DXやAI導入は基本成功しません、だって仕事が楽にならないから!
何を間違ったか私は新卒の就職先にITコンサルを選んだんですが、コンサル業界では当時(2019年頃)、DX(デジタルトランスフォーメーション)ブームの全盛期でした。
転職するまでの5年間に(業界は偏っていたものの)色々なプロジェクトを垣間見させてもらいましたが、その時に常々このDXブームに対して思っていた事があります。
DXって基本的に無理ゲーじゃない?と
そもそもDXを成功させるためには何が必要なのか
(私はバリバリ仕事を頑張って出世街道を歩んでいたわけではなく、のほほんと技術屋さんとして好き勝手働かせてもらっていたため、あまり偉そうな事を言える立場ではない、という前置きを置いた上でこの後の話は聞いてもらえればと思います)
そもそもDX(最近だとAI導入も含まれる)を成功させるためには何が必要なのか?
最先端のAI技術?難しい課題を突破できる技術力?最後までDXをやり遂げる根性?
いいえ、そのどれも違います。
一番大切なのは既存業務の「正確な」ワークフローの可視化です。(やめてマサカリを投げないで)
そもそもDXの定義からいきましょう。
DXとは、「企業が、ビッグデータなどのデータとAIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していくだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも改革し、競争上の優位性を確立すること(野村総合研究所談)」らしいです。
さて、ここで重要なのは「デジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していく」という部分です。
つまり、既存の業務プロセスがまず軸としてあって、じゃあそれをデジタルとか最新技術で効率化していこうよ!っていう活動なわけですね。
さて、効率化していこうというからには、既存業務には効率化する余地、すなわち無駄が存在しているという仮定が言外に置かれています。
この無駄を洗い出し、デジタル技術を使えばもっと効率よく業務が進められますよ!という売り込みでコンサルはDXを推進していくわけです。
業務効率が上がっても仕事が減るわけではない
はい、DXやAI導入の一番の病巣ですね
業務効率が上がれば労働者は楽になる?いいえ、当然そんなことはありません。
手が空いたならこの仕事もやってくれと別の仕事が降ってくるだけで、8時間の定時が6時間に減ったりなどするわけがないという事は、皆さん言わずもがなお分かりかと思います。
昔、何かのプロジェクトで現場向けの説明資料に書かれていたキャッチフレーズに、「無駄な時間を削減して現場の方にはよりクリエイティブな仕事を」みたいな言説があったのが強く記憶に残っています。
このクリエイティブな仕事とはなんなのか?それはすなわち、より重要で、より難易度が高くて、より定型化しづらくて、より責任の重い仕事です。
DXを進めたら現場は楽になる?実態はその逆、現場の仕事は重くなる一方です。
これは、IT技術の実用化が始まって30年以上経つのに、第三次産業だけを見ても全然仕事の量が減っておらず、むしろ以前より仕事がキツくなったという言葉を至る所で聞くようになった現代社会を見ても一目瞭然です。
効率化の名の下に切り捨てた「無駄」な時間で、労働者は頭や体を休める時間を取れていたのに、あろうことかその時間が取り上げられてより負荷の高い仕事を詰め込まれるという仕打ちを受けてきました。
でもこれは仕方がないことです。
だって業務効率化は労働者のためにするわけではないから。
業務効率化が進んで得をするのは、業績が自分の給与や自己実現に直結する幹部層や経営者、そして資本家です。
DXを謳うコンサルが相手にしているのもこの幹部層や経営者(&経営者越しに見てる資本家)なわけで、別に実際に手を動かしている人を本気で救おうと思ってやっているわけではない訳です(※例外もあります、後述)
この構造の何が問題なのか?
この記事で人道的な話や資本主義批判をするつもりはないので、この構造がDXにもたらす悪影響の話だけしていきます。
DXの定義部分に記載した通り、DXは「デジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していく」取り組みです。
そのためには、既存の業務を正確に把握し、業務を行う上でボトルネックになっている部分をかなり正確にとらえる必要があります。
そうでないと本来必要であった工程を「無駄」とみなして切り捨ててしまったり、本当は大きく削減余地があるような業務工程を見逃し、思ったように効果が出ないといった結果になります。
さて、問題はこの「既存の業務を正確に把握し、業務を行う上でボトルネックになっている部分をとらえる」という行為が非常に難易度の高い行いだということです。
大抵の場合、あらゆる仕事の日々の業務というものは綺麗なワークフローで描けるような体系だったものになっていません。
色々な例外や場当たり対応、予算の都合や人員の配置転換などで業務フローはぐっちゃぐちゃになっている事が多く、働いている人でさえ全ての業務フローを理解しているわけではない、なんてこともザラにあります。
こんな状況で外から来たコンサルや、実際に現場で手を動かしているわけではない上層部が、果たして正確に業務フローの図を描けるでしょうか?
僕は正直無理なのではと常々思っていました。
故にDXやAI導入の成功には現場の協力は不可欠
でも現場は真の意味で協力してくれる事はありません。なぜなら自分たちに得がないから。
ちなみに大抵の場合、DXが成功しても労働時間が減らないだけでなく給料も上がらない事が多いです。
難易度が高い仕事が増えて労働負荷が増すのにね。
しかも下手したら自分たちの職がなくなって路頭に迷う可能性まであります。
協力なんてできるわけないですね。
そもそも、僕は多くの労働者はわざわざ業務を変えたいとも思っていないし、もっと言えば根本的に労働なんてしたくないと思っています。
労働が自己実現に繋がっている人たちはまた別ですが、大抵の人は自分の生活があり、その生活を守るためにお金が必要だから何らかの仕事をしなければならず、日々生きていくためにしたくもない仕事の中から少しでも興味が持てる仕事をしているのではないでしょうか。
DXやAI導入という取り組みは、この労働者の視点に真っ向から対峙します。
そのため、トップダウンで行われるDXは現場労働者の協力を心の底から得られる事がなく(もちろん皆さん大人なので形式上はちゃんと協力してくれるが、既存の業務を止めたり長時間残業して手伝ってくれる、みたいな事はほぼない)、本来解決すべきボトルネックやあるべき姿を描き切る事ができず、DXはなんか思ったほどの効果がでなかったな…という微妙な結末を迎えるのです。
DXやAI導入はボトムアップでしか成功しない
DXはその思想自体が現場労働者の利益とバッティングするため、基本的に上層部からのトップダウンで行われる事が多いです。
ですがこの方針ではほとんどの場合うまくいかないことは上述の通り。
では、DXは絶対うまくいかないのでしょうか?僕はそんなこともないと思っています。
業務フローとか以前にそもそも業務が破綻してる場合
具体的にどことは言いませんが、そもそも人員に対して業務量が圧倒的に多く、通常業務範囲ではそもそも仕事が終わらない、深夜残業や休日を潰してやっと毎日の仕事を回している、みたいな限界労働を営んでいる所は未だに結構あります。
そういった労働を行なっている場合は、経営上層部・現場労働者共に真に救いを求めている事があり(かつ余力もないので自分たちだけでは改善のしようが無い)この場合はちゃんとした協力が見込める事が多いです。
このように労働者側にもメリットがあり、かつ本当に解決したい課題を抱えている場合は、トップダウン式で進められるDXとは明らかに違う熱があります。
正確な情報提供と積極的な業務協力によってものすごい勢いでプロジェクトが進んでいき、先端技術を用いてちゃんとボトルネックが解消され、少し仕事が楽になったという成功事例も存在しています。
ただ、ここまで追い詰められている業界はそこまで数が多いわけでもなく、かつ予算も少なかったりする(予算が少ないから人員が足りない)ので、単価の高いコンサルが入ってくることはあまりなく、こういうDXによって救われるべき職場こそDX導入の手が伸びない、みたいな構造欠陥も起こしています。
(あとは予算はあっても仕事の難易度が高すぎてそもそも定型ワークフローに落とし込めず、DXの余地がない業界とか)
じゃあトップダウン方式で上手くやる方法はないの?
DXでは無理だと思います。でもDXでなければ上手くいく方法はあると思います。
再三になりますが、DXとは「デジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していく」取り組みです。
ここまで話してきた問題点は、後半の「業務プロセスを改善する」ことに固執するから発生するのだと私は思います。
つまり、既存業務はそのまま続けた上で、全く同じことをできる組織を完全に新しいワークフローで作ってしまえば良いのでは?という話です。
業務を変えようとするから抵抗が生まれるのであって、上層部にとって都合の良い全く新しい業務フローを一から建て付けてしまえば、既存業務フローの正確な洗い出しなんてやらなくてよくなります。
そして、新しい業務フローが回るようになったら、既存業務フローは解散させて新しい業務フローに全て寄せてしまえば良いわけです。
この方針にももちろん問題があります。
それは新しいワークフローに全て寄せた場合、既存業務に携わっていた人はどうするんだという問題ですね。
これはもうどうしようもないので、恨まれる事を承知で新しい業務フローに無理やり慣れてもらうか、別の仕事をしてもらうしかありません。
故にこの方法でトップダウン式の業務改革をやる場合、実行役は死ぬほど恨まれます。そして皆それをわかっているので社内の人間はこの方法での業務改革を絶対にやりたがらないです。
もしこれを本気でやる場合は、それこそ社内の人間から恨まれてもあまり問題のない外部コンサルを雇うか、臨時でDX担当という生贄を雇ってこの恨みを一身に引き受けてもらうしかありません。
コンサルは高単価なのに、でかい企業はなんでわざわざコンサルなんかに仕事を頼むんだ、という言説をよく見ますが、その理由は能力云々よりもこの部分に強くあるんじゃないかと思っています。
社内改革による痛みと責任を全て負わせるスケープゴート役というわけですね。
最後に
今回は、もともとDXを推進する側だった人間として、DXやAI導入がうまくいかない理由を記事にしてみました。
そもそもnoteを開設した理由の一つに、こういう表で大っぴらに話すと微妙に燃えそうなセンシティブな話題を投げられる場所を作ろうというのがあるので、今後もこういうラインギリギリの記事は書いていこうかと思います。(全部公開するとマジで顰蹙を買いそうなのでセンシティブコンテンツだけは有料記事にするかも)
というわけで、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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コメント
4Nice note.
その通りすぎて何もいう事がありません。。。
DXで削減できる時間に何も詰め込まず従業員に余裕を与えることで、従業員満足度が上がるということに価値を置く経営層っていないのかな、といつも思ってます
記事拝見しました、「今の仕事に追われていて現場はどうしたら良いかわからない」「そして皆それをわかっているので社内の人間はこの方法での業務改革を絶対にやりたがらないです。」まさに正解です、これがわかっているので私は嘱託という立場で嫌われ役に徹して、AI & DXをやり遂げました。仕事内容の棚卸し、細分化してAIで出来そうな部分にフォーカスして,機能を組み込み小さく始めて、現場の空気を変える、OSSで組み上げるのでコストも少なくAPI課金だけです。