子どもの精神科訪問看護10年間で約40倍――不登校や発達障害の支えに #今つらいあなたへ #こどもをまもる
訪問看護を受ける子どもが増えている。訪れているのは精神科の看護師や作業療法士。対象は発達障害を含む精神障害の子どもたちで、不登校の子も多い。子どもが精神科訪問看護を受けているある親は「我が家にとって生命線」と語る。精神科訪問看護の現場を取材するとともに、担当する医師や看護師に話を聞いた。(文・写真:編集者、ライター・平尾小径/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
午後2時に訪問する男性看護師
大阪郊外のマンションの一室。7月某日午後2時、ドアチャイムが鳴り「こんにちは〜」と穏やかな物腰の男性がやってきた。訪問看護師の大橋さん(仮名)だ。 「ひろきくん、いけそう?」と部屋の扉に向かって声をかける。扉を開けると、パソコンのゲーム画面に向かっていたひろきくん(仮名、17歳)が椅子ごと振り返り、少し笑顔を見せた。大橋さんは取り出した血圧計で素早く計測を始めた。 母親が「薬の話、していい?」とひろきくんに声をかけ、大橋さんに服薬について相談を始めた。ひろきくんは、時折ストレスをきっかけにけいれん発作を起こすことがある。その発作と服用している睡眠導入剤の相性がよくないと母親が言う。 ひろきくんもゲームソフト「マインクラフト」を操作しつつ、大橋さんに早口で説明する。 「薬を飲んだ後、眠かったけど、眠くないみたいな。目はぱっちり開いてるけど、体は眠いみたいな感じ」 3人の間を歯切れのいい大阪弁がぽんぽん飛び交う。 現在、通信制高校に籍を置くひろきくんは、小学3年生の時、学校に次第に行けなくなり、その後、発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けた。母親の付き添い登校、特別支援学級の利用、特別支援学校の中等部進学などを試したが、パニックを起こしてしまうなど行動が安定せず、小・中学校にはほとんど通えなかった。
現在は通信制高校で授業を受けているが、月に2、3回ある通学日にはあまり参加できていない。そんなひろきくんが医療の一環として週2回、1回30分ずつ自宅で受けているのが精神科訪問看護だ。 精神科訪問看護につながったのは2024年12月、けいれんの発作を起こして救急搬送されたのがきっかけだ。そのまま2カ月入院し、退院した2025年2月からけいれんの発作に対応するために本格的な利用を始めた。