興行的に厳しいが高クオリティ? 『ChaO』『トラペジウム』など愛すべきアニメ映画たち
超平和バスターズメンバーの近作
『ChaO』の青木監督も『トラペジウム』の篠原監督も、宮﨑駿監督や新海監督、細田守監督のような、“名前”が作品を語る要素の結構な部分を占める作家たちほど広く一般に知られた存在とは言い難い。その点で、『ふれる。』(2024年)の長井龍雪監督は、『きみの色』(2024年)の山田尚子監督と同様にアニメ映画の世界で常に名前が取り沙汰される側に位置している。 TVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が話題となり劇場版が作られ、脚本を担当した岡田麿里と組んで『心が叫びたがってるんだ。』(2015年)や『空の青さを知る人よ』(2019年)を送り出し、次代を担うアニメ監督のひとりと目されるようになっていた。 岡田は自身の監督作として『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018年)や『アリスとテレスのまぼろし工場』(2023年)といった秀作を手がけて名を上げていたなか、長井監督が改めて彼女を脚本に迎え作ったのが『ふれる。』だ。岡田の高まった認知度が加わりあのYOASOBIが主題歌を手がけるという話題性も乗って、新海監督のような広がりを持つようになるのではといった期待がかかった。 実際には同時期の『きみの色』や、実写畑の山下敦弘監督とアニメーター出身の久野遥子監督が共同で手がけた『化け猫あんずちゃん』(2024年)と比べて、抜きん出た評価を得たとは言えない。『とある科学の超電磁砲(レールガン)』や『あの夏で待ってる』といったTVシリーズで熱い支持を集めている長井監督でも、映画の世界で抜きん出た存在になるのは大変そうだ。 『ふれる。』のストーリーは、子供の頃に同じ島で暮らしていた3人の子供たちに以心伝心のような能力が生まれ、一緒に暮らすようになってわかりあえる日々を享受していたが、ある事態が起こって関係がギクシャクし始めるというもの。シチュエーションとして興味を誘われる内容で、男性も女性も大人になって心を開放しづらくなる状況を捉えたところもあった。対象となるのはどちらかといえば若い社会人の男性や女性で、そうした層への広がりを狙って、永瀬廉や坂東龍汰、前田拳太郎といった俳優をキャスティングしたところがありそうだが、アニメ映画を観に来させるためにはもう一段の内容の認知なり、監督への関心が必要だったのかもしれない。 彼が『ふれる。』の前に手がけていたゲームアプリ向け配信アニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント』に新規カットを加えた『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント -小さな挑戦者の軌跡-』が10月31日から劇場公開される。また、『とある科学の超電磁砲』の第4期でも監督を務めることが発表されている。クリエイターとして支持を得ている表れで、その発想が届く環境さえ整えば、改めてオリジナル作品でポスト宮﨑・細田・新海といったところを狙ってくるだろう。