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ひさのわたるの飲食業界の労務相談

法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

今回のご相談内容

お店が一方的にシフトを大幅に減らせることが許されるか

 チェーンの飲食店に勤務しているアルバイトです。先日、人事異動により店長が替わりました。ところが、私と新しい店長とはウマが合いません。そのうちに、今まで週4日ぐらい入っていたシフトを、まるで嫌がらせのように週2日程度に減らされるようになりました。このようなことが許されるのでしょうか。また、収入が大幅に減ったのですが、その分の賃金を請求することはできるのでしょうか。

労務相談イラスト

 その店長の行為は、「シフト決定権限の濫用」として違法にあたる可能性があります。また、その場合に請求できる賃金額は、シフトを大幅に減らされる直近の3ヶ月間に支払われた賃金の平均額である、と判断された裁判例があります。

 飲食店で働くアルバイトは、勤務曜日や勤務時間が固定化されずに、1週間等の一定期間で作成されるシフト表で決定されることが多いでしょう。その場合、雇用契約書には、「具体的な勤務日と勤務時間は、シフト表で決定する」と記載されていることがあります。では、このような記載があれば、極端な話、「アルバイト本人が週5日のシフト希望を提出しているのに、お店側が1日もシフトに入れない」ということが許されるのでしょうか。

 ここで参考になる裁判例があります(有限会社シルバーハート事件・東京地判・令2・11・25)。介護事業を経営する会社に雇用されていた労働者についてですが、入社時の雇用契約書には、始業・終業時刻等の欄に、「始業時刻午前8時00分、終業時刻午後6時30分(休憩時間60分)のうち8時間」「シフトによる」旨の記載があっただけでした。実際の勤務状況は、入社から約2年間、ほぼ1日8時間、週3日、合計週24時間のシフトで就労していました。ところが、ある時期から大幅にシフトが減らされ、収入が激減しました。具体的なシフト上の勤務日数と勤務時間は、
平成29年5月=13日(65.5時間)
6月=15日(73.5時間)
7月=15日(78時間)
8月=5日(40時間)
9月=1日(8時間)
10月=0日(0時間)
というものでした。労働者は、もともと週3日・1日8時間・合計週24時間という労働条件の合意があったと主張し、減らされたシフト分の賃金を請求しました。

 しかし、裁判所は、「雇用契約書には『シフトによる』と記載があるだけで、週3日であることをうかがわせる記載は無いこと」「勤務開始当初の2年間においても必ずしも週3日のシフトが組まれていたとは認められないこと」「介護事業所におけるシフトを組む際には、管理者、相談員、運転、入浴担当、アクティビティー担当等の役割を考慮して配置する必要があり、その兼ね合いから勤務日数を固定することは困難であること」から、週3日勤務の合意があったとは認めませんでした

 一方、「シフト制で勤務する労働者にとって、シフトの大幅な削減は収入の減少に直結するものであり、労働者の不利益が著しいことからすれば、合理的な理由なくシフトを大幅に削減した場合には、シフトの決定権限の濫用にあたり違法となり得ると解され、不合理に削減されたといえる勤務時間に対する賃金について、民法536条2項にもとづき、賃金を請求し得る」と判断しました。会社側は、合理的な理由を説明することができませんでした。

 最終的に裁判所は、シフトが削減され始めた8月の直近3ヶ月(5月~7月)の賃金の平均額を得られたであろうと認めるのが相当であるとして、その平均額と実際に働いた分の賃金との差額の支払を、会社に命じました。

 ご質問のケースに戻りますと、シフトを減らされたのが、本当に店長の嫌がらせによるもので、そのほかに合理的な理由がないようなら、シフトの決定権限の濫用と判断される可能性が高いでしょう。その場合、シフトを減らされる前の一定期間における賃金の平均額を請求することが可能です。

労務相談イラスト

 お店側として重要な点は、違法となるのは「合理的な理由がなく」シフトを削減した場合であるということです。例えば、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための営業時間短縮によるシフト減少は、この裁判例と同じ結果にならないと考えられます。

2021年 10月21日 掲載

>>前回までのご相談内容

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒173-0004 東京都板橋区板橋1-44-5栗林ビル203

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