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読売新聞の誤報を偽誤情報対策の観点から考える~メディアの信頼性をいかに担保するか?

総務省の偽・誤情報対策で規制の対象とされるのは主としてSNS等の匿名個人投稿であり、大手メディアの発信情報は対象外とされている。「伝統メディアによる誤報」を客観的な有害性と社会的影響の重大性が小さいと見なして、対応を検討すべき偽・誤情報から除外しているのである(注1)。
 
新聞協会の見解でも、 ”報道機関が取材を尽くして真実相当性を担保してもなお結果的に誤ってしまった情報と、「偽・誤情報」とは明らかに異なる” とされている(注2)。
 
だが、読売新聞が最近たて続けに誤報を飛ばしているのを見ると、”取材を尽くして真実相当性を担保” の部分がかなり怪しく思えてくる。このような大手メディアの誤報は総務省の見解に反して、社会的影響が大きく有害である。

従来より新聞やテレビは、「取材や多重チェックを通じて」言論空間の健全性を維持しているとか、報道倫理に基づく「訂正の仕組み」があるのでそれに基づいて自主的に訂正を行なうべきなどと言われて、特別扱いされてきた(注3)。報道機関の自主自律は「報道の自由」によって裏打ちされているが、報道の自由は知る権利にこたえる限りにおいて与えられるものである。にもかかわらず、メディアの側が報道の自由を単なる特権と見なして特別扱いに甘んじた結果、報道倫理も企業や業界としてのガバナンスも崩壊しているというのが現状だ(注4)。
 
社会的な信頼を失いつつある新聞テレビ等の伝統メディアを、総務省は「信頼できる情報源」と位置付け、それらの発信情報を災害時などにネット上で優先表示すること(プロミネンス)を提言している。有識者会議の報告書を見ると、デジタル情報空間の健全化を旗印に、SNSの対抗手段として大手メディアをぶつけるという図式が浮かび上がってくる(注5)。プロミネンスを実施するにあたっては、情報源の信頼性と発信内容の真実相当性が不可欠であり、それを抜きにした優先表示は説得力を欠いたものになる。場合によっては大手メディアの誤った発信が情報空間を汚染して社会を混乱させたり、他者の名誉や人権を侵害したりする可能性がある。

発信内容が正しいこと、発信主体が信頼できることを、どのように保証すればいいのだろうか? 新聞協会と民放連はこの問いに対して明確な答えを出していない。信頼性担保の責任をいかに果たすのかと問われる場面でも、最近ネットで個人がやっているものとは違ってうちは昔からしっかりやっている、というような曖昧な答えが返ってくるばかりである(注6)。これらの業界団体は偽・誤情報をはじめとする情報流通上の問題をプラットフォーム事業者の責任であるとして主体的な関わりを避け、ファクトチェックの取り組みにもつい最近まで及び腰であった。情報のエコシステムに深く関わり多大な影響を及ぼす主体としての自覚が薄いのかもしれない。信頼性低下は部数、視聴率の低下につながる重大事であるのに、危機感はないのだろうか。いまだに世間に信頼されていると思っているのだろうか。
 
メディアの信頼性担保のために第三者認証の仕組みを導入することが提案されている。例えば、国境なき記者団が設定したジャーナリズム・トラスト・イニシアティブ(JTI)はメディアの透明性や信頼性をはかる国際基準であり、日本ではまだビジネスインサイダー社しか認証されていない。日本の大手メディアはそれ自体が権威なので外部からの審査・認証には抵抗感があるかもしれないが、いまは透明性と説明責任の時代である。内部のガイドラインや綱領に則ってきちんとやっています、というだけでは通用しない。閉鎖的で旧弊な体質を改善して、外に開かれた組織・業界に生まれ変わらなければ、信頼の回復は見込めず、衰退を押しとどめることはできないだろう。


(注1)総務省「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ」2024年9月, p. 87
 
(注2)新聞協会「総務省「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」の とりまとめ(案)に対する意見」2024年8月20日
 
(注3)セーファーインターネット協会「Disinformation対策フォーラム報告書」2022年3月, pp. 5-6
 
(注4)メディアのガバナンス崩壊といえばフジテレビがいい例である。もはや自力での立ち直りは不可能と見たのか、総務省は放送事業者のガバナンスを議論する有識者会議を今年6月に立ち上げた。 

(注5)前掲の健全性検討会とりまとめ, p. 123より

現在のデジタル空間は、多種多様な一般利用者や広告主が実名・匿名で投稿・出稿する玉石混交のコンテンツが、伝統メディアやプロの書き手・送り手によるコンテンツと混じり合いながら溢れる情報過多の状況になっている。(中略)以上の玉石混交かつ情報過多の状況において、良貨としての信頼性のある情報が悪貨である偽・誤情報等の違法・有害情報を駆逐するという状態を創り出す取組とともに、偽・誤情報等の流通・拡散を抑制する取組を進めることが課題である。

強調引用者

(注6)総務省・デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会のデジタル広告ワーキンググループ(第5回)議事概要, 2025年1月22日, pp. 28-29


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