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”子に失敗させる経験”を阻むもの

子どもに関わる仕事をしている人たちの多くが「子どもにどんどん失敗をさせなさい」と言う(当然そうではない人もいる)。私も子どもの失敗に関しては寛容な方である。実際自分も無数の失敗をしてきたし、それによって周囲の大人に迷惑もかけてきた。それらの経験が人間関係の構築であったり文化的な活動のきっかけであったり、イザという時の決意に繋がる気持ちのお守りになっていたり、と有形無形の財産になっている。人間には失敗が必要なのだ、しかもできるだけ人生の序盤において。

しかし現実は逆行している。子にできるだけ「失敗させまい」とする親は増えた。加えて子どもたち自身が「失敗」を非常に恐れるようになった。「いいです」「止めておきます」「面倒くさいから行きません」これらの返答が常套句になっている子が非常に増えた。その発言自体が実は「大失敗」なのだが、そこに触れてしまうと今日のテーマから逸れてしまう。基本的に今の子は「何かをやるやらない」の2択に「やらない」を選択する。この原因の一つに「失敗を恐れる、決して失敗できないプレッシャー」があることは間違いないだろう。

この傾向は今の学校を見ると不思議である。教員たちは一昔前よりもずっと失敗に寛容になった。まあ当たり前のことで「叱ってはいけない」ので、子どもたちが失敗したとしても励まして寄り添うのが基本となる。以前の子どもらはその手前で叱られて立ち止まらざるを得なかったが、今はその抑止力が無い。学校は相当自由に振る舞っても何も咎められない場になっている。しかし子どもたちはどんどん抑制的になっている。これはなぜだろうか?

この問いの答えになりそうな事例が最近2つ見つかった。それを挙げていく。
1つ目はは友人から聞いた話である。今年になって7年ぶりに再会して酒を飲み交わした。お互いに中1の子がいる。現在の彼は父子家庭である。
「小学校で1回大きなトラブルになってしまったことがあって、友だちの家で誕生日パーティーをするからって娘が誘われて行ったんだけど、その頃お菓子作りにハマっていたからドーナツを作って持って行ったんですよ。朝から頑張って作っていて『あ~うちの娘もすごい優しい所があるな。喜んでもらえるといいな』って送り出したら、予定より早く家に帰ってきて『大変なことになった』と半ベソ。どうもドーナツを皆で食べてもらおうという話になって、おやつに出してくれたみたいなんだけど、パーティーに来ている中にアレルギーの子がいて、アナフィラキシーを起こして病院へ。それで途中で打ち切りになってしまったという訳です。すぐに謝りに行って、でも何もできないんですよね。誕生日を祝っていたご家庭にも申し訳ないし、病院へ運ばれた同級生は心配だし、娘もせっかくの好意だったのでメンタルも心配だし。結局それ以降1年くらいその友達関係はやっぱりぎくしゃくしたんですよね。そして学校からも『食べ物のやり取りは禁止』とお手紙が来て、あれは参りましたし、今でもまだ引きずっています。その経験で娘は友だちと遊ぶことも減りましたし、お菓子作りへの情熱も下がってしまいました」

なかなか辛いエピソードである。私たちが小学校の頃にあった「誕生日会」文化が消えた原因の一つでありそうだ。次の事例に移る。

現在3日前のあるツイートがバズっている。これを書いている現在12万いいねと2300万以上のインプレッションとなっている。

今日のクソ案件はイルカショーの最中ベビーカーゾーンで下の子と待っていたら、小学生男子集団が鬼ごっこしてたのかベビーカーに突っ込んできたこと。ブチ切れて学校名聞いたら「警察呼びますよ?」とか言ってきた。大声でこの小学校の引率教師どこですかーーーーって叫んだわ。いたわ、すぐそこに。
謝りもしなかったことをそのまんま伝えたら「あー…」みたいな反応。いつものことなんか面倒臭がったのか。取り敢えず学校名と教師の名前聞いて連絡先控えた。水族館の人にも立ち会って貰えた。「警察呼ぼっか」って男児に伝えたら漸くヤバいことに気付いたみたいだけど遅いわ。調子乗りすぎや。
警察だけは…とか言われたけどしらね。修学旅行だか社会見学だか知らないけど一足早く世間を学べて良かったねとしか。調子のって煽ってきてずっとニヤニヤしてたヤバい男児は泣いていたけどさ、演技にしか見えないよ。ルールを守ってた赤ちゃんを危険に晒して平気ってどんな躾されてきたんよ?
幸いベルトきちんとしてたのとベビーカー倒れる側に私が立ってたのと、偶然通りがかった飼育員さんが咄嗟に一緒に支えてくれたから赤子は無事だったけど。親なり学校なりに叱られろ。マジで。
あ、最初からちゃんと謝ってきた子たちは許しました。子どもだしテンションが上がることはあるからね。

11月5日のXのポスト4つ分。原文ママ、絵文字は省略。

コメント欄は盛況でまあ汚い言葉が並ぶ。この女性がまるで「黄門様」のようになっており、極悪な悪ガキを成敗して頂いて大喝采の様相である。
私は軽蔑する、謝れない子どもではなくこの発信者に。さらに軽蔑する、いいねを押して囃し立てる人に。もし事実なら(そこから疑っている)確かに被害者なのだろう。そして赤ん坊に危険が迫ったのは事実である。しかしそれをSNSで発信する公益性がまるでない。彼女が鬱憤を晴らしたいという誠に勝手で個人的な事情である。そして文面や発言に品性が無い。私がよく使う「正義感のみっともなさ」である。正義側であればどんな立ち回りでも許されると勘違いしている。普段「品が大切だ」のようなことを偉そうに言うインフルエンサーもこういう意見には積極的に乗ったりするから質が悪い。
まとめると現場で激怒して叱り飛ばすまでは構わないが「SNSで発信する必要が無い」と言いたいのである。

またこれで日本の出生率は0.01下がり、全国で1万人くらいの親が子どもに話しかけているのだろう「決して赤ちゃんに近づかないように!」と。こうやって子どもたちの行動や好奇心はどんどん削られていく。加えてこの事例は冒頭の論の証左にもなる。学校が「絶対座っとれ!動いたらタダで済むと思うなよ!」とする指導ができないからこうなるのだ。更にぶつかったと同時に引率教師からゲンコツが飛ばないからこうなるのである。今の時代はほとんど叱られない、しかし同時に決して許されない世の中になった。それを象徴的に現す事例である。

こんな感じで現代は「子に失敗させる経験」を積ませることが非常に難しくなっている。突き詰めて言ってしまうと並みの人間には無理である。極力失敗を避けるように子どもに伝え続けるか、ハナから子育てを諦めるのが関の山であろう。

最後にもう1点述べておきたいことがある。リベラルの教育系インフルエンサーはよくこのような発言をする「学校は子どもたちの主体性をそぐ」と。一体何年前の学校を想像してこんな発言を繰り返すのか。今の学校は教師が注意できないからどんどん無法地帯になっている。そして子どもたちの主体性やチャレンジ精神、好奇心などを削いでいるのは「子どもでも絶対に許さない」と変質してきた社会の方である。しかしリベラル系インフルエンサーたちはこちらは決して批判しない。彼らの中では「権威=悪、個人=善」という価値観で凝り固まっているからである。
教育環境や親の心理的負担を形成するのはかつては権威であった。しかし今はこのようなSNSの万バズやメディアから伝えられる「困った子どもたちの行動」である。ここを解消しない限り子育て周りの環境は閉塞感ばかりが漂ってしまう。このおかしな芽が出た場合に、批判の目を向ける人を増やすことが肝要であろう。

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”子に失敗させる経験”を阻むもの|Kosuke Inudo
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