。つらい気持ちを抱えた人の「生きるための支援」につながるコンテンツを発信しています。 「子どもをめぐる課題(#こどもをまもる)」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。 子どもの安全や、子どもを育てる環境の諸問題のために、私たちができることは何か。対策や解説などの情報を発信しています。