講義No.13231
女性が被害者の犯罪ニュースが多いのはなぜ?
数多く報道される女性被害者の事件
- テレビや新聞、雑誌など、マスメディアで報道されている犯罪についての日々のニュースをみていると、女性が被害者となっている犯罪が、数多く報道されていることに気づきます。それらの事件の報じられ方も、女性被害者の容姿やプライバシーなどにかかわる情報が盛り込まれ、センセーショナルな内容に仕立てられている場合が少なくありません。
実際の統計では
- 警察庁などの行政機関が発表している統計を分析すると、日本国内での犯罪数は、近年は減少傾向にあります。被害者の男女比も、実は男性の割合が高く、女性の倍以上あるのです。もちろん、警察に被害届が出されていない性犯罪なども数多く存在しています。しかし、マスメディアで報道される女性が被害者の犯罪の数と実態との間では、少なからぬ食い違いが生じていることがわかります。 犯罪の報道は、警察発表による情報のほか、各メディアの記者たちが取材を通じて得た情報を基に、マスメディアがニュースバリューを判断して、どの事件を優先して報道するかを判断します。その際に、マスメディアの中で「女性が被害者である事件の方が注目される」というバイアスが働いていることが、犯罪の実態との食い違いが生じる結果につながるといえます。それらの報道で女性被害者のプライバシーが必要以上に報じられてしまう傾向にあるのも、マスメディア側がニュースバリューを優先することが原因と考えられます。
社会とマスメディアの意識改革が必要
- こうしたアンバランスな状況を改善するには、私たちの社会のさまざまな場面に存在するジェンダーのギャップを一つひとつ解消していくように働きかけて、ジェンダーに対する私たち自身の認識やアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)を改めていくことも必要になります。また、そもそも犯罪についての報道は犯罪を抑止したり、被害者を救済するためのものでなければなりません。どのような情報を報道すべきか、マスメディアの側にも、ジェンダーや個人情報に対する意識改革が求められます。
- 関連する
SDGs
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先生情報/大学情報
宮崎公立大学
人文学部 国際文化学科 メディア・コミュニケーション専攻 教授
四方 由美 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
- 社会学、メディア学、ジェンダー論
先生がめざすSDGs
メッセージ
- 情報化社会となっている現在、メディアのあり方も変わってきています。また、ジェンダーに対する考え方も、ここ10年くらいで格段に変化しています。私はメディアとジェンダーの両方を研究領域としていますが、「メディア」、「ジェンダー」といった、社会の中で常に刻々と変わっていくものをとらえて分析していくことで、その変化の現場に立ち会うことのできる、興味深い学問領域だと思っています。興味がある方は、ぜひ一緒に本学で勉強しましょう。
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?先輩たちはどんな仕事に携わっているの?
先生の学問へのきっかけは?
マス・コミュニケーションを勉強していた大学生の時、当時まだ新しい学問領域であったジェンダー論に出会い、性別に関する私たちの認識はマスメディアがつくるのではないかと思い至りました。とりわけ犯罪報道のような私たちに強い関心を抱かせるものの中に、女性/男性、LGBTQなど属性によって扱いが違ったり、ダブルスタンダードが存在することに興味を持ち、研究を始めました。1980年代後半は女性差別が顕著にみられ、性的マイノリティが不可視化されていました。現在とは隔世の感があります。
先輩たちはどんな仕事に携わっているの?
新聞・通信社記者/テレビ制作/広告制作/社会科学系研究者/NPO主催/航空関係・サービスなど
- 参考資料
大学情報
宮崎公立大学に関心を持ったあなたは
- 本学は教養教育中心の小規模大学で、日本の国公立大学の中で数少ない本格的なリベラル・アーツ大学です。個別的な分野を狭く研究するのではなく、自由な精神で学問の本質を研究し、専攻分野に縛られず幅広く学ぶことで、専門性に裏付けられた総合力が発揮できる人間性豊かな人材育成を目標としています。「少人数教育」「活発な国際交流(海外留学)」「充実した就職支援」等が主な特徴で、小規模を活かしためんどうみの良さで、教職員が学生一人ひとりをしっかりとサポートします。