BEAUTY / WELLNESS

牛乳を毎日飲むのは本当に健康にいい? やめて分かった体調の変化

長らく“健康にいい”と信じられてきた牛乳。しかし近年、腸や肌への影響をめぐって、その評価は大きく揺れ動いている。毎日の習慣を少し変えただけで、体がどのように応えるのか――。分子栄養学の知見とともに、私自身が体験した変化をひも解いていく。

お腹の不調や膨満感……実は牛乳のせいだった?

牛乳を毎日飲むのは本当に健康にいい? やめて分かった体調の変化
Photo: View Stock /Adobe Stock

安価なうえに栄養価が高く、味も美味しい。そんな条件を兼ね備えた牛乳は、今や生活に欠かせない存在となった。

日本では給食で牛乳を飲む習慣が定着しているし、人によっては水の次くらいに摂取する機会も多いかもしれない。骨の材料になるカルシウムや筋肉や肌をつくるタンパク質も豊富に含まれていて、体にいい食品のイメージがあるため積極的に飲むようにしている人もいるはず。一方で、牛乳を飲むとお腹を下すという声も非常によく聞く。

牛乳をめぐっては、巷でさまざまな議論が巻き起こっている。カルシウムやタンパク質が豊富で“健康に良い”とされる一方で、体質や摂り方によっては不調を招く可能性があるという指摘も少なくない。実際、牛乳をやめてみると体調が変わったと語る人もいる。

私自身も分子栄養学を学び、牛乳を控えることで体調の変化を実感したひとりだ。では、なぜ牛乳をやめようと思ったのか――その理由を順に紹介していきたい。

やめた理由1
カゼインによる腸内環境の悪化

牛乳の約80%を占め、主成分といっても過言ではないのがカゼインだ。カゼインはタンパク質の一種で、非常に多くのアミノ酸を含む。そう聞くと、一見良い成分のように思えるが、実は腸に炎症を起こすリスクがあり、牛乳アレルギーの主要因の一つともされる。

カゼインと一口にいっても、いくつかの種類がある。特に多くの牛乳に含まれる A1型カゼイン は、消化管に炎症を起こしやすいとされるタイプ。これは家畜化と品種改良の過程で生まれた比較的新しい型で、人にとって消化しにくいと考えられている。未消化のカゼインが腸内で発酵し、ガスや炎症性物質を生むことで腸を刺激してしまうのだ。

一方で、古くから存在する A2型カゼイン は比較的消化しやすいとされ、A1に反応しやすい人でも症状が出にくい可能性がある

やめた理由2
乳糖によるアレルギー

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Photo: JAVIER PARDINA/Adobe Stock

乳糖とは乳製品に含まれる糖質のことだが、これを分解する酵素の活性が加齢ととも低下し、消化しにくくなるといわれている。いわゆる乳糖不耐症というもので、日本人の7~8割がこれにあたる。

分解できなかった乳糖は腸で発酵してガスを発生させ、腹痛や膨満感を引き起こすことも。このような症状に心当たりがある人は、牛乳を控えるほうが賢明かもしれない。

エディターも時折お腹を壊すことがあるので、乳糖不耐症を疑って控えるようにしている。

やめた理由3
ミネラルのバランスが崩れる

牛乳といえばカルシウム源として知られるが、栄養学的には マグネシウムとのバランス が重要だ。カルシウムとマグネシウムは「拮抗ミネラル」と呼ばれ、吸収や作用の過程で競合する。理想的な比率は カルシウム:マグネシウム=2:1 とされるが、牛乳は約10:1とカルシウム優位。結果としてマグネシウム不足を助長する恐れがある。

日本人は、元々カルシウム優位になりやすい食生活を送っているうえ、加工食品や精製糖の摂取によってマグネシウムを無駄つかいしていることも多い。

ちなみに、カルシウムは筋肉を収縮させ、マグネシウムは逆に筋肉を弛緩させる作用がある。カルシウム過多になることで、筋肉が硬直して肩凝りや腰痛が起きたり、筋肉が攣ることも。

そういった意味でも、日常的に牛乳を大量に飲むことは望ましくない。

牛乳を控えて感じた体の変化

上記で解説した問題のほかに、牛の成長促進や感染症予防のために投与される抗生物質の残留も一部で問題視されている。日本は規制が厳格で心配は少ないが、米国などでは規制が緩い地域もあり、残留した抗生剤が腸内細菌のバランスを壊し、リーキーガットという腸の炎症状態を悪化させることもあるそうだ。

これらの理由で牛乳を少し控え、代替として豆乳やオーツミルクなどを日常では取り入れるようになった結果、お腹を下す回数が格段に減り、花粉症を始めとしたアレルギーが軽減。慢性的なだるさや集中力不足なども解消された。

もちろん牛乳の味は今でも好きで、時には楽しむ。だが「なんとなく日常的に飲む」習慣をやめるだけで体調が大きく変わる可能性がある。また、先に説明した通り、A2カゼインを含む牛乳を選ぶことでリスクを軽減できる点も覚えておきたい。

ヨーグルトは腸にいい?

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また、腸に良い食品として宣伝されるヨーグルトも、牛乳牛乳由来である以上、同様の問題を抱える可能性がある。ヨーグルト含まれる乳酸菌そのものは腸にとって有益だが、カゼインなど腸に負担をかける成分も含むため、「腸活」という意味では逆効果になることも。

嗜好品として食べる分には問題ないが、もし“腸にいい”こと期待して食べているのであれば、その知識はアップデートが必要かもしれない。