収入は月8万5000円の母の年金だけ…「会社員経験もない」20年以上を介護に費やした50歳男性が陥った貧困。自分の食費は月2000円
’25年に後期高齢者数は過去最多を更新する見込み。要介護者が急増し、費用の高騰と人手不足を機に、介護による貧困化が加速し始めた。ただでさえ困窮する氷河期世代の生活が一気にどん底に転落するリスクが高まっている――。介護に翻弄された末に行き着く先とは? 超高齢化社会の日本が直面する大問題に迫った。 ⇒【写真】「食事はご飯、味噌汁、納豆に見切り品の野菜を小分けにしたものばかり。半年で10㎏体重が減りました」
91歳の母親を自宅で介護
自分の人生の何か一つでもタイミングが違っていたら――。築60年の木造2階建ての抜けそうな床。冷房のない薄暗い6畳の和室で、岩佐康介さん(仮名・50歳)は言葉を何度も詰まらせた。 現在、要介護5(ほぼ寝たきり状態)になる91歳の母親を自宅介護している岩佐さんの一日は、早朝5時の母の生存確認から始まる。その後、夜のわずかな休息時間を除いて、一日のほぼすべてを介護に費やす。
岩佐さんの一日のタイムスケジュール
5時 起床・母の容体を観察 6時~8時 母を起こす、掃除・洗濯・朝食の準備 8時~8時30分 朝食 9時~10時 着替えと陰部洗浄 10時~12時 椅子に移動させ、体を動かす 12時30分~13時 昼食 13時~14時 排泄処理 14時~16時 リハビリ・訪問介護・往診 16時~18時 夕食準備・休憩 18時~18時30分 夕食 18時30分~20時 服薬、歯磨き、就寝に向けた準備 20時~22時 リラックスタイム 22時~5時 就寝 外に出て働けず、生活は月8万5000円の母の年金に頼るしかない。毎月の家計簿の内訳だが、介護関連だけで支出の8割近くを占めている。なかでも介護サービス費の増加が重くのしかかる。
岩佐さんの家計内訳
年金収入 8万5000円 母親の食費 2万円 自分の食費 2000円 水道光熱費 1万円 母親の医療費 1万円 母親の生活用品費 5000円 介護サービス費 2万3000円 家賃(地代) 1万5000円 娯楽費 0円 その他 5000~1万円 支出合計 -5000~-1円 ※貯蓄:実家の解体費用300万円を切り崩して補填 「要介護3(日常動作全般で介助が必要)の頃は日中だけ施設に通うデイサービスを利用してたんですが、5になったら人手不足を理由に断られるようになった。ショートステイもありますが、一泊7000円とデイサービスの約4倍もかかる。 母には申し訳ないけど、入浴は週1回から月2回に減らしました。要介護度が上がれば給付金の上限も上がりますが、結局、僕のようにお金がないと1割の自己負担分さえ捻出できない。制度の恩恵を受けられないんです」