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みちのくの山野草

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『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』

2025-07-22 12:00:00 | 鈴木守からの遺言


 先頃、現在使われている小学六年生用の国語教科書をたまたま目にした。するとそこには、
 そして、一九三三年(昭和八年)九月二十一日が来る。 
 前の晩、急性肺炎を起こした賢治は、呼吸ができないほど苦しんでいた。なのに、夜七時ごろ、来客があった。見知らぬ人だったけれど、「肥料のことで教えてもらいたいことがある。」 と言う。すると賢治は、着物を着がえて出ていき、一時間以上も、ていねいに教えてあげた。    〈『国語⑥創造』(光村図書出版、令和3年、122p〉
というように、巷間言われている宮澤賢治終焉前日の面談がありありと描かれていることを知った。そしてまた、私も小学生の頃にこんなことを教わったような記憶が蘇る。とはいえ、その頃とは異なり私は訝った。このようなことを今でも相変わらず、それも小学校で、純真な子どもたちに教えていることがはたしてこのままでいいのだろうかと。
 かつての私は、賢治に関してはかなりバイアスがかかっていて良心的に解釈していた。ところが、ここ十数年ほど賢治に関することを検証し続けてきた結果、それは危ういということを気付かされた。巷間言われている賢治に関することで、常識的におかしいと思ったところはほぼ皆おかしかったからだ。そこで、「見知らぬ人」に対して「呼吸ができないほど苦しんでいた」賢治が「一時間以上も、ていねいに教えてあげ」たということは常識的にはあり得ないし、この面談の内容が事実であったということを実証している人も見つからないから、この面談もその一つの例なのかなと不安になる。賢治は「貧しい農民(当時の農民の多くは貧しかったのだ)のために己の命まで犠牲にして尽くした」人であったと思わせてしまうようなこの面談を、未だ判断力が十分には育っていない純真な子どもたちに事実であったかの如くに教えていることに問題はないのだろうか、と。しかも、今年(令和5年)は賢治没後90年だ。それに気付いて私は、人物の評価は没後百年には定まると誰かが言っていたことを思い出し、「もしそうであったとするならば、あと10年で宮澤賢治像は確固たるものになってしまうのか」、と焦りながら独りごちた。
 というのは、現在の「賢治年譜」等には幾つかの問題点があり、別けても、賢治が血縁以外の女性の中で最も世話になったはずの高瀬露が、あろうことか「とんでもない悪女」にされているという現実は人権問題だから看過出来ないので、私は昨年の一月十五日、筑摩書房に宛てて次頁に掲載したような《『筑摩書房』宛のお願い文書》をお届けした。そして、拙著『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』もお届けし、それも読んでいただき、特にその第一章の「六 おわりに」で私は次のように、
 一方でこの「252c等の公表」によって、賢治には従来のイメージとは正反対の、「背筋がひんやりしてくるような冷酷さ」があった、ということも実は公開されてしまったと言える。しかもこのことは、今となっては覆水盆に返らずだ。だから私は、この上、「恩を仇で返す」ような賢治であってはほしくない。
 というのは、巷間、露はとんでもない悪女だとされ続けているわけだから、この実態が続けば、賢治が生前血縁以外の女性の中で最も世話になったのが露であったというのに、賢治は露に対して「恩を仇で返した」と歴史から裁かれかねないからだ。しかし、この悪女が濡れ衣であったならば、賢治は露に対して「恩を仇で返した」、と誹られることは避けられるし、しかもそれは濡れ衣であったということを私たちは実証出来ているから、賢治と露のために筑摩に問う。
 せめて、なぜ「新発見の252c」と、はたまた、「判然としている」と断定出来たのかという、我々読者が納得出来るそれらの典拠を情報開示していただけないか、と。願わくば、『事故のてんまつ』の場合と同様に、「252c等の公表」についても「総括見解」を公にしていただけないか、と。
お願いをしたので、その対応等を期待していた。
 だが、その後筑摩書房からは未だ梨の礫だ(田舎の老いぼれがこのようなお願いをしても無視されるのは当たり前かな)。そこで私は、ステップは踏んだのだから許されるだろうと思って、今度はこの小冊子を出版することにした。というのは、この『筑摩書房』宛の文書では、他のことと違って人権問題は喫緊の課題だから(実はこのこと以外にも『校本宮澤賢治全集』には杜撰な点が幾つかあるが、それらのことについては遠慮して申し上げなかった)このことに絞って訴えた。しかし、何一つ連絡がないので、こうなったならばもう遠慮などせずにそれらのことも公に訴えようと決意し、この冊子を出版し、いわば遺言としたいと思った次第だ。

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