国連、イスラエルによるガザ病院への二重攻撃を批判 正義と説明責任求めると

動画説明, 【検証】 ガザ・ナセル病院への2度の攻撃、どのように起こったのか イスラエルの主張は

イスラエルがパレスチナ・ガザ地区の病院を2度にわたって攻撃し、少なくとも20人が死亡したことを受け、国連は26日、「正義が必要だ」とし、調査と説明責任を求めた。イスラエル軍は初期報告で、「(ガザのイスラム組織)ハマスが設置したカメラ」を狙った攻撃だったと説明している。

犠牲者にはジャーナリスト5人と医療従事者4人が含まれていることが明らかになっており、非難の声が高まっている。イギリスのキア・スターマー首相は、「完全に弁護の余地がない」と非難した。

イスラエル国防軍(IDF)は26日に初期調査結果を公表し、さらなる調査が必要な「複数の空白」があると指摘した。

この日、イスラエル国内では全国的な抗議行動が行われ、政府に対して人質解放の合意案を受け入れるよう求めた。

ガザ南部ハンユニスにあるナセル病院で発生した攻撃では、最初の攻撃で少なくとも1人が死亡した。この犠牲者は、病院建物の側面にある階段でライブ映像を配信していたロイター通信のカメラマンだった。

その約10分後、同じ場所に再び攻撃があり、現場に駆けつけていた記者や救助隊員が巻き込まれた。

2度にわたる攻撃により、少なくとも20人が死亡した。犠牲者の中には、国際報道機関に所属する5人の記者と4人の医療従事者が含まれていた。報道機関には、AP通信、ロイター通信、アルジャジーラ、ミドル・イースト・アイなどが含まれている。

国連人権高等弁務官事務所のサミーン・アル・ヒータン報道官は26日、攻撃について「衝撃的で容認できない」と述べた。

また、「ジャーナリストを標的としたことについて、非常に多くの疑問が生じている。これらすべての事案は徹底的に調査されるべきであり、責任者は必ず追及されなければならない」と語った。

同報道官は、過去のガザ地区における死者に関するイスラエルの調査についても言及し、「調査は結果を出す必要がある。正義が必要だ。これまでのところ、結果や責任追及の措置は確認されていない」と述べた。

IDFは声明の中で、病院周辺にハマスが設置したとされるカメラを確認したとし、「IDF部隊の活動を監視するために使用されていた」と主張したが、証拠は示していない。

声明では、「部隊は脅威を排除するため、攻撃を行いカメラを破壊した」としている。また、死者のうち6人は「テロリスト」だったと主張した。軍報道官は後に、ロイター通信およびAP通信の記者は標的ではなかったと説明した。

このIDFの報告からは、イスラエル側の論調の変化がうかがえる。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は25日夜の時点では、この攻撃を「悲劇的な事故」と表現していた。

ただし、IDFは最初の攻撃から数分後に第2の攻撃を実施した理由については説明していない。代わりに、使用された弾薬や「現場での意思決定プロセス」を含む承認手続きについて、さらなる調査が必要だとしている。

医療施設は国際法で保護されている。だが、イスラエルは戦争の間、医療施設がハマスによって利用されていると主張し、ガザ地区の病院を繰り返し攻撃している。

人質となった人々の顔写真が印刷されたプラカードを掲げる抗議者たちが道路に並んでいる

画像提供, Reuters

画像説明, 26日にはイスラエルで大勢が人質の写真を掲げて政府に人質解放を求めた(エルサレム)

こうしたなか、イスラエル国内では、ハマスに拘束されている人質の返還と戦争の終結を求める抗議活動が行われた。抗議者らはタイヤを燃やして高速道路を封鎖したほか、テルアヴィヴなど各都市でデモを実施した。

イスラエル政府はこれまでのところ、ハマスが合意した停戦案を拒否している。イスラエル側はかつて、この案に合意するとしていたが、現在は異なる内容の合意を求めている。

ネタニヤフ首相は、すべての人質を一度に解放する内容の新たな合意を望んでいると述べている。

戦争が始まってから22カ月が経過した現在、イスラエル政府は、ガザ地区でハマスに拘束されている人質50人のうち、生存しているのは20人のみだとみている。

2023年10月7日のハマスによる攻撃で息子のニムロッド・コーエンさんが人質となったイェフダ・コーエンさんは、「イスラエルはネタニヤフとその政権に反対している」と語った。

また、「きょうも抗議の日だ。人質問題を最優先事項として維持するための日だ。ネタニヤフに圧力をかけ、戦争を終わらせ、人質解放の合意を実現させるための日だ」と述べた。

エルサレムでは、首相官邸で安全保障閣議が開かれている中、数百人のデモ参加者が建物の外に集まった。

停戦交渉に関与しているカタールは、今なお、最新の提案に対するイスラエルの「回答を待っている」と明らかにした。

カタール外務省のマジェド・アル・アンサリ報道官は、「現在、提示されている提案に回答する責任はイスラエル側にある。それ以外の言動は、すべて政治的なポーズにすぎない」と述べた。

一方、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使は、ドナルド・トランプ大統領が27日に、ホワイトハウスでガザの戦後計画に関する会議を開くと明らかにした。

ウィトコフ特使は米FOXニュースに対し、「いずれにせよ、今年末までにはこの問題に決着をつけるつもりだ」と語った。

家財道具を山積みにした3輪自動車が道路にとまっている。背後には空爆で外壁がなくなった建物が並び、道路にもがれきが散らばっている

画像提供, Anadolu via Getty Images

画像説明, ガザ北部から避難するパレスチナ人(26日)

ハマスが運営するガザ地区の保健省は26日、過去24時間で75人のパレスチナ人の遺体が医療施設に搬送されたと発表した。

イスラエル政府は、国内外の強い反発にもかかわらず、ガザ市の軍事支配を目指す計画を明らかにしている。イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は、ハマスが武装解除と人質の全面解放に応じなければ、ガザ市を破壊すると警告している。

国連が支援する総合的食料安全保障レベル分類(IPC)は先に、ガザ市および周辺地域で飢饉(ききん)が発生していることを確認した。ガザ全域で50万人以上が「飢餓、困窮、死」によって特徴づけられる「壊滅的」な状況に直面していると報告している。

この報告に対し、イスラエル政府は「完全な虚偽だ」と反論し、同地域で飢餓が発生している事実を否定している。

ハマス率いる勢力は2023年10月7日、イスラエル南部を攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質としてガザに連れ去った。それを受け、イスラエル軍はガザで軍事作戦を開始した。

これ以来、ガザでは少なくとも6万2819人が殺されたと、ハマスが運営するガザ保健当局は発表している。

大半のガザ住民の繰り返し移動を余儀なくされており、ガザ地区では住宅の9割以上が損壊または全壊したと推定されている。医療、水、衛生、衛生システムも崩壊している。