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ドラクエ10の本編ストーリーが不快すぎて引退した

1436時間プレイしたドラクエ10を辞めた。
年単位でネトゲを遊んでいる層と比較したら大した時間ではないが、俺は本作を開始してから9ヶ月程度なので、おおよそ一日平均5.3時間程度のプレイを続けていたことになる。
一応言っておくと俺は無職ではないので、平日含めての平均が5.3時間と言うと基本的に空いた時間は常時プレイしていたのが伝わるだろうと思う。(起動したまま放置はほぼ無い)
以前にはDQ10の大型記事を3回書いたし、ここ最近は配信もDQ10が中心だった。現在は育成が落ち着いてきたこともあってプレイ時間が比較的減少傾向だったが、それでも日替わり討伐やギルドの依頼は一日も欠かしておらず、完全に生活の一部となっていた。
それを辞めた。

まあ、前々から不満を感じる部分が多々あったのは過去の記事を読んでもらえば分かるだろうし、Twitterでは3000〜4000字くらいの感想(ほぼ批判)を延々垂れ流していたりした。システム面や運営の体制にも思うところはあったが、とにかく問題はメインストーリーだ。
実際、こうして引退を決めたのも7.3ストーリーの展開と演出が気持ち悪すぎたのが理由なので、徹頭徹尾メインストーリーに苦しめられ続け、そしてトドメをさされたと言える。

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正月の思い出

なお、俺はDQ10以前にも別のMMOを15年ほどプレイしており、「ネトゲで引退宣言するやつはすぐ帰ってくる」との言葉を俺自身も過去に10回くらいは書き込んできた記憶があるが、今回の俺のDQ10引退については、まあ復帰はないだろうと思う。
ガチャで爆死したとか、人間関係の問題とかで突発的に辞めたくなったのではなく、ずっと前から抱えていたストーリーの不満点が閾値を超え、心が完全に折れたからだ。
そして、これは今後も改善することはないだろうと思う。
万一、ストーリー制作陣が一新されてメインストーリーの内容が劇的に改善されたら即座に復帰したいんだが、このゲームのストーリーは10年近く前から「勧善懲悪の王道少年漫画要素を削り、女性向けデザインのイケメンキャラのBL、もしくは美男美女の耽美系カップリングを猛プッシュする」方針で発展を続けてきた。
現在ではプレイヤー層もカップリング以外には一切興味のない人々が中心となっており、今更それを切り捨てることはありえないだろう。

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最新シナリオで作者が最も描きたかったシーン

不満の中心がメインストーリーなら、メインストーリーだけ無視すればいい。今までは一応そう考えていたのだが、脇道の育成コンテンツは軒並み食い尽くしてしまったし、そもそも脇道のコンテンツにだってメインストーリーのキャラクターは絡んでくる。
ゲームの目玉コンテンツの一つから必死に逃げ回ってまで本作にこだわり続ける理由があるのか?と改めて考えてみたら、その理由を見出せなくなっていた。
せめて基本無料ゲームであればダラダラと続けたかもしれないが、本作は月額課金制だ。プレイの頻度が落ちるほど、相対的にコスパも落ちていく。
なら、無理して遊ばなくていい。それが結論だ。

というわけで、本記事は俺のDQ10生活 最期の死花火として、今までのメインストーリーに対する不満点をひたすら書き連ね、「なぜ辞めたか」を解説するものだ。
これから本作のストーリーを散々ボロカスにこき下ろすが、それだけ言っても許される程度にはプレイしたし、根拠も示しているはずだ。
だから俺の約50000字の断末魔を最後まで見届けてくれ。

今回ネタバレについては一切伏せないが、このゲームを未プレイの人でも読めるように書いていると思うので、DQ10乗っ取りの歴史を把握する参考にでもしてもらえれば幸いだ。

物語の爽快感が一切ない

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敵が悪事を働いている!邪魔せずに側で最後まで見届けなきゃ!!

まず前提として、ドラクエは勧善懲悪の物語だ。ここに異論がある奴はいないだろう。
一応、DQ4では完全な純粋悪とは言い切れないピサロがラスボスだったが、少なくとも彼もまた巨悪の一つであったことは疑いようがない。
悪い魔物をやっつけて、かっこいい勇者として冒険をする。そんなシンプルな爽快感や達成感が得られる作品がドラクエだ。
……なのだが、DQ10ではその爽快感や達成感がまるで無い展開が多い。
問題となっている最大の原因は、かつての記事でも指摘したムービー中の棒立ちだ。
本作では主人公のキャラメイクの幅が広くてモーションの整合性を取るのが面倒だからなのか、ムービーで主人公がまともに動くことがほとんどない。
まあ、ムービーで動けないなりに自然な展開を作ってくれていればよいのだが、本作の場合は今すぐに敵の悪事を止めるべき場面ですら なぜか頑なに敵の悪事を隣で見届けるのが基本だ。
そして敵が全ての悪事を終えてから「さて、仕事は済んだし邪魔者には消えてもらうか」みたいな形でようやくバトル、敵は倒すが、悪事はしっかり終えさせたので事態は悪化する展開になることが珍しくない。
ストーリー書いてる人、バカなんでしょうか?

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プレイヤーがバトルで勝ってもピンピンしている敵をNPCが華麗に討伐!

また、ver4頃から頻出してきたのが「バトルで勝ったけど敵は倒せていなくて、そのまま敵のペースで話が進む」とか、「バトルで勝ったけどまだ敵はピンピンしていて、同行者のNPCがムービーシーンで討伐」のようなパターンだ。
ここで考えてほしいんだが、プレイヤーは手間をかけてキャラクターを育成し、バトルを攻略している。それで負けたなら仕方ないが、勝ったならプレイヤーに気持ちいい勝利の気分を味わわせるのが当たり前じゃないのか?
ごく稀に、特殊なイベント戦闘として例外があるなら構わないのだが、本作の場合バージョンが進むほどにNPCの活躍ばかりに偏重し、プレイヤーが普通に敵を倒して終わってくれる方が珍しいくらいになってくる。
なんならバトルにおいても「一定ダメージを与えると敵が無敵状態に入り、NPCが解除技を使ってくれないと絶対に勝てない」「敵が強制的にプレイヤーを行動不能にしてきて、NPCが解除してくるのを待つしかない」など、NPCありきの戦闘がどんどん増えている。
特殊ギミックとしてNPCが活躍する戦闘の存在そのものは否定しないが、本作の場合はその頻度がやたら高い上、設定上は主人公たちよりも遥かに弱いはずのNPCがプレイヤーでは攻略不能な技に対処できるという、世界観的にもおかしなことになっている。

これについて俺は再三言っているのだが、どうも本作のスタッフは「仲間と協力して勝利する」と、「手柄を横取りされる」の区別が付いていない節がある。
バトルを頑張って敵を倒したのに、何故か敵はピンピンしている。そして主人公が棒立ちで敵を眺める中、NPCが勝手に敵と戦い始めて華麗に討伐
これを見せられて、プレイヤーが楽しめると思うか?
それも、ずっと主人公と背を預け合って過ごしてきた仲間ならともかく、別に主人公と親しくもないキャラクターのアクションシーンを延々見せられたりする。

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ファラスのアクションシーンは執拗に描写される

今後も延々指摘すると思うが、本作の制作陣は自分たちが生み出したキャラクターたちが大好きで仕方がないので、その大好きなキャラクターの活躍を描くことしか考えていない。
この「作者のお気に入りキャラクターの押し付け」は、本作でもトップクラスの不快要素の一つだ。
例えばドラクエ9のサンディが嫌いな人に考えてほしいんだが、プレイヤーがバトルで敵を倒したのに、その後のムービーシーンでサンディが敵を倒し、まるで最初からサンディが一人で戦って敵を倒したような口ぶりで会話が進んだらどう思う?
間違いなく「何言ってやがんだこの糞蝿キンチョール食らわすぞ」と思うだろう。だが、ドラクエ10においてはマジでそれが当たり前なのだ。
本作を遊べば、実際のDQ9のサンディがどれだけ慎ましく物語を盛り上げてくれていたか痛感するぜ。(たまに配信などで語っているが、俺はサンディに対する好感度が超高い)

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この口汚い暴言を吐いてくるのは本シナリオの主役
(正確にはその人物が変装した状態だが、暴言を吐く必要がある場面では全くない)

それからシンプルに意味不明なのが、プレイヤーがやたらと罵倒されることだ。
もちろん、敵が主人公たちに酷いことを言って、それに対して「許さない!」と戦う展開なら何も問題はない。
だが本作の場合、味方側の人物・好感を持ってもらう必要があるはずの人物が、主人公に対して「マヌケ面」「トロくて使えない」などと罵倒してくるのが常態化しているのだ。
まさかキャラクターを嫌ってほしくてやっているわけがないので、多分これは「軽口を叩き会える悪友」のような関係を演出しているつもりなんじゃないかと思う。
老人キャラが古い友人に会って、「この老いぼれめ、まだ生きとったか!」「ふん、貴様より先にくたばる気はないわ!」みたいなアレだ。

だがDQ10においては、これが全く成立していない。
まず、ドラクエの主人公は基本的に喋らない。何を言われても言い返せないのだ。こういう描写はお互いに言い合うから気のおけない友人関係の描写として成立するのであって、片方が一方的に罵倒するのはただのイジメだ。
あるいは、せめて「あんたのマヌケ面が見られないと退屈なのよ」みたいに、悪口のようなことを言いつつも本心は「主人公がいないと寂しい」と思っていることが伝わるようにしていれば、一方的な言葉でも不快感はない。
しかし、DQ10の場合はマジでどちらでもなくて、ただ突然口汚く罵倒されて、それで終わりだ。
「遠慮なく付き合える仲」のつもりで描いているとしたら、あまりにも描写が稚拙極まりない。

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主人公を「マヌケ面」と罵倒された際のヒロインの反応です

そもそもの話をすると、プレイヤーキャラクターの外見を罵倒すること自体が異常だ。
本作はMMORPGの例に漏れず、キャラクターメイクのシステムがある。顔や髪型、服装などを自由に組み合わせて、自分だけのキャラクターを作成する。
普通に考えて、プレイヤーは自分のキャラクターに自分なりの「カッコいい」「かわいい」と思う姿を考えて選択し、愛着を持ってプレイしているはずだ。
なのにメインストーリーをプレイしていると、その外見を当たり前のように罵倒される。これの意味が分からない。プレイヤーをただ不愉快にさせて何がしたいんだ?

本作は、プレイヤーキャラクターの人権の無さだけは一貫している。
ドラクエの主人公は喋らないし、正義の勇者だから一般人を傷付けたりはしない。だから何をしてもいいし、どんな面倒事を押し付けてもいい。そんな常識でストーリーが進行していく。
これが一番分かりやすいのが、プレイヤーたちから最も評判の悪いver6ストーリーだ。
この物語では、突然出てきた天使たちから「お前は英雄として、『神』となる候補に選ばれたから試練を受けろ」と一方的に言われ、試練を受けることを強要される。
そして、いざ試練を受けに行くと、多くの天使たちが主人公に対して陰口を叩いたり、見下したりしてくる。
さらに物語が進行すると色々と事件が発生するのだが、その度に天使長から「お前英雄なんだろ?もちろん解決するよな?」と、上から目線で面倒事を押し付けられる。
そもそも主人公の意志で試練を受けに来たわけでもないし、こんな扱いを受けてまで天使たちの言いなりになる理由は何一つないはずなのだが、逆らう選択なんて提示されない。

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あなたは天使のくせに悪魔より悪辣ですね

何かと「上司から指示される」形で物語を進行させたがるのが、DQ10の悪しき伝統の一つだ。
過去作でも「王様の命令で行動し、達成して褒美をもらう」は定番展開の一つだったが、本作のそれは毛色が異なる。
王様に命令されるパターンは、要は仕事で例えるなら請負だ。「何をしてほしい」とは頼まれるが、具体的にどうやって達成するかは主人公に一任されていた。だから、達成までには自分の手で道を切り開く冒険の旅があった。

DQ10は、これが派遣とか雇用みたいな状態になっている。「あそこに行って○○しろ」「××が必要だから持ってこい」と、何をするにも逐一指示をされ、その通りに動くしかない。
だから、ストーリーを進行しても「冒険の旅」がちっとも無く、ただ「突然出てきた知らんやつに上司面をされ、ひたすらこき使われる」退屈な経験だけが鬱積してゆく。
せめて上司キャラが本当に頼りになる味方で、主人公に感謝と信頼を感じている好人物であれば まだマシなんだが、実際には上記の天使長とかver2以降準レギュラー化する賢者ルシェンダとか、当たり前のように主人公に面倒事を押し付けるばかりで、まるで人として認識していないような人物が目立つ。

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本当に唯一親身になってくれる人は彼です

ver6の話に戻るが、本ストーリーはなぜこんな内容になっているのかと言うと、どうも「天使たちはみんなろくでもない奴だが、ユーライザだけは親身になってくれる」という物語を展開したかったからのようだ。
ユーライザはver6のヒロイン的存在で、主人公のことをずっと昔から見ていた、主人公大好きキャラのような設定で登場する。
……が、何が酷いかって彼女も別に好感が持てる存在ではないことだ。
上の画像のラダ・ガートという人物も「親身になってくれるのはユーライザだけだった」とユーライザ持ち上げに加担させられている一人だが、笑わせる話だ。本当に唯一親身になってくれるのは彼自身なのにな。

DQ10のシナリオライターは根本的に、「主人公は喋れないから、代わりに同行者に話を進めてもらう」を基本の進行形式としている。
過去作では、主人公のセリフが無いなりに相手のキャラクターが主人公に質問を投げかけたり、あるいは仲間が「お前もそう思うか?」のように確認を取ったりすることで主人公の存在感や、リーダーとしての価値を保っていた。
だが本作では、完全に主人公を蚊帳の外にしてNPCだけで会話を進行するのが基本となっている。
その結果、「主人公の活躍をずっと見ていて、主人公のことを好きになった」はずのユーライザが、どこに行っても主人公の存在を無視して「ここでは○○が起こって、××になったのですね。私は△△だと思います。じゃあ行きましょうか」と、一人で全てを完結させて話を進めていく。
主人公のことが大好きなはずなのに、主人公に何かを任せる気はないし、意見を求めようともしない。
これはユーライザに限らず、本作のver3くらいから先のストーリーは大体全部このパターンなのだが、ユーライザに関しては特に設定と実際の行動の乖離が目立つ例だ。

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なんでコイツは被害者面してるんだ?

そして、その極めつけの事件がヘルヴェル絡みのイベントだろう。
こいつはユーライザにとって姉のような存在だったらしく、ユーライザはヘルヴェルを「お姉さま」と呼んで慕っている。
さて、そのヘルヴェルだが、ver6の物語が進むと「主人公が やたらと天使たちに陰口を叩かれたり喧嘩を売られたりしたのは、敵に洗脳されたヘルヴェルが主人公の悪い噂を流しまくっていたから」と判明する。
つまり、ver6の不快ストーリーの大部分の元凶がコイツだ。
なので、もちろん主人公大好きキャラのユーライザはヘルヴェルに対して激しい怒りを顕に……しない
では「操られていたのだから仕方ない」と許すのかと言うと、そういうわけでもない。そもそも、主人公の悪評を流したこと自体にユーライザは全く言及せず、まるで誰一人迷惑していないかのように受け流したまま、ヘルヴェルをお姉さまお姉さまと慕い続ける
なお、このイベントの際にヘルヴェルが操られていた原因は判明しても結局その原因を取り除くことはできず、ヘルヴェルは次またいつ操られるか分からない状態のまま物語が進むのだが、ユーライザはヘルヴェルを拘束したり罰を与えようとは一切言わず、むしろ重要な役割を平然とヘルヴェルに任せたりしている。バカなのかな?

「主人公に人権がない」と俺が言っているのは、そういうことだ。
主人公に対しては、どんな酷いことをしても一切罪に問われない。主人公が許すからとかではなく、そもそも主人公をどれだけ虐げても、誰一人として問題と認識しないのだ。

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馬に乗ったままのヴァレリアに瞬殺されて死去

ver5の冒頭では、新キャラのヴァレリアによって主人公が虫けらのように蹴散らされる。そして、倒れた主人公を発見した新キャラのユシュカが、魔族として主人公を転生させて救うところから物語は始まる。
この件について、「主人公は完全に致命傷を負っており、回復や蘇生の呪文すら受け付けない状態だった。ユシュカが来なければ死んでいた」と語られているためヴァレリアは普通に殺人鬼なのだが、ver5のストーリーを進めても、ヴァレリアを糾弾する者は誰一人いない。
ver5では主人公の相棒であるはずの勇者姫アンルシアも登場し、彼女がヴァレリアと対面する場面もあるのだが、それでも主人公を殺害した件については一切触れられることはない。

ver5についてさらに言うが、このストーリーが進行すると主人公は大魔王の座に就任する。
大魔王は魔界の最高権力者だ。もちろん誰も逆らえない……なんてことはなく、なぜか主人公は大魔王となってもなお「みすぼらしい下級魔族」呼ばわりされて、あらゆる登場人物から喧嘩を売られまくる。
そういうムカつく奴をやっつけるシナリオではない。そいつらにペコペコと頭を下げ、必死にご機嫌を取り、奴隷労働を続けることで認めて頂くのがver5のストーリーだ。

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ゴミキャラ(直球)

主人公が大魔王の座に就任する際には、ver5で登場する三人の魔王(魔界に存在する国家の王)、ユシュカ・ヴァレリア・アスバルたちの承認を得ている
つまり、大魔王である主人公に喧嘩を売るということは、主人公を大魔王として擁立した三魔王の顔にも泥を塗る行為だ。
だから、もしも主人公が許したとしても周囲がそれを許すはずがないのだが、本作にそんな常識は関係ない
例えばモヒペンコという彫刻屋は、魔王ユシュカに大魔王の彫刻を依頼され、さらに大魔王自身が足を運んでまで頼みに来たのを平然と蹴り、「大魔王だから何?やる気出ないも〜ん」と全力で喧嘩を売ってくる。
ver7で久々に魔界が話題に出たとき、「魔界では武力が何よりも重んじられる」との台詞があったが、明らかに失笑ものの大嘘だ。
それが本当ならモヒペンコなんて拷問して殺してザオリクで蘇生して拷問を1000回くらいはされてるぞ。
実際に主人公がやるのはモヒペンコにお菓子の差し入れをしてご機嫌取りだ。これが大魔王の仕事か?

ver5は実際、舞台としては武力が重要そうな設定にはなっている。だが、実際は武力の軽視が甚だしい。
本当に武力が重要であるなら、まず初めにそれを具体的に描写するだろう。例えば「魔王単独の戦闘力ではヴァレリア(バルディスタ)が最強、しかし国家としての総合的な軍事力で優れるのはゼクレス魔導国。ファラザードは新興国ゆえ武力では最も劣るが、結束力の強さと情報伝達の速さを活かして立ち回る」みたいな設定を作って見せ、それを主軸にするはずだ。
それで、少年たちの間で「どの国が勝つんだ?」と想像させ、最強議論なんかを巻き起こす。これがド定番だろう。
だが、本ストーリーにそんな要素は一切ない。魔王の戦闘力も、国家の軍事力も、どんな関係性なのかハッキリと描写されることはない。作者が興味を持っていないのだ。
代わりに入っているのはユシュカとナジーンの濃厚なBLと、ゼクレスの腐敗貴族の不愉快な社会描写だけだ。
その腐敗貴族の描写は主人公が大魔王となっても健在で、ゼクレスの貴族は自国の魔王アスバルが認めた大魔王を「大魔王なんて言っても所詮は田舎の下級魔族でしょ?ダンスパーティで恥かかせたろ!」と全力で喧嘩を売ってくる。

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なんで少女漫画って腐敗貴族を絶対に描きたがるんでしょうか?

少し考えてほしいんだが、ドラゴンボールで初代ピッコロ大魔王(マジュニアじゃない方)が世界を支配しようとしていた時、誰もピッコロ大魔王に対して「うわっ、なんか緑のキモいハゲおるwだっさwww」なんて言う奴はいなかった。なぜだか分かるか?
言うまでもないよな。殺されるに決まってるからだ。
圧倒的な武力は、それ自体が最大の信頼を担保する。力のある者がルールを作る。誰も逆らえない。それは明らかな前提だ。
しかしドラクエ10では、もしもピッコロ大魔王がファッションをバカにされたら「ううっ、わたしのファッション、ダサすぎ…!!」と恥ずかしがって逃げ出すような価値観でストーリーを書いている。

仮に大魔王が礼儀作法やダンスなどに疎かったとしよう。だからってそれで意図的に大魔王に恥をかかせるような真似をしたら、怒り狂った大魔王が貴族を皆殺しにする危険性を最初に考えるのが当然だ。
もしも大魔王自身が何もしないとしても、ヴァレリアが「私が認めた大魔王に文句があるのか?」と槍を持って突っ込んでくるかもしれない。
アスバルが「君たちの行為は目に余る」と、貴族の地位を剥奪するかもしれない。
ユシュカが「大魔王を侮辱する奴らに売れる物など無い」と商流を止め、貴族たちが大打撃を受けるかもしれない。

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作者が書きたいのは腐敗貴族とリンベリィちゃんの対比だけ

だが、ゼクレスの貴族はそういった可能性を一切考慮しない。このストーリーの作者は少女漫画と夢小説しか読んだことがないので、武力の意味を一切理解していないのだ。
剣とは悪を斬るための武器ではない。自分の体を斬り付けた上で相手に剣を握らせ、「キャー!彼女が私を斬り付けたわ!!」と叫ぶためにある。それが本作の常識だ。

それとも、これは貴族たちが、自分たちは一族郎党処刑されてもいいから何が何でも大魔王を侮辱したくてたまらない異常者であるという描写でしょうか?
なお、このイベントは結局 主人公が高圧電流を浴びて痙攣することで習得した変なダンスを踊って解決だ。冗談にしか見えないと思うが、マジだぜ。
何のためにこんなイベントを作ったと思う?
作者が「ゼクレスの貴族は腐っているが、リンベリィちゃんだけは違う」と描く前振りとして、どうしても腐敗貴族を描きたかっただけだ。
最初から主人公とか大魔王とか、そんな要素は一切眼中にないのだ。

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大魔王や神を幾度となく倒した主人公に対する扱いです

主人公に人権がない、というのが本当に文字通りの意味であるのは伝わったと思う。
「主人公が優しいから許す」ですらなく、周囲の人物すら主人公に対する侮辱や理不尽な扱いに対し、誰一人として怒りの声をあげない。
そもそもプレイヤーキャラクターの活躍自体が全然ない。苦労してバトルに勝っても他人の手柄にされる。
作者が「魅力的な仲間たち」と思って登場させているNPCたちは誰一人主人公に興味がなく、主人公が侮辱されようが殺害されようが眉一つ動かさない
そして主人公を棒立ちさせて、そんなNPCたちが勝手に大活躍するムービーシーンだけは気合を入れて描写する。
これが楽しいと思うか?楽しいと思うなら君はDQ10に向いている。

本作のストーリーにおいて滑稽なのが、実際のストーリー描写はこの有様なのに、終わり際になると突然「全部お前のおかげだ」のような、雑なヨイショが入ることだ。
大魔王になったと言っても、周りは全然自分を恐れないし、当たり前のようにこちらを見下してパシリとして使ってくる。
普通のプレイヤーはこれじゃ何の意味もないと思うだろうが、作者にとっては「大魔王の肩書きをくれてやったぞ、これで満足だろ」というわけだ。

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ないです

実際、作者がそういった思想をしていることが垣間見えるのがver4.2だ。
ここではギルガラングリエという二人の王子が主役となり、物語が展開される。
そして、当初は国王をしているギルガランが兄、グリエが弟と語られるのだが、物語の中盤で「本当はグリエが兄。彼は体が弱くて王として不適格と判断されたので、弟のギルガランを兄と偽って王座に就けた」との事実が明かされる。ギルガランはその事実を知らずに、自分を兄だと思っていた。

しかし、ここで問題なのが上記の件を理由に、まるで「ギルガランには本来王となる資格は無い。グリエこそ正統後継者」であるかのように語られることだ。そして、ギルガランも強いショックを受ける
普通に考えたら、体が弱くて王になれなかった時点でグリエは王の候補から外れているのだから、ギルガランが王となるのが当たり前で何一つ問題はないはずだ。
だが、どうも本作の作者は「実際に王となる能力があるかどうかは関係なく、第一王子として生まれたかどうかに価値がある」と考えているらしい。
まあ、一部そういう血統至上主義みたいな思想の人物が登場するだけなら問題ないのだが、本作はその思想が一般的である前提で話が進むのだ。

「冒険とかバトルとか全部どうでもいい。努力とかめんどくさい。世界を救った英雄って肩書きだけちょうだい。それでママ友にマウント取るから」
そんな思想の方は本作のプレイに向いている。
そんな層はわざわざ時間かけてネトゲなんて遊ばないって?そうですね。
まあ、この兄弟王子の設定については単に作者が兄弟BLのギャップを狙いたくて付けただけの設定だと思うので、真面目に考察するだけ無駄かもな。

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主人公とは踊りません

中身の伴わない台詞はキャラクターの絆の描写についても顕著で、一番分かりやすいのが主人公の相棒ポジションとなる勇者姫アンルシアだろう。
彼女は本作の顔とも言える人物で、ver2のメインキャラとして登場して以来、後のバージョンでも毎回どこかしらで登場する。
ver3では主人公を放置して突然出てきた知らない男と踊り、その後も主人公と共に活躍する場面はまるで無い。
ver4では主人公が過去世界で初代勇者と共闘する 勇者と盟友がテーマのシナリオも登場するのに、そこでアンルシアは留守番だ。
ver5では大魔王になった主人公を敵と勘違いして殺そうとする史上最悪の展開を迎え、その後は主人公を殺害したヴァレリアと仲良く共闘する。
ver6ではジア・クトの光線一発で戦線離脱(ユーライザは無効化できる)。

……とまあ、出る度に醜態を晒すだけで、もはや嫌がらせのために出しているのではないかと思うほどに扱いは酷い。
そして彼女について最大の問題が、ver2から一度として長期的に主人公と共に冒険したことがない点だろう。
せいぜい専用のダンジョンを攻略するときに同行するくらいで、戦いと関係のない場面では全く関わらない。
共に旅の喜びを分かち合い、友として親睦を深める場面は全く描かれていないのだ。主人公とアンルシアの関係は「仕事でよく組む人」くらいの関係でしかない。

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制作者の性欲大爆発!!!

こんな有様なのに、時折アンルシアに「あなたのことが誰より大切」「かけがえのない仲間」みたいな台詞を唐突に言わせるだけで、主人公とアンルシアの絆を描いた気になっている。
そして、極めつけがver7.3のメインストーリーだ。ここでは、勇者盟友大魔王(つまり主人公とアンルシア)が絆を誓うことで主神の王冠を顕現させる…という場面なのだが、このシーンの演出や台詞回しが明らかに結婚式みたいな内容になっている
この場面はシリアスな物語としても重要な場面のはずなのだが、作者にとっては世界の平和がどうこうなんて下らないことはどうでも良くて「ほらほら!!アンルシアちゃんとあなたのキャラが結婚!!結婚式してます!!嬉しいでしょ!?嬉しいに決まってますよね!?!!ギエーーーーー尊すぎるうッ!!!」と性欲をぶちまけることに全力を出してきた。

俺がこのゲームをやめようと思った、最も直接的なきっかけがこのシーンだ。
これは既に書いたし後でも繰り返し描くと思うんだが、本作の作者は王道の勧善懲悪シナリオを踏みにじって、露骨なカプ厨ムーブを延々繰り返している。

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https://hiroba.dqx.jp/sc/topics/detail/8dcf2420e78a64333a59674678fb283b/

それはそうと、このver7.3ストーリーの実装はちょうど第13回アストルティア・クイーン総選挙の時期だった。そして、アンルシアはこの投票候補8名の中に含まれている。
人気投票の時期にメインストーリーに登場しただけで有利だろうに、こんな結婚式演出をやったのだから当然順位は1位だった。下から数えて
つまり実際の結果は8位、候補の中で最下位だ。
現存しているプレイヤーは概ね結婚式演出に好意的だったようだが、それでもこの結果だ。
ここに本作のストーリーにおける問題点の本質が存在すると思う。
性欲を刺激して瞬間的に騒がせることはできても、本当にプレイヤーの心に強く刻みつけられるものは何一つ残せていないのだ。
これは本気で反省するべき点だと思いますが、もう手遅れでしょうね。

本作は かつてver2の頃にキャラクター強化に必須のコンテンツにおいて、ドラクエらしさの無いデザインのイケメン男性を大量投入し、さらにBL的な演出をやって炎上した過去があるとの話だ。
しかし、ver4頃からはかなり露骨なBL臭い描写が本編シナリオ内でも堂々と描写されるようになっており、この際の反省は活かされなかった…と言うか、もう完全に開き直って「BLに文句言う奴は客じゃないので、どうぞ辞めてください」と言う方針に舵を切ったのが分かる。
さらにタチの悪いことに、今ではBL要素に限らず、あらゆる登場人物について常にカップリングを前提としたような描写が当たり前になった。その結果がこの、アンルシアの結婚式だ。
別にカプ厨同士が地下で勝手に二次創作やってるなら勝手にすりゃいい話だが、ドラクエという世界的ブランドの公式シナリオとしてこんなものが配信されていることの異常さは到底理解できるものではない。
俺はこれを「プリキュアの監督がお色気演出大好きのおっさんになって、パンチラとか乳揺れを執拗に描写しているような状態」と言っている。
言い過ぎだと思うか?ならば是非このゲームをプレイしてくれ。自身の性欲を性欲と認識していない怪物が描いた、「本物」の恐怖がここにある。

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作者はこの二人のカップルが描きたいだけです

本作はカップリングのことしか考えていないため、上記のアンルシアに限らず本作のメインストーリー上の登場人物は基本的に全部こんな調子だ。最も酷いのは何と言っても主人公の両親として登場するパドレマローネだろう。
こいつらはver4、本作のサービス開始から5年ほど経ってから登場した人物だ。
ここで主人公の設定について話すが、本作の主人公は産まれてすぐに別の時代へと飛ばされた設定だ。だから主人公には「育ての親」が別に存在し、パドレとマローネに親として育てられた期間はゼロに近い
他のドラクエ作品で言うなら、DQ6のレイドック夫妻とか、DQ7のシャークアイとアニエスのような立場の人物が、このパドレとマローネだ。
ただ、この二人がレイドックやシャークアイと違うのは、ストーリー上で明確に「主人公の両親、最も大切な人」として扱われることだろう。

だが、ここに問題がある。後から突然出てきた「本当の両親」に対して、プレイヤーは何の思い入れもないことだ。
実際、DQ6プレイヤーのほとんどはレイドック夫妻よりも、ゲーム開始時から一緒に過ごしていた妹のターニアを「大切な家族」と認識していたし、DQ7でも、「本当の両親はシャークアイとアニエスだったんだ!じゃあ、本当の親じゃないボルカノマーレなんかどうでもいいや!」なんて言う奴はいなかった。
だから制作側もそれを分かっていたのか、レイドックもシャークアイも、ターニアやボルカノ・マーレを押しのけてまで主人公の近くに居座ろうとはしなかった
しかし、本作におけるパドレとマローネは後から突然出てきたくせに、ターニアやボルカノ・マーレのポジションに当然のように収まってくるのだ。

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「いいえ」すら表示しない辺りに作者の強い強制力を感じますね

ならば、そのポジションに収まるだけの絆を描くエピソードが作られているのかと言えば、全くそんなことはない。と言うか、マローネに至ってはver4の大部分で昏倒しているか敵に操られており、主人公とまともに会話する場面が一度もない
先述したが、主人公は生まれてすぐに時空転移したためパドレとマローネに世話をされたことが全くない。
だから普通なら、パドレとマローネは最初に「自分たちに親を名乗る資格があるのだろうか」「主人公は自分たちを親と認めてくれるのだろうか」みたいな思いがあって当然だと思う。
なのに、こいつらは全くそんな葛藤を抱かず、自分たちが両親と認識されて当然という態度で主人公に近付いてくる。「産んだ時点で子の命は親の所有物」みたいな価値観で生きてらっしゃいます?

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直前まで1ミリも気付いていなかったくせに夫から我が子だと教えられた途端にこの反応

ついでに言うと、後にマローネに「自分があなたの子だ」と打ち明けるイベントの際、マローネは主人公の正体を全く察する様子がないのが不快と言うか、意味の分からないポイントだ。
普通、こういう場面って「自分の子だもの、もちろん分かるわ」と一発で見抜くか、せめて「理由は分からないけど、あなたのことは他人に感じない」みたいな展開になるものじゃないのか?
なのに、マローネは主人公の正体を全く察していない。
そのくせ、パドレから「その人がお前の子だ」と伝えられた途端に「夫の面影がある。あなたはたしかに私の子。愛してるわ」などと白々しいことを言い始める。
本当にわけがわからない。プレイヤーからマローネへの好感度を下げるためにやっているとしか思えない描写なんだが、本作の作者はこれで家族の絆を描いたつもりらしい。

まあ、現在のプレイヤー層からの扱いを見ても、パドレとマローネについてはハッキリと言えることがある。
こいつらを好きだと肯定的に評価している層は、つまり美男美女の耽美系カップルとして見ている。主人公の両親ではなく、「夫婦カップル」として見ているのだ。
だとすると、この作中描写にも納得がいく。
作者はパドレとマローネを一応「主人公の両親」として出しつつも、実際は主人公のことはどうでも良くて、パドレ・マローネ夫妻の関係にしか興味がないのだ。

忘れてはいけない。このゲームに王道の勧善懲悪ストーリーや、一般的な家族愛なんて要素は存在しない。あるのはカプ厨の性欲を満たすためだけに存在する餌だ。


そもそも物語として稚拙

一応言っておきたいが、俺は「自分の好みじゃない」と「物語として質が低い」は混同しないように気を付けている。
「ジャンプ」発の少年漫画コンテンツがカプ厨に完全に乗っ取られたことは最悪だと思うが、これは一応「俺が嫌だ」というだけの話だ。
カプ厨の側のプレイヤーからすれば今のドラクエ10は理想的な物語を展開しているのだろうし、実際そういった層が落とす金でこのゲームは運営されている。それは正しく認識する必要がある。

だが、本作について言うなら、個人の好みを別とした品質の面で見ても褒められる所がまるで無い。次はその話をする。

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なんで一人で戦う必要があるんですか?

とにかく全ての元凶は、本作のライターが自分が今描きたい部分以外は、世界に存在しない前提で話を描いていることだ。
これが分かりやすいのは、ver6でジア・サフィルと戦闘する場面だろう。
ここでは戦闘後、当然のようにピンピンしているジア・サフィルに対し、パドレが単独で戦う展開になる。
この場にはパドレ以外に主人公ユーライザメレアーデも居合わせており、全員戦闘能力がある。
別に、他の人物が負傷して戦えなくなっているとか、動きを封じられているなんて描写はない。なのに、なぜか突然パドレが一人で戦い始め、ジア・サフィルの攻撃を受けて大ダメージを負う。
その後、結局ジア・サフィルが「任務続行には肉体の損傷が激しい」と撤退するのだが、それまでの間 主人公たちは一切何もしない。
ポップコーン食べながら観戦してるのかな?

このゲームのムービーでは、こうした不自然極まりない描写・展開が頻出している。
例えば上記の場面でパドレの活躍を描きたいとして、「敵の攻撃の流れ弾でメレアーデが負傷、ユーライザは彼女の治療で手一杯、主人公は二人を守る必要があるのでパドレが孤軍奮闘するしかない」みたいな描写を入れておけば違和感は無くせたはずだ。
なのに本作は、そういう辻褄合わせを一切やらないのだ。
「今はパドレの活躍を描きたいからパドレだけ動かします。他のキャラ?気にしないでください(笑)」
こんな舐め腐った描写をひたすら続け、まるで改善する気がない。面白い・面白くない以前に、創作に携わる者として明らかに失格だ。

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作者が描きたいのはこの二人だけ

これが最悪の形で現れているのが破界篇だろう。
この物語は、ver2の舞台となった偽りのレンダーシアを舞台に展開される。過去バージョンのキャラクターの活躍、救済、さらにファンサービスとしてDQ2のシドーが登場するボリュームたっぷりの内容……となるはずだったと思うんだが、実際にはそれらの全てを踏み台にして、作者が新しく作ったイケメンキャラのファビエルとメドナムをひたすら見せつけるだけのシナリオだ。

本シナリオのクライマックスでは、自爆して世界を消し飛ばそうとするシドーを、守りの盾アンルシアが命がけで止めようとする展開になる。
もちろん主人公もアンルシアと共にシドーを止め…ない。アンルシアを放置して、スタスタと歩いて帰る。

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???????????????????????????????????

全く意味が分からないし信じられないだろうが、正確な事実だ。
そして、その後には「ファビエルとメドナムの正体は天使だった」と明かすムービーがねっとりと描写される。

つまり、これが答えだ。作者は自分が大好きなファビエルくんとメドナムくんのシーンを描くこと以外何も考えていなくて、世界の平和だとか、アンルシアの命とか、そんなものには一切興味がない
だからアンルシアが世界を守るシーンは雑に終わらせて、自分が描きたいシーンにだけ全力を出した。
もしも最低限の常識や責任感のあるライターだったら、内心でそう思っていたとしても一応は世界の命運をかけて戦うシナリオでこんな描写はしないだろう。
なのだが、本作ではこれが世に出てしまっている。
主人公がアンルシアを無視するストーリーが書かれ、主人公がスタスタと歩いて退場するムービーが作成され、それが正式に公開されている。
ライター個人の頭がおかしいんじゃなく、ストーリーを制作しているスタッフ全員が完全に狂っている。

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余計な事しかしない女

本作のストーリー制作陣は、王道の勧善懲悪ストーリーに一切興味がない。
これを証明する要素の一つとして、最新のver7ヒロインのポルテが挙げられる。ver7のパッケージにも乗っている主要キャラクターだ。当然、制作陣は彼女を魅力的な人物のつもりで作っているはずだ。
で、彼女の特徴は何かと言うと、「食いしん坊」「出会った人物にあだ名を付けたがる」だ。
前者については「ポルテのグルめぐり」なるサブクエストがあり、彼女があちこちの美味しいものを食べてあれこれ反応する様子が描かれる。これはまあ、本編の邪魔にはなっていないのでマシな方だ。
問題は後者で、例えばver7.0~7.1では彼女がメレアーデに「メレちー」、女神ゼネシアには「ネーしゃま」とあだ名を付け、逆にゼネシアからは「ポルるん」とあだ名を付けられ、互いにあだ名で呼び合ってキャッキャするだけの会話イベントで長々と尺を使ってくれる。世界が滅ぶかどうかの瀬戸際で、解決のために奔走しているはずのストーリーの最中でな。

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これが作者の考える面白いシーンです

魅力的な仲間ってのは何だ?
主人公が背中を預けて戦える、もしくは非戦闘員なりに主人公の支えになってくれる。そうやって絆を深めて、同じ目的に向かって頑張れる相手じゃないのか?
だが、ポルテはどちらも違う。
特にあだ名を付ける要素については上記の茶番に限らず、新キャラが登場する度にいちいち彼女があだ名を付ける流れを挟むせいで会話のテンポが悪化しており、シンプルに邪魔にしかなっていない。
そして、彼女の致命的な点は「それしかない」ことだ。そうやってストーリーの邪魔になる要素を明確に持っているくせに、まともにストーリーで活躍することがまるで無い
正確に言うと、彼女には2つの人格があり、「師匠」と呼ばれている方の別人格の側は活躍する機会があるのだが、普段メインで喋っている方のポルテは基本的に何の役にも立たない。

つまり、これが答えなのだ。
現在の制作陣にとっての「魅力的なキャラ」と言うのは、本筋のストーリーにおいて重要な役割を担い、真っ当に主人公と肩を並べたり、支えたりして活躍してくれる人物ではない
シリアスな本編シナリオの真っ最中に無関係なガールズトークをねじ込んで盛り上がったり(もちろん主人公の存在は無視)、サブクエストで「美味しい~!」とボイスと専用演出付きで笑顔を見せたりする人物なのだ。
マスコットキャラを出すこと自体は構わないが、せめて他にストーリー進行上で役立つ要素を持たせろよ。

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大不評シナリオ

では、現在のストーリー制作陣が興味のあるものは何か。
これは分かりやすい。「恋愛」「イケメン」「最強オリキャラ」の三つだ。
これが分かりやすいのは「アストルティアキャラクターズファイル」だろう。
さまざまなキャラクター達の「今」を掘り下げる、との触れ込みで登場した本シリーズだが、実際には大半のシナリオが掘り下げでもなんでもなく、やたらと盛りまくった新規設定でキャラクターを完全に塗りつぶし、最強オリキャラと化したその人物がひたすら大暴れする内容になっている。
このうち、「パクレ警部の事件簿」は特に不評で公式の感想コーナーが大炎上したことで有名だ。

パクレ警部は、元々はオルフェアのストーリーで登場した人物だ。
ざっくり言うと「コミカルな無能警部」で、本編中でカッコいいところを見せるシーンは全く無い人物だった。
彼を掘り下げるなら、どんなストーリーを展開するべきだろうか?
彼が自身の力不足を恥じて、真面目に警察としての腕を磨き、しっかりと活躍する物語を書いてもいい。
あるいは決して有能ではないけれど、街を守ろうとする心意気だけは本物だと描いてみてもいい。
もしくは、完全に開き直ってネタキャラとして暴走させてもいい。
だが、本作が取ったのはそのいずれとも違った。

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これをパクレ警部として出してくる

パクレ警部が突然、今までとは口調も性格も全く違う上、戦闘力も作中最強クラスの人物として現れ、主人公を利用しながら、とある事件を追ってゆく物語が展開される。そして、彼が未知の次元からの侵略者と戦う最強のエージェントであると明かされた辺りで、打ち切りのような形で物語が終わる。

意味不明だと思うか?俺もそう思う。
この話は結局、とある原因でパクレ警部の妄想が具現化しただけで、実在の出来事ではなかった、という夢オチのようなものだったと明かされる。
……のだが、描写不足が原因で当時のプレイヤーからは正しく夢オチと解釈されなかった。そのせいで公式の感想コーナーが炎上し、釈明のために「夢オチです」と強調するようなストーリーが追加制作された経緯を持つ。

しかし、この対応は本シナリオの根本的な解決にはなっていないと思う。
まず、パクレ警部が妄想好きなキャラクターであるなんて設定や描写は一切存在しなかった
追加した新規設定を前提にして物語が展開しているのだ。それを見たプレイヤーが「これはパクレ警部の妄想だ」なんて理解できるわけがない。
そして、それ以上に問題なのは本ストーリーにパクレ警部が事実上登場しない点だろう。
このストーリーに登場するのは妄想上のパクレ警部がほぼ全てだ。先述の通り、口調も能力も一切原型を留めていない。
本シナリオを読んで、パクレ警部を好きになる人がいるか?
いるわけがない。パクレ警部は登場していないからだ。
なら何のために作ったんだよ。

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主役が仕事に対して無責任であるような描写をして何がしたいんだ?

アストルティアキャラクターズファイルはこの点が本当に意味不明で、そのキャラクターを掘り下げる、つまり新たな魅力を描いてファンを獲得するためのシナリオのはずなのに、そのキャラクターが元々持っている個性を全く活用しない。
それどころか、リーネが仕事に対して無責任な対応をしているような発言があったり、変装中のポイックリンが何故か主人公に対してやたらと口汚い罵倒をしてきたり(罵倒するべき理由は本当に一切ない)、妄想パクレ警部も主人公に対してやたらと脅迫するような発言を繰り返したりと、好感度を上げなければいけないはずのキャラクターを性格の悪いクズのように描写することが多々ある

と言うか、本編でもver4くらいから先はやたらと性格の悪いキャラクターが増えているんだが。
俺が思うに これは作者の性格が異常に悪すぎて、周囲にも似たような性格の悪い人間しか居ないから、「このくらいがリアルな普通の人間、だから親しみやすくて好感が持てる」と思って書いているのではないかと思う。
まさかそんなわけ無いだろ と思うかもしれないが、だったら好感度を上げなきゃいけないキャラクターにクズ発言をさせる理由を教えてくれよ。

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ver3.0は純粋に中身がスカスカで炎上したらしい

では、本編ストーリーの話をしよう。
俺はver3のストーリーをプレイしたとき、「これより下はないだろう」と思った。それぐらい酷いと感じた。
しかし、結局その後ver4、ver5をプレイし、その度に「最悪」が更新されていった。
ver7.3までプレイした上で言うなら、個人的にはver5が頭一つ抜けた酷さだと感じたのだが、まあ、どんぐりの背比べだ。

とにかく一貫しているのは、キャラクターの絆をまともに描けていないことだ。これはver2のアンルシアの頃からそうだった。
既に書いたが、このゲームは仲間と一緒に苦難を乗り越える、あるいは楽しい日常を共有することで仲を深めるような描写を徹底して行わず、代わりに何の前触れもなく「あなただけは特別」「あなた無しでは生きられない」みたいな台詞を言わせることで絆を表現する。カップラーメンよりも安い絆の描写に定評がある。

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俺は元々ナドラガ神のために戦ってたわけじゃないので……

まずver3では主人公が新たなる舞台、ナドラガンドナドラガ教団と協力して物語を進めてゆく。
ナドラガ教団はナドラガ神を復活させるため、ナドラガンドの封印を解除し、世界を繋ごうとしている。
主人公は攫われた仲間を探し出すため、ナドラガンドを隅々まで探索したい。
その利害関係が一致した結果、主人公はナドラガ教団の「解放者」として、神官エステラと共に旅をしてゆく。

しかし物語の中盤で「実はナドラガは邪神で、ナドラガ教団は悪だった」と明かされ、主人公とは敵対することになる。これは多分衝撃的なシーンのつもりで書いているはずなんだが、実際のところ全くそうは見えない。
と言うのも、上記の通り主人公とナドラガ教団が協力していたのは単なる利害関係の一致でしかない。別に個人的に意気投合したり、主人公がナドラガ教団の教義に共感したから協力してたわけではない。
事実、物語が進んでも主人公は、同行しているエステラ以外とは特に親しく会話をする様子もない。
だから別に、そいつらと敵対したからと言って「良い人たちだと思ったのに裏切られた!?」みたいな衝撃が全く無いのだ。
と言うか、創作物における宗教団体なんて裏で怪しいことをやっている悪人たちであることがド定番だし、最初から疑ってかかっていたプレイヤーも多いだろう。
実際、ドラクエ2のハーゴン教団とかドラクエ5の光の教団とか、シリーズ内でも悪の教団は当たり前に登場していた。
そして本作のナドラガ教団も悪でした。これで驚くわけがない。
何の絆もないし、何の意外性もないからだ。

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どうした急に

また、本作ではver1時代のキャラクターが再登場する。上記の「攫われた仲間」がそれだ。
しかし、これまた絆の描写がさっぱり足りていない。
彼らとの関係は基本的に、ver1時代のストーリーで一度関わった程度だ。彼らにとって「町の危機を救ってくれた恩人」「頼れる相手」くらいの思いはあるだろうが、良くも悪くもそれだけだろう。

これが問題となるのが、終盤に主人公が殺害され、それを生き返らせようとする場面だ。
まず、本作の主人公はver1シナリオの冒頭で一度死んで蘇っているのに、その主人公がまた死ぬのを衝撃的な展開として描こうとする時点で間違っている気がするが、その件は置いておこう。

この場面だが、まず「自分の命を代償として捧げれば、主人公を生き返らせる」なんて誰も言っていないのに、アンルシアが突然「主人公が生き返るなら私の命を捧げる」と言い出して自殺未遂を始める奇行に出る。
すると、突然出てきた神が「もし本当に自分の命に替えても生き返らせたいなら蘇生する」と言い出す。ああ、アンルシアは作者が今後そういう展開を描くことを予知していたんですね。
そして、アンルシアに加えてver1の知り合いたちが突然主人公に対して「自分の命に替えても生き返らせたい、誰よりも大切な相手」であるとの意志を表明、元気玉展開で主人公が生き返ることとなる。

自分の国を丸ごと救われたラグアス、自身や恋人に加えて故郷の村の恩人たちまで救ってもらったマイユ辺りはまだしも、事件解決で少し組んだだけのヒューザや、そもそも主人公と友人程度の関係があるかすら疑わしいダストンが主人公のために命を差し出すくらいの関係だと言われて納得できる方、何人いるんでしょうか?
(主人公の種族にウェディを選んでいる場合ならヒューザはもう少し納得できるが、ダストンは本当に無い)

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結局寿命をちょっと削れば良いことになったらしい

なぜ、仲間のために命を差し出すような展開が熱いのか?
そりゃ当然、それまでじっくりと描いて、築いてきた仲間との絆が実を結ぶシーンだからだ。そうでなければ熱い内容にならない。
本作の制作者はそういった当たり前の前提を理解しておらず、ただ「熱いシーンによくあるやつ」を雑にぶち込めば熱いシーンが作れると思っている。
そして、本作では今後これが当たり前になるぞ。

なお、こうして2度も主人公を死なせたことで吹っ切れたのか、ver5の冒頭では突然出てきた新キャラのヴァレリアに、あっさりと虫けらのように主人公が殺される。すごいゲームだなぁ。

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まず主人公を投獄します。次も主人公を投獄します。

さて、ver4の話に移ろう。
物語の稚拙さとして、このストーリーには非常に分かりやすい問題点がある。主人公が冤罪や言いがかりで拘束・投獄されるシーンが、このバージョン内だけで6回もある。
この作者は投獄される以外の方法で人との出会いを描けないのか?

更に馬鹿げているのが、本ストーリーにおいて主人公は時空転移が可能な「エテーネルキューブ」を所持している。
これはシステム的な存在ではなく、ver3ストーリーでは主人公の兄弟姉妹(※)がこれを使用して緊急回避、緊急離脱などを行うシーンが描かれていた。
つまりエテーネルキューブを使えばいつでも脱獄できるし、そもそも捕まる前に逃げることも容易なはずだ。なのに、頑なにそういう使い方をしない。

※ゲーム開始時に、主人公と一緒に兄・弟・姉・妹から一つ選んでキャラクターメイクを行う。毎回「兄弟姉妹」と書くと長いので、以後は俺が選んだ「妹」で統一する。

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作者が主人公には解決させたくないので主人公には何もさせません

ver4.1では、主人公が勇者の盟友カミルと共に地下洞窟に幽閉される展開になる。主人公がエテーネルキューブで脱出して救助を呼びに行けばよいはずなんだが、その存在には触れないし使わない。
結局どうなるかと言うと、勇者アルヴァンが救助に来て、出口を塞いでいた落盤をぶっ飛ばすことで脱出する。
つまり、この展開を書きたかったから物語からエテーネルキューブの存在を消したわけだ。とても分かりやすいですね。
なお、この4.1ストーリーの冒頭では、主人公が普通に撃破した猛将ギーグハンマーについて、アルヴァンが「そいつは自分とカミルの二人がかりでも苦戦する相手だった」と言う。
つまり、この発言を真に受けるなら主人公の戦闘力はアルヴァンよりも高いはずで、アルヴァンが容易に破壊できる落盤ならば主人公でも簡単に除去できたことになる。
なぜそうしなかったのか?
作者はアルヴァンが助けに来る展開を描きたかったからです。
この作者にかかれば、施錠どころか扉すら無い部屋で起こった事件でも「密室殺人」と言い張られて物語は進行するのだ。作者がそういう設定で進めようと思うかどうかが全てであり、実際の作中描写なんてハナクソ程度の価値もない。

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「少し先の未来」らしいが具体的な時期は不明

上で時空転移と書いたが、このver4ストーリーは主人公が異なる時代に行き「滅びの未来」を変えることが目的となっている。そして、ここに致命的な欠陥がある。
過去世界へのタイムリープものは、何が面白いのか?
これは「リスクがあるから」だろう。
この手のストーリーの金字塔と言えるバック・トゥ・ザ・フューチャーで言うなら、「父と母の結婚が成り立たなくなったら主人公の存在が消えてしまう」がリスクだ。だから主人公は、歴史を正しい方向に修正しつつ、元の時代に帰る必要があった。
余計な歴史改変をしてしまったら終わり。そのルールの上で、必要な歴史改変を行う必要がある。
もしもアクシデントで不測の改変が起こってしまったら、歴史を正しい方向に戻す方法を考えなくてはならない。
そんな薄氷の上のスリルのある冒険だから、過去を変える物語は面白いのだ。

じゃあ本ストーリーはどうかと言うと、それが無い。主人公は漠然とした「滅びの運命を防ぐ」との目的だけを背負って、不規則な時代に飛ばされる。
そして、何をすればいいか分からないので とりあえず出会った人にひたすら協力していたら、いつの間にか事態の核心に迫っている。これが基本の流れだ。
余計な歴史改変を防ぐスリルなんてものはどこにもない。あるのは時空を超えた奴隷労働だ。

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都合の良い時だけそういう設定持ち出すのやめてもらえます?

一応、たま〜〜に登場人物が「歴史に与える影響が大きいから、この情報は教えられない」みたいなことを言う場面があるので、「不用意な歴史改変の危険性」という要素については本作のスタッフも把握していたらしいが、実際にそれが大きく関わってくることはない。描けないから匂わせるだけで諦めたんだろう。だったらこんな話を作るなよ。

それでは、リスクとかの要素を無視して単純なヒューマンドラマとして見れば面白いのかと言うと、そんな事もない。
これは過去にも語ったことがあるのだが、このver4でも二番目にトチ狂った描写をされているのがワグミカという人物だ。

彼女は公式から「自堕落系アルケミスト」とのキャッチコピーが付けられており、「飲んだくれの面白ダメ人間」のような扱いをされている。
しかし、実際のver4のストーリーにおける彼女の立場は明らかに異なっているのだ。

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ワグミカが100%正しい

彼女は元々エテーネ王国の研究所長だった。しかし、その国王ドミネウスが非人道的な研究を行うよう命令し、それに反発した結果、彼女は地位を失ってしまった。そんな背景が語られる。
見ての通り、ワグミカは非常に高潔な人格者だ。
確かに彼女は全てを失ったことで自暴自棄になって酒浸りの生活を送るようになっていたが、エテーネ王国に復讐をしようとか、そんな考えは持たなかった。
むしろ飲んだくれになってもなお集落の人を時々は手助けしている描写があり、どこからどう見ても凄まじい聖人でしかない。

なのに、ver4のストーリー上で彼女が登場するイベントでは、そんな背景や行動とは全く異なった扱いをされている。
元凶ドミネウスの娘であるメレアーデが謝罪もなしに自分の要求だけ押し付ける、理不尽にして身勝手極まりない行動が「怠け者のワグミカを正しい道に引き戻してあげる正しい行動」のように扱われ、ワグミカの従者であるはずのモモンタルすらメレアーデに味方する。
「誰がドミネウスの娘なんかに協力するか」と言うワグミカは何一つ間違ったことを言っていないのに、一貫してストーリーの流れは「自堕落なワグミカを、優しいメレアーデが更生させてあげる」体で進む。

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おそらく当初の予定はこれ

何故こんな異様な事態になったのか。
おそらく当初のワグミカはこんなシリアスな設定を持ったキャラではなく、ただの面白ダメ人間になる予定だったのだと思う。
確かver7で、「かつてワグミカは酔ってドミネウス王にウザ絡みし、クビが飛びかけたことがある」との過去が語られたが、本来はこうした しょうもない理由でクビになり、自堕落な生活になる想定だったのだろう。ドミネウスを恨んでいるのも、ただの逆恨みになる予定だったはずだ。
そして、そんな「本当にダメ人間」のワグミカを更生させる。そんなストーリーの流れにするつもりだったのなら辻褄が合う。

しかし、シリアスな設定を足した方が面白いと思われたのか、それとも時系列的な問題か、実際のワグミカは「ドミネウスの非人道的な研究の指示に反対した結果追い出された」との設定になった。
なのに、「当初の予定通り」ダメ人間のワグミカを更生させるイベントを そのまま使った。
その結果、悲劇の聖人となったはずのワグミカが何故かダメ人間扱いされ、彼女に殺されても文句を言えない立場であるはずのメレアーデが謝罪もせずに自分の要求だけ押し付ける展開が、まるでワグミカの方が悪いかのような様子で描かれる狂ったイベントが誕生してしまったわけだ。
制作の内情を妄想するのは良くないと思っているんだが、これに関しては本当にそんな理由じゃなければ あの異常な描写の説明が付かない。

運営はストーリーを読んでいない。
より正確に言うなら、「こういうキャラクターだ」とデザインしたら、最終的に実際のストーリー中の立ち位置や描写が異なるものになったとしても、デザイン当初のイメージのまま認識が変わらないのだ。
こんな認識で人物描写を行っている制作陣が、歴史改変の影響が絡み合う複雑なストーリーなんて描けるわけがないのは必然だったと言えるだろう。
なお、俺はワグミカについて「二番目にトチ狂った描写」と書いたが、一番については後述する。

ちなみに、ver3からver4に移行する際にディレクターが交代しており、その際に運営からの開発及び運営方針について「おはなし」に力を入れ、世界観を深めていきます。との発表があった。
力を入れた結果ストーリーの品質が格段に低下したので、力を入れない方がよかったですね。

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ヴァレリア周りは過去に雑談配信でも言及した

さて、俺が最低だと再三言っているver5の話をしよう。
既に書いたが、このストーリーの冒頭で主人公は新キャラのヴァレリアに虫けらのようにあっさりと殺される。
ヴァレリアは「魔王」と呼ばれる存在だが、この時点で主人公は冥王ネルゲル大魔王マデサゴーラ、それがパワーアップした創造神マデサゴーラ、そして邪竜神ナドラガ時元神キュロノスといった、錚々たる面子との戦いを切り抜けてきている。
特に、本作では「魔界の各国を治めるのが魔王、それらの上に立つ魔界全土の支配者が大魔王」といった設定になっており、大魔王マデサゴーラは明確に魔王ヴァレリアよりも格上のはずだ。
もちろんゲーム的には3つも前のバージョンのボスなのでver5基準では大した敵ではなくなっているが、作中世界で実際にそこまでのインフレは起こっていないはずだろう。
マデサゴーラとの戦闘は勇者姫アンルシアとの共闘だったため、主人公一人の力ではない。とは言え、元々ヴァレリアより格上の大魔王マデサゴーラ、それがパワーアップした創造神マデサゴーラを撃破し、更にその後にナドラガやキュロノスまで倒してきた主人公が、「ただの魔王」に過ぎないヴァレリアより格下というのは考えにくい。万一ヴァレリアの方が強いとして、いくら何でも主人公が手も足も出ないことは流石にない。普通のプレイヤーならそう思うはずだ。

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なんで今度は急に互角になったんですか?

だが、本作での答えは既に書いた通りだ。主人公はヴァレリアに一撃たりとも入れることはなく、逆にヴァレリアから露を払う程度の攻撃を二回受けて死亡だ。
もしも、本当にヴァレリアがそこまで規格外に強い設定で、もはや主人公たちの世界、アストルティアは完全にヴァレリアの気分次第で滅ぶ。そんなストーリーを展開するつもりならば、面白いかどうかはともかく意図としては分かる。
だが実際には全然そんなこともない。ver5のストーリーが進むと、特にパワーアップしたような描写もない主人公が魔王ユシュカや魔王ヴァレリアと戦って引き分ける展開が登場する。
つまり主人公は元々ヴァレリアと同じくらい強かったのかもしれない。
じゃあなんでストーリーの冒頭では虫けらみたいに殺されたんですか?
作者がそういう展開で進めたかったからです。

なお、上で「引き分ける」と書いた通り、主人公はヴァレリアに勝利しない。最後までリベンジの機会はなく、いつの間にかヴァレリアと和解したような雰囲気になってストーリーが進む。
この頃から本格的に、「作者のお気に入りキャラクターの株は、死んでも1ミリも落としたくない」がストーリー上に滲み出る……どころか、湧き出した欲望が大海となって襲い来るぞ。

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強制的に主人公の外見を変更されるクソ仕様(5.0ストーリーを完遂するまで戻せない)

さて、そうしてヴァレリアに殺害された主人公は、魔王ユシュカの手によって魔族として転生する形で一命を取り留める。そして、ユシュカのしもべとして魔界で活動を開始する。
もちろん、ここからはユシュカと協力してヴァレリアを倒すのが目的に……ならない
じゃあ何が目的になるのか?分からない。

分からない。

当初の主人公は、魔界の侵攻からアストルティアを守ろうとしていたはずだった。そこで、魔界の門から侵攻に現れたヴァレリアと交戦し、死亡した。
普通に考えたら、主人公はここから再びアストルティアの仲間と協力したり、あるいは魔界で情報収集をして魔界の敵を内部から破壊するなど、魔界に立ち向かう展開になると思うだろう。
だが実際にはここから、ユシュカの言う通りに下僕としてしばらく働いた後、他国にもお手伝いに行き、魔界の各国の困りごとをを解決していくことになる。
魔界のゴタゴタが解決したら、アストルティア侵攻の準備を整えたヴァレリアがアストルティアを滅ぼしに来るはずなんだが、主人公はアストルティアの仲間のことを完全に無視し、一切の連絡も取ろうとせず、ヴァレリアの国バルディスタの困りごとを頑張って解決する。
主人公の目的ってアストルティアを滅ぼすことだっけ?

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この場面に限らずver4以降の主人公はやたら慌てたり驚いたり、小物臭い反応が多い

さて、なぜこんなストーリーなのか。
答えはその先で明らかになる。主人公が結果的に大魔王に選ばれて魔界を統一し、魔界とアストルティアで協力して真の敵に立ち向かう展開になるからだ。

Q 主人公は真の敵の存在を知っていたんですか?
A 知らないに決まってるだろ。

Q じゃあどうして主人公は魔界に協力してたんですか?
A 作者は最終的に魔界と和解する展開を描くつもりだったから。

Q 作者がどうするつもりかなんてプレイヤーは知らないですけど、なぜ当然のように知ってる前提で話が進むんですか?
A 作者は知ってるから。

Q 作者の脳内の情報と、作中の登場人物が知っている情報と、プレイヤーが把握している情報は全て別のはずですが、作者はそれを区別できていないのですか?
A そうです。

これがver5ストーリーだ。
こんな、創作経験のない小学生の脳内妄想みたいなストーリーが、ドラゴンクエストという世界的タイトルのメインストーリーとして採用されている。
面白い・つまらないとかのレベルじゃないんだよ。まずストーリーとして成立すらしていない。

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このストーリー書いたバカを即座にクビにしろ

そして、この物語が「究極」となるのがver5.3だ。
ここで主人公は正式に大魔王となる。そして、頼んでもいない衣装の制作を手伝わされ、頼んでもいない主人公の顔(実際にはフルフェイスの兜)を岸壁に彫ってもらうためにモヒペンコとかいうカスのご機嫌取りを必死に行う。
その後、大魔王城に帰ってきた主人公のもとに襲撃者が現れる。
勇者姫アンルシアだ。アンルシアは大魔王こそが諸悪の根源だと思い、主人公に襲いかかってくる。こうして、勇者と盟友が戦うことになってしまうのだ!

Q  なんでアンルシアは大魔王が主人公だと気付かないの?
A  主人公がフルフェイスの兜を装着していて顔が見えなかったから。

Q そもそも主人公がアストルティアの仲間と連絡取ってればこんな事にならなかったのでは?
A 作者はこの展開を描きたかったので、主人公が頑なに連絡を取らなかった設定にしました。

Q  それってストーリーとしておかしくないですか?
A そうだが?

Q  なんで主人公は兜を取らないの?
A  取ったら勇者と盟友の悲劇の戦い(笑)が始まらないから。

Q 兜を取らなくても声とかで伝えることだってできたのでは?
A 伝えたら勇者と盟友の悲劇の戦い(笑)が始まらないから。

Q このストーリー制作者ってものすごい馬鹿なのでは?
A そう言ってるだろ。

現在のドラクエ10プレイヤーは、このストーリーに一切の疑問を持たない方々が中心です。
そりゃプレイヤーも減るに決まってる。知的生命体が遊ぶゲームじゃない。

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これも全部ヘルヴェルってやつが悪いんだ

さて、現行のプレイヤーから最も評判が悪いと思われるver6のストーリーだ。
細かな要素は色々とあるが、おおよその不満点として挙げられているのは「天使たちが不快」「英雄たちの雑な処理」だ。
まあ実際、それは間違っていない。
だが、俺に言わせてもらえばver4くらいから主要人物は不快なのが当たり前だったし、キャラクターの扱いがおかしいのも今に始まったことじゃない。
少なくとも、「作者の脳内では最終的に和解させる予定なので、ゲーム中では何の説明もないけど主人公は全力で敵側に協力する」なんて展開は無かったので、ver5よりは確実にマシだと感じた。

ただ、このver6シナリオが最も評判が悪い理由は察しが付く。
DQ10のメインストーリーは数カ月おきに更新される方式で、1バージョンあたりの完結まで一年以上かかる。
つまりリアルタイムで最新の物語を進行しているプレイヤーは、一つ前のストーリーを読んでから何ヶ月も経っているのが普通だ。その内容の大部分を忘れていてもおかしくはない。
ver5ストーリーは道中のストーリーの破綻や不快さは群を抜いていたが、物語の展開や設定の整合性などを全て無視して完結編の雰囲気だけを見れば、何かみんなで協力して敵を倒す感動的な内容のように見えなくもない。
それに、登場人物はイケメンと美女が中心で、主人公以外はムービーで活躍が描かれる。だから「顔の良いキャラが映ってれば幸せ」なプレイヤーは、それだけで満足しただろう。

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自覚した上で失敗しているのが涙を誘う

対するver6は、完結編となるver6.5後編のまさにクライマックスから大団円となる場面に、分かりやすい不快要素があった。
今まで共に戦ってきた英雄をショボいトラップや落石であっさりと退場させ、最後にはそんな戦いを茶化すような発言で終わる。
「顔の良いキャラが映ってれば幸せ」な層ですら、その顔の良いキャラを雑に使い捨てられれば怒るだろう。
終わり良ければ全て良し、の見事に逆だ。最後の最後に不快な印象が残れば、どう足掻いても最終的な評価も下がる。
ver6は、ストーリーの展開をしっかり読んでいないプレイヤーですら「仲間の死を笑い事にされた」との印象がしっかりと残る終わり方になっている。
これが、最も不評とされている原因だろう。

その点以外にver6で特に問題なのが、敵勢力の驚異が全く伝わらない点だ。
まず、DQ10のストーリーは、元々ver5までの内容で完結する想定だったらしい。
実際、ver5のラスボスとなる異界滅神ジャゴヌバはver1の頃から「大いなる闇の根源」として、何度か存在を示されてきた。
では、後付けで追加されたver6の敵は何者かと言うと、「ジア・クト」なる種族となっている。
そして、上記のジャゴヌバも真の名前は「ジア・グオヌバ」と言い、ジア・クト勢力の一端に過ぎなかった……との話になる。
つまり、ver5で必死になって倒したジャゴヌバと同格以上の敵が、ジア・クト軍にはまだまだ存在する。そう匂わせる設定になったわけだ。

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これが敵幹部の半数です

このインフレ展開の是非はともかくとして、設定上はver5よりも遥かにスケールの大きい話となった……のだが、実際のところジア・クトの驚異はちっとも描かれていない。
中盤までに登場するジア・ルミナジア・サフィルといった敵はどう見ても今まで登場していた中ボス魔物と同じくらいの表現で、ジャゴヌバのように世界を丸ごと滅ぼしかねないレベルの驚異には全く見えない。
じゃあ、こいつらは下っ端で、幹部クラスになるとジャゴヌバ級なのか?そうではない。ルミナやサフィルが幹部だった
その幹部の数も少なく、ver6で登場するのはラスボスを除いて4人のみ。あろうことか敵基地に突入した後に登場するのは事前に顔見せしていた一人だけという体たらく。
まあ、ジャゴヌバはジア・クトの一員だと言われただけで、別に「ジア・クトの中では下級兵士」とか言われていたわけではない。
なので、「ジャゴヌバはジア・クトの一員であり圧倒的最強だった」と解釈すれば矛盾はしないが、肩透かしが甚だしいのは確かだ。

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よくないですね

そして、この尻すぼみ感をさらに強めているのが終盤のストーリー展開だ。
ジア・クト軍には、アストルティアを一発で破壊できるような超兵器「魔眼砲」が存在する。まずはこれの除去を最優先にしようとの話で、主人公たちは「敵のボスの撃破は目指さず、少数精鋭で突入して魔眼砲を破壊し、帰還する」という作戦で敵の基地に突入する。
まず、ここでアホなのがユーライザの加入だ。彼女はこの先の戦いに加わるには力不足と判断され天使たちから止められるのだが、そこで彼女は「足手まといでもいい!行きたい!!」と主人公たちに同行する。その様子が、何か自分の意志を貫き通す良いシーンみたいに描かれる。
ユーライザの目的は主人公たちの足を引っ張って殺すことかな?
結局、最終的にはユーライザが覚醒してこの戦いのキーマンとなるので「結果的にユーライザを同行させたことは正解だった」流れになるのだが、だからって足手まといと言われたユーライザが強引に付いてくる理由の正当性にはならないだろ。プレイヤーに予知能力を要求するな。
普通にパワーアップしたユーライザが天使代表として同行する展開にしていれば違和感はなかったはずなんだが、本作のスタッフは「自分が足引っ張って主人公たちが死んでも構わない!行く!!」と強引に付いてきたカス女が結果的に最強キャラになったから正解でした、という展開の方が感動的だと思ったらしい。

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普通にフルパワーで撃ったら壊れる超兵器

さて、ともかく敵基地に侵入して魔眼砲の破壊を目指すのだが、更に馬鹿げているのが この魔眼砲の破壊方法だ。
世界を丸ごと破壊できるような超兵器なら、破壊するのも容易ではないはず。うかつに刺激すれば、爆発でも起こして全滅の危険性もある。かと言って、敵基地でモタモタしていたら袋叩きにされる危険性もある。そんな緊張感の中で、慎重に行動を……しない
虚空に向かって最大出力で普通に魔眼砲を発射したら、魔眼砲がオーバーヒートして使用不能になり、破壊完了だ。誰だよ、こんな脆い兵器作ったバカは。

そして、ここで新たな事実が判明する。
実は魔眼砲は2つあった。一つを破壊しても、まだ作戦は完了していない。しかも、第二の魔眼砲の情報は得ておらず、どこにあるかも分からない。
主人公たちは選択を迫られる。一つとは言え破壊できただけ良かったと、一度帰還するか?それとも、もう一つの魔眼砲をこれから探すのか?
主人公たちの行動は、そのどちらでもなかった。
「これから第二の魔眼砲を探すのは難しいし、このままボスを倒しに行こう」と、超行き当たりばったりな作戦をユーライザが提案し、そのまま本当にボスに突貫、勝利してハッピーエンドだ。
これが…ジャゴヌバを超える驚異に立ち向かう物語の完結編なのか……?

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もはや制作者すら真面目に台詞を書いていない

なお、敵基地では主人公たちにユーライザが同行するのだが、この際の会話にも違和感があり、ユーライザが普段と違って妙に乱暴な「胸くそ悪い」なんて言い回しを使うほか、「あ~ なんか 暑いですね。 戦ったせいでしょうか。 あちあち」などと、敵基地での決戦のはずなのにキャラ崩壊気味の妙な発言をしたりする。
この会話については他のプレイヤーからも「ユーライザがこんなこと言うか?」と疑問を持たれていたようで、本格的に制作陣が投げやりになっていたのがよく伝わってくる。
そりゃ英雄たちの処理も雑になろうものだ。

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ドゥラの件についてはver1の感想記事でも言及した

そして最新のver7……なのだが、これに関してはまだ完結していないし、俺はver7.3の序盤で心を折られたので、クオリティ面では言えることが少ない。
とりあえず再登場したドゥラが明らかに別人レベルで人格が変わっていたり、7.0および7.1で舞台となるアマラーク・メネト・ムニエカのストーリーは全て作者がカップリング以外何も考えていないのは痛感した。
ver6ストーリーが不評だった反動か、「ver6と違ってver7は面白くなった」との評価を所々で見るが、これは明らかに嘘だ。何も変わっていない。
まあ、ver7の問題要素のいくつかは次項で書くことにする。


スタッフの頭がおかしい

全く反省していない悪人をみんなで助けよう!

シンプルなサブタイトルだ。
なんだか物凄い罵倒みたいなことを書いているが、誇張でも冗談でもなく本作のストーリー制作陣は気が狂っている。
この項を最後まで読めば、間違いなく納得できるはずだ。

「頭がおかしい」という表現をしたが、その主たる要因は倫理観や価値観の異常さだ。
これは過去記事でも再三描いているが、DQ10はどんなシリアスなシーンの真っ最中だろうとコメディ描写をねじ込んで茶化す基礎疾患がある。
俺がver6のラストでそんなに驚かなかったのは大体これが理由で、英雄たちの死を茶化されても「確かに酷いけど、いつもの事だろ」と思った。
そもそも常態化しているのがおかしい?ごもっともだ。

同様の例として、「面白キャラ無罪」問題も存在するが、これも指摘して具体例を出そうとすると全く同じ内容を何度も書くことになるため、気になる方はver1の感想記事あたりを参照して頂きたい。

とにかく、「罪」に対して異様に甘いのは本作で一貫している点だ。上記の「面白キャラ無罪」はコメディとして書いているから仕方ないと納得するとしても、本作の場合はシリアスな物語においても平気で重罪人を無罪放免にする。
特に頻出する表現が、「どんな悪事を働いても、別件で『良い人要素』を見せれば全ての罪がチャラになる」システムだ。

静かに暮らしているだけの人を侵略して殺してる殺人鬼が何か言ってる

少し考えてみてほしい。
例えば貧しい母と子がいる。母はお腹を空かせた子のためにパンを盗み、食べさせた
パンを盗んだのは悪いことだが、子はお腹いっぱいになって幸せになった。つまり子を幸せにする善行を行ったので、パンを盗んだ罪は消える。パン屋の店主も、母を全く責めない。めでたしめでたし。

この話に納得できるか?普通の知能と感性があれば、全く納得できないだろう。
自分の子、身内の腹を満たすのは単なる私欲であって善行ではないし、もしもパンを盗んだ罪を償うなら、パン屋に対して弁済を行うことに決まっている。
我が子にパンを食べさせたから窃盗の罪が消えるなんて意味不明だ。
だが、DQ10ではこれが当たり前にまかり通っている。

これが分かりやすいのが、もう再三言っているヴァレリアだ。
こいつは紛れもなく主人公を殺害した殺人鬼だし、アストルティアに侵攻するつもりも満々だった。
しかし、彼女がそれを「間違っていた」と反省することもなければ、当然償うこともない
代わりに存在するのが、「ヴァレリアは孤児院の子供たちには優しくて、みんなに慕われている」というイベントだ。
これで「本当はヴァレリアは良い人」みたいな雰囲気になって、いつの間にかヴァレリアは正義側として扱われるようになる。

こいつは後述するトポルの村のイベントで、「もう二度と私の目の前で大切な者の命を奪わせたりはしないッ!!」と、何か理不尽な暴力に立ち向かう優しい人みたいな雰囲気を出すのだが、一番理不尽な暴力を振るってるのはお前だぞ。

ヴァレリアってやつを倒せば命が奪われることは減りますよ

で、そのトポルの村のイベントなんだが、これもまた意味不明と言うか、何がしたいのか分からない内容になっている。
彼女はゼクレスとの戦争で吹き飛ばされ、この村の近くに落ちた。そして、そこで呪われた泉の水を飲んでしまったせいで、「その人が最もなりたくない姿」である、か弱い少女の姿に変わってしまう。
そして、ヴァレリアはそこでティリアという少女として静かに暮らそうとしていた。
主人公たちに正体を見抜かれ、元に戻るよう言われても「ヴァレリアなんて知らない」としらばっくれていた。
しかし、トポルの村が襲われたことで再び戦うことを決心、元の姿に戻る……という話だ。

まず、呪いの泉は「最もなりたくない姿」に変わる設定なのに、ちょうどヴァレリアにとって都合の良い姿に変わっているのがおかしな点だ。
これは「ヴァレリア様は誇り高い戦士だから、か弱い女の子になるなんて許せないんです!」とアピールしたかったのと、単にロリ化ヴァレリアを作って遊びたかったのが理由だと思うが、本当にか弱い少女になるのが一番嫌なら元に戻りたがるに決まってるだろ。
俺はナメクジが大嫌いだが、自分がナメクジの姿にされたら一秒でも早く元に戻りたいと思うぞ。「よっしゃ!気ままなナメクジライフ送るわ!」なんて間違っても思わねえよ。

これが仮に、「ティリア化している間は記憶を失っていて、自分でもヴァレリアだと分かっていなかった」ならまだマシだったんだが、実際にはハッキリとヴァレリアとしての意識も記憶も持っている。
だから明らかにヴァレリアはか弱い少女としての自分を許容しているし、それを嫌がっていない。ロリ化ヴァレリア出すために呪いの泉なんて設定作ったくせに、そのヴァレリアの設定で矛盾させるなよ

国を捨てて一人だけ逃げたカス

そして本件でさらに問題なのは、ヴァレリアが隠居生活する気満々だったことだ。
先述の通り、ヴァレリアはゼクレスとの戦争でトポルの村の近くに飛ばされた。まだ戦争の真っ只中だ。ヴァレリアが迅速に復帰しなければ、彼女の国バルディスタはゼクレスに蹂躙されるかもしれない。
なのに、ヴァレリアはその状況下で、「自分はヴァレリアじゃない」と言い張り、国を捨てて自分一人だけ隠居生活を楽しもうとしていた。
もしも、トポルに飛ばされたときの戦いで戦いがトラウマになって必死に逃避していたとか、そういった描写をするならまだ分からなくもない。だが、ヴァレリアは特にそうした様子もない。
これじゃ本当にヴァレリアがただのカスじゃねえか。
なんでヴァレリアのエピソードのはずなのに、ヴァレリアが無責任なクズであることを描いてるんですか?

そして彼女が元の姿に戻り、戦う際の台詞が上記の「もう二度と私の目の前で大切な者の命を奪わせたりはしないッ!!」なので、多分作者はヴァレリアをカッコ良くて魅力的に見せるシーンのつもりで書いていると思うんだが、見えてるのは作者の価値観と知能の異常さだけだぞ。

ver3のラストではオルストフが主人公たちを助けてくれるような場面があるが…

若干話が逸れたが、別キャラの例を出そう。ver3の準ラスボス的立ち位置、ナドラガ教団の総教主オルストフだ。
彼は邪竜神ナドラガの肉体の一部であり、ナドラガを復活させて世界を無茶苦茶にしようとしていた。それだけでなく、主人公を不意打ちで殺害したのも彼の仕業で、ver3においてはナドラガ本人よりもよほど悪事を働いている。
そんな彼だが、ver3ヒロインの神官エステラの育ての親でもあり、彼女への親としての愛情は本物だった、だから良い人だった……かのような雰囲気で扱われる。
良い人ではないと思います。

と言うかマジで意味が分からないのは、こういうのって普通は「悪事を働いていたのは彼の中のナドラガの邪悪な意志で、『オルストフ』の人格はずっと悪事に反発していた」みたいな設定になるものじゃないだろうか。
だったらオルストフを良い人扱いしても違和感はないのだが、本作の場合は明確にオルストフ自身の意志として悪事を働いたものと描写されている。
「巨悪ではあるが、純粋悪とも言い切れない」ピサロみたいな悪役が作りたかったのか?
あれは人間にロザリーを殺された被害者の側面もあったから同情の余地があっただけで、被害者要素が何もないオルストフが「エステラには優しかったから」で良い人扱いするのは無理があると思いますよ。

あと、上の画像のシーンはナドラガとの決着後、オルストフの遺志が主人公たちを助けてくれる場面なのだが、これも色々とスッキリしない描写になっている。

ナドラガは後にも描写があるが、元は決して悪ではなかったのが分かる

何がおかしいのかと言うと、決着後のナドラガは「我が間違っていたというのか」と、自身が道を外れたことを理解し、悔いたような描写がある。
なのに、この少し後にはナドラガが主人公たちを閉じ込め、溢れ出した魔瘴で道連れにしようとする展開になる。(ナドラガは我々を逃さない気か!?と言われているため、彼の意志でやっているような扱い)
で、ここで主人公たちを逃がしてくれるのが上記のオルストフの遺志だ。

つまり、このオルストフの活躍を描くためにナドラガが主人公たちを道連れにする展開をねじ込んだせいで、一度は反省したような描写のあったナドラガが「やっぱ自分悪くなくね?あいつら道連れにしてぶっ殺す!」と即座に逆上した人格破綻者みたいなことになっている。
このストーリーの作者はその場その場でなんとなくエモそうな要素を突っ込んでいるだけなので、こうやってキャラクターの人格や行動が崩壊するのだ。

過去のナドラガは非常に真面目

実際ナドラガはver3での決着後も、ver6では過去のナドラガが登場したり、ver7ではナドラガの魂を降霊させて会話する展開があったりする。
その際のナドラガは一貫して「多少傲慢な部分はあるものの、神としての正義感や責任感は強い」人物となっており、ver3での決着後に自身の過ちを悔いる様子こそが彼の本質に思える。
つまり、どう考えてもナドラガが即座に逆上して主人公たちを道連れにするのはおかしいわけだ。
まあ一応、「ナドラガは我々を逃さない気か!?」と言っていたのは主人公の味方側の一人であり、明確にナドラガの意志であると確定はしていない
なので、これは仲間がナドラガの仕業だと勝手に勘違いしただけでナドラガの意志ではなく、ただ魔瘴がナドラガの意志と無関係に溢れ、たまたま主人公たちの逃げ道を塞いだだけと考えれば矛盾はしないが、これはこれでクライマックスシーンとしてはあまりにマヌケな展開になってしまう
結局、オルストフに助けてもらえる展開を描くために妙な脱出シーンをねじ込んだせいで、色々とおかしなシーンになってしまったことは変わらない。

他にも細かな例を挙げればいくつもあるが、特に目立つのはこの二人だろう。特にヴァレリアは本当にわけが分からないが、考えたら負けだ。このゲームは知能がある生物を対象にしていない。

シャブ漬け天使長

既にお腹いっぱいな気もするが、本作にはもっと恐ろしい要素がある。
これまでの例は「ただの不快要素」だ。正常な知能の生物が不快になるだけで、それ以上の問題はない。
だが本作には、倫理・道徳どころか法的な面において明らかにアウトな描写が存在する。

その例の一つがver6.3ストーリー、魔窟アラモンドで登場するアラモン糖だ。
この魔窟アラモンドはいわゆる裏社会であり、法的に危ないブツも流通している設定だ。
アラモン糖も「危ないブツ」の一つで、本品については作中でこう説明されている。

ひとくち食べるだけで まさに楽園の心地。
かつて プクランド中の プクリポが
そのウマさに 夢中になった。
だが アラモン糖の あまりのウマさに
大陸中のプクリポが 菓子の食い過ぎで
ぶくぶく太り 社会問題にまで発展したのさ。
当時 即位したばかりの プーポッパン王は
肥満の原因である アラモン糖を
根本から潰すため 鉱山に閉鎖命令を出した。
かくして アラモン糖は
プクランド大陸から 姿を消し 
プクリポたちの健康は 守られた……。
ヒヒッ……だが どうしても
アラモン糖の味を 忘れられない
甘党の皆様から 強~い ご要望があってなぁ。
どうしてもって 言われちゃ しかたねえ。
こっそり ご提供して
ガッポリ儲けさせてもらおうってワケだ。

結構洒落にならない問題になっている描写がある

「菓子」としてコミカルな表現になっているが、つまるところ「国家に規制されてもなお、裏ルートで大金を支払ってまで求める人がいるほど強い依存性がある、健康に悪い物質」とされている。
なので明らかに違法薬物と同質の存在として語られているのだが、ver6.3ストーリーでは これを「特別な美味しいスイーツ」くらいの扱いで、主人公やユーライザが美味しい美味しいと食べるシーンがある
主人公たちが気軽に違法薬物に手を出すゲームなんて見たことあるか?
しかも、それが法的・道徳的に問題のある行為とは全く扱われない。

つまり本作の制作者は、上記の違法薬物みたいな説明も「それくらい美味しいんだよ!」と表現するフレーバー程度の感覚で捉えているわけだ。
このゲーム、メキシコあたりで配信してくれねえかな。それで「薬物乱用を賛美している作品」としてガチめの問題になってくれよ。

クオード

作者の嫁

本作最大の問題要素にして、ver4で最もトチ狂った描写の人物、クオードだ。
彼はver4の主役であり、5000年前のエテーネ王国の王子だ。
当初の彼は高潔な人物として描かれており、「自国を救うためなら何をしても良い」と考える父、ドミネウス王を強く批難していた。
しかしドミネウス亡き後、どう足掻いても自国の「滅びの未来」を避けられず、手段を選ぶ余裕のなくなった彼は、かつて批難していたドミネウスと同じく「自国を救うためなら何をしてもいい」との思想に陥ってゆく。
そうして、すっかり独善的な巨悪と化してしまったクオードを倒すのがver4のストーリー……ではない

クオードは本ストーリーにおいて、一貫して「その手を血で汚してでも国を救おうとする、高潔にして悲劇的な善」として扱われる。
これが本ストーリーの最も異常にして、DQ10という作品自体を、いつ発禁になってもおかしくない危険思想の問題作に仕立て上げた元凶だ。
クオードの悪事はおおむねver4.3に集中しているが、その内容を大雑把に挙げると以下のものがある。
 

ウルベアの国王を暗殺し、その罪をガテリアの王子ビャン・ダオになすり付けた

殺人を犯してしまうほど追い詰められているクオードくんは被害者!!

シンプルにして致命的な行為だ。
まず前提として、クオードは時空転移のできるエテーネルキューブの開発を目論んでおり、そのために高い技術力を持ったドワーフたちを利用しようと、ウルベア王国に取り入った。
ウルベア王国はガテリア皇国という国と戦争をしており、彼はそこで軍国主義を推し進めることで技術の発展を狙う、ヒトラーみたいな行動に出る。

しかし、ウルベアの国王は戦争を終わらせる方向で動こうとする。クオードにとって戦争が終わってしまうことは都合が悪い。だから彼はウルベア国王を暗殺した。
ここでヤバいのが、マジでクオードが直接殺していることだ。
もしもクオードを善として扱いたいなら、普通は「ウルベア王の暗殺を企てた部下を止めることができなかった」とか、百歩譲って「部下に暗殺を指示した」くらいの行動に留め、クオード自身は直接手を下していない展開にすることで少しでも彼の罪を薄めようとするだろう。
だが、本作は違う。思いっきり、クオード自身が剣でブスリだ。一切の言い訳のしようもなく、クオードを明確に殺人鬼にした。
さらに、戦争を激化させるために「この暗殺は敵国の王子が行った」と吹聴するオマケ付きだ。
もはや、この時点でどう足掻いてもクオードを善の存在として扱うのは無理があるのだが、本作に常識は通用しない。

なお、彼は後に「意に沿わぬ技術者や廷臣を戦地に送り込んで謀殺する」というスターリンみたいな事もやっていたのを指摘されており、間接的な殺人を含めた場合はもっと数が増えるんだが、間接的な殺人における彼の本領発揮はこんなものじゃないので、後で改めて書く。
 

主人公の妹を監禁し、強制労働させた挙句に被害者面でわめき散らす

女の子を監禁して強制労働させてしまうくらい傷ついてるクオードくんかわいそう!!!

罪としては比較的軽めだが(これが軽めの罪になっているのがおかしい)、印象の不快さで言えば最悪レベルの事件だ。
ざっくり前提を話すと、主人公の妹は物語の冒頭で「不老長寿となり、不定期に時空転移させられる」という呪いのようなものを受けている
そして、たまたまクオードと同じ時代に流れ着いたことで、エテーネルキューブの開発を共同で行うようになる。

問題はそれからだ。何年も共同開発を続けてなおエテーネルキューブの開発には進展がなく、クオードは焦りを感じる。そして、全く老化しない妹が普通の体ではないことに気付く。
ではクオードはどうするか。「俺には時間がないのに、お前はたっぷり時間があってズルい!どうせ本気で開発してないんだろ!」と妹を監禁して強制労働させる。
ここで恐ろしいのは、このイベントの描写が「クオードの気が狂い、主人公の妹を監禁するような許せないことをやった」ではなく「クオードくんは頑張っているのに妹は彼の苦しみを分かっていない。こんなに追い詰められているクオードくん可哀相…」という演出で進むことだ。

作者はこの凶悪犯罪者が「まだおかしくない」と思っています

そして実際、後の描写を見ても妹はクオードを恨んでいないし、主人公もこの監禁の事実を後に知るが、クオードを憎むような描写はどこにもない。
作者は「ううっ、クオードくん罪深くてかわいそう……!!」以外のことを何も考えていないので、クオードが周囲を傷付けることは彼の「かわいそう属性」を強めるものでしかなく、クオードを本気で恨む人物は誰一人として現れない。それが本作の狂気の世界だ。

これは俺が兄弟姉妹に妹を選んだせいもあるが、この場面のクオードの気持ち悪さは本当に度を越している。成人した男が年下の女(外見上は)を監禁して強制労働させ、さらに泣きわめいて当たり散らすんだぜ。こんなダサさと邪悪さと気持ち悪さの極上カクテルみたいなシーンを描いておいて、プレイヤーがクオードに肩入れする前提でストーリーを進行している。

女殴って財布から金抜いてパチンコ打ってる男が「優しくて魅力的な彼氏くん」と描かれてるような世界だ。ドラクエはいつからレディコミになったんだよ。
 

彼の作らせたウルベア大魔神によって、ガテリアの国民たちが大虐殺される事件が起こった

これ自体は別のシーンのムービーだが、これと同じようにガテリアで虐殺が起こったのは想像に難くない

ほとんどの人が、クオードの最大の問題行動と認識している点だろう。
彼はエテーネルキューブの開発と並行して、エテーネを救うために地脈エネルギーを集めるロボット、ウルベア大魔神を作らせた。
そして、このウルベア大魔神には強大な兵器としての戦闘力もあったのだが、彼はこれの利用を一切制限していなかったため、ウルベアの技術庁員が本機を使用してガテリアの国民を大虐殺する事件を起こす。

これはムービーではっきり描写されるわけではなく、クオードの日記に記載されているのだが、その文面を見ても彼が全く反省していないのはよく分かる。
そこに書いてあるのはガテリア国民への詫びの言葉などではなく「辛いよ…姉さん…会いたい…」だ。ここでもクオードは被害者面メンヘラをやる。
作者が「ああっ…!クオードくん可哀想すぎる!!」と泣きながら発情しているのは痛いほど伝わってくる。

これは「技術庁の暴走」と表現されているので、どうも作者は「悪いのは暴走した局員で、クオードは被害者」だと思って書いているようだが、どう考えても無理がある。
戦争を激化させたのもクオード、ウルベア大魔神を作らせたのもクオード、それの使用を制限しなかったのもクオードだ。
紛争地域に無料で核兵器をプレゼントし、「自由に撃っていいよ」とも言ったのに、いざ本当にその核兵器が発射されて犠牲者が出たら「本当に撃つとは思わなかった!ううっ、罪深い僕辛すぎる…!姉さん会いたいよ……!」と言っている状態だ。これを見て「可哀想」と感じるか?
私は「致命的に頭が悪い上に贖罪する気もない最低の極悪人」だと思いますよ。
 

処刑されてもなお反省していないし、誰もクオードを責めない

処刑自体は執行されたから終わり!もうクオードくんは無罪!!

ver4.4終盤で結局クオードの悪事が明るみに出る。そして、長らく利用されていたウルベアの王女、ウルタによりクオードは処刑される展開となる。
この場面で、ウルタ王女すらクオードと共に過ごした日々の思い出から彼を心からは憎めず「私には…撃てない…!」みたいな描写を入れているのが凄まじい点だ。
実の父を殺され、国をメチャクチャにされ、自身も騙されてエテーネルキューブの開発に利用され続けたのに()、それでもクオードに情が移っているらしい。ホストに騙されて何千万も貢いだ末に捨てられても「でも彼を愛してる…!」みたいに言ってる気が狂った女の心境でしょうか。私には理解に苦しみますね。
ウルタ王女はクオードの体をおろし金で端から少しずつ削って犬の餌にしても許されると思うぞ。と言うか、妹を監禁強制労働させられた主人公にもクオードを殺す権利はあると思う

※クオードはエテーネルキューブが完成すれば、ウルタ王女でも時を戻して父の命を救えると説明していた。だからウルタ王女は協力していたのだが、実際は元々時渡りの力を持つエテーネの民でなければエテーネルキューブは使えず、ウルタ王女のやっていたことは完全に無駄だった

グルヤンラシュはクオードの偽名

ともかく、クオードが「撃て!」と叫んだ気迫でウルタ王女は銃の引き金を引いてしまい、クオードは撃たれて処刑され……なかった
完成していたエテーネルキューブの力が発動し、クオードは命拾いした上に元の時代のエテーネに帰還する。そして、また今まで通り「どんな手を使ってでも自国を守る」と活動を再開する。頭おかしいだろ。

百歩譲って、ウルベアにおける法的手続きとしては「刑が執行されたので片付いた」とされても分からなくはない。
だが、それでプレイヤーがクオードを許していいと感じるかどうかは全くの別問題だ。
せめて、クオードが今までの行為を明確に反省しているならマシだが、彼は全く反省していない。普通、処刑されたものの結果的に生きていたとして、本当に反省しているなら改めて自ら命を絶つか、最低でも「クオードは死んだ」として歴史の表舞台からは姿を消すだろう。
なのに、クオードは今後も「エテーネを守るためだったんだ!仕方ないだろ!」と開き直って被害者面を続ける。なんでこいつ殺しちゃダメなの?

そして、さらなる問題のシーンだ。
クオードの姉、メレアーデがクオードの蛮行を知り、「自国のためなら、他の人に何をしてもいいと思っているの?」と批難する。
この時、俺はメレアーデがまともなことを言っていると感激したものだ。そんなわけないのにな。
そこからメレアーデが告げるのがこれだ。

この国に生きる すべての人たちの
未来を守り抜いた そのとき……
クオード。私は あなたを赦します。

ウルベア?ガテリア?知らんよ

改めて、俺が以前挙げた「息子のためにパンを盗んだ母」の例で考えてほしい。
母は泥棒として捕まり、裁判にかけられる。そして、裁判官はこう言う。
「あなたが盗んだパンで、しっかりと息子のお腹を満たしてあげなさい。そうしたら、あなたの罪を許します」
これで閉廷だ。

もう、どこから説明すればいいのか分からない。放送コードを無視して「きちがい!!!」と叫びたくなる。
以前にも挙げた「どんな悪事を働いても、別件で『良い人要素』を見せれば全ての罪がチャラになる」システムの最悪の例がこれだ。
一応補足するが、上記の台詞の「この国」とはエテーネのことだ。クオードが利用したウルベアや、虐殺したガテリアのことは一切気にしていない。

自国民を幸せにすれば、他国に対する虐殺も正当化される。これをクオード個人の考えではなく、メレアーデにも肯定させた。
なお、この場面でのメレアーデは直前までと違う堅い口調になっている。つまりこれは「クオードの姉という個人ではなく、エテーネの王女として正式に赦しを与える宣言」の描写と考えるのが正統だろう。
これがエテーネ王国の方針だ。結局、ドミネウスの一族はドミネウスと同じ思考ってことだな。

そもそもの話、今回のクオードの件の最大の被害者は国民を虐殺されたガテリア皇国のはずだ。ウルベアでの処刑が終わって事件が表向きに片付いたとして、ガテリアを完全に無視して終わらせていいはずがない。
それでも厳正な裁きを下すならまだしも、身内贔屓の思考でクオードを勝手に赦して解決だ。
ノルマントン号事件かよ。

作者がクオードの味方なので、一貫してクオードの味方しか登場しません

で、これらのクオード絡みの事件について結局何が一番ダメなのかと言うと、物語の主要人物に「全容を知った上で、断固としてクオードを批難する者」が誰も居ないことだ。
「クオードにも事情はあるし、辛い思いもしているだろう。自分の国を守るために必死だったのも分かる。それでもお前のした行為は断じて許されない」
そう指摘する人物が誰もいないのだ。
メレアーデがクオードを許すシーンだって、もしもこれが「クオードの悪事が露見し、守るべきエテーネの人々からも虐殺者と罵られる。側近のディアンジたちにも見限られ、彼の味方は誰一人いない」なんて状況になった上で、「それでも姉のメレアーデだけは、王女としては許さないが、姉としては彼を愛してあげる」展開であれば、彼らの家族愛の描写としては成立しただろう。
だが実際には誰もクオードの敵にならない。ウルタ王女すらクオードを心から憎悪していなかったし、ガテリアの民は彼を裁くかどうかの選択すら与えられない。妹を監禁強制労働させられた主人公もクオードの味方だ。
一貫して作品まるごと明確にクオードの行為を肯定している。

何故こんなことになったのですか?
クオードは作者が大好きな「罪深くてかわいそう」属性を持ったイケメン君だからです。おわり。

ヒエッ……

そして、クオードくんはその後の戦いで致命傷を負い、惜しまれつつ亡くなる見事なメアリー・スー展開を経て、これで彼の物語は終わ…らない
その後、時は流れてver7のストーリーだ。この冒頭で、久々にメレアーデが登場し、5000年前から現代世界に丸ごとタイムスリップしてきたエテーネ王国で式典を開く。
そして、現代の国々にエテーネが歓迎されるイベントが描かれる。
ウルベア・ガテリア両国を無茶苦茶にし、下手をすればドワーフという種族そのものを絶滅させかねないクオードの蛮行を経て築かれた血塗られた帝国エテーネは、こうして世界中から許容されたのでした。
き、き、き……きちがい!!!

ストックホルム症候群の描写かな?

だが、最も恐ろしいのはここではない。
ver6.4において、主人公の妹がクオードは悪くなくて、彼を救ってやれなかった自分が全面的に悪いかのように語って主人公と共にクオードの墓に手を合わせるスーパー胸糞イベントなども相当な恐怖なのだが、それすら本件の前では些細な問題だ。

真なる恐怖

では一番は何かと言うと、ver7の前提にもなっているver4ストーリーの後日談クエストだ。その結末はラストのメレアーデの台詞を載せた、この画像と共に締めくくられる。

改めて、冷静に考えてほしい。
クオードは自国のためならば他国、他者に何をしてもいいと考えた。そして実際、その手で直接的に人を殺したし、主人公の妹を監禁して強制労働させたし、挙げ句にガテリア国民の大虐殺を引き起こした。
やっている事は、かの悪名高きナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーと同レベルだ。
本作は それを明確に、全面的に肯定した。

エテーネキングダムフォーエバー。
「ヒトラー総統万歳!偉大なるドイツ帝国よ、永遠なれ!」と言っているのと変わらない。

これが許されていいと思うか?
俺は本作がまだ発禁になっていないことがおかしい、何なら本件でスクエニがドイツから「ナチス・ドイツを賛美している企業」と認定されてもおかしくないと思うぞ。
まあ、事実としてこのストーリーは世に出ている。そして実際に、「クオードくん可哀想…もう情緒ぐちゃぐちゃ!ver4最高すぎ!!」と、気が狂った女たちに本ストーリーやクオードは支持されている。

物語としての矛盾やつまらなさで言うならver5の方が間違いなく酷いが、本作において最も問題のあるストーリー、存在してはいけない内容という点で言えばver4が完全にぶっちぎっている。これに勝てるわけないだろ。
本ストーリーに唯一良い点があるとすれば、世の中には「イケメンキャラとして登場させ、罪深くてかわいそう演出さえすれば、ヒトラーでも全肯定する」女が多々存在すると明るみに出したことだろう。
時折、女性にとっての理想は「自分にだけ優しいシリアルキラー」なんて言われたりするが、そいつは事実だとクオードが証明した。
人間って怖いなぁ。

メレアーデも主人公の血縁者

やや今更気味の話になるが、クオード絡みの設定にはもう一つ大きな爆弾がある。
主人公の父であるパドレは、クオードとメレアーデの父であるドミネウスの弟だ。
つまりクオードとメレアーデは主人公の従兄弟であり、エテーネは主人公の故郷となっている。つまり、これらの件は主人公と切っても切れない関係だ。
こんなプレイヤーの最も身近な存在、「間違っても嫌われてはいけない要素」に クオードのような大虐殺者を持ってきた、と言えば本作がどれだけ異常であるか伝わるだろうか。

まあ、俺のように彼を大虐殺者と呼んで激しく否定するプレイヤーばかりではないだろうが、どう考えてもクオードが万人から支持されるタイプのキャラクターではないことはサルでも分かるだろう。
もしも、脇道の独立したクエストとかにクオードのようなキャラクターを出すなら、まだ擁護できた。彼を許容できないプレイヤーは遊ばなければいいし、他のコンテンツにも関わってこないから気にしなくてもいい。そんな扱いならマシだった。

だが現実はこれだ。ドラクエ版ヒトラーのクオードは主人公の親族。
そして、後のストーリーにも血塗られた帝国エテーネはガッツリ関わってくる。何ならメレアーデはver7の主要人物の一人だ。
作者の激萌え罪深イケメンのクオードくんを嫌いなプレイヤーなんて存在するわけがない。もし存在するなら今すぐ辞めろ。そんな奴は客じゃない。
それが公式の回答ってわけだ。
分かった、辞めるよ。

誰も真面目に作っていない

ジュワ!

また「そもそも」の話をするが、本作はもうスタッフ自身、真面目にドラクエを作る気がない
ver4、ver5での作者のお気に入りキャラ展覧会もそうだが、ver6ではいよいよドラクエを作る気がないことを隠す気もなくしている。
具体的にはジア・クトのデザインだ。上の方で画像を一度貼ったが こいつらは昔の特撮怪人みたいな外見で、鳥山明デザインのコミカルなキャラクターとは似ても似つかない。
さらに、本ストーリーでは「神剣レクタリス」という武器がキーアイテムとして登場するのだが、主人公がこれをムービーで使用する際、わざわざ特撮ヒーローの必殺技バンクみたいな演出を毎回入れてくる。
その他、明らかにウルトラマンのパロディみたいな天使が登場したり、かと思えば今度はポケモンの相性バトルみたいなミニゲームを始めたりする。
これ、個人制作のフリーゲームじゃなくて「ドラゴンクエスト」という世界的タイトルの本編ナンバリングなんですけど、何故こんな制作者の趣味100%の遊びが許されてるんでしょうかね?

作者はこれがやりたかっただけ

あと、スタッフの遊びと言うと近年目立っているのが声優遊びだ。
例えば今年のエイプリルフール企画として「レンダー5」なるアイドル集団が登場した。だが、エイプリルフール企画なのでまともなアイドルではない。実態はアンルシアのコンパチキャラ軍団だ。
そして、こいつらがボイス付きで喋るんだが、もちろん全員アンルシアのコンパチなので声優は同一、全て早見沙織だ。
プレイヤーの反応を見ても、本イベントは「早見沙織に色々な演じ分けをさせる」が目的と見られており、ゲームやユーザーではなく、制作者の趣味で声優を使って遊んだだけなのが推察できる。

まあ、この一例だけなら邪推とも言えるのだが、一例だけではないのだ。
ver7.2の本編シナリオでは、「神が憑依している」との設定で、上記のアンルシアと、さらにエステラが普段と違う口調で話し、更に二人の掛け合いのシーンもある。
何ならver5の冒頭で偽アンルシアが登場するイベントだって、初めてボイスが付いたver5で、早速声優に「アンルシアが言いそうにない台詞」を言わせて遊びたかったように思う。

これ以外にも、本作は公式生放送に声優を連れてくることがあるし、過去の登場キャラクターに声優が付いた際、声優のキャラに寄せたような性格に改変される事態も発生しているらしい。
だから「スタッフが内輪ノリで声優ネタをやって遊んでいる」は、まず間違いないものと見てよいはずだ。このゲーム、そんなに遊んでいられるほど余裕のある状況じゃないと思いますけどね。

アマラークは彼らの義兄弟BLを眺めるお話です

あと、これも改めての話になるが、本作のライターは兄弟愛の押し付けがあまりにも露骨すぎる。
ver4のクオードとメレアーデギルガランとグリエ、ver5でイルーシャとナラジア、ver6でユーライザとヘルヴェルアシュレイとレオーネ、そしてver7ではリズク王とイルシーム……と、実の姉弟から義理の兄弟関係まで、とにかく兄弟関係を入れないと気が済まない。カップリングがしやすいからでしょうね。

右を見ても左を見てもカップリングだ。そして、それ以外のことはどうでもいい。
上記のリズク王とイルシームを例に出すが、これも相当に酷かった。
彼らが登場するアマラーク国フーラズーラという魔物に襲われており、襲われたらイルシーム以外では対処できない。だから、イルシームが戦えない場面でフーラズーラに襲われたら、誰かが生贄として食われることでフーラズーラを満足させることで凌いでいる…という重苦しい設定がある。

国の危機?そんなことはどうでもいいからイケメン王様の話しようぜ!

しかし、そのフーラズーラと戦うためにアマラークの守護天使の情報を集めている場面で対フーラズーラの防衛戦が続いている最中、世界を蝕む創失の呪いへの対処のため主人公たちがアマラークの守護天使についての情報を集める際に、あまりにもふざけたイベントが登場する。「守護天使の居場所は知っているけど、王様にケーキを差し入れしてくれないと教えない」とほざくゴミ女の登場だ。フーラズーラの餌にしてやろうか?
で、何故こんな人間のクズが登場したのかと言うと、「実はリズク王とイルシームは二人ともケーキが大好きで、二人にはケーキで繋がる絆がある」と描写したかったからだ。
実際、この後のシリアスな戦闘シーンでも「リズク王とイルシームのケーキで繋がる絆」は露骨にアピールされており、作者が本当に描きたいのはフーラズーラとの戦いなんかではなく「甘いもの大好きな可愛いイケメン王と従者のBL」だけであることがよく伝わる。

せめて これがフーラズーラとの決着後、平和になったお祝いでケーキを食べる流れになって、そこから二人のケーキ好きエピソードが出てくるなら、まだ違和感がないから許せた。
だが本作の作者はフーラズーラとの戦いとかアマラークの平和なんてどうでもいいし、「ケーキで繋がる絆」をどうしても描きたかったのだろう。だから、国の存続がかかっている戦いの最中に「王様にケーキを差し入れしてくれないと守護天使の居場所は教えない」なんて言い出すカス女が湧いてきて、シリアスな物語を踏みにじるわけだ。

俺は別に、絶対にBLやカップリングを描くなと言いたいんじゃない。本来の物語を軽視するなと言っているんだ。だから実際、カップリング要素がありつつもシリアスな物語として しっかり書き上げていた妖精図書館については配信でプレイして「普通に面白かった」と感想を言っている。

大いなる闇の根源 シュメリア

当時のプレイヤーから大不評だったアスフェルド学園だって「もしかしたら実装時期の悪さのせいで叩かれただけで、コンテンツ自体は良質だったかもしれない」と可能な限り偏見を持たないようにしてプレイした。
実際、現在のプレイヤーには高評価している奴も多くて、今では「多くのアンチにも負けずファンが推し続けた結果、再評価されたコンテンツ」みたいな口ぶりで語られているのも何度か見た。
俺だって、面白いコンテンツであってほしいと思っていた。少しは期待していた。

その結果、闇の封印に苦しむ生徒たちを放置して恋愛トークで盛り上がり、湖に遊びに出かけるサイコパス軍団の物語に襲われたんだ。
当時アスフェルド学園に反発して引退したプレイヤーがこれを読んでいるなら、俺は伝えたい。
あなたは100%正しかった。自分の決断に自信を持ってくれ。そして、自身の正常な感性を誇ってくれ。あなたは素晴らしい。この世界の至宝だ。

「もう、最悪つまらないのは許す。真面目に作ってくれ」
これを言い続けてきた。そして耐え続けてきた。
愛の表現が「その人を守る、大切にする」とかじゃなく「悪事を働いても愛しているから許す」「愛ゆえに暴走して周りに迷惑をかける」みたいな不快描写ばかりになっても我慢した。
主要キャラクターが次々に、当時炎上したスキルマスターみたいなドラクエらしさのないイケメンばかりになっても、「まあ重要なのは性格や行動だから…」と許容した。
本筋をほったらかして特撮遊びや声優遊びにかまけても、「次は面白いかもしれない」と希望を求めた。

作者はフランクなイケメンを描きたいので外見も性格も全部変えます

その結果がアンルシアの結婚式だ。
スタッフはこれがプレイヤーの求めているものだと思っているし、事実として現在残っているプレイヤーたちはこれを肯定的に見ている。まあ、アンルシアの人気には全く繋がっていないので、単に興味がないだけかもしれないが。
そして、この結婚式イベントを取り仕切るグランゼニス神は初期から登場している、本作における人間種族の神だ。
今まではシルエットしか出ていなかったが、ver7.2で詳細な姿が描かれた。
それがこれだ。またしても女性向けデザインのイケメンキャラ。そして、「かつての威厳ある喋り方は神っぽさを出そうと思って演じていただけ。本来はもっと気さくでフランクな喋り方」という人物像にされた。
つまり外見も口調も完全に上書きされて、かつてのグランゼニスの要素は完全に消えた。作者の大好きなイケメン君で丸ごと塗り潰したんだよ。
そして、これまたシリアスな方面で重要なキャラクターだったはずのペガサス、ファルシオンをイケメン人間体にしたシオンとの仲良し会話を描く。
王道ファンタジーは上書きし、踏みにじり、一方でイケメンキャラのイチャイチャ会話や、手の甲にキスをする耽美系演出はメインストーリーの重要な要素にする。
ドラクエを作りたくない人が、どうしてドラクエを作っているんだ?
教えてくれよ。

ネタバレやめてください!公式のガイドライン読んでないんですか!?

制作者のこだわりポイントには全力を出す一方で、制作者が興味のない部分は完全に放置する。ストーリー面でも、システム面でも一緒だ。
一番分かりやすくカスな例は、ver1の感想記事でも書いたネタバレ問題だ。
本作冒頭のシナリオでは、主人公が一度殺害され、異種族として転生する。この「主人公の死」は衝撃的にして重要な要素のはずだ。
なのに本作は、新規でプレイを始める場合でもキャラクター作成直後に「エテーネの話をスキップし、他種族として生き返るところから始めますか?」と、特大のネタバレメッセージを確実に見せられる。
だから、衝撃的なはずの主人公の死を確実にネタバレされる。
何が酷いかって、これは公式コミュニティにおいて改善するよう求められているにも関わらず、ずっと放置していることだ。
ストーリーの展開そのものを変えろとか、ゲームバランスに手を加えろとか、そういった要望を無視するのは仕方ない。今の方が良いと思う人もいるだろうし、他の要素に影響が出る危険性もあるから、慎重に行う必要がある。
だが、このネタバレメッセージの問題なんて、メッセージを「他種族の姿を選ぶところから始めますか?」に変えるだけで主人公の死は伏せられるし、特に問題も発生しないだろう。なぜ、この程度の対応すら行わない?
ネタバレとして致命的。修正は非常に容易。
こんなもの、対応が早いゲームなら翌週の定期メンテのついでに修正して終わるだろう。だがDQ10はこの程度の対応も一切しない。「ver1のストーリーなんてどうでもいい」と言っているようなものだ。

まず何が起こったのか理解できない

似たような例で言うと、神話篇のムービー再生タイミングがゴミだ。
この神話篇は大型のサブクエストなんだが、落陽の草原というマップに初めて入ったときに強制的にムービーが流れる。
初見のプレイヤーが落陽の草原に入るのは、大抵カミハルムイの本編ストーリーを進めている最中だろう。「暗黒大樹の葉を取ってこい」と言われ、ここを通る。
すると、突然強化版エスタークみたいなモンスターが出現し、知らない村を焼き払うムービーが始まる。そして、知らない人たちの集団が そのモンスターと戦うムービーをスキップ不可で4分くらい見せられる。
俺は何が起こったのか分からなかった。当たり前だ。この神話編はカミハルムイの話とは一切関係ないからな。
だが、初見ではその「関係ない」事実すら分からず、何が何だか分からないまま長いムービーを眺めるしかない。

どうも、この神話篇は元々期間限定クエストとして制作されたものが後に常設された経緯を持つらしい。そして、実装当初はこのムービーより前のイベントも存在し、「知らない人たちの集団」は、そこで登場していたようだ。
だが、その後何がどうなったのか常設後には事前のイベント無しで上記のムービーが突然発生する仕様となった。そして、以後のプレイヤーは俺みたいに「突然わけのわからんムービーを長々と見せられた」経験をすることになったのさ。
これも、まともにストーリーを楽しんでもらおうと思っていたらこんな仕様にするはずがない。なのに今も改善されていない。
マジな話、俺はこの「突然知らんムービーを長々と見せられた」せいで本クエストへの心証が悪すぎて、ずっと神話篇をプレイせずに放置していたぞ。そしてプレイしないまま引退した。
まあ、今更プレイしなくてもいいだろ。制作陣もどうでもいいと思って放置している廃棄物だ。

大して重要でもないのに「いいえ」がデフォルト

あと、これはもうストーリーと関係ない話になるが、オマケで書く。このゲームはUI面も全く改善する気がない。
一番分かりやすくゴミなのは、「はい/いいえ」の選択の際、初期カーソルの位置がデタラメになっていることだ。
過去作でも、極めて重要な選択肢の場合は初期カーソルが「いいえ」になっている場合があった。だが、本作の場合は大して重要でもない選択肢で「いいえ」がデフォルトだったり、逆にそこそこ重要な選択なのに「はい」がデフォルトだったりして、全く一貫性がない
本作には日替わり討伐・週替わり討伐というシステムがある。その名の通り、日または週ごとに指定されたモンスターを討伐すると報酬が貰える。
この討伐を終えてNPCに報告する際の選択肢なんだが、日替わり討伐は「いいえ」がデフォルト、週替わり討伐は「はい」がデフォルトになっている。
同系統のコンテンツでさえ操作が統一されていないのだ。
こんな事態が発生すること そのものが意味不明だし、今でも修正されていないのが終わっている。

するに決まってんだろ

別の例を出すと、カジノコインチケットの引換も意味不明だ。その名の通りカジノコインと交換できるチケットで、それ以外の使い道はない。
で、これはカジノの窓口に持っていって交換するんだが、なぜか初期カーソルが「いいえ」になっている。
コインと交換する専用のアイテムを持って、コインと交換する窓口に行き、交換する選択肢を選んだ。そこから再度確認される時点で意味不明なのに、さらに初期カーソルが「いいえ」だ。
なぜそこまで慎重になる必要がある?「間違えてカジノコインチケットを受け取り、間違えて窓口に行き、間違えて交換する選択肢を選び、さらに交換したくないのにボタンを連打してしまう」プレイヤーが一般的だと思ってるのか?そこまで馬鹿なのは本作の制作スタッフだけだぞ。

重要な場面における操作ミス防止のはずの機能を、大して重要でもない場面で乱用した結果、余計な操作ミスを増やす原因になった。あまりにもマヌケだ。
で、この問題が致命的なのは今更修正のしようがない点だろう。
現存するプレイヤーには今の操作で慣れてしまった人も多いだろうし、不便だからといって今から全ての選択肢のデフォルトカーソルを見直して再設定するなんて、スタッフの手間とやる気を考慮しても非現実的だ。
よって、このゲームのプレイヤーはサービス終了まで このデタラメな初期カーソルに苦しめられ続けることになるわけだ。

ver2前半頃の本編ストーリーは本当に面白かった

ver3以降のメインストーリーは一貫して最悪で、操作性はゴミで、何ならゲームバランスも問題を多々抱えている。
それでも、ごく稀には面白いストーリーもあるし、ゲームとして楽しい時も無くはない。
そして何より、本作は「ドラクエ」だった。だから多々ある問題点を必死に我慢して、なんとか魅力を探してきた。
だが、もう疲れた。
思えば、なぜ今まで文句ばかり言いながらスタッフの腐った脳みそに付き合い続けたのかも分からない。こんな内容でも「ドラクエ」の名前が付いているからだと思うが、その「ドラクエ」を一番軽視し、壊しているのが今のスタッフだ。

今になって思うと、俺がドラクエ11をあまり好きになれなかったのも本作と同じ要素が原因だったのだと思う。
エンディング後のエマとの洗脳結婚なんて、考えてみれば今のドラクエ10と全く同じだ。
物語の中でエマと仲を深める様子を描かない、プロポーズをするシーンも、結婚式のシーンも一切描かない。ただ「結婚した」という肩書きだけを与えて、とりあえずエマに旦那様とか言わせる「結果」だけをポンと与えればプレイヤーが喜ぶと思っている。だからあんな事になった。
SNSで1ページ完結の妄想二次創作を投下する感覚で、公式のストーリーを作っている。たわけた話だ。

俺は別に女性向けコンテンツ自体を敵視しているわけじゃないから、それ自体を否定する気はない。女性向けは女性向けとして勝手にやっていればいい。そのぐらいの考えだった。
昨今、元は少年漫画的だったコンテンツが すっかり女性向けに変わってしまった例をいくつも見てきたが、それも「その方が数字取れるならしゃーない」くらいで済ませていた。

だが、ドラクエ10の辿った道を見ていると、その認識を改めた方が良いのではないかとさえ思えてくる。
カプ厨おばさんの性欲によるコンテンツ乗っ取りを放置した結果がこれだ。王道少年漫画要素は徹底して踏みにじられ、形だけ掲げられたシリアスな物語の中身は作者がカップリングを作って狂うだけの餌場と成り果てた。キャラクターデザインはドラクエらしさのない女性向けイケメンばかりとなり、もはやどこにも「ドラクエ」は無い。

これはドラクエ10に関連する話として紹介するが、かつて俺に他の配信者絡みでお便りが来たことがある。(俺は恨み言専用のお便り窓口を作っている)
曰く、「とあるドラクエ10の配信者を追っていたが、キャラ×自分のカプ語りが目立つようになってきた」「この先も推したいからこそカップリング語りを控えてほしいと伝えたのだが、リスナーから袋叩きにされた」といった感じの内容だった。
で、俺はその配信者に心当たりがあったので確認してみたのだが、実際に当人もリスナーも一切カップリング語りを問題視しておらず「本編遊びながらカップリングやBL妄想するくらい誰でも普通にやる事なのに、それを禁止されたら何も感想を言えなくなる」と話していた。

これは俺の感覚だが、かなりおぞましい環境だと思った。
カップリングやBL妄想なんて、その筋の人の言葉で言うなら典型的な「性的消費」だ。
元々明確に女性向けのコンテンツでやるなら構わないが、少年漫画コンテンツの本編を見ながらカップリングやBLの妄想をするなんて中年男性がプリキュアの本編を視聴しながら「うわっ、この子エッロ!ヤりてぇ〜w」と言っているのと何も変わらない。

これも一応言っておくが、俺はポルノ自体に否定的な考えは持っていない。センシティブな話題だと理解した上で、「私はカップリングやBL語りが好きだから話します。嫌な方は申し訳ないけどお別れです」と覚悟を持って話しているなら何も否定する気はない。
ただ、この配信者の場合は当人も、そのリスナーも、少年漫画を堂々と性的消費することを全く問題と認識していない。それどころか、指摘した視聴者を「当たり前の感想を言うだけで突っかかってくる攻撃的な人」呼ばわりしている。

その配信者の方は、ドラクエ10配信者の中ではそこそこ人気がある方だと認識しているが、これが現在のドラクエ10を象徴していると思う。
無自覚な性欲で少年漫画を食い尽くし、乗っ取り、それが当然だと思っているカプ厨の集団。制作者もプレイヤーも、それが現在残っているDQ10のメインストリームだ。件の配信者一人がおかしいんじゃない。コミュニティ自体がそういうものになっている。
これを許していいのか?俺はダメだと思う。

じゃあ、俺はどうすればいいんだ?
「少年漫画を乗っ取ってシコってる気持ち悪いカプ厨ババア死ねや」と口汚い言葉を吐き散らかして暴れたら、ドラクエは正気を取り戻すのか?
もし本当にそうなるなら、俺はそうして暴れることも辞さない覚悟だが、実際は無駄な抵抗だろう。それに俺だって、無闇に敵を作りたいわけじゃない。
だが、ならばこのまま少年漫画が食い尽くされて、カプ厨ポルノ化してゆくのをただ眺めるしかないのか?

どうすりゃいいのか分からない。何をしてもロクな事にならない。
ただ疲れた。だから俺はドラクエ10を辞める。

自宅のコンシェルジュは癒しだった

最後に改めて言うが、職業クエストは面白かったよ。これは本当に素晴らしかった。(どうも本編とはライターが違うらしいので、面白いのも頷ける)
こちらも累計で4万字くらいの記事を書いているが、この職業クエスト記事の上位については、本記事でここまで本編をボロクソに書いた俺と同一人物とは思えないくらいにベタ褒めしているはずだ。
面白ければ褒めるんだよ、俺は。そして、褒められるなら褒めたいんだ。
だが、もう完全に心が折れた。

ありがとよドラクエ10。ガーディアンのクエストは間違いなく「ドラクエ」シリーズ最高傑作の物語だった。
本編ストーリーを書いている奴らは二度とストーリー制作に関わらせないでくれ。

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自称VTuber。大好きだったシリーズ作品に裏切られて呪詛垢と化した人々を救うため「俺は優しいから放っておけないぜ」とデビューするも、わずか一ヶ月で精神が崩壊し引退を表明。その後5日で墓から這い出し、現在は何喰わぬ顔で活動継続中。特技は長文感想。
ドラクエ10の本編ストーリーが不快すぎて引退した|鏑木和奏
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