「外国人に生活保護」はなぜバッシングされる?誤った知識や思い込みで「現実とかけ離れた」イメージに、識者2人はどう見る
SNS上で、外国人の生活保護受給へのバッシングが続いている。7月の参院選では、外国人への生活保護支給停止を訴えている参政党が大幅に議席を伸ばした。しかし、選挙期間中に叫ばれた主張の中には、誤った知識や思い込みに基づくものも多かった。外国人が日本の社会保障制度を使うことに対し、「悪用される」、「日本人がないがしろにされる」というイメージや不安を抱く人が多いのはなぜだろうか。社会保障法に詳しい奥貫妃文昭和女子大教授と、外国人支援を続ける「つくろい東京ファンド」の事務局長大澤優真さんに、生活保護と外国人を巡る現状や考えを聞いた。(共同通信=細川このみ) 【写真】ヘイトに歯止めがきかない―ネット、選挙、日常生活にあふれ出した外国人差別
× × × 奥貫教授はまず、外国人に生活保護が支給されるまでの歴史的経緯を教えてくれた。 ▽差別の中で 終戦後1946年に成立した旧生活保護法は、対象を「生活の保護を要する状態にある者」としていました。その後1950年に現行法が施行され、「生活に困窮するすべての国民」と「国民」という言葉が入りました。「国籍条項」と呼ばれるもので、保護は国民に限定されました。 戦後間もない頃の日本には、かつて植民地支配していた朝鮮半島や台湾から来た人たちがいました。日本臣民という形で日本人にさせられ、1952年のサンフランシスコ講和条約発効で日本国籍を剥奪された人たちです。すでに生活基盤は日本にあったり、朝鮮戦争が勃発したりして祖国に帰ることができず、多くの人が日本に残りました。激しい差別を受け、仕事に就くこともできず、一部の地域に集まって暮らし、目に見える形で貧困がありました。 そのような状況に、支配していた側の日本としては「知りません」という態度を貫くことができなかったのでしょう。そこで1954年、旧厚生省社会局長通知を発出し、日本人に準じる形で、行政措置として外国人にも生活保護の支給を始めました。この通知による運用が現在まで続いています。