興行的に厳しいが高クオリティ? 『ChaO』『トラペジウム』など愛すべきアニメ映画たち
公開後もファンの熱量が続く『トラペジウム』
公開中に出てきた評価がなかなか広がらないまま公開を終えてしまった後で作品性が認められて、ジワジワと関心を高める。そして、公開中に観ておけば良かったという気持ちを誘う。乃木坂46のメンバーだった高山一実がアイドル時代の経験も踏まえて書いた小説を原作に、篠原正寛監督がアニメ映画化した『トラペジウム』(2024年)もそんなアニメ映画のひとつだ。公開を終えて1年近くが経った現在も、人々の口に上ることがある。オンラインで有志を募って行われる上映会もほぼ満席となる。劇場で観てみたかったという層が存在している証だ。 逆に言うなら、『トラペジウム』を公開時に見逃してしまった人がいるということだ。人気アイドルの原作で、上田麗奈や羊宮妃那といった人気声優も出演していた。『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメで活躍していたアニメーターのけろりらも参加していた。好条件はそろっていたが、公開されてすぐSNSで批判めいた言説が拡散されて二の足を踏む人を生み出してしまった。 アイドルになりたいと願い突き進む東ゆうのエキセントリックな言動に関する指摘には言い得て妙のところもあったが、それをゆうの真摯さであり執念と捉えることで見方が変わる。ゆうの頑張りが空回りして崩壊に至り、落ち込んでいたところから自省し再起を目指すストーリーは実に感動的。挫折に迷う人を励まし導くメッセージ性がある。 説明的なセリフをあまり使わずキャラたちの動きと必要最小限の言葉によってシーンを紡ぎ次へと繋げるテンポのよい編集も、観ているひとを流れに乗せてゆうの日々に引きずり込む。アイドルグループ「東西南北(仮)」としてデビューを飾ったゆうが、お披露目のライブでひとり「自由にやっちゃえよ」と歌うシーンをピークと捉え、そこまでの盛り上がりとそこからの転落を分かつ象徴として確認したいがために、何度となく映画館に通った経験の持ち主なら、実に考え抜かれた作品だったことに気づけているだろう。 何度も観返せばそうした悦楽の境地に至れるが、リピーターだけでは観客層は広がらない。アイドルファンやアニメ好きに限らず、一般の観客に少女たちが迷いながら青春を生きる物語であることを、もっと知ってもらう必要があったのかもしれない。