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米名門大、開講直前に補欠合格者に入学打診-トランプ政権の政策影響

  • スタンフォード大、補欠合格者に1週間以内の決断を求める
  • ライス大、他校への「投資」を補てんするため一時金約37万円支給

米名門大学の一角が開講数週間前になって補欠合格者に入学を打診し、定員割れを回避しようとしている。トランプ政権が大学側に対し、財政面で圧力を強めていることへの対応だ。

  スタンフォード大学は補欠合格者の一部に入学許可を出し、1週間以内の決断を求めた。

  デューク大学は新入生の定員を約50人追加。テキサス州のライス大学は補欠での入学者に対し、他大学への「感情的・経済的投資」を補てんするため一時金2500ドル(約37万円)の給付を提示している。

  こうした補欠合格の打診は、例年よりはるかに遅いタイミングで全米の大学で行われている。高等教育や移民政策に対するトランプ政権の攻撃によって生じた不確実性への対策だ。 

  例年であればすでに埋まっているはずの定員が、留学生ビザ(査証)取得の難しさや、米国で学ぶことを望んでいた学生が米国以外を留学先に選んだことで、まだ埋まっていない。

  留学生は一般的に授業料を全額支払う。そうした留学生の数が大幅に減少すれば大学の財政は圧迫される。連邦政府による資金提供削減に直面している大学もある。

Baylor and Rice University Merger Talks
ライス大のキャンパス(ヒューストン)
Photographer: Craig Hartley/Bloomberg

  テネシー大学ノックスビル校のロバート・ケルチェン教授(教育政策)は「学生を追加できる大学は、今後の財政不足や現時点の赤字を埋めるため、積極的に動いている」と指摘した。

  米商務省国際貿易局(ITA)のデータによると、7月に入国した外国人学生の数は前年同月比28%減少。米国の大学にとって最大級の留学生市場であるインドからの入国者は46%減った。

  名門大学が空席を埋めるため補欠合格者のリストを活用するのは一般的だが、多くの大学では例年5月1日の入学確約期限から6月中旬までの間に合否が判明する。今年はその期限を大幅に過ぎてからの連絡となっている。

  ハーバード大学のあるマサチューセッツ州ボストンで進学指導を行うドン・マクミラン氏は、「大学受験をサポートする仕事をして40年になるが、ここまで遅い時期に長期間にわたって補欠入学打診が続くのは初めてだ」と語った。

Harvard's Endowment Losses Slow Development
ハーバード大のキャンパス(マサチューセッツ州ケンブリッジ)
Photographer: Michael Fein/Bloomberg

  アイビーリーグのハーバード大は、例年より遅い8月7日まで補欠リストをオープンにしていた。同大のメディア対応責任者ジェームズ・チゾム氏によれば、この延長は留学生の状況を踏まえた特例措置だった。

  スタンフォード大は今年、新入生を中心に学部生を150人増やす計画を4月に発表。広報担当のルイザ・ラポート氏は、「優秀な志願者に最大限の機会を提供するため」補欠入学の待機期間を延長したと説明した。

  デューク大も新入生の数を増やそうと、「これまでの年度とより整合性を持たせるため」に補欠リストを再開した。学部入学担当のキャシー・フィリップス暫定学部長が明らかにした。

入学辞退

  各大学とも、補欠合格を受け入れた学生の人数は公表していない。また、通常どの程度の人数が補欠から合格するのかも年によって大きく異なるため、統一的な数値は存在しない。

  例えばハーバード大では、補欠からの合格者数はゼロから200人の間で年によってばらつきがあり、昨年は41人が繰り上げ合格した。

  一部の志願者にとっては、今年の通知はあまりに遅過ぎた。すでに別の大学に進学を決めてしまった後だったからだ。

  米北東部出身で、デューク大の補欠リストに入っていたある学生もその一人だ。スポーツ文化や気候、コミュニティーの雰囲気から同大を志望校の一つにしていた。母親が匿名を条件に語った。

  この学生は、ハーバード大に合格し、入学を決めてルームメイトを選び、履修科目も確定していた。

  そんな中、数週間前にノースカロライナ州のデューク大から補欠リスト再開のメールが届いた。息子がまだ関心があると返信したところ、翌朝には合格通知が届いた。そして週末に熟慮した末、結局は辞退したという。

  こうした進路の変更は、学生側にとって時間面でも経済的にも大きな負担となる。このためライス大は、8月前半に補欠合格となった学生に対し一時金2500ドルの給付を決めた。

  広報担当のクリス・スタイプス氏は「通常より遅い入学許可の特異な事情を考慮した措置」だと述べた。同大は先週、過去最多となる約1340人の新入生と編入生を迎えた。

  マクミラン氏によると、他の大学では「依然として状況が少し流動的」だ。何人の留学生が授業開始までに到着できるのか、そもそも入国できるのか、不透明な状況が続いているためだ。

原題:Stanford, Duke Tap Waitlists to Fill Spots Before Classes Begin (抜粋)

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