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それぞれの戦果 ⑪

「せやからまぁ、ゴルドロスはんの魔法は本人の意思によって引き出されるものなんよ」


ロウゼキが語る。


「あれが欲しい、これが欲しい。 そう思ってぬいぐるみん中に手ぇ入れて引っ張り出す、けどあくまでそれは人間の想像力、頑張っても一人では限界があるわけやなぁ」


ロウゼキが語る。 その声は波風に攫われることも無くはっきりと届いて来る。


「せやから、そこにあえて思考の雑味を加えて本来ならありえない品を引き出したわけや。 まあその分当たり外れのブレは大きくなるようやけど」


「…………つまり?」


「くじびきみたいなもんやな、ブルームはんもお疲れ様」


今だ焦煙を上げて横たわる俺の顔を、笑いをこらえるツヴァイ姉妹を引き連れたロウゼキが覗き込む。

……さてはこうなる事を予想して俺に任せたな?


「だ、大丈夫ですのブルーム? 随分と真っ黒こげですが……」


「傑作、まるでコメディリリーフ」


「姉妹揃って好き勝手言ってくれんな……」


幸い、木っ端みじんにならずに済んだが体の節々が痛いし熱い。

あのバズーカもかなりの威力だったが、殺傷力で言えばほとんど脅威になるようなものではなかったらしい。

ただ指一つ動かすのも億劫なほどに疲弊している、それに今言われた通り俺の全身は煤まみれだ。


《マスター、見えないと思いますが実は私も真っ黒なんですよ……どういうことですか……》


「魔法少女って相も変わらず不思議なもんだな……」


恐るべしゴルドロス、まさか電子生命体にまで影響を及ぼすとは。

理屈をどうこう考えても無駄なのだろう、そういうものだと受け入れるしかない。


「で、結果はどうだ?」


「うん、上々や。 ゴルドロスはんもいい具合に吹っ切れたようやな……まあ、燃費の問題はありそうやけど」


そう言ってロウゼキが視線を投げかける先には、砂浜の上でうつぶせに突っ伏すコルトとバンクの姿がある。

バズーカを撃って変身が解除されるまで魔力が枯渇したか、以前までのゴルドロスなら魔力消費は魔石の支払いで賄えていたが、バンクも絡むとそうもいかないらしい。


「興味深い、非現実的な機能の実現には本人の魔力をリソースとして消費される? だとすればそこにはエネルギー保存則のような……」


「はいはい、園の悪い癖が出てますわよ。 クールダウンクールダウン」


「クールからほど遠い人に言われても困る」


「なんですのお前ー!!」


仲のいい姉妹のじゃれ合いを見せつけてくれる、だがよそでやってほしい。

こちとらもうぐったりだ、海にも何度か突っ込んだしいよいよ風邪が悪化したかもしれない。


「……コルトは、あの力を使いこなせたのか?」


「さあなぁ、それでも今度こそはっきりと切っ掛けは掴めた。 なら次はそれがいい呼び水になるはずやで」


「だったら良いんだけどな……っと」


勢いをつけ、一息に体を起こす。 今日はもう休もう、色々と疲れた。

これでコルトが強くなるならそれでいい、それだけ危険から遠ざかるのだから。

一番は魔法少女として戦わない事だが……本人が拒む以上それも難しいだろう、少なくとも現状の事件も片付かなければ。


「イテテ……手の1つぐらい貸してくれても良かったんじゃないか?」


「うふふ、掌に小石握り込んどいてよく言うわぁ」


「なんだ、バレてんのか」


流石に油断も無い、これじゃ「ロウゼキに1撃当てたらクリア」という合格条件もいつ満たせるか分からないな。

大人しく俺は手のひらから小石を落として参ったとばかりに両手を広げて見せる。


「……ブルームの能力は実際脅威、暗器としてはかなり優秀」


「本人の演技力も中々ですわね、先ほどまでの操られた振りも中々堂に入っていましたわよ」


「………………へえ?」


「はははそんなおだてんなって……ん?」


なんだろ、今ツヴァイたちの者とは違う声が聞こえたような。

ちらりとロウゼキの方を見るが本人が首を振って否定する、ハクはそもそも俺以外に声が聞こえないはずだから論外だ。

はて誰だ、この場にいるのは他には……


「…………ブルームはん、ゆっくり、ゆっくりと振り向いた方がええで?」


「……………………うーん?」


ちょいちょい背後を指さすロウゼキとツヴァイ姉妹。

ロクでもない事を察して忠告通り、ゆっくり振り返る。


そこにはくすんだ金髪を振り乱し、悪霊の如き佇まいのコルトとド至近距離で目が合った。


「………………よ、よおコルト? おはよう?」


「グッモーニーン……じゃないヨねぇ……ブルームこそ、大丈夫カナ?」


「いやははははは、お前のお蔭でどうにか正気に戻ったぜ他の魔法少女も全員救助済みだ全部お前のお蔭だ助かったぜ本当にありがとうではそういう事で俺はこの辺で」


「HAHAHA、ところでさっきの会話全部聞こえてたんだけどどういう事カナ?」


風よりも早く踵を返し、逃げ去ろうとするツヴァイ姉妹の首根っこを掴む。

ロウゼキは間一髪逃げ切った後か、既にその姿はどこにも見当たらない。


「離して、離してくださいましブルーム!? 彼女の纏っている殺気が分からぬ貴女ではないでしょう!?」


「道連れは非合理的判断、あなたの雄姿は後世に語り継ぐ。 この手は是非とも放すべき」


「俺たち友達だよなぁ、あの東京を共に駆け抜けた仲間だよなぁ!?」


「「いいえ!!!!」」


「この薄情姉妹!!」


「コントはその辺で良いヨ」


ガシャコンッと重い音を携え、どこから取り出したのかゴルドロスは特大の大砲を担ぎ上げる。

目にも止まらぬ超速変身、しかも担いだバズーカの口径はさっきまでの比ではない。


「ま、待ちなさいゴルドロス! 罪は全てそこにいるブルームスター1人のものですわ!!」


「お姉の言う通り、ブルームスターは大人しく自分の罪を数えるべき」


「お前たちも無罪じゃないんだよ! お前たちの罪をゴルドロスに教えろ!!」


「じゃあ全員同罪って事でいいよネ」


「タイム、タイムを取る。 お姉はともかく私の偉大なる頭脳が後世に残らないのは人類の損失」


「私はともかくとはどういうことですの園ぉ!?」


「待て、待つんだゴルドロス! これには海より深いわけがあるんだ! だから待つんだゴ――――」


すると三人がかりの必死の弁明が功を奏したのか、ゴルドロスの瞳に柔らかな光が差し込む。

そして殺気がほどかれ、ゴルドロスがほほ笑む。 ああ良かった、やっぱり俺たちは話せばわかりあえ


「逝っていいヨ」


『モッキュ』


「「「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!?!?」」」




○月×日:時刻未明。

西の海岸にて、今日一番の爆煙が巻き上がりました。

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