子どもの精神科訪問看護10年間で約40倍――不登校や発達障害の支えに #今つらいあなたへ #こどもをまもる
10年間で約40倍に増えた未成年の精神科訪問看護
精神科訪問看護は、精神障害(発達障害も含む)をもつ患者に対して、医師の指示書をもとに行われる訪問看護サービスだ。看護師が患者のもとを定期的に訪れ、患者が症状をコントロールしながら地域で生活するのを支えている。 1980年代に患者の長期入院が問題とされて以降、精神科の治療制度の改善が進み、患者の生活の場が入院から在宅・地域ケアへと移されてきた。精神科訪問看護では、体温や血圧の測定、服用する薬の管理など医療的な処置とともに、地域で暮らす患者の社会生活上の希望や夢を引き出し、実現するサポートを大きな柱とする。 具体的にはどういう活動なのか。たとえば、家庭内で患者による暴力が生じている場合。 まず看護師は患者との信頼関係をつくり、暴力の引き金になっている要素や本人の思いを聞き出す。並行して、家族にもカウンセリングや病状の説明などを行う。暴力がすぐに収まらなければ生活の場を分けるなどの対策を提案するし、暴力が収まった時には患者に今後実現したいことを聞き、外出練習などのリハビリテーションを行ったりもする。 こうした対応を、最大週3回、各30分の看護時間を使って進めていく。要は、「看護」という医療的なイメージにとどまらない多様な活動が含まれるのが精神科訪問看護だ。
昨今は未成年の患者の利用が大幅に増えている。訪問看護療養費実態調査(厚生労働省)によると、精神科訪問看護での0~19歳の利用者数(抽出調査)は2013年から2023年の10年間で46人から1848人と約40倍に増加した。 そんな訪問看護を受けている一人がひろきくんだ。 服薬の話が一段落すると、ひろきくんは今取り組んでいるゲームの不具合について話す。看護師の大橋さんはひろきくんの話に楽しそうに相槌をうっていく。15分ほどすると、ひろきくんと大橋さんは突然腕相撲を始めた。前日にひろきくん一家で腕相撲をし、大橋さんにも挑戦しようという話になったという。 「ひろき、がんばれ! いけるぞ!」 母親の声援のもと、右腕の勝負は大橋さんの勝ち、左腕はひろきくんの粘り勝ちとなった。 30分の訪問看護終了後、大橋さんは訪問看護を経て、ひろきくんの着実な変化を感じると語った。 「ゲームの話だけでなく、雑談にもハキハキと応じてくれています。腕相撲のように、ぼくとやりたいことを用意してくれたり、買った服を見せてくれたり、ぼくが来るのに合わせて行動するようになったと思います」