〈宝塚いじめ事件〉ヘアアイロンを額に当てて火傷も謝罪なし…厳しい上下関係から生まれた“虐待”を防ぐために必要だった対策ミーティングのカタチとは
ほんとうの会議#1
企業において、悪を生む会議と人を成長させるミーティングとでは天と地ほどの違いがある。新年度が始まり、多くの職場で新たな会議やミーティングが始まる中、本当に有意義な会議とはどんなたたずまいで、どんな機能を果たすのか。 【画像】4月に親会社である阪急電鉄から分離して法人化し、新会社となる予定の名門歌劇団 旧態依然とした会議から生まれた悲惨な事件の代表例として、2023年の宝塚歌劇団の事件について『ほんとうの会議』より一部抜粋・再構成してお届けする。
宝塚歌劇団の虐待
2023年には、世間があっと驚く事件が三件起こりました。そのどれもが、常識や良心から大きく逸脱した異様な事件でした。三件(宝塚歌劇団の虐待、ビッグモーターの不正、ダイハツの不正)とも、世間で大きな企業だと認められていた組織で生じていたのです。 いったいこの組織の中で、会議は機能していたのだろうかと思わざるをえません。企業ですから、会議がないはずはありません。本部でも会議が月に何度ももたれ、現場でも会議がない月などなかったはずです。それなのに三つの組織で前代未聞の悪行が生じていたのです。 まず第一は、宝塚歌劇団の劇団員の死と、その後の劇団幹部、そして会社側の非情極まる対応です。被害者(Aさんとします)が受け続けた、信じがたいほどの嫌がらせといじめは以下の通りでした。 Aさんが自分でヘアアイロンを使って髪を巻こうとしているのに、上級生が「巻いてやる」と言って額に1ヵ月以上痕が残る火傷を負わせました。しかも何ら謝罪もしなかったというのです。 新人公演の直前の二日間、深夜に上級生からAさんは髪飾りの作り直しを強要されています。深夜に仕事をさせて当然という感覚が、所属していた宙組の上層部に浸透していたのです。通常の組織であれば、昼間に組の全員で髪飾りの仕事に取り組めばいいのです。これは虐待の一種です。 新人公演が終わったあと、上級生がAさんに頭ごなしに、「あなたダメね」というような、人格を否定する発言をしています。 それでもAさんは、望んで努力の果てに入団した劇団なので、懸命に耐え続けています。そして一年半後に、宙組のプロデューサーが会議室を用意します。その会議室にAさんはひとり呼び出され、宙組の幹部四人から説教されます。 その後、宙組全員の集会が開かれ、Aさんは過呼吸発作に襲われます。これはもうAさんの心が、既に怪我をした状態にあった事実を示しています。全体集会を仕切っているのは上級生たちでしょう。ここで再度何をされるかという不安に、Aさんがかられたのは間違いありません。 Aさんはたまらず、宙組のプロデューサーに組替えを求めますが、無視されます。Aさんにとって、もはや逃げ道はなくなります。