自公が大敗した参院選で伸び悩んだ立憲民主党は、総括案で「事実上の政権選択ともされた選挙の中で、受け皿としての評価を得られなかった」とした。野党第1党としての存在感が低下する中、立民はどこへ向かうのか。
まず、立民は事実上の政権選択と言うが、有権者の意識はどうだったのか。悪夢の民主党政権をまだ覚えている人も多く、しかも立民の代表である野田佳彦氏はその時の最後の総理であった。もし有権者が政権選択を望まなかったとすれば、野党第1党の立民には投票せずに、他の野党に投票する。
以前の本コラムで筆者が指摘した通り、参院選の投票分析では、比例では立民が票を減らし、国民民主党へ移っている。と同時に、自民党の若者と保守層が国民民主に移ってきたが、国民民主が候補者選びに失敗して、参政党がさらった。
こう考えると、なぜ国民民主へ流れたかがポイントとなる。立民と国民民主はもともと民主党だったので、政策は似ていたが、「玉木国民民主」になってから、リアルな経済政策と安全保障に転じたようだ。これが立民や自民から若者と保守層の票を奪えた要因だろう。
リアルな経済政策とは、減税を中心とするもので、これまでの自公政権になかった新しさがある。一方、立民内の一部にも減税を推す者もいたが、全体として自公と同じく減税に消極的だった。参院選前のギリギリの段階で消費減税を取り入れたが、さすがにドタバタ感があった。
リアルな安全保障とは、立民はいまだに平和安保法制は違憲という立場だが、これでは自衛隊を違憲と言い続ける共産党と大差ない。
リアルな経済政策と安全保障で、いまさら立民が変わるのは難しいのではないか。となると、立民は高齢層に支持される護憲党のままで、同じく高齢者の支えが頼みの今の自民と同じ問題を抱えていると言える。自民にはまだ党内に保守がいて、若者・保守を取り戻そうとしているだけましだが、立民はそうした人が既に国民民主に移っていて逃げた。
立民は現状では、政策の違いもあり、とても野党をまとめられない。もし自民が総裁選となれば、石破茂首相に近い人々は完全に非主流になる。
立民としては、そうした人たちに自民からの離党を促し、取り込むくらいの政界再編を仕掛けてみてはどうか。護憲か改憲かという陳腐な対立図式であるが、政界再編という今の時代好みで、瓢箪(ひょうたん)から駒もあるかもしれない。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)