工画堂スタジオから本日6月20日に発売されたSteam向け和風伝奇アドベンチャー『やがて散りゆく鏡の花へ』をレビューします。
『やがて散りゆく鏡の花へ』は人の心の闇から生まれた“霊魔”と呼ばれる存在により引き起こされる怪異事件の謎を解き明かすアドベンチャーです。
キャラクターデザインはイラストレーターのへりがるさん、りんごぱんさんが担当。“来兎 & やがてち囃子 feat.阿部里果”によるOP主題歌『鏡の花の咲く月夜』も用意されています。和ロックテイストのかなりかっこいい曲になっているので、プレイ前にぜひ!
記憶をなくした主人公・守月結斗と相棒・水月さとりによる怪異調査は驚きの連続。テンポよく進む物語に読む手が止まらない!【やがて散りゆく鏡の花へ】
本作の物語は主人公の守月結斗が少女に呼び掛けられるところから始まります。声に導かれるように目を覚ますと、そこには1人の少女の姿が。
どうやら結斗は意識を失っていたようで、彼を目覚めさせるため、少女が呼び掛けてくれていたみたいです。ただ「ご主人」という呼び方をしているので、仲間や友だちという関係ではなさそう。
結斗は記憶を失っており、そのなかで覚えていたものの1つが彼女の名前です。
少女の名は水月さとり。ただ、なぜか名前に“?”マークが付いていますがどういうことでしょうか?
少女の名は水月さとり。ただ、なぜか名前に“?”マークが付いていますがどういうことでしょうか?
疑問に思いつつも読み進めていると、突然少女の雰囲気が変わります。そして、心を覗くと語り、主人公の現状を把握します。そのときにさらに気になる言葉が。
なるほど。そうだったのですね。水月さとりの体には“覚”と“悟”という2人の“さとり”が存在していたのです。だから名前が水月さとり? と表示され、覚えているのは“私達の名前”という不思議な言葉になったわけです。
物語は会話形式で進みますが、周囲を調べたり、会話の内容を選択したりして進めるパートも存在。自分で話題を振っている感覚が得られるなど、物語への没入感を高めるために重要な役割を果たしています。
人物の謎が解けると同時に、状況の謎もどんどん明らかになってきます。結斗たちは“霊魔”と呼ばれる存在の調査をしており、その途中でこのような状況に陥ったようで、記憶を失ったのも霊魔が原因と考えられます。
その原因と思われる霊魔が現れますが、影のようになっていて姿がよくわかりません。霊魔は姿を認識できず、結斗が言霊の力で名前を付けて、初めて鮮明に見えるようになります。
姿を見せた霊魔をどうするのかと思ったら、覚が銃を取り出して発砲。霊魔はさまざまな事件を起こす存在なので倒そうとするのはわかります。ただ、勝手にファンタジーよりの世界観だと思っていたので、割と物理的な方法だったことに少し驚きました(笑)。
無事に霊魔を倒したのですが、結斗の記憶は戻りません。ただ、霊魔はほかにもいるので、もともと行っていた調査をしながら、主人公の記憶を取り戻す物語が始まります。
本作は章仕立てで構成されており、ここまでが第一章。次章ではとある悩みから神社へのお参りを続ける女子高生・雨霧美優が登場します。旧校舎に現れたという霊魔を調査するなかで、さまざまな事実が明らかになって……。
本作は章仕立てで構成されており、ここまでが第一章。次章ではとある悩みから神社へのお参りを続ける女子高生・雨霧美優が登場します。旧校舎に現れたという霊魔を調査するなかで、さまざまな事実が明らかになって……。
第一章は世界観やメインキャラ、システムの紹介がメインで、物語にすんなり入り込めたのがグッド。第二章からは物語が本格的に描かれていきますが、各章で個性的なキャラが登場するのに加え、霊魔の掘り下げや意外な発生原因、結斗の言霊の想像を超えた力など、驚きの展開が用意されています。
章ごとのボリュームは読み疲れしない程度のいい塩梅になっていて、物語自体もテンポよく進んでいくので飽きることなく最後まで楽しめるはず。
シナリオチャートもあるのですが、これはただ単に物語を読み返しやすいといっただけでなく、とある仕掛けをわかりやすくしている側面もあり、遊んでいて「なるほどな」と思わされました。
シナリオチャートもあるのですが、これはただ単に物語を読み返しやすいといっただけでなく、とある仕掛けをわかりやすくしている側面もあり、遊んでいて「なるほどな」と思わされました。
和テイストを存分に感じられる音楽やイラストにも注目。あとやっぱり覚はかわいい【やがて散りゆく鏡の花へ】
本作はリアルとファンタジーが融合した“和風伝奇”ということで、物語だけでなく音楽やイラストなどもしっかり“和”を感じられるものになっているのもポイントかなと思います。
音楽は笛や琴など和楽器をメインに奏でられているものが多く、聴いていてすごく心地いい気分に。虫の音だけで進むシーンもあるのですが、風情を感じることもあれば、不気味な気配を漂わせていることもあったりと、同じ音でも場面によって感じ方を変えてくれる雰囲気作りは素晴らしいなと。
あわせて背景にも注目してみてもらいたくて、緻密に描かれた夜の森、商店街、旧校舎などがノスタルジックな気持ちにさせてくれるんですよ。月の満ち欠けで時間の経過を表現しているシーンなんかもあったりして。おしゃれですよね。
和といえば妖怪! かはさておき、霊魔も第一章の獏を筆頭に複数登場。名前を出してしまうと実体化……もとい、楽しみが減ってしまいそうなのでここでは伏せますが、妖怪や伝説の生き物などが好きな方は「次は何が出てくるんだろう」とワクワクできるはず。「こんなのが出てきたか!」という驚きもきっと感じられるでしょう。
アドベンチャーゲームなのでキャラも重要だと思いますが、相棒の水月さとりは覚、悟のどちらも魅力的。
覚は明るい性格の女の子なので、表情がコロコロ変わって本当にかわいい! 色々な差分を用意してくれた開発スタッフさま、絵師さまありがとう!!
反面、悟はクールで表情を大きく変えることはないだけに、心を読む際にゾクッと。ミステリアスで覚とは違ったよさがあり、悟のことも大好きです。
あと上の方でも少し書きましたが、キャラの後ろ姿がゲーム内でも使われているのって芸が細かくていいなと。表情差分やポーズ違いなどはあれ、アドベンチャーゲームは基本的に正面のビジュアルのみで進むものが多いと思うので、状況に合わせてきちんと後ろ姿になるのはよかったですね。
あえて書くとしたら、物語のテンポが本当によく、というかよすぎて無駄が全然ないので、個人的には結斗やさとり、デリーたちの何気ない一幕で構成された章とかも見てみたかったな、ってところでしょうか。いろんな面が見てみたくなるキャラばかりなんですよ、ホントに。
とはいえ、没入させてくれるシステムに、和要素をしっかり取り入れた音楽や映像、魅力的なキャラとともに紡がれていく物語と、1本の和風伝奇としてほどよい満足感を得られる作品になっていると思います。
価格は3000円(発売から2週間はセール価格2400円)とお手頃。体験版も配信されているので、実際に遊んで雰囲気を感じたい方はぜひ1度プレイしてみてください!
ちなみに、さとりたち5人のヒロインのASMRボイスドラマの制作も発表されています。本編はボイスがないだけに、みんなの声を聴けるのは嬉し過ぎ! しかもさとりは長谷川育美さん、舞さんは茅野愛衣さんなど最高のキャスティングとなっています!!