『BOX 袴田事件 命とは』DVDジャケットより

反体制の社会派志向

60年代後半、学生運動によって大学除籍となった高橋伴明は、アナーキーなピンク映画からのし上がってメジャーな存在となり、東映Vシネマ『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ〜』(90年)で哀川翔をスターへと押し上げた。

そして夏井辰徳からの依頼で『BOX 袴田事件 命とは』に参加し、共同で脚本を執筆。ピンク映画時代から高橋の作品は反体制の社会派志向を呈しており、三菱銀行籠城事件をモチーフにした『TATTO<刺青>あり』(82年)で一般映画に進出したあとのフィルモグラフィーは幅広い。

近作ではコロナ禍の渋谷ホームレス女性殺人事件をもとに衝撃の結末を叩きつけた『夜明けまでバス停で』(22年)が注目を集め、2025年には新左翼の活動家・桐島聡の逃亡生活を描いた『桐島です』の公開が予定されている。

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連合赤軍事件を扱った『光の雨』(01年)では、同名の劇中映画のメイキングディレクター役として萩原聖人が主演。90年代のトレンディドラマでおなじみ甘いマスクと優柔不断ぶりを生かし、『BOX』の裁判官・熊本役においても「迷える」存在感が遺憾なく発揮された。妻に葉月里緒奈という意外なキャスティングや石橋凌演じる刑事の苛烈な取り調べも見ものだ。

後藤忠政が出資した『BOX 袴田事件 命とは』だが、実際の制作とDVDの販売元はGPミュージアムが担当。90年代半ばにビデオ業界に参入したミュージアム(当時)は、大阪を拠点にヤクザとエロの二本柱でたちまちVシネを制覇した新興勢力であり、2000年代に入ると「実録もの」を大量リリース、前述のプレイビルと組んで任俠系のドキュメンタリーまで量産していた。

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その後、暴力団排除条例の施行もあって実録路線は下火となり、2011年にはGPミュージアムソフトからオールインエンタテインメントへ社名変更。現在は関連会社のライツキューブを主体に、本宮泰風×山口祥行の「日本統一」シリーズや女性コンビの殺し屋もの「ベイビーわるきゅーれ」シリーズが人気を博している。

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