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 大阪・関西万博で工事費の未払いがあったアンゴラ館。NPO法人「労働と人権サポートセンター・大阪」(大阪市)と、未払いの被害を受けた下請け会社は、日本国際博覧会協会(万博協会)に公開質問書を提出し、工事費の立て替えなどを求めていた。NPO法人と下請けは2025年8月5日に記者会見を開き、万博協会からの回答書を公開。同法人の代表理事を務める在間秀和弁護士は、会見で「万博協会は質問にほとんど答えていない」と怒りをあらわにした。

2025年8月5日に開かれた会見の様子。写真左から、NPO法人「労働と人権サポートセンター・大阪」の在間秀和弁護士、藤原航弁護士、村角明彦弁護士(写真:日経クロステック)
2025年8月5日に開かれた会見の様子。写真左から、NPO法人「労働と人権サポートセンター・大阪」の在間秀和弁護士、藤原航弁護士、村角明彦弁護士(写真:日経クロステック)
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 NPO法人と下請けが公開質問書を提出したのは25年7月15日。その後、同月22日に届いた万博協会からの回答を踏まえ、28日に質問書を再び提出した。8月4日に回答があり、同日には万博協会の担当者と話し合いを行った。

 万博協会が24年4月に定めた「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 人権方針」によると、万博事業などによって人権への負の影響を引き起こした場合には、その救済や是正に取り組むとしている。在間弁護士は「アンゴラ館の工事で労働への対価が支払われていないのは重大な人権侵害だ」と訴え、未払い問題に対して救済措置を検討したかなどを、公開質問書で万博協会に追及していた。

 万博協会は回答書の中で、「工事の発注者である出展国が元請けに工事代金を支払っていない場合には、必要な働きかけを行っている。ただし、元請けと下請け、または下請け間の契約はあくまで当事者同士の問題だ」と主張した。さらに、「契約当事者ではない万博協会が工事費を立て替えることはない」と明記した。

 在間弁護士によると、万博協会の担当者は25年8月4日の話し合いで「工事費未払いの被害を受けた下請けは気の毒に思う。ただし、協会が対応しなければならないという法的根拠はない」と発言した。これに対して在間弁護士は、同月5日の会見で「まるで人ごとだ」と協会の姿勢を批判した。

万博協会は、公開質問書に対して25年7月22日と8月4日に回答した(写真:日経クロステック)
万博協会は、公開質問書に対して25年7月22日と8月4日に回答した(写真:日経クロステック)
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