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起承転結は古すぎる

小説を書いていて、専門学校で講師をしている人間がこんな事を言うのはなんだけど、あまりにも起承転結にこだわり過ぎてる人が多すぎて困る事が多い。

元々は起承転結とは漢詩の構成方法であり、明治の近代文学がそれに当てはめてしまった事が問題。
実際に調べてみればわかるけど、文豪の作品を起承転結で分解すると説明が足りない部分が多すぎる。

そもそも文章の割合を4分割した事が問題で、その比率を小学校教育ではどの程度にするのか教えていない。

自分の師祖であるマンガ原作者の故・小池一夫先生は、起承転結に分割した際の比率を下記のように教えている。

起= 5〜10%
承=75〜80%
転=5〜10%
結=5%未満

こうして見ると、4分割することがいかに乱暴な構成か分かるだろう。
起承転結から離れて考えればいいものを、敢えてこれにこだわるあまり、ミッドポイントなどの三幕構成の言葉を無理矢理持ってきて当てはめて考えるようになり、なおさらこの構成が複雑怪奇になっている。

『承』の中にミッドポイントを設けてしまい、じゃあ『承』ってなにをどうまとめればいいの? という混乱を引き起こしてしまう。その結果、長編小説が書けなくなってしまう学生が発生してくる。
実際、ウチの専門学校の学生の挫折原因のひとつとして、コレのせいでプロットが完成しないことにあると思う。

小池一夫先生の弟子たちが学生に起承転結を説明する際に、下記のような言葉に置き換えているのは、この呪いのような言葉から少し距離を置くためである。

起=ファーストシーン
承=展開部
転=クライマックス
結=エピローグ(or次へのヒキ)

展開部は物語の長さにより増殖し、この中で(ファーストシーン・展開部・クライマックス・次へのヒキ)を繰り返す。
これにより、マンガの長期連載作品の場合、この展開部を繰り返すことを説明した。
ただ、長編小説の場合この展開部を何回繰り返せばいいのか? と悩むことになる。また、最近の学生はこの回数を自分で考えるのではなく、最初から答えを求めてくる。
それを考えると、文庫1冊単位で物語を綴る長編小説の展開部のテンプレートには向かない公式となる。

それを考えた人たちがヒーローズ・ジャーニーに興味を持って、それを公式として当てはめてはじめた。
とは言えどもヒーローズ・ジャーニーは神話論であり、その構成はギリシア神話にまで遡る。
要するにこれもまた起承転結と同じく紀元前の物語構成なわけで、合理性を考えた現代文章構成には一歩意味不明な呪文のような言葉が構成の中に入ってくる。
これを20世紀の徒弟制度的な教育で叩き込まれたならいざ知らず、お客様教育の現在では謎な言葉は謎な言葉でしかない。
その呪文をちゃんとした現代語に訳していったのが、ハリウッド脚本術をまとめたシド・フィールドたちになる。

真面目にシド・フィールドの脚本術を読み解いていけば、いかに起承転結が古い考えに縛られていて謎な構成方法かが分かってくる。だけど、読み解くのが難しい。
なぜか、この手の教本の翻訳者たちは難しい言葉を使いたがるせいだ。

せめてもう少し分かりやすく合理的な物語の構成方法はないか? と探していた時に見つけたのが金子満先生の『シナリオライティングの黄金則』になる。

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残念ながらこの手の本は出版数が少なく、作者が亡くなるとだいたい絶版となる。1冊辺りの単価が高いものが、さらに高額になり、この本も今や原価の3倍以上の約7000円もするプレ値になっている。
物語を13シーンに分けて構成するという方法だが、今のところ1番合理的に物語を構成する方法に思える。

ブレイク・スナイダーの『セイブ・ザ・キャットの法則』の15シーンに分ける方法論も良いと思うが、教本は肝心な方法論がぼかして書かれている。そのため、あの本を読んでも軽く流し読みしただけではその構成を理解できないでそのまま謎になる。
読んだ気がして本棚の肥やしになり、シナリオ技法コレクションにしている人が多いと思う。

ただ、ブレイクスナイダー論か金子満論が受賞対策の小説を書く場合、手に入る最良の構成方法に思える。

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起承転結は古すぎる|くしまちみなと
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